東京都様が東京都青少年健全育成条例を改正して、マンガ、アニメの表現を規制しようとしています。
vanacoralさんが、漫画家の羽海野チカさんの声を紹介されてらっしゃいますので、まずは私もそれを孫引きさせて頂きましょう。
◆
vanacoralの日記 「わけのわからん」都知事による「わけのわからん」妄言より
(引用開始)
■「東京都青少年健全育成条例改正案」について(8日付『羽海野チカブログ~海の近くの遊園地~』)
1/私は、弁が立つ方では無く、なんといったらいいのか、 上手く言葉になかなか出来なかったのと、 私がもし、変な事を言ってしまって、かえって、漫画を大事にしている方達、みんなの足をひぱってしまったらどうしようとか…そんなことで色々悩んで中々書き出せないでいたのですが…
2/「東京都青少年健全育成条例改正案」には、私は反対です。
3/6月に一度この案が出た時、急にひっそりと出て、そして、決める会議までがとても短くて、
私はとても慌てました。日本でこんなにも多くの人に愛され、必要とされている「漫画」という文化の「未来」がかかっている審議のはずなのに、どうしてこんなに不意打ちのように
短期間で
4/話し合いの場ももってもらえず、当事者のいない所で、なぜものすごい急に、決められようとしているのかと。
そして、皆の反対で、一回消えたはずのものが、またしても、同じように、ひっそりと、そして、短期間のうちにいきなり、審議にかけられようとされているのでしょうか。
5/どうして、こんなに慌てて決めようとされているのでしょうか。 漫画を好きなひとは日本にも、世界にも 沢山 沢山 沢山 いて、なのに、なぜ、こんな、うやむやのうちに、規制して、見えないように、されようとしているのかが、解りません。 なにより、「いつも不意打ち」で恐いのです。
6/そのうち、私たちが、気付かず、間に合わず、意見を言う間も無く、「何かが決まる日」が来そうな気がして、それがとても恐いです。そして、それは本当に恐ろしい事で、あっては決してならない事だと思います。
7/今、打っていても、手が震えます。何か変な事を言ったら、何か、漫画にとって悪い方に動いてしまったら、と思って心配だからだと思うのです。が、これくらいの事で、心配になって手が震えるくらいなら、この先「これ、描いて大丈夫かなぁ?」と心配しながら漫画を描かねばならない日が来るとしたら?
8/そう想像せずにはいられません。きっと皆が萎縮して、漫画の世界が小さくなっていってしまうと思うのです。漫画は世界に誇れる、日本の大切な文化だと、私は固く信じています。こんなに大事なものを、小さくしてしまうかもしれないものには、私は、反対です。
9/もし、もしも、この会議に出て漫画の未来を決める方たちの、ご家族、友人、知人の方の中で、ここを見て下さっていて、漫画を好きでいて下さっている方がいらっしゃいましたら、どうか、どうか「漫画は、沢山の人に愛されている大切な文化なので、慎重に扱って欲しい。」と、お伝え下さい。
長い文章を読んで下さってありがとうございます
これが今の気持ちです
これからも精一杯思いっきり 自由に 漫画が描けますように…
羽海野チカ
(引用ここまで)
Ⅰ.都はマンガにどういう規制をしようとしているでしょうのか
(毎日新聞2010年12月2日 東京夕刊より引用)
(1)刑法など刑罰法規に抵触する性行為
(2)婚姻を禁止した近親者間の性行為--などを描写した作品が自主規制の対象となる。
都議会が否決した旧改正案は、対象を18歳未満にみえるキャラクター(「非実在青少年」と定義)の性行為に限定していたが、今回はこの規定を削除。対象が18歳以上のキャラクターにも広がる結果となった。
廃案となった春の改正案よりも更に規制対象範囲を広げていますから(18歳位以下だったのが大人も含むようになった)、より悪法にパワーアップしてのリベンジです。
①この条例改正によって守りたい法益は「青少年の健全な育成」です。
では、漫画やアニメで法律に触れない性交渉だけしか目に触れさせないようにしたら、青少年が健全に育つのでしょうか?
