たとえ事故を起こさなくても、原発はいかにブラックな存在か。
経産省から安全評価のお墨付きを得て、橋下市長が再稼働もあり得ることを示唆した関西電力大飯原子力発電所。
その大飯原発で、違法に作業員を働かせていたことが発覚しています。
少々長くなりますが、原発労働のブラックぶりをメモしておきます。
http://mainichi.jp/seibu/shakai/archive/news/2012/02/03/20120203ddp001040004000c.html
原発労働の闇:/上(その1) 日当8割“ピンハネ”
関西電力大飯原子力発電所(福井県)の改修工事を巡る偽装請負事件で2日、太平電業(本社・東京都千代田区)の福井地区営業所長(58)ら3人と同社など2法人が職業安定法違反などの罪で略式起訴された。
「違法労働を示す資料が捜索で次々と見つかった。長年の深い闇があったことを示す証拠だった」と福岡県警のある幹部は言う。太平電業は全国で原発工事を請け負ってきたが、同社に指定暴力団工藤会関連会社(北九州市)の従業員が派遣された事件は一企業、一原発にとどまらず、原発のあり方自体を問うものだ。
北九州市は数十年前から原発労働者の一大供給地として知られてきた。1985年には原発に作業員を派遣していた北九州市の会社社長が暴力団員を社員に仕立て、健康保険証をだまし取る事件が起きたが、原発労働に暴力団が関与する氷山の一角と見られてきた。
北九州市の吉村正樹さん(61)=仮名=は7年前まで14年間、市内の建設関連会社で働き全国の原発に派遣された。勤務先と原子力メーカーなど元請け企業の間には二重三重に会社が入り込み、太平電業が入ることもあった。配管補修が主な仕事だったが、現場ごとに異なる会社から指示を受けた。吉村さんによると、電力会社から元請けに支払われた日当10万円は吉村さんに支払われる時には1万8000円になった。8割以上が“ピンハネ”された形だが、吉村さんは「吸い上げの世界。大きい所がもうかる仕組み」と解説する。
「原発の現場はきれいですよ」。吉村さんから突然、予想外の言葉が飛び出した。原子炉で見られる青白い光。電子の速度が水中の光速度より速くなると出る「チェレンコフ光(こう)」と呼ばれる現象だ。原発を象徴するその光の「陰」について、吉村さんが語り始めた。
http://mainichi.jp/seibu/shakai/archive/news/2012/02/03/20120203ddp041040027000c.html
原発労働の闇:/上(その2止) 結束力、隠ぺいの温床 暴力団の影、末端は泣き寝入り
<1面からつづく>
◇給料搾取、治療費は自腹
太平電業が主導していた原発労働を巡る偽装請負事件は、原子力発電事業を違法労働が下支えしている実態を明るみに出した。偽装請負や無許可の労働者派遣の裏で横行するピンハネ行為……。いくつもの会社が関与して責任があいまいになる中、労働者は不安定な立場に置かれ、暴力団の介入を許す土壌にもなってきた。
「線量計がすぐに鳴って長く作業できないから、50人、100人で人海戦術でやるしかない。そこにいるのは末端の人間だ」。北九州市の建設関連会社から全国の原発に派遣された経験を持つ吉村正樹さん(61)=仮名=が振り返る。
放射線管理区域内は放射線量に応じてA~Dに分かれ、最も高いD区域では防護服を着て手袋を何重にも覆う。「作業効率を上げるため、能力のある人が線量を超えないように他人の線量計を持って入る場合もあった」
原発1基を1日止めれば1億円の損失といわれる。ある電力会社OBは「定期検査を短くという要望は電力会社から何度も出している。でも検査項目を変えずに短くするには、手抜きか徹夜などの労働強化しかない」と自嘲(じちょう)気味に語る。
原子力安全基盤機構によると、09年度の原発で被ばくした労働者約8万3000人のうち電力会社以外の労働者が約9割を占める。平均被ばく線量は3・6倍に達している。
◇ ◇
佐賀県の飯倉孝さん(50代)=仮名=は4年前、「親方」と呼ばれる男性を通じて電気設備会社従業員として九州電力玄海原発(同県玄海町)の定期検査で約2カ月間働いた。
作業は配線工事。夏場に汗みどろになって働いたが、親方からもらう日当は8000円だった。1カ月半がたったころ階段の上り下りをするだけで膝に痛みが走るようになった。病院で「変形性膝関節症」と診断されたが、親方は「日ごろ体を動かしていないからだ」と言うだけだった。
