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現実を見ないで目をつむろう
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012051702000099.html
>仙谷由人政調会長代行は自ら発言を求めて「需給問題とは別に、再稼働せず脱原発すれば原発は資産から負債になる。企業会計上、脱原発は直ちにできない」と強調した。
先月の仙石氏の発言ですが、この件は、単に電力会社の損益の問題に留まらない、各方面の利害に関わるややこしい事情がからんでいるようです。同じく先月の、ビデオニュース・ドットコムの神保哲男氏と宮台真司氏の番組を見て、それがよくわかりました。こちらは「原発を再稼働するかどうか」の話ではなくて、「今後、核燃料サイクルをどうするか」という話の流れから来ているのですが、もし、このまま再稼働の可能性が無くなり、脱原発に移行することが正式に決まったりすれば、当然、核燃料サイクル計画も消滅してしまうことになりますので結局、同じことだと思います。(仙石氏はある意味で、正直な方なんだと思いますが・・・いずれにしろ、そのために多くの人々の命を危険にさらす理由にはなりません)
ビデオニュース・ドットコム 2012年05月19日 エネルギー関連有識者会議続報 核燃サイクルを何とか「留保」にしたい事情
http://www.videonews.com/news-commentary/0001_3/002411.php
(これは無料放送になっていますが、Youtubeにも同じものがありました。http://youtu.be/DROewuv2GCo )
以下、解説より引用
>これから原発をどうするかを決める上で避けて通れないものとして、核燃料サイクルをどうするかの問題がある。日本は原発が出す使用済核燃料として、既に広島型原爆5000本分とも言われるプルトニウムを貯め込んでいる。現時点では建前上はこれを核燃料サイクルで燃料として再利用することになっているが、現実的には核燃料サイクルが機能する見通しは全く立っていない。
>しかし、もし政府が核燃料サイクルを正式に断念することになれば、使用済み核燃料は最終処分しなければならなくなるが、これもまた最終処分場の目処は全く立っていない。そのため、動くはずがないことが明らかな核燃料サイクルを、建前上はいつかは動くことにしておくことで、その他の様々な矛盾が吹き出さないようにしてきた。
(中略)
>しかし、ワンスルー案は核燃料サイクルを行わないという決定が正式に行われることを意味するため、その影響が大きいのに対し、留保案ではまだ正式に核燃料サイクルを断念したことにはならないところに最大の違いがある。例えば電力会社は現在、使用済み核燃料をすべて資産計上しているが、核燃料サイクルの可能性が絶たれると、これがすべて処理が必要な廃棄物、つまりゴミとなり、それを負債として計上しなければならない。日本原燃の川井吉彦社長の試算では、現在国内にある約1万7千トンの使用済み核燃料は燃料として再利用された場合、原油換算で約15兆円の資産価値があるそうだ。バランスシートへの影響も非常に大きい。
-----------(以下ビデオ10分55秒~の書き起こし)---------------
(核燃料サイクルを断念して使用済み核燃料を直接処分する、「ワンスルー案」をなぜ採択できなかったのかということについて)
神保:今までの原発推進論の中で必ず使用済み核燃料の最終処分の話が出てきますと、常にその推進派の学者の偉い方々、どんな方も、核燃料サイクルが回れば大丈夫だとしか言えないんですよ。「どこかに必ず最終処分場は見つかりますよ、そのうち」とは絶対に言わない。「そのうち、モンゴルかなんかに輸出するスキームが出来ますよ」とかは絶対に言わないです、それは。だからそこについてはお手上げです、とは言えないんで、「核燃料サイクルが回れば大丈夫です」と言い続けている。だから、「核燃料サイクルを諦めました」と言った瞬間に、まずは推進派は総崩れになるという問題があるというのがひとつですよね。なのでそれが幻想でもいいから回っていることになっててさえくれれば、「原発、ガンバロー」っていうことが言い続けられるというのがひとつと。それから、これもちょっと本編で話しましたけど、核燃料サイクルが回る前提なので、使用済み核燃料は実は燃料なんですね。
宮台:資産計上されているんですよね。
神保:そう、各電力会社ではそれが資産計上されていて・・・
宮台:燃料として使えますと。
神保:そう、燃料として。それはウソというよりも、たぶん、核燃料サイクルに回すという前提で取っているのであれば、資産計上しなかったら、たぶん、その、脱税になっちゃう可能性もありますよね。だからそこは資産計上していると。でもそれが「核燃料サイクルを止めます」となった瞬間に、只のゴミ、要するに負債ですよね。これから処理が必要なゴミになりますよね、価値ゼロで。だから、そうなるとバランスシートがとつぜん、ちょっと、金額、それ正確に今、知らないんですけど、かなりの金額になると聞いています。そうすると、それこそ株価とか企業評価とかにガクッと来たりするので、実はかなり経済問題でもあるらしいんですよね。
で、そんなのはたぶん、氷山の一角でしょう。核燃料サイクルが回ることが前提になっているから、(片手の指を折って)こうだ、こうだ、こうだ、こうだ、っていうのがいっぱいあって、回らないことは分かっているけれど、回ることにしておかないと、もうこれが全部崩れると。だから、それが全部崩れた時の影響はあまりにも大きいから、「回んなくてもいいんだよ、回ることにしといてくれよ」っていう話が来たんだけど、ここにきて、どうもさすがにそれは厳しいということで議論をしてきていたんですね。(案が)1,2,3出たんだけど、ついに4番が出ました。「何も決めないということを決めた、というようになりました」、というのが今回の状況なんですけど、これは、どう・・・どうもこうもないですが・・・どう考えますか?
宮台: それは本編でも申し上げた通りで、どうもこうもなくて・・・これは、要は現行のレジームをね、変えないでこのまま行軍を続けるためには、いつか核燃料サイクルが回るというフィクションが必要なんですよね。だからこれはほんとに、かつての戦争のときとまったく同じで、フィクションのもとで陸海軍のね、つばぜり合いや、あるいは国民総動員体制とかがあったんですね。そのフィクションが崩れるとすべて崩れるんですね。それはまあ、耐えられないと。
だから、要は、僕がよく申し上げてきたフィクションというのはつまり、見たくないものは見ないんですよ。現実を見たら今のレジームは続かない、すべて変えなければいけないとすぐ分かっちゃう。で、中には資産計上しているものが、すべて負債計上しなければいけなくなってしまうと。そうしたらもう電力会社だけでなく、その関連のいろいろなネットワークにいる人間たちが全部沈む。それはやはり心的に耐えられない。だからこれは目をつむりさえすればいいから、現実を見ないで目をつむろうと言っているんですよ。
神保:大の大人がすごいねえ・・・その話。
宮台:でも、それが、丸山眞男が言っていたことなんですよね。
神保:子供以下です。うちの猫がそうですよ。何か悪いことをするとそっちを見ないようにする。
宮台:手順としては、現状認識をする陸軍の部署と現状認識に基づいて政策を立てる部署があるんです。実際には、現状認識と無関係な政策が出てくるので、それに従ってまたフィードバックして、まるっきり現状を書き換えてしまうんです。最初の報告書はなかったことになるんですよ。つまり最初見たはずの現実を、あれは見たと思っていたけど見ていなかった、今僕が目をつむって見ているものが本当の現実です、と。
----------------------(以下略)-------------------
ちなみに、こちらのテレビ朝日の朝の情報番組、モーニングバードの中のコーナーでも、関電の関係者が「再稼働は需給問題とは別」だと言ったこと、そして、そのバランスシートへの影響を大阪市特別顧問の古賀茂明氏がわかりやすく解説していらっしゃいます。
モーニングバード 原発ゼロだと集団自殺しないといけないの? 電力は本当に足りない?
後編 ttp://youtu.be/d5WdVxkHbHg (リンクが多いと投稿できないようなので、先頭のhを落としました)
>風鈴草さんへ…
資産が負債になる云々についてですが、「会計学理論」上は、『減価償却方式』というのがありまして、短期に10兆円を超える資産を負債に一挙に計上すれば企業なんて吹っ飛んでしまいますので、長期にわたり少額づつ分割して資産を減少させ負債に付け替えれば良いだけですむとわたしは考えます。簿記会計学理論上の技術的な問題ですから心配は不要だと思います。
やはり最大の問題は、風鈴草さんご指摘通り“人間の命が危機にさらされ続けること”なんですよ。
渡辺満久教授(東洋大学教授)が述べてみえましたが、大飯原発敷地内に大規模な活断層が一本と、小さな活断層が10本あるそうです。これを聞き驚きました。
野田首相は、またぞろ大飯原発に直下型地震が襲ったら、どうやって責任をとるつもりなのか、甚だ疑問です。直下が襲ったら“チェルノブイリ”以上の過酷事故が想定されるそうです。もうドイツの様に廃炉作業に着手し、“メタンハイドレード”採掘を急ぐべきと、わたしは考えます。わたしは福井県の隣り合わせの岐阜県で寝泊まりしているだけに、原発に殺されるのだけは、真っ平ゴメンです。(-.-;)
>青い鳥さん
ああそうなんですか。さすが金融マンの青い鳥さんですね。(^^) 東電と言い関電と言い、けして面白くは思えない会社ですが、いきなり破綻されてもいろいろ影響が出るのだろうし、電気の提供と管理は誰かにしてもらわなければならないわけですから、いったい、どうするんだろうと思っていました。国有化の話も出てますけど、だとしても負債は大きくない方がいいですものね。ちょっとだけ安心しました。
でも会計上の問題はなんとかなっても、実物は残るんですよね。結局、つけを払うのは国民か・・・(-_-)
> ノルウェーでは、地下400mに廃棄物を埋設するそうですが、放射性廃棄物の中には、半減期が約25万年かかるものがあるそうです。果たしてそんなに長い期間保管可能なのか?。想像を絶しますよ…。
もしかして、それはフィンランドの話ではないですか?去年、「十万年後の安全」というフィンランド映画を見たのですが、なんだか気の遠くなるような話でした。ある島の地下に深いトンネルを掘って放射性廃棄物を埋めているのですが、10万年後までの人類にその危険性を伝えて掘り返させないようにするにはどうしたらいいか?という話が出てくるんです。その間には今の文明が滅びて科学技術の知識も消え、今の言語もみな消滅してしまうかもしれない。それでも数万年後の人たちに、---- その頃まで人類が存在していればの話ですが --- ここを掘り返すのは危険だとわからせる方法はないだろうか?などなど、ほとんどSFの世界でした。でも、ああいう地層処分は地震の多い日本では難しいだろうと、素人でもすぐに気がつきました。いったい、どうするのかな・・・
十万年後の安全 公式サイト
http://www.uplink.co.jp/100000/