やはり「死に神」だった鳩山邦夫氏
- 2011/01/09
- 05:00
鳩山邦夫氏が法相だったときの暴露話です。
◆産経ニュース
鳩山邦夫氏が法相時、宮崎元死刑囚の死刑「執行すべきと指示」明かす
2010.12.30 00:33
幼女4人連続誘拐殺人事件で死刑執行された宮崎勤元死刑囚について、当時法相だった鳩山邦夫氏が、民放の収録番組で「最も凶悪な事案の一つと思うから、宮崎を執行すべきだと思うが、検討しろと私から指示した」と発言していたことが29日、分かった。
毎日放送(大阪)が制作し、29日夜にTBS系列で放送された情報番組で、死刑制度や検察の捜査の在り方などをめぐって国会議員や論客らが議論。鳩山氏の発言部分は今月2日に収録された。
番組の中で鳩山氏は宮崎元死刑囚について「ここまで非人間的というか、悪くなれる人間がいるんだなと。凶悪性にびっくり」「こんなやつ、生かしてたまるかと思う」などと発言。任期中の死刑執行についても「考えてみれば少なかったと反省している。30~40人はしなくてはならなかったと反省している」と述べた。
youtubeはこちら
↓
http://www.youtube.com/watch?v=hOYD_4TC4Xs
鳩山氏のこの発言は、法相だった人間としてあるまじき発言です。
それは死刑に賛成の立場をとろうと反対の立場をとろうと関係なく言えることだと思います。
Ⅰ 通常は法務局からあがってきた死刑執行候補の名簿の中から法務大臣が選ぶという手続をとるのですが、この宮崎勤元死刑囚に関しては、逆に鳩山氏の方から検討を指示しました。
何故そういう異例なことを行ったかといえば、「こんなやつ、生かしてたまるか」という個人的な感情に動かされたから、です。
また、鳩山氏は「そういう感情に駆られなければ死刑執行命令はできない」とも言っています。つまり鳩山氏は、死刑とは個人的感情によって執行するものなのだと言い切っているのです。
しかし鳩山氏が死刑執行するのはあくまでも「法務大臣」としてであって鳩山邦夫個人ではない以上、個人的な怒りの感情にまかせて執行してはならないはずです。
これに対し「感情に駆られて何が悪いの?冤罪でもないんだし、どっちみち死刑にしなくちゃならなかったんだから問題ないじゃない?」という結果無価値論的な開き直りが聞こえそうですが、私的な感情に基づいて法務局に検討しろと指示するのは、法務大臣として「法に則って粛々と職務を行った」とは言えず、到底是認できません。
通常の手続通り法務局から上がってきた名簿の中から選択する最終段階で、ひょっとしたらこういう感情を完全には排除できず、隠れた選択理由の一つとなってしまうかもしれません。しかし法相の立場にあった者なら、その時抱いた個人的感情は絶対に口に出すべきではありません。墓場まで持って行くべきだと思います。それが「法相として職務を行う」ということです。
「今だから言っちゃおうかな、初めていうんだけど」とペラペラしゃべるあたり、さすが、アルカイダの友人の友人だとかCIAにゴチになったとかカミングアウトしちゃう鳩山さんだけのことはあると感じました。
こういう口の軽い人は、守秘義務を伴う職業には向かないかと思われます。
Ⅱ youtubeを見ると
「違法状態なんですよ半年以内に執行しないというのは」「違法状態を解消するために、30~40人はしなくてはならなかった、13人では少なかったと反省している」
と鳩山氏は言っています。
確かに刑事訴訟法475条を一読すれば、法務大臣は死刑判決確定後六ヶ月以内に執行命令を出さねばならないかのようにも読めますが、それは刑訴法475条の趣旨を完全にはき違えていると言わざるをえません。
① まず475条1項は、死刑の執行は、法務大臣の命令による。と定めています。
通常、懲役刑、禁固刑、罰金刑は確定判決だけで即刑の執行がなされます。例えば懲役刑執行のため収監するのに法務大臣の命令なんかいらないのです。
ところが法は、死刑に関してだけは確定判決だけでなく法務大臣の判がないと刑の執行を許可しませんでした。
なぜ、法はわざわざこのような規定を設けたのでしょうか。
それは死刑は執行したら取り返しがつかないからです。よって刑の執行は慎重にも慎重を期すために、法は司法の判断だけでなく行政担当である法務大臣の判断も刑の執行の要件として要求したのです。
もしベルトコンベアのように粛々と死刑が執行されることを法が望んでいるのなら、他の刑罰同様、法務大臣の判なんか要求しなかったでしょう。むしろ、法は鳩山氏の希望するベルトコンベアのようにどんどん執行することは好ましくないと考えていることが伺えるのです。
東京地裁平成10年3月20日の判決文から引用しますと
刑訴法475条1項が特に、「死刑の執行は、法務大臣の命令による。」と規定している趣旨は、死刑執行という事柄の重大に鑑み、特に慎重な態度で挑むため、その指揮を我が国の法務行政事務の最高責任者である法務大臣の命令に係らせたものであると解される。
従って、もっとたくさん執行すべきだった、という鳩山氏の発言は、慎重の上にも慎重を期せという475条1項の趣旨に真っ向から反していると言えます。
この事件は裁判でも犯行の動機は結局解明に至らず、宮崎元死刑囚は多重人格を疑われて精神鑑定も継続中でした。宮崎死刑囚の弁護人は数ヶ月前から再審請求の準備を進めており、5月末には刑を執行しないように鳩山氏に要請していたそうです。
精神鑑定によって再審無罪となる可能性はほとんどないでしょうが、もし多重人格と鑑定で判断されれば、他の法務大臣になったとき「死刑は不当に重いかもしれない、判を押すのはよそうか」との裁量に至る余地もありえます。
「慎重の上にも慎重を期せ」という法の趣旨に従えば、ここはすぐに死刑執行しないで鑑定を続行させようという判断を下すのが法の趣旨に添っていると考えます。
② 次に475条は2項で
前項の命令は、判決確定の日から6箇月以内にこれをしなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であった者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。
と規定しています。
上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出等があれば死刑執行を見合わなければなりませんから、実質六ヶ月をこえることは法の当然の想定範囲内です。
また、「六ヶ月以内にこれをしなければならない」という表現になっていますが、これは六ヶ月以内に必ず判を押せと法が法相に命令した規定だとは解されていません。
先ほどの東京地裁平成10年3月20日によれば、
同項の趣旨は、同条1項の規定を受け、死刑という重大な刑罰の執行に慎重な上にも慎重を期すべき要請と、確定判決を適正かつ迅速に執行すべき要請とを調和する観点から、法務大臣に対し、死刑判決に対する十分な検討を行い、管下の執行関係機関に死刑執行の準備をさせるために必要な期間として、6ヶ月という一応の期限を設定し、その期間内に死刑執行を命ずるべき職務上の義務を課したものと解される。
したがって、同条2項は、それに反したからといって特に違法の問題の生じない規定、すなわち法的拘束力のない訓示規定であると解するのが相当である。
つまり、六ヶ月というのは特に法的に意味のない単なる目安でしかないのであって、もし六ヶ月を超えても違法状態でも好ましくない状態でも何でもないわけです。
従って「違法状態の解消、改善のためもっとたくさん執行すべきだった」なんてのは、およそ法の趣旨から大きく外れまくってると言わざるをえません。
ましてや、死刑について廃止も視野に入れた勉強会が発足し、鳩山法相もそれに参加していたのですから、一定の結論がでるまでは執行を停止してその勉強会に臨むのが筋だったはずです。でなければこんな勉強会など最初から無視してやると舌を出してるも同然、鳩山氏は実に不誠実で不真面目だったわけですね。
Ⅲ 法務大臣になるなら、刑事訴訟法の基礎的な趣旨くらい知っておくべきです。
それを知らない人間が法務大臣についてはいけないし、法務大臣になるならそういう勉強をすることを義務づけるべきだと思います。
法を理解しない人間に、どうして安心して法務大臣をまかせられましょうか。
ところで、鳩山氏に対する以上の批判は、死刑廃止の立場からだけではなく、死刑に賛成の立場からでも成り立つ批判であることにお気づきになったでしょうか?
鳩山氏の発言は死刑に賛成であろうと反対であろうと関係なく、許されないものです。
彼は「死に神」と揶揄されても仕方のない法相失格者として記憶されるべき政治家だと思います。
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