法律に触れない性交渉以外のマンガ(例えば強姦や痴漢のマンガ)を目にしたら、「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがある」のでしょうか?
そんなわけないでしょ、馬鹿馬鹿しい!と誰もが突っ込みたくなると思います。
イシハラ知事や都議会議員さん達は、かつてティーンエージャーだったころ親の目を盗んでエロ本など見たこともない「健全な」青少年だったのでしょうか。そんなはずはありませんね?(笑)
そのエロ本には今回規制されようとしている「法に触れる性交渉を」描いたマンガはなかったでしょうか。
ないとは言わせません(笑)
では、その手のエロ本を読んだことがある知事や議員サン方は、みんな性犯罪を犯すような不健全な輩に育ったのでしょうか。
と、私は聞いてみたいです。
イシハラシは自分が文壇デビューした若いときは
「おとなにとって罪にも見えるし、不倫にもみえるんだろうけれども、ぼくなんかの年代はおとながおぞましいと思うようなものに対して気がとがめないということはやっぱり大きな差だと思うんです」(『小説公園』1956年6月号)
と発言していたそうです(保坂さんのブログより)。
ところが自分が老人になったら今度はそれが一転「不健全だと」高飛車な態度。
これって自分勝手じゃないですか?
青少年の健全な育成とかいってるけれど、要は、自分の若い頃を忘れた権威主義的な老人が、青少年に理想のイイ子ちゃん像を押しつけてるだけだと、私は感じます。
そして、この独善を満足させるためなら表現の自由なんか好きに制限してしていいんだという、ほとんどファシストな知事を選んでしまった東京都民の皆さん、次回選挙ではナントカして下さい。
②表現の自由は憲法上最も尊重されなければならない精神的自由権です。
この自由は公権力によって不当な侵害を受けやすい権利ですから、これに対する制限の合憲性は、他の人権の場合より一層厳格に判断されねばならないものなのです(これは表現の自由の「優越的地位」と言われます)
今までだって、青少年の目に触れさせるのが好ましくないと思われるわいせつ文書等は、頒布、販売の仕方を工夫して対処してきています。それで十分なのであって、表現すること自体を制限するのは全くの行き過ぎ、この条例改正案は迷うことなく憲法違反だと思います。
尚、法的には罰則のない近親間の性行為も規制対象となるというのは、否決された春の改正案にはなかった条項です。
実際に行っても法的に処罰されない行為なのに、それをマンガで表現すると法的に処罰されるというのは、どう考えてもおかしいでしょう。これには唖然としました。
こんな呆れた規制を設けようとするなんて、東京都様の反民主主義的体質がここでもようく現れていますね。さすが人権後退大国ニッポンの首都だけのことはあります。
お願いだから、簡単な憲法入門書でも買って少しは基本的人権について基礎的な知識を身につけてから条例をいじって下さい、と懇願したくなります。
③それから、表現の規制が始まる時は、まずエログロから始まるのが定石だという保坂さんの指摘を思い出しておきましょう。エログロは規制反対と積極的に声をあげづらい分野だから、最初に自由を切り崩す一角として狙われるのです。
そういう東京都の意図があらわれているのが
こちらの東京都の見解です。
実在しない青少年の性を描写した漫画等を規制するのは、表現の自由を著しく損ない、自由な創作活動や芸術文化の振興を脅かすもの。
という批判に対し、こう答えています。
現に、近年の不健全指定図書の多くは漫画だが、これにより、「作家の自由な創作活動や芸術文化の振興が脅かされている」との認識が広く都民一般に共有されているとは考えられない。
つまり、規制されたって別にそれに文句を言う都民はいないでしょ。だって、実在しない青少年の性描写が保護に値する価値ある芸術だなんてほとんどの都民は思ってないのだから、と言いたいのだと思います。
しかし、表現の自由とは「その表現は価値ある高尚なものだから保障しよう」というものではありません。何が価値があるか、何が価値がないかは多分に主観的なものですし、第一そんな価値判断を公権力が行うべきではありません。
もともと表現の自由とは自由権、つまり「国家からの自由」の権利です。
