遅くなって申し訳ありません。「橋下氏はどんな実績を残したのか検証してみよう」の2回目です。
1回目はこちら
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橋下氏はどんな実績を残したのか検証してみよう~(1)府の財政は黒字に?いいえ、赤字は過去最高に悪化今回は(1)に続いてWTC(咲洲庁舎、別名・新バカ殿城)問題を検証します。
WTCを橋下氏が買い付けるまでの経緯は以下の通りです。
WTCは大阪市と民間が出資した第三セクターが貿易拠点とすべく1200億円をかけて1995年に完成させた高層ビルですが、着工後にバブルがはじけたためテナントの家賃収入のあてが外れてたちまち赤字に陥り、「バブルの塔」と呼ばれました。
2004年には金融機関との間で特定調停が成立し経営再建がすすめられるものの(一度目の破産)、2009年には会社更生法の適用を申請し、結局二度目の破産。
既に、老朽化する大阪府庁舎は新庁舎を建てずに耐震補強工事を施すことが前太田府政時代に決まっていたのですが、橋下氏はそれをとりやめ、このWTCを安く買って新庁舎(やがて都庁舎)にすることを思いつきました。
しかし府議会はこれに待ったをかけました。
WTCはアクセスが悪い、防災対策に問題有り、周辺の開発計画の頓挫など、新庁舎として使うには多くの難点が合ったからです。
橋下氏は2009年3月に府庁をWTCに移転する条例案と予算案を府議会に提出しましたが、否決されました。
(これが、議会を自分の勢力で占めて言いなりにさせるために大阪維新の怪を結成するきっかけになったと思われます。)
その後橋下氏は2009年9月再び府庁移転の条例案と予算案を府議会に提出、条例案は通らなかったものの(三分の二の賛成が必要なので過半数では足りなかった)予算案(過半数でOK)は通ったため、WTCの買い取りが実現したのです。
買い取り額は85億円、随分とお得なように思えました。
ところが3/11に東日本大震災がおこりました。大阪も震度3でしたが揺れました。ですがたった震度3で
「エレベーター全26基が緊急停止し、うち4基に男性5人が5時間近く閉じこめられ、エレベーターを支えるワイヤロープが絡まる、地震発生から丸1日が過ぎた12日夜の時点でも8基が復旧しないなど耐震性への不安が露呈」しました(wikipedhiaより抜粋)
超高層ビルに深刻な被害をもたらす「長周期地震動」のせいと見られます。
専門家は次のように一刀両断しました。
専門家との意見交換会で、防災拠点の複数化の必要性について、とうとうと持論を展開していた橋下知事の顔色が変わったのは、名古屋大の福和伸夫教授(建築学)が、咲洲(さきしま)庁舎について「倒壊の可能性も検討すべきだ」と発言したときだった。
福和教授が取り上げたのは、高さ256メートルの咲洲庁舎と、人工島・咲洲の固有周期がいずれも約6~7秒で一致するために共振してしまう―との問題。
3月11日の東日本大震災で、咲洲庁舎は、震度3だったにも関わらず、10分間揺れが継続し、壁など計360カ所が損傷、最上階付近の振幅は約2・7メートルに達した。東海・東南海・南海地震が起きた場合、揺れは約5倍の12メートル以上になる可能性がある。
橋下知事は「(防災拠点が)下層階なら大丈夫ですか」と質問したが、福和教授は「上層階がこれだけ激しく揺れれば下層階も使えない」と即答した。
http://www.sankei-kansai.com/2011/08/19/20110819-056715.php
さすがにこれでは府庁移転を断念せざるをえません。
しかし全面移転は断念したものの、まだ未練がましく部分移転して本庁舎との併用を主張しています。どうやら咲洲に通わねばならない府の職員の安全確保など二の次のようです。
移転断念に伴う損失額は購入金額の85億にとどまりません。耐震工事に130億かかるとも言われています。
そして大阪府の所有物である以上、府が維持費を出し続けねばなりません。
橋下氏の言うように併用を続けた場合、今後30年にかかる経費はその額なんと1200億円にのぼるという府の試算が出ました。
