政党助成金は何故いけないか~自由法曹団HP「誤りです!国会議員ムダ論」より転載
- 2010/12/11
- 11:00
今日はその中から、政党助成金についての部分をお持ち帰りします。
(強調、改行は私)
(引用開始)
3 ムダ排除なら、政党助成金
【80人削減しても56億円、320億円の政党助成金は莫大な金額】
国会議員1人について、国費が約7000万円かかっています。
内訳は、議員歳費、立法事務費、文書通信交通滞在費、3人の秘書給与、JR 無料パス・無料航空クーポン券などです。
民主党のマニフェストのように、衆院比例区80人削減しても、56億円です。それに対して、政党助成金は、国民1人当たり250円で、人口約1億2800万人として、約320億円となっています。
320億円削減するには、国会議員450人のリストラが必要になります。320億円の政党助成金が、いかに大きいものかわかります。
国会議員は、議員歳費として月額約130万円、それにボーナスを受け取り、年間約2100万円程度を受け取っています。
ところが、政党助成金を、国会議員1人当たりでみてみると、衆議院議員480人、参議院議員242人、総計722人となりますが、共産党は受け取りを拒否していますので、共産党議員数15人を引くと、707人となり、1人当たり、約4500万円となります。議員歳費の2倍以上の金を政党助成金として受け取っているのです。
これこそ、大いなるムダ使いです。
【政党助成金について、国民に知られていない理由?】
このような多額の政党助成金について、メスを入れようとする動きがありませんでした。それには、次のような背景があります。
第1に、政党助成金が、民主・自民の保守2大政党制をささえる財政的基礎をつくっているので、ここにメスを入れると、財界が進めてきた2大政党制の根幹が揺らいでしまうことになるからです。
民主党は、党財政の80%以上を政党助成金に頼っています。自民党も党財政の50〜65%程度が政党助成金となっています。大政党のみならず、少数政党も財政的基盤として政党助成金に依存しています。受け取りを拒絶している共産党以外のほとんどの政党が、政党助成金に依存している実情があります。そのため、共産党を除くどの政党も、メスを入れてほしくない聖域として政党助成金が存在しています。
第2に、政党助成金は、選挙のたびに、巨大マスコミにテレビ CM の作成料や放送権料、大新聞の新聞広告料として流れ、マスコミの重要な資金源となっていることです。
「しんぶん赤旗」によると、2007年参議院選挙では、テレビCMの制作放送料に約50億円、広告代理店に約90億円流れたと言われています。このような事実は、マスコミ関係者の中では、周知の事実ですが、マスコミが政党助成金の問題点を指摘することはありませんでした。
しかし、2010年参議院選挙においては、新聞社の社説において「歳費などに加えて政党助