名張毒ぶどう酒事件・4夜連続特番その2~重い扉~(2006年放送)後編
- 2010/12/18
- 10:30
(「重い扉」続き)
************
Ⅳー第五次再審請求、王冠の歯形ー
第五次再審請求では、弁護団は唯一の物証の王冠に着目した。
奥西さんは王冠を歯で噛んで開けたと自白、確定判決も王冠についた傷と奥西さんの歯型(逮捕後、警察で奥西さんが噛んで開けた王冠についた歯型)が一致すると認定した(松倉鑑定)
松倉鑑定は平面写真でのみ鑑定している。この平面写真で判断した松倉鑑定が死刑判決の決め手だった。
この二つの王冠についた傷跡を平面的な写真だけで比べるだけでは不正確だとして、弁護団は日本大学に三次元での解析を依頼した。
その結果、二つの傷は全く一致しないことがわかった。
更に平面写真は、片方の写真の倍率を2倍に拡大し、不正に一致させていた疑いを突き止めた(※証拠の捏造?)
再審開始決定すべき新規、明白な証拠だと弁護団は自信を持った。
しかしこの第五次再審請求もダメだった。
裁判所は歯型鑑定の証明力が低下したことは認めたものの、再審開始は認めなかった。
棄却決定が出たとき、裁判所の前では「(裁判所は)何を見ても(再審開始には)反対するんだ!」という怒号が飛んだ。
Ⅴー第七次再審請求、ニッカリンTー
奥西さんがぶどう酒に入れたとされる農薬のニッカリンTは、40年前に販売終了になっていて手に入らなかった。しかし弁護団はネットを使ってこれを手に入れることに成功した。
ニッカリンTはその製造方法からある不純物が含まれている。それはペーパークロマトグラフにスポットとなって現れる。
しかし他のメーカーの農薬にはこの不純物は含まれていない。
当時警察が飲み残しのぶどう酒を分析したところ、不純物は検出されておらず、ペーパークロマトグラフにスポットは出ていなかった。
これでニッカリンTを入れたという奥西さんの自白に矛盾がでてきた。凶器が自白と食い違うというのは決定的である。
弁護団は更に新証拠に取り組んだ。
栓の構造上、最初に封緘紙を破らないとぶどう酒は開栓できないと思われていた。だから裁判所は封緘紙の破片がみつかった公民館で毒が混入されたと認定したのである。すると公民館で一人になる時間のあった奥西さんが犯人に違いない、いう認定になる。
しかし、もし封緘紙を破らずに開栓できるとなるとストーリーが違ってくる。
弁護団は王冠、瓶、封緘紙等を復元して実験を重ねた。
すると封緘紙を破らなくても開栓でき、手で押さえると簡単に元に戻ることがわかった。
毒物は公民館以外の場所で入れられた可能性を否定できなくなったのである。
また、奥西さんの供述によると、
「ぶどう酒は火ばさみで外蓋をおしあげて封緘紙を破り、内蓋を歯で噛んであけた」
とされている。
しかし内蓋についているの小さな足の折れ曲がり方が、奥西さんの自白通り噛んで蓋を開けると生じない折れ曲がり方であることが弁護団の実験でわかった。
栓抜きのようなもので上に押し上げなければああいう折れ曲がり方はしなかったのだ。
これで王冠を歯で噛んで開けたという奥西さんの自白の信憑性が揺らいだ。
_______
2005年、名古屋高裁の小出裁判長は、この第七次再審請求に対し、再審開始決定を出した。待ちに待った再審開始だった。死刑執行も停止された。
しかし検察は直ちに異議申立をした。
(そして2006年名古屋高裁の門野裁判長は検察の異議申立を認め、再審開始決定を取り消した)
(以上、番組内容要約)
************
第五次、第七次請求で提出された新証拠を見れば、裁判所がいかにいい加減な物証に基づいて奥西さんを犯人だと断定したか、そして、奥西さんを犯人だとする数少ない証拠が崩れてもなお頑として再審を認めようとしない裁判所がいかに不当かがよく分かると思います。
第五次請求では、王冠についた傷が奥西さんの歯型と断定できないことがわかった以上、もうその王冠に証拠としての価値はないはずです。この証拠が死刑の決め手だったのだから、もはや死刑を維持することはできないはずなのです。
それなのに裁判所は、再審を認めませんでした。
第七次についても同じ事が言えますが、それは次のエントリーで。
(続く)
(明日、明後日はおやすみしますm(_ _)m)
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Ⅳー第五次再審請求、王冠の歯形ー
第五次再審請求では、弁護団は唯一の物証の王冠に着目した。
奥西さんは王冠を歯で噛んで開けたと自白、確定判決も王冠についた傷と奥西さんの歯型(逮捕後、警察で奥西さんが噛んで開けた王冠についた歯型)が一致すると認定した(松倉鑑定)
松倉鑑定は平面写真でのみ鑑定している。この平面写真で判断した松倉鑑定が死刑判決の決め手だった。
この二つの王冠についた傷跡を平面的な写真だけで比べるだけでは不正確だとして、弁護団は日本大学に三次元での解析を依頼した。
その結果、二つの傷は全く一致しないことがわかった。
更に平面写真は、片方の写真の倍率を2倍に拡大し、不正に一致させていた疑いを突き止めた(※証拠の捏造?)
再審開始決定すべき新規、明白な証拠だと弁護団は自信を持った。
しかしこの第五次再審請求もダメだった。
裁判所は歯型鑑定の証明力が低下したことは認めたものの、再審開始は認めなかった。
棄却決定が出たとき、裁判所の前では「(裁判所は)何を見ても(再審開始には)反対するんだ!」という怒号が飛んだ。
Ⅴー第七次再審請求、ニッカリンTー
奥西さんがぶどう酒に入れたとされる農薬のニッカリンTは、40年前に販売終了になっていて手に入らなかった。しかし弁護団はネットを使ってこれを手に入れることに成功した。
ニッカリンTはその製造方法からある不純物が含まれている。それはペーパークロマトグラフにスポットとなって現れる。
しかし他のメーカーの農薬にはこの不純物は含まれていない。
当時警察が飲み残しのぶどう酒を分析したところ、不純物は検出されておらず、ペーパークロマトグラフにスポットは出ていなかった。
これでニッカリンTを入れたという奥西さんの自白に矛盾がでてきた。凶器が自白と食い違うというのは決定的である。
弁護団は更に新証拠に取り組んだ。
栓の構造上、最初に封緘紙を破らないとぶどう酒は開栓できないと思われていた。だから裁判所は封緘紙の破片がみつかった公民館で毒が混入されたと認定したのである。すると公民館で一人になる時間のあった奥西さんが犯人に違いない、いう認定になる。
しかし、もし封緘紙を破らずに開栓できるとなるとストーリーが違ってくる。
弁護団は王冠、瓶、封緘紙等を復元して実験を重ねた。
すると封緘紙を破らなくても開栓でき、手で押さえると簡単に元に戻ることがわかった。
毒物は公民館以外の場所で入れられた可能性を否定できなくなったのである。
また、奥西さんの供述によると、
「ぶどう酒は火ばさみで外蓋をおしあげて封緘紙を破り、内蓋を歯で噛んであけた」
とされている。
しかし内蓋についているの小さな足の折れ曲がり方が、奥西さんの自白通り噛んで蓋を開けると生じない折れ曲がり方であることが弁護団の実験でわかった。
栓抜きのようなもので上に押し上げなければああいう折れ曲がり方はしなかったのだ。
これで王冠を歯で噛んで開けたという奥西さんの自白の信憑性が揺らいだ。
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2005年、名古屋高裁の小出裁判長は、この第七次再審請求に対し、再審開始決定を出した。待ちに待った再審開始だった。死刑執行も停止された。
しかし検察は直ちに異議申立をした。
(そして2006年名古屋高裁の門野裁判長は検察の異議申立を認め、再審開始決定を取り消した)
(以上、番組内容要約)
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第五次、第七次請求で提出された新証拠を見れば、裁判所がいかにいい加減な物証に基づいて奥西さんを犯人だと断定したか、そして、奥西さんを犯人だとする数少ない証拠が崩れてもなお頑として再審を認めようとしない裁判所がいかに不当かがよく分かると思います。
第五次請求では、王冠についた傷が奥西さんの歯型と断定できないことがわかった以上、もうその王冠に証拠としての価値はないはずです。この証拠が死刑の決め手だったのだから、もはや死刑を維持することはできないはずなのです。
それなのに裁判所は、再審を認めませんでした。
第七次についても同じ事が言えますが、それは次のエントリーで。
(続く)
(明日、明後日はおやすみしますm(_ _)m)
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