被災地で救援活動をする自衛隊の人々、海外から駆けつけてくれた救援隊には頭が下がります。
特に、原発の現場で冷却作業を続ける作業員の方々にはひたすら頭を垂れるよりほかありません。死を覚悟しなくてはこんな仕事はできないでしょう。
彼らは危険値を超えている放射線が充満し、停電で真っ暗な中を、懐中電灯だけをたよりに海水を注入しています。東電は現場に残った50人は誰なのかを明らかにしていないため、ニューヨークタイムズは彼らを「フェースレス50(顔のない50人)」と呼び、その自己犠牲精神を絶賛しているそうです(msn産経ニュース
自己犠牲50人「最後の防御」 米メディアが原発作業員を絶賛2011.3.16 19:11 より)
しかしこれをくれぐれも東電という「会社」の美談にしないで欲しいと強く思います。
50人の作業員は、地震国に原発を作るべきでないという有識者や地元住民の批判を封殺して原発建設をごり押しした会社のエゴの尻拭いをさせられているのです。彼らは電力会社の強欲の犠牲者です。
社長自ら出てきて現場で陣頭指揮でもとったらどうかと思うのですが、お偉いさんはいつでも必ず安全な場所にいて、犠牲を強いられるのは末端の社員ばかりです。
(東電が今後彼らに対する責任を果たすのを監視するためにも誰が残ったのかを隠すのは良くないと思います。)
フェースレス50に絶賛を惜しむことはありません。
しかし同時に、従前からの警告を無視し続け、このような危機的事態に陥っても尚も不都合な事実を隠蔽するかのような態度をとりつづける電力会社に対する批判を緩めることもありません。
3号機には毒性の強いプルトニウムがあり、そこからは蒸気が出ています。
前のエントリーでも記載しておきましたが、東京都、神奈川でも奮迅からわずかにセシウムが検出されました。
今朝の中日新聞の一面トップ見出しは「使用済み燃料冷却不能」
これは最悪の事態は時間の問題と覚悟せねばならないということを意味するのではないでしょうか?
菅氏自身、昨日の段階で「今後さらなる放射性物質漏えい危険高まっている」、そして今日は「最悪なら東日本はつぶれることも想定しなければならない」と発言しています。
なのに相変わらず半径20~30キロは屋内待機でそれ以上は何の指示も無しとは、政府や東電の危機意識ってどれだけ麻痺しているのでしょうか。
アメリカだって半径80キロ以内の米国人に待避を指示したというのに、甚大すぎる危機の前にもはや政府と東電は思考停止してしまったとしか思えません。
政府は「放射線はレントゲンより低い、安全な数値である」等々となだめようと必死です。
しかし檜原転石さんからもコメントをいただきましたが、この安全とは、あくまでも急激に異常が出ない、すぐには死なない、という意味でしかありません。
普通の人はレントゲンはせいぜい1年に数えるほどしか取りませんが、もしずっと24時間何日間もレントゲンの放射線を浴び続けたら非常に危険であることは誰だって分かります。
周辺住民はこれからも通常より高い放射線を日常的に継続して浴び続けなければならないのですから、健康に重大な影響を及ぼすのはわかりきったことではないですか。
放射線入りの水道水も一口二口なら害はなくても、原発の周辺住民はずっとその水を使い続けなくてはならないのです。
もっと広範囲の住民に一刻も早い避難指示を出さねば。
もうガソリンも品薄だし交通機関も正常ではないでしょうから避難中に多少の被爆は避けられないかもしれません。
避難所の確保も容易ではないかも知れません。災害対策費も仕分けしてしまいましたし。
遅きに失するかもしれませんが、最悪の事態が現実的可能性を帯びてきているのですから、このまま屋内待機指示では
政府は住民を見殺しにする気だと言っても過言ではないように思います。
(公開後の追記:
不満と恐怖地元限界 物資ストップ「見殺しに等しい」河北新報 3月17日(木)6時13分配信
言われたとおりにしているのに国からの情報はないし物資も手に入らない【南相馬市長怒りのインタビュー】)
ところで、政府のインドネシアに対する原発推進技術援助の方針は批判されていましたが、これでも政府はまだ「安全でクリーンなエネルギーです」とほほえみながら原発を輸出するつもりでしょうか?
