大阪市「職員の政治的行為の制限に関する条例案」批判に対する批判に対する批判をメモ

こちらでご紹介したバカ殿作違憲条例である政治規制条例案ですが、私のエントリ－よりはるかにわかりやすく書いてくださってるのが、最近愛読している「大阪弁で世情を語る」です。

◆大阪弁で世情を語る
政治活動でクビなんか、でけへんで…大阪市
http://blogs.yahoo.co.jp/tubuyaki2594/5653983.html

そして、この政治規制条例案のどこが悪いのか、アメリカだってハッチ法で公務員の政治活動の自由を包括的に規制しているではないか、という批判があるそうですが、その批判にこれまた見事に応えてくださってます。全文お持ち帰り、メモしておきます。

公務員にも私的政治活動の自由は当然ある
http://blogs.yahoo.co.jp/tubuyaki2594/5665034.html#

前回のエントリーで、ぼくが紹介したブログがあるんですけど↓

『上脇博之　ある憲法研究者の情報発信の場』
「橋下・大阪市長が市職員の政治活動を懲戒免職しても違憲！」
http://blog.livedoor.jp/nihonkokukenpou/archives/51673312.html

このブログに噛みついてる変なオッサンがいてましてね、

（言うときますけど、以下のブログは読む価値もないですよ）

『ＢＬＯＧＯＳ』
「「公務時間外政治活動禁止は非民主国家」の根拠は？―上脇先生への質問」

この中で、変なオッサンが何をゆうてたかというと、

アメリカは日本よりもっと包括的に公務員の政治活動を制限して法（通称「ハッチ法」）があるから

それやったら、アメリカは非民主国家になるんか？…と、難癖つけてましたわ。

そんで、自分の言い分の参照先として英語のハッチ法ガイドライン？にリンクしててんけど

そんなリンク先紹介されて、わかるヤツいったい何人いてんねん！　…と

俺は思わずツッコミそうになったで。

とにかく、そういうええ加減なオッサンが書いてるブログなんか無視したらええねんけど

もしかして、この変なオッサンのブログを真に受けてる人がいてたら困るので

アメリカで公務員の政治活動を制限する根拠法となってるハッチ法の「現在の内容」を中心に、

再度、公務員の政治活動の制限について書いてみるわな。



日本の国家公務員は政治活動を極めて包括的に制限されています。

（国家公務員法１０２条１項、人事院規則１４－７において、私的活動まで原則禁止）

これらの法が制定されたのは、まだ日本がアメリカに占領されてた時代の1949年です。

日本における労働運動の高まり（＝左翼の伸長）に危機感を覚えた、

ＧＨＱ最高司令官マッカーサーは、日本政府に対して

当時、左翼が多かった公務員の政治活動の制限（≒禁止）の強化を指示し、

当時のアメリカで公務員に対して包括的な政治活動の制限を定めていた通称「ハッチ法」を元に、

それに類似する国家公務員法１０２条１項が定められたのでした。


ハッチ法もそれを元にした日本の法も、なぜ公務員の政治活動を制限するのかと言えば

それは公権力（を行使する公務員）によって、民意が歪められることを防ぐためです。

とすれば、公務を利用した政治活動を制限すれば足りるのに、

日本の国家公務員法１０２条１項及び、人事院規則１４－７は

国家公務員の職権や地位利用と関係しない場面、あるいは

勤務時間外の活動まで包括的に規制しており、違憲であることは明白です。

なぜなら、政治活動の自由は民主主義社会にとって最も大切な基本的権利であり

その自由の制限に対しては必要最小限の制限しか許されないところ

これらの法による包括的制限は、必要最小限度の制限を超えているからです。


では、日本の法の元になったアメリカのハッチ法はその後どうなったのかというと、

1993年に大幅な改正が行われ、以下のようになりました。　（重要な条文のみ記載します）

7323（政治活動の許容と禁止）
(a)職員は、政治の運営または政治的宣伝に積極的に参加することができる。
但し、次の行為をしてはならない。
(1)選挙に介入する目的また選挙の結果に影響を及ぼす目的をもって
自己の権限または影響力を行使すること。
(2)政治献金を勧誘または受領すること。但し、所属する連邦職員組合の機関が
連邦選挙運動法に従って行う政治献金のために、
部下でない職員との関係で勧誘または受領することは妨げない。
(3)政党を代表して公職に立候補すること
(4)その所属する機関に補償、補助金、契約、許認可を申請している私人、
またはその機関から監査、検査、執行を受けている私人に対し、
政治活動を勧誘または抑制すること。

7324（公務中の政治活動の禁止）
(a)職員は、次の場合には政治活動をしてはならない。
(1)公務に従事しているとき。
(2)合衆国政府の公務のために用いられている部屋または建物の中にいるとき。
(3)制服または職員たることを示す記章を身につけているとき。
(4)合衆国またはその機関が所有または賃借している乗り物を使用しているとき。

（広島法学20巻2号1996年「アメリカ公務員法における政治的行為の制限・佐伯祐二」より）

まず、冒頭で、公務員にも政治活動の自由がある…と、高らかに宣言した上で、

公務を通じて民意を歪められることがないように（→これが立法趣旨）、

次の行為は禁止…と、制限される行為を具体的に挙げています。

禁止されている行為はいずれも、公権力を行使する場面、あるいは、

職場の上下関係や許認可をめぐる関係など、職権及び地位利用の場面での禁止に留まっており

公務員が私的な場面で行う政治活動については制限がなくなっています。


紹介した論文の中でも、著者が

「ハッチ法改正…の最大の特徴は、～職員は、勤務中または勤務中の外観を呈しているときを除き、原則として政治活動に制約を受けない。この結果、適法な（政治）活動領域が大幅に拡げられたことはいうまでもない。」

…と解説されていて、さらに、ハッチ法はそのガイドラインにおいて

「商務省の職員は、公務出張中、朝の時間帯に年次有給休暇を取り、
政党の公職候補者のための朝食会でスピーチをすることができる」

「職員は、自己所有の車のバンパーに政党支持のステッカーを貼り…
合衆国政府機関の駐車場に駐車できる」

「職員は、勤務時間中でなければ、所属する職員組合支部の事務所で
政治活動を行うことができる。その事務所が合衆国政府機関から
職員組合に提供されている場合でも同様である」

「政党を代表する公職選挙の候補者となった者の配偶者たる職員は、
配偶者の資金集めパーティーに出席し、献金の受け手の列に並び…
配偶者への投票を呼びかけることができる」

…と、ご丁寧にできることを細かく例示までしています。


このように、公務員の政治活動の自由を包括的に制限する日本の法の元になった

アメリカのハッチ法は、その内容を大幅に変え、

公務員であっても政治活動の自由を有することが原則であり、

制限されるのは公務や職権、地位を利用する場面のみ…という、まっとうな法になったのです。



どうでしょう？

冒頭で紹介したブログの指摘がいかに的はずれであるか、ご理解頂けたでしょうか…