つまり表現の自由とは、「この表現物に価値があろうがなかろうが関係ない、表現することに干渉するな、放っておいてくれ」という性質の権利なのです。
ですから、例えば「児童ポルノ規制反対!表現の自由を守れ!」という主張に対しなされる「じゃあお前は児童ポルノが好きなのか、世に広めるような価値あるものだと思っているのか」という反論は、自由を守るとはどういうことなのかが分かっていないと言えます。
自分が賛成できるもの、自分が価値あると考えるものだけに表現の自由を与えようというのは、間違いです。
「あなたの言うことには反対だが、あなたがそれを言う権利を私は守る」という有名な言葉があります。
この姿勢を貫かないと、ここを突破口にしてどんどん規制が拡大される「蟻の一穴」があいてしまうのです。※参照、引用:
保坂展人どこどこ日記●ふたたび東京都青少年健全育成条例改正案を考える
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/4963011d5b2c97f6c3a66571b2d3aa5a●東京都青少年条例の「マンガ規制」は何を狙うか
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/763a7793869e4e58ce7645df70e7ae54Ⅱ.もうひとつ指摘しておきたいことは、表現の自由という重要な基本的人権を規制する法案を通そうというのに、関係者の意見もロクに聞かず、十分な議論も尽くされないまま議決されるかもしれないということです(12月半ばには決着がつくそうです。時間がない!)
こうした議会の形骸化は、国政レベルでも同じですね。とても民主主義のプロセスを経ているとは言えません。
なにより、「いつも不意打ち」で恐いのです。
そのうち、私たちが、気付かず、間に合わず、意見を言う間も無く、「何かが決まる日」が来そうな気がして、それがとても恐いです。
と前出の羽海野チカさんが仰るように、民主主義のプロセスを持てない国はいつか民主主義を崩壊させる「何か」がすんなり決まってしまうでしょう。
ちなみに、
民主党が賛成に回るかもしれないという情報もあります。もしこれがほんとうなら、去年石原都政にNOを突きつける意思表示で民主党に投票した都民への裏切り行為だと思います。
そして、民主党は基本的人権に敵対する側に回ったのだと判断します。
Ⅲ.ところでイシハラシの珍答弁をメモメモ
石原氏は12月 7日(火)の都議会の答弁で
「(北欧は)宗教がしっかりしているというか、宗教に基づいた倫理観がしっかりしている。」
条例改正案に反対している人を「訳の判らん反対をしている訳の判らん輩」と発言しました。
石原さん、「北欧はキリスト教のおかげで倫理観がしっかりしてる。」なんてヨイショしてていいんですか。
北欧ではその「しっかりした倫理観」の下、あなたの十八番の差別発言、ヘイトスピーチ(先だっての朝鮮学校に対する差別発言や、今回の同性愛者に対する発言も含まれます)が法によって厳しく罰せられてるのですけど・・・御存知ない?
いや、ほんと「わけわからん輩」ですね、イシハラシって(笑)
(公開前の追記:
保坂さんのこちらのエントリーによれば、イシハラシは、マンガ家の同条例への抗議に対して「ある意味卑しい仕事をしているんだから、彼らは」(2010年6月定例記者会見)と悪罵を投げつけたそうです。
マンガやアニメは安っぽいサブカルチャー、それに比べて自分がやってきた小説は高尚な文化だって言いたいのでしょうか。この人、何につけすぐ見下して差別意識をフルオープンにしますね。もしそう思っても、せめて黙ってるくらいの慎みは、高尚な人間なら持ちましょうよ。
今回の規制も、根底にはマンガやアニメに対する蔑視があるのでしょう。)
ついでですが、
同性愛は遺伝だとのたまう石原氏の認識が如何にアレであるか、JANJAN Blogにある海形マサシさんの記事にリンクを張っておきます。
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石原都知事は歴史や伝統を知らないのか
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