【公開後の追記】
【津山恵子のアメリカ最新事情】地震大国なのになぜ 米市民が日本に不信感
ウォール・ストリート・ジャーナル 3月16日(水)10時52分配信
東北関東大震災後、福島原発問題の状況を追ってきたが、日本という国は、これほどの震災に遭っても現状を受け止め、インターネットなどを駆使して情報を共有し助け合い、節電にも最大限協力している立派な国民を有するのに、政府と東京電力の対応は「最悪」といわざるを得ない。
「津波の二次災害や余震は、覚悟の上だが、放射能に汚染されるのは、地震よりも恐ろしい」
ニューヨークから、被災地に救援に向かうボランティアや非営利団体(NPO)関係者からこうした声が聞かれる。こうした声が上がるのは、日本から伝わってくる東電や政府の情報開示、さらに対応が十分ではないと米市民やメディアが感じている背景がある。
福島原発では、1号機の爆発事故に始まり、2号機、3号機で水素爆発、そして4号機で火災と、世界の原発事故史上、類を見ない深刻な事態に陥っている。原発のニュースは、地震発生の直後から、世界中の注目を浴びている。
しかし、菅直人首相を本部長とする政府と東電の「福島原発事故対策統合連絡本部」が設置されたのは、地震発生から5日目の15日。当初も、東京電力から首相官邸へ、福島第一原発の最初の爆発事故の連絡が遅れた。
さらに、政府当局、東電ともに、爆発事故の詳細を明らかにせず、放射性物質の漏出している可能性をなかなか認めたがらなかった。
しかも、原子炉冷却のための海水の使用は米国の関係者を驚かせた。「海水の注入など聞いたこともない、よほどの緊急事態」(米専門家)という反応だ。
この間、米国から救援を計画していたボランティア関係者は、「日本からの情報はあてにならない」として、CNNや英 BBC、そして米海軍の動きを見ながら、準備を進めている。
その関係者にショックを与えたのが、米海軍第7艦隊空母ロナルド・レーガンの動きだ。ロナルド・レーガンは福島原発の沖160キロの海域で活動していた。しかし、仙台市付近で救援活動を実施し、空母に戻ったヘリコプターの乗務員から「低レベル放射性物質」が検出された。このため、第7艦隊は、ロナルド・レーガンを福島原発の風下から移動させた。
現在、住民が避難しているのは1号機から半径20キロ以内の地域だが、空母は160キロ地点にいても、風下から「避難」したという。しかも、ヘリコプター乗務員から低レベルの放射性物質が検出されたということは、大気中に放射性物質が散乱しているという証拠だ。
米原子力規制委員会(NRC)は12日、すでに、原子炉の専門家二人を日本に派遣。また、オバマ大統領は11日の記者会見で、エネルギー長官に福島原発の経過を注意深く見守り、日本当局と連絡を取り合うよう、指示をしたと発表した。
米市民の問題意識はこうだ。
放射性物質の漏洩の可能性があるという時点で、なぜもっと広範囲の地域住民を避難させないのか。放射性物質の漏出の可能性があるということを、ボランティアなどの渡航者になぜ知らせないのか、ということだ。
15日の記者会見で、菅直人首相は「放射性物質の漏出の危険が高まっている」とし、枝野官房長官も「原発敷地内の放射性物質のレベルは、身体に影響のある数値であることは間違いない」と認めた。たが、この発言は、12日にも「警戒情報」として発表されるべきだったのではないか。また、東電からも住民にもっと警鐘を鳴らすべきだったのではないか。
米国では1979年、ペンシルベニア州スリーマイル島の原発事故が起きて以来、原発建設を30年も見合わせている。オバマ政権は、原発がクリーンエネルギーの代表として、建設再開を打ち出していただけに、福島原発の状況にかなりの関心を寄せている。
それだけに、テレビニュースなどに出演する専門家たちは首をひねる。
「地震大国の日本でなぜ、政府や電力会社の危機管理の意識が進んでいないのか」
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