胸が痛くなるニュースです。
マンションに女性2遺体…姉病死、障害の妹凍死
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120123-OYT1T00641.htm
札幌市白石区のマンション室内で20日、女性2人の遺体が発見された。
北海道警札幌白石署は、この部屋に住む姉妹とみて身元の特定を進めているが、妹には知的障害があり、22日の解剖結果などによると、姉が昨年12月下旬に脳内血腫で病死し、残された妹は自力で生活が出来ず、今月中旬までに餓死同然で凍死したとみられている。
道警幹部によると、死亡したのは、佐野湖末枝(こずえ)さん(42)と恵さん(40)とみられている。
発見時、姉とみられる遺体はフリースの上にジャンパーを着るなど、室内と思えないほど厚着をしていた。妹とみられる遺体は膝まで布団を掛けてベッドに横たわっていた。極度にやせ細り、胃の中は空っぽだった。
(2012年1月23日14時36分 読売新聞)
<40代姉妹死亡>「生活苦しい」区役所に3回相談 札幌
毎日新聞 1月24日(火)12時22分配信
http://mainichi.jp/select/today/news/20120124k0000e040157000c.html
札幌市白石区のマンションで知的障害のある妹(40)と姉(42)とみられる遺体が見つかった問題で、この姉は約1年半前から3回にわたり区役所に生活相談に訪れ、生活保護申請の意向をみせていたことが、市役所への取材で分かった。姉は自身の仕事や妹の世話をしてくれる施設も探していたようで、その最中に急死し、連鎖的に悲劇が起きたとみられる。
札幌市保護指導課によると、姉は10年6月、11年4月、同6月の計3回、区役所を訪れ「生活が苦しい」と訴えた。2人の収入は中程度の知的障害がある妹の障害年金だけだったとみられる。昨年6月、姉は「今度、生活保護の関係書類を持ってくる」と言って必要な書類を聞いて帰ったが、その後は相談がなかった。
北海道警の調べでは、姉妹の部屋に求職に関するメモがあった。姉とみられる遺体の死因は脳内血腫。姉は3年前に脳外科を受診した記録があり、体調不良を自覚しつつ職探しをしていた可能性がある。区内の民間障害者施設によると、姉は約1年前に妹の通所の相談に来たが、決まらないまま連絡が途絶えたという。
一方、妹とみられる遺体の死因は凍死で、死後5日~2週間。料金滞納のためガスは11月末に止められており、室内は冷え込んでいたとみられる。
姉妹に近所付き合いはなく、地元町内会長の本田鉄男さん(66)は「マンションが町内会に加盟していれば回覧板で変化に気づけたが、非常に残念。せめて市役所から知的障害者がいるとの情報があれば対応できたのだが」と話す。
ただ市保健福祉局の担当者は「障害を知られたくない人もおり、情報を一元的に出すのは難しい」と話す。民生委員の巡回は高齢者宅に限られ、災害時の要援護者のリストアップも、希望者だけを登録する仕組みだ。
札幌白石署によると、昨年12月15日に家賃滞納分の振り込みがあり、それから数日内に姉が急死したとみられる。同20日に「111」など複数の発信記録が姉の携帯電話にあった。残された妹が110番など何らかのSOSを出そうとしたのかもしれない
1年半前から3回も申請してもまだ降りなかったんですね。障害者年金だけではやっていけないでしょう、生活保護は急を要したでしょうに、いくらなんでも時間かかりすぎです。既に3年前に脳外科を患った身での職探し。1年半もよく苦しい生活に耐えることができたと思います。
でも日本ではこれが常態化しています。
徳岡弁護士は
こちらで、今や生活保護は窓口でそもそも申請をあきらめさせる「北九州方式」が常識、この姉妹にも生活保護申請をさせなかったのではないかという疑念を抱いていらっしゃいます。
日本では援助は上に手厚く、下に行けば行くほど捨て置かれます。
たとえば、
このニュースのように、東電には一兆円ものお金がポンと差し出されるのですが、福島の子どもの医療費無料化に必要な100億円は財政難だから出せないんだそうです。
ちなみに民主党は162億円もの政党助成金を税金から労せずしてもらえますが、同じく税金から出る被災地の南相馬市の生活保護は、義援金をもらうと収入とみなされ打ち切られてしまうという血も涙もない仕打ちを受けています。
そしてこの姉妹のように障害や病を抱えた一番弱い立場の人間は命を落とすことがもう珍しくなくなってきました・・でもちょっと考えてみてください。この姉妹のような境遇の人が憲法25条のいう「健康で文化的な最低限度の生活」はおろか、生命すら維持できず死んでしまうのが珍しくない国って、果たして先進国と言えるのでしょうか?
日本にいると、だんだんこんな事態にも慣れてきてしまいそうですが、これは異常なことなんだと毎回声を大にして言わなければいけないと思います。
生活保護について徳岡弁護士が3つの誤解について述べていらっしゃいます。詳細はリンク先で読んでいただくとして、ここではその3つの誤解を抜粋させていただきましょう
◆Everyone says I love you !
姉は病死 妹は凍死 生活保護申請も出来ずに逝った姉妹 生活保護に関する3つの誤解
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/6bc6a4a48d88a0649a8f35c01657642aより
1.生活保護とは、生活困窮者に対し、憲法25条1項で保障される生存権、すなわち『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』を公費で保障する制度です。
これは、人が人たるに値する生活をするための、社会の最後のセーフティネットです。これがなければ、我々はこの生きづらい世の中で安全網なしに空中ブランコするように生きなければなりません。
冒頭の本にあるように生活保護が権利であり、お上から頂くものではないのだということが、生活保護に関する第1の誤解です。
2.生活保護は福祉事務所に申請して認められれば、食費や光熱費などの生活費、家賃などが支給されるほか、医療費は全額を公費から出してもらえることになっていますが、この申請自体をさせない、受理しないという窓口対応が全国で問題になっているのです。
生活保護を受給する条件がそろっている人が役所に行けばすぐに生活保護を受けられるのだろうというのが、下の本で書かれているように、生活保護に関する第2の誤解です。
3.たとえば、暴力団員が生活保護を不正受給していたことなどがことさら取り上げられますが、200万人の受給者の中のほんの一握りの不心得者(1000人のうち数人程度と言われている)をクローズアップして、生活保護全体が悪用されているなどと言うべきではありません。
また、医療扶助制度を悪用して、大阪などでは、多くの医療機関を受診して大量の向精神薬を入手した受給者が、インターネットで薬を転売したり、奈良の病院が、架空の治療や不必要な手術で診療報酬を不正受給した事件なども取り上げられます。
確かに、2009年度の実績を見ると、受給者の医療費である『医療扶助』は保護費全体の48・3%でした。過去10年の実績を見ても、医療費は50%前後で推移してい ます。この抑制は巨額の財政赤字を抱える日本では急務です。
しかし、そもそも受給者の3割以上が病気や障害のあるから働けずに生活保護になってしまった方々で、高齢者も4割を超えているので、当然、医療機関にかかることが多い傾向にあるのです。
生活保護では自己負担がないだけに、安易な過剰受診や不必要な検査が横行しているという指摘もあります。
確かに、厚労省が2009年度の受給者の受診状況を調べたところ、2日に1回以上の高頻度で、3か月以上続けて通院した『頻回通院者』が全国で1万8217人で、うち3874人が、自治体に『過剰受診』と判断され指導を受けました。
けれども、全体で200万人中2万人以下、必要があって何度も病院通いする方を含めてもわずか1%未満の話なのです。いかに、日本の生活保護の方々が制度の範囲内で慎ましく生きておられるかがわかります。
下の本に書いてあるように、生活保護受給者のかなりの部分が制度を悪用しているという印象は全く違います。これが、生活保護に関する第3の誤解です。
生活保護はお恵みではなく、生存権という憲法上の権利なのだということがしっかり理解されていないとは、またしても日本の法教育、人権教育の貧しさを嘆かなくてはなりません(諸悪の根源は貧しい人権教育、法教育にあるのだという気がします)
今回の痛ましい事件についてはさすがに「可哀想、こういう人にこそ生活保護を」という同情の声が多く上がりました。
生活保護については色々書かねばならないことがありますが、こういう声を聞いて思ったのは、
実際の生活保護受給者は今回多くの人々が同情したこの姉妹のような境遇の人がほとんどなのであり、
普段、生活保護受給者があたかもみな不正受給者か、あるいは「障がいに甘えてる(って酷い言いぐさだと思いますが)」怠け者のように蔑視し税金泥棒呼ばわりすることは、この姉妹のような境遇の人々を誹謗していることなのだと自覚してほしいということです。
ですから、この姉妹の死がやりきれないと思うのだったら、タダでさえ生活保護必要な人でも申請をはじかれてしまう生活保護を、税金の無駄扱いして削減しろという主張を考え直してみて欲しいのです。
「可哀想だったね」だけではいつか忘れられ、また生活保護が受けられずに死んでいく人が新聞記事に載ることでしょう。
北九州で生活保護を受けられず「おにぎりが食べたい」と書き残して餓死した人が出てから、もう何人も亡くなっているのです。
かといって、役所の対応だけを責めても始まりません。豊富な財源があれば役所だって門前払いばかりしないでしょう。社会保障費が削減されてることが一番責められるべき事なのです。税金ってそもそも社会保障のような再分配を行うことを目的に集められていると言っても過言ではないのですから。
最後に、徳岡弁護士がエントリー内で紹介されていた本を私もメモしておきましょう
・
「ヤミの北九州方式」を糾す―国のモデルとしての棄民政策・
現代の貧困―ワーキングプア/ホームレス/生活保護 (ちくま新書) [新書]
岩田 正美 (著)・
生活保護「改革」ここが焦点だ! [単行本] あけび書房
尾藤 廣喜 (著), 吉永 純 (著), 小久保 哲郎 (著), 生活保護問題対策全国会議 (監修)生活保護についてもう少し書きたいと思います。
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