ああ、典型的な安物買いの銭失い・・・
橋下知事の宿願…格安咲洲庁舎は無駄の象徴に? | 読売新聞(2011/08/19 リンク切れ)
(引用開始)
橋下知事は、1193億円かけて建設されたWTCを「85億円で買える」安さを強調してきたが、耐震対策に130億〜18億円の追加工事を迫られている。老朽化した現庁舎と並行して補強費や維持費を投入することになれば、「格安が大誤算になる」(府幹部)との懸念も出ている。
(引用ここまで)
橋下知事推進の湾岸庁舎、併存で負担増1200億円 府が試算
2011.9.6 13:47
大阪府の橋下徹知事が、本庁舎(大阪市中央区)の咲洲(さきしま)庁舎(住之江区、旧WTC)への全面移転を断念した問題で、両庁舎を併用した場合に今後30年間の経費が約1202億円に上ることが6日、府の試算で分かった。咲洲庁舎を早期に売却、本庁舎のある大手前に集約するほど府の費用負担は少なくなるとしており、11月27日に想定される大阪市長と知事のダブル選を前に、橋下知事の責任も問われそうだ。
府の試算では、両庁舎を併用した場合の財政負担は今後30年で約1202億円。東日本大震災で咲洲庁舎に被害が出た長周期地震動に対応するための改修費(約45億円)に加え、咲洲の維持管理費は465億円と、大手前(280億円)の約1.6倍に上る。
一方、咲洲庁舎を平成32年末に売却した場合の財政負担は、咲洲庁舎の売却収入を加算しなくても約1057億円。担当部局は、売却が遅れるほど管理費が増大すると指摘している。
WTC購入を検討した平成21年9月当時、府は庁舎を咲洲に全面移転した場合(約409億円)の方が、本庁舎を耐震補強した場合(約512億円)より「安い」と試算。橋下知事は咲洲全面移転を提唱、現在は約2000人の職員が勤務している。
だが、8月に専門家が巨大地震の際の安全性に疑問を示し、橋下知事は咲洲への全面移転を断念した。
橋下知事は6日、報道陣に対し「重要なのは購入時の判断がどうだったか。自然災害は予測不可能で、当時最善の判断をしたのであれば、理解いただきたい」と述べた。
「重要なのは購入時の判断がどうだったか。自然災害は予測不可能で、当時最善の判断をしたのであれば、理解いただきたい」
などと橋下氏は弁解しますが、これだけの物を購入するなら、かねてから疑問視されていた安全性を確かめてから買うべきなのは当然です。それを怠り、府議会の反対を押し切って購入すると決めたのは橋下氏なのですから、当然責めは負わねばなりません。
しかも府議会では共産党が長周期地震動危険性について追及していました。既に3/11で出た深刻な被害は予見されていたのです。
◆岩下信幸の金波銀波な日々
WTCビルの防災機能を過小評価し続けてきた橋下知事
(引用開始)
こうした旧WTCビルの持つ耐震性の低さについて、日本共産党大阪府会議員団は橋下知事が庁舎移転を表明した時から、採算性の問題と合わせ、防災上の問題点も繰り返し指摘してきた。2009年2月府議会では、日本共産党小松久議員とのやりとりの中で、橋下知事は次のように答弁している。
小松久議員 はじめに、利便性と防災の拠点という点です。JR大阪、天王寺、新大阪の各駅、なんば、伊丹空港、どれをとっても、大手前の方が便利です。府民の所要時間も現庁舎の方が短くて済みます。知事はこの事実を認めますか。
また、WTCは耐震基準に照らして、設計した会社の調査ですら、これまでの1.5倍の強度が7~17階部分で必要なことが明らかになりました。耐震補強によって直接の被害はなくなると言いますが、本当でしょうか。
長周期地震動は必ず建物内の机や事務機器などを大きく動かします。各種実験では、コピー機などが、窓ガラスを直撃する、すさまじい光景が見られています。西日本一高いビルで、安全のため事務機器などを固定する予算すら見積もられていません。
