コメント
あと、今どこでも地方のロードサイドは同じ風景、大企業のチェーン店だらけです。大企業が地方で稼いだお金を地方に税金を払いたくないっていうのもあるんでしょうね。対抗としてはこっちも個人店で買えば済む話ですが。
「もちろん、普通の人間は戦争を望まない。しかし、国民を戦争に参加させるのは、つねに簡単なことだ。とても単純だ。国民には攻撃されつつあると言い、平和主義者を愛国心に欠けていると非難し、国を危険にさらしていると主張する以外には、何もする必要がない。この方法はどんな国でも有効だ」byヘルマン・ゲーリング
【目次】
はじめに
第1 「地域主権改革」の動向と主な内容
第2 憲法の福祉国家理念の破壊(問題点1)
第3 地方自治とくに住民自治の形骸化(問題点2)
第4 地方財政の充実は実現しない(問題点3)
第5 公務員の重大な権利問題(問題点4)
第6 急がれる国民的反撃
-・-・-・-・-・-・-
はじめに
「地域主権」という言葉には、あたかも「地域」が尊重されるような響きがあり、実際に、国の「束縛」から地方が「自由」になるものと誤解して支持する論調もある。
しかし、その実際の内容は、
①憲法25条以下の定める社会権保障についての国の責任を後退させ、
②地方自治体の首長の権限を強化して地方議会を住民の声の届かないものに変質させて住民自治を損ない
③国の外交防衛権限への制約を取り除き、
④国と地方の公務員にも重大な権利侵害をもたらすものである。
第1 「地域主権改革」の動向と主な内容
(引用開始)
2009年総選挙における国民の選択を受け止めて公約を守ろうとするなら、民主党政権は、(※自民党政権下での)「地方分権」改革を方向転換することが求められていた。しかし民主党政権は、勧告を受けてこれに「スピード感をもって」取り組むと表明。
菅内閣は、2010年6月22日、「地域主権戦略大綱」を閣議決定した。
①義務付け・枠付けの見直し
②基礎自治体への権限移譲
③国の出先機関の原則廃止
④ひも付き補助金の一括交付金化
⑤地方税財源の充実確保
⑥直轄事業負担金の廃止
⑦地方政府基本法の制定(地方自治法の抜本見直し)
⑧自治体間連携・道州制
⑨緑の分権改革の推進
という9つの課題が打ち出された。
(※つまり自民党、経済界が推し進めてきた地域主権改革路線をそのまま踏襲した)
第2 憲法の福祉国家理念を破壊する(問題点1)
1 社会福祉を向上させる基準の破壊(「義務付け・枠付けの見直し」)
(1)「基準」は「縛り」ではなく「支え」
「大綱」は、国の法令による規制は地方を縛るものとし「義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大を進める」とする。しかし国の定める「基準」は、地方自治体を縛って不自由にしようとするものではなく、国が施策の内容は財源に責任を持つ「支え」として、憲法の定める福祉国家理念に基づいて定めたものである。このような基準の破壊は、国の法令が社会福祉を向上・増進させる基準を破壊しようとするものである。
(2)正体は憲法25条2項の「改憲」
憲法25条2項は、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定める。これは、国が、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障、公衆衛生の向上と増進に責任を負うことを明記したものであるが、社会福祉等の向上のためには、社会福祉等の基準を国が定め、この基準に達するように施策に取り組むことが必要不可欠である。この基準は、国民最低限(ナショナルミニマム)と言われる。にもかかわらず、国の基準を破壊すれば、国は社会福祉等の向上のための責任が果たせなくなる。「地域主権改革」は、憲法25条2項の解釈改憲である。
(3)基準の改定は「地域主権」のかけ声ではなく科学的知見と国民的議論で
そして、社会福祉等の基準の中には、国民住民の安全を保障するための専門的・科学的な英知が盛り込まれている。(略)
この基準について、専門的科学的知見を結集し、国民的議論をして変えていくのではなく、「地域主権」のかけ声のみによってこうした基準が曖昧にされ、地方自治体の判断で切り下げてよいとすることは、わが国の社会福祉等の根幹に関わる重大問題である
(※かけ声や雰囲気イメージで物事を進めるのはポピュリズムの真髄だと思う)
2 国の責任による福祉国家施策・組織の解体(「国の出先機関の原則廃止」)
「大綱」は国の出先機関について、住民に身近な行政はできる限り地方自治体にゆだねるという「補完性の原則」により、原則として廃止するとしている。
しかし、「身近」な行政だから国の機関が不要だという立論は、論理的にもまったく成り立たない。「身近」な施策にこそ、国が十分に責任をもって体制と施策を整える必要がある。
(略)
そもそも、国として地方に出先機関を設けている部署は多岐におよぶ。そしてそれぞれの国家機関は、社会権その他の基本的人権保障のために、それぞれの地域で重要な役割を果たしている。
(略)
こうした国の出先機関は、たとえば、国立病院は都市部でも地方でも地方の財政力によって左右されない一定水準の医療を受けられる医療提供体制の確立に役立っている。労働行政が地方の財政力によって左右され、「働くルール」や監督の体制・程度が地方によって異なることになれば、体制が不十分で監督の緩やかな地域では労動者の保護が不十分になってしまうおそれがある
(略)