同僚の50代男性は作業中、足をくじいて2週間以上休んだが、親方から「ぼさっとしているのが悪い」としかられていた。治療費は自腹だったという。飯倉さんは「けがをすれば『バカ』呼ばわり。労災事故を起こして電力会社に迷惑をかけてはいけないという雰囲気がひしひし伝わってきた」と振り返る。
親方は「会社と請負契約を結んでいる」と話すが、実際は会社の指揮下で働く偽装請負だ。このような違法な労働形態の下で「親方の中には暴力団関係者がいたし、2人の親方から給料をピンハネされたりしていた」と飯倉さんは証言する。
◇ ◇
日本弁護士連合会貧困問題対策本部は昨年、原発労働者から聞き取り調査をした。同部員の渡辺達生弁護士は「経済的理由からなされている違法な原発労働を倫理的観点からも考えるべきだ」と提起する。
原発1基の定期検査には1000人以上が必要とされるにもかかわらず、求人票をハローワークで見かけることはまずない。ほとんどが縁故や紹介で集めている。ある労働局職員は言う。「彼らは電力会社が傷つかないように気を付けている。縁故者なら結束力も強く口も堅い。そこには彼らの世界がある」
原発はこのようなあくどい貧困ビジネスがあって成り立つ産業です。
平常運転時の原発は常に、被曝線量の高い場所で働かされ、命を使い捨てにされ、闇に葬られる作業員を出し続けてきました。(
こちらのエントリーをどうぞ)
私達が脱原発を主張するとき、それは、単に原発を発電手段として使うな、と言うことだけではないはずだと私は思います。
どす黒い違法な原発労働の実態。
国と電力会社がよってたかって札束で地方の頬をたたき、地域経済が原発抜きでは成り立たないよう電源三法で「シャブ付け」にする地方蔑視。
脱原発運動は、こういう国と電力会社の非人間的な強欲資本主義に対する告発でもあるわけで、そこまで切り込まなければ、
「原発推進の歩みを知るほどに、問題の根本に、政治・行政・司法やメディアなど全てにおいて民主主義が正常に機能していなかったことや人権の軽視が浮かび上がってきます。また、異論を唱える少数者排除もあの惨事を引き起こすに至った重大な要因です。それらを徹底的に問い直さなければ、なんのための脱原発かになってしまいますよね。 」(
こちらのコメントより)
と言う気がします。
原発は一旦事故を起こせば誰も予測のつかない前人未踏の環境破壊を引き起こすことを私たちは身をもって知りました。この環境破壊は人間の尊厳や生存権を根底から脅かすものです。
しかし平常運転の時でもこのように人間の生存権を脅かし踏みにじるものであることを再認識しなくてはならないと思います。
平常運転であれ、事故をおこした非常事態であれ、原発とは「平和的生存権」を侵すものではないでしょうか。
だから、
脱原発は人間の尊厳、基本的人権の問題なのだと思うのです。
ところで、日本人はこの「人権問題」に非常に鈍感であることを過去何度も指摘してきました。
例えば格差、貧困問題は憲法25条にかかわる人権問題です。
沖縄の基地問題も沖縄住民が安心安全に暮らす権利を奪われている人権問題です。
日本軍性奴隷(従軍慰安婦)問題も、過去に日本が犯した戦時性暴力という女性の人権問題です。
しかし生活保護が受けられず「おにぎりが食べたい」と餓死する人が出ても社会保障をもっと改善せよと怒りの声が国民的規模でわき上がってくるわけではなく、逆に受給者をみな不正受給者扱いするようなバッシングが歓迎されています。
自分たちに降りかかる放射性物質には敏感でも、沖縄住民の基地撤去の悲痛な叫びはどこ吹く風のヤマトンチュ。
日本軍性奴隷の被害者はまだ生きていて、私たちの隣で、自分に為された激しい人権侵害を認め、謝罪し、償って欲しいと、今、訴えているのに、それに対し誹謗中傷できるのは、人権感覚になんらかの欠陥があると言うことです。
そういう感覚で、果たして脱原発運動が妙な方向へずれていったりしないでしょうか?原発の問題だって強欲守銭奴原子力村による激しい人権侵害の問題なのですから、きっちりとした人権感覚がなければ最後まで対処できるかどうか・・。
脱原発を成功させるには、脱原発を人権問題として捉え、同時に他の人権問題にもアンテナを張れる人権感覚を磨くこと。
それが大切なんじゃないかと思います。
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