福井事件再審開始決定と検察の異議申し立てに改めて再審制度の見直しを希望します

先日25年間無実を訴え続けてきた福井事件にやっと再審開始決定が出ましたが、案の定検察は異議申し立てをしてきました。
東電OL殺人事件も近いうちに再審開始決定が出るでしょう。
しかし残念ながら検察がそれに異議申立てするのも間違いないでしょう。

昨日の報道ステーションで東電OL事件のゴビンダさんが獄中から書いた手紙が紹介されました。
「私が無実である証拠が明らかになったのにどうしてまだ刑務所にいなくてはいけないのか」

そうなのです、日本では再審開始決定が出ても、それが確定して再審が始まり、最終的に無罪判決が出るまでには更に何年もかかります。
有名な再審無罪事件を見てみますと、再審開始決定が出てから最終的に無罪判決が出るまでにかかった時間は、逮捕起訴されてから有罪が確定（大抵は最高裁まで行きます）するまでにかかった時間と大差ないのです。
（例外的に氷見事件と足利事件は検察も観念して、さっさと再審を終わらせることを選びました）

免田事件　起訴　1949年1月　死刑確定　1952年1月（3年）
　　　　　再審開始決定　1979年9月　無罪判決　1983年7月（3年10ヶ月）

財田川事件　起訴　1950年8月　死刑確定　1957年1月（6年3ヶ月）
　　　　　再審開始決定　1976年10月　無罪判決　1984年3月（5年5ヶ月）

松山事件　起訴　1955年12月　死刑確定　1960年11月（4年9ヶ月）
　　　　　再審開始決定　1979年12月　　無罪判決　1984年7月（4年7ヶ月）

島田事件　起訴　1954年6月　　死刑確定　1960年12月（6年6ヶ月）　
　　　　　再審開始決定　1986年5月　無罪判決　1989年1月（3年8ヶ月）

徳島ラジオ商事件　
　　　　　逮捕　1954年8月　上告断念、懲役14年の刑確定　1958年5月（3年9ヶ月）
　　　　　再審開始決定　1980年12月　無罪判決　1985年7月（4年7ヶ月）

布川事件　起訴　1967年12月　　無期懲役確定　1978年7月（11年7ヶ月）
　　　　　再審開始決定　2005年9月　無罪判決　2011年5月（5年8ヶ月）

名張毒葡萄酒事件は2005年4月に開始決定が出ましたが、6年たった今でも開始するかどうか確定しません。

裁判員裁判になって、一審は裁判が開始されてほんの数回の裁判で有罪が決まるようになりました。
かたや再審は無実が明らかであってもなお、長い年月がかかります。
この不均衡は一体なんなんだろうと思わざるをえません。

現在の再審には次の二つの問題点があると思います。
１．「疑わしきは被告人の利益に」の鉄則は再審にも適用されるという白鳥決定が守られていないことによって、再審の扉が固く閉ざされ、開始決定が出るまでに長い月日がかかってしまう。
２．再審開始決定が出ても検察が異議申し立てできるために、開始が確定するまでに更に時間がかかる。

福井事件も２のせいで再審開始が確定するまでまだ時間がかかってしまいます。
この問題については以前こちらで書いていますが、再度書いておきたいと思います。

再審開始決定が出たということは、確定した有罪判決に相当程度疑いがある、と裁判所が判断したと言うことです。
それならば検察は再審開始すること自体に文句付けるのではなく、再び有罪か無罪かを審理する再審公判の中で堂々と主張を尽くせばよいのです。
従って、他の決定とは異なり、再審開始決定に対しては検察は異議申し立てできないように法改正すべきだと思うのです。

自分はやってない。こんなに単純で簡単な事実をわかってもらうのに、一度しかない自分の人生の大半を費やさなくてはならない悔しさ虚しさは、はかり知れません。

福井事件再審開始決定に検察が異議申し立てをしたというニュースを聞いて、冤罪に苦しむ人を救おうという目線で作られていない現在の再審制度を見直すべきだと、再度訴えたいと思います。