結局、「出先機関の原則廃止」は、国の責任で行われてきた福祉国家的施策とこれを担う組織を解体し、地方自治体の財政力によって福祉施策の体制や水準に差異をもたらすことになるものであり、許されない。
3 国による福祉施策の財源保障の解体(「ひも付き補助金の一括交付金化」)
(1)国の補助金は「ひも付き」ではなく地方自治体の「命綱」
「大綱」は、「地域のことは地域が決める」ために、「国から地方への『ひも付き補助金』を廃止し、基本的に地方が自由に使える一括交付金にすると」としている。しかし、福祉施策を特定して交付されてきた補助金は、「ひも付き」というより福祉施策の「命綱」であり、これは国による福祉施策の財源保障の解体であり、地方自治体の財政力によって福祉施策に大きな格差をもたらすものである。
(2)地方自治体の財政危機の正体
自治体の財政危機の正体は、補助金の一括交付金化により削減されようとしている福祉施策ではない。地方財政危機は、「日米構造協議」での公共事業への投資の約束の実行として、あるいはバブル崩壊後の景気対策として、多くの地方自治体が地方債を発行して大型の「ハコモノ」を中心とする公共事業を実施し、地方財政を悪化させたものである。また「構造改革」として2004年度から進められた「三位一体改革」によって地方自治体の財源は大幅に削減され、このことも大きな原因となった。
このような、地方自治体の財政危機の原因を正しく把握し、その責任追及や、どこが利得を増大させているかを分析することなしに、財政危機への対応策は不可能である。
(3)補助金の一括交付金化で地方自治体の財政は改善しない
民主党は2011年度から国庫補助負担金を廃止し、一括交付金化するとしている。
(略)
国庫補助負担金が一括交付金化されても、地方自治体が自由に使える財源は増えない。地方自治体の財源の増加のためには、使途に応じた交付か一括かが問題なのではなく、増額が必要なのである。
交付額を大幅に増やさない限り、使途を特定しようが一括にしようが、地方の財政難にまったく改善はない。
(4)大型公共投資に圧迫され福祉施策の切り下げは必至
現実には、補助金の一括交付金化が進めば、福祉や教育など、広範な住民に必要な福祉施策は、財源不足によって切り下げられることは必至である。なぜなら、地方自治体において、首長や地方議員に多額の政治献金をできる大企業が、その見返りに大型公共投資を求めれば、限られた財源の中で福祉施策の財源が削減されることになるからである。使途を特定した国庫補助負担金は、どのような政治勢力が大型公共投資の増加を求めても、最小限保障される「命綱」だった。この「命綱」が断ち切られれば、保育、教育、高齢者福祉、障害者福祉など、社会権保障に関わる財源は、「一括交付金化」によって削減される危険性が極めて大きい。
(5)地方ごとの格差の是正は国が責任を果たして再分配こそ
(略)地方交付税などによる財源調整が縮小されれば、地方ごとの福祉施策の格差は、現在よりもさらに拡大することは確実である。財政力や税収の乏しい地方自治体における福祉施策の水準を維持充実するためには、国が必要な税を徴収し、財政力や税収の乏しい地方自治体に使途を特定して補助して再分配する以外に方策はなく、これこそが憲法の求める福祉国家理念に基づく国の責務(憲法25条以下)なのである。
4 自由民主党の「新憲法草案」と同じ考え方
以上のような「大綱」の掲げる考え方は、自由民主党の「新憲法草案」(2005年11月)と同一である。
自民党草案前文は「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有している」とし、憲法9条を変えるとともに国民が福祉施策を自ら「支える」責務を強調し、国が責任をもって財政措置をするという現憲法の考え方を変えようとしている。
また自民党草案はその第8章「地方自治」の章で、地方自治の本旨(91条の2)の規定では「住民の参画を基本とし」「住民はその負担を公正に分任する義務を負う」として住民の負担と義務を強調し、広域地方自治体を明記(91条の3第1項)することで道州制の導入を志向し、地方自治体の財政は自主財源を基本とし(94条の2第1項)、国の責任を後退させている。
このように、地域主権改革大綱は、現行憲法の福祉国家理念を変質させる点で、自由民主党「新憲法草案」とも共通の考え方に立っているのである。
Author:秋原葉月
当ブログはリンクフリーです。転載はご自由にどうぞ(引用元の提示はお願いいたします)後ほどコメントかトラックバックでお知らせ頂ければ嬉しいですが、それが無くても構いません。
【コメントについてのご注意・必ずお読みください】
コメントは承認制をとっています。
承認するまでコメントは表に反映されません。承認まで時間がかかることがあります。
コメントを書き込む際にパスワードを入れていただくと、後程コメントを編集しなおすことができます。
コメントを編集した場合、再度私が承認しないと表に出ませんのでしばらくお待ちください。
記事に関係ないコメント、中身の乏しいコメント、非礼なコメント、HN未記入のコメント等々は私の一存で表に出さない場合もあります。
時間的な制約もあるので、いただいたコメント全部にお返事できるとは限りませんが、エントリーを書いて自分の意見を発信していくことに主力をおきたいので、ご了承くださいませ。
【その他のお知らせ】
エントリ-は、趣旨を変更しない範囲でより的確な表現だと思われた場合には文章を修正させていただくことがあります。