さらに、大型台風や大地震のとき第3号配備が発令され、職員の全員配備となりますが、大阪湾の先端にあるWTCに徒歩で2時間以内に集まることができるのは80人しかいません。自転車などで2時間以内に660人集まれると言いますが、災害の中で2時間も走れるのか。橋が使えるのかなど、たくさんの疑問があります。
(中略)
小松久議員 二点です。消防、防災等関係機関へのアクセスがどちらがすぐれているか。二点目は、東南海・南海地震に対してどちらが危険性は少ないか。一点目、答えてないですよ。
橋下徹知事 消防や警察機関とのアクセスは、大手前のほうがもちろんこれは近いです。あと、リスクについては、それはもうどちらかわからないということです。
また、小松議員は東北沖大地震の直前、今年の2月府議会においても、3月2日に「差し迫った東海・東南海・南海地震など防災面、大手前の歴史的文化的価値を生かすという側面でも現庁舎の耐震改修が優れています。旧WTCビルへの府庁舎移転は断念し、旧WTCビルは売却し、大手前への府庁舎機能の集約を図るべきだと考えますが、どうですか」と知事に迫っている。
(引用ここまで)
これでどの口が「当時最善の判断をした」などと言うのでしょうか?
橋下氏は、「法的な責任はまったくないと思っている」「判断はベストだった」「後の予測できない事象の全責任を取れというのでは、政治なんて一切できない」などと言っていますが開き直りもいいところです。
【追記】
2割しかいない少数派の府民さんからいただいたコメントをここで追記させていただきます。以前にもいただいていた情報ですが過去のコメントから探し出せずにいたので助かりました。2割しかいない少数派の府民さん、いつもありがとうございます。
>「後の予測できない事象の全責任を取れというのでは、政治なんて一切できない」
まったくの嘘ですね。何度も申し訳ないですが、またあげさせていただきます。
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20090204/530166/
大阪WTCに長周期地震被害のおそれ、対策に約18億円
2009/02/04
大阪府は、庁舎移転を検討している「大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC)」について、ゆっくりとした揺れが長時間にわたって続く長周期地震による影響を調査した結果、構造体の梁や設備に損傷が生じる可能性があると発表した。災害時の拠点施設とするためには、ダンパーの設置などによる対策工事が必要になる。その費用として、18億5000万円を見込む。
予測できないどころか、大阪府自身が長周期振動による被災の可能性を購入前に認識していたのです。このときの大阪府知事が誰であったかは言うまでもないでしょう。
予見されていた危機を無視して血税を無駄遣いした責任を取るべきは誰であるか、論ずるまでもないでしょうね。
(追記ここまで)
現在、大金をつぎ込んだ咲洲庁舎がどんな状態か、こちらの動画をご覧ください。
現在の庁舎動画
WTC ハシモトドオリ 2
ああ、なんてむなしく消えた府民の税金・・・モトドオリにしてチョーダイ
購入金額85億と耐震補強工事の130億、これだけあったら、削った福祉、医療、教育関連予算を埋め合わせてもおつりが来るんではないですか?
それだけではなく、これから先も府の所有物である以上、延々と億単位の出費だけがかさむのです。
橋下氏の好きな言葉「これが民間だったら」・・・こんな社長は退職金没収の上、追放ですね
専門家の意見も聞かず府議会の反対も押しきったのですからまさしく「自己責任」
橋下氏はきっちり責任を取らねばならないはずです。
ところが知事職を任期途中でトンズラ、そして市長選ではWTCの件に関しては一切口をつぐんでいます。
橋下氏はこの市長選の街頭演説で「言ったことは実行する橋下にまかせてくれ!」と叫んでいたそうですが、
だったら、咲洲庁舎問題、頬被りしてないで責任取りなさい!
※鍵コメントでのご指摘をいただいて、事実に誤りがあった部分を訂正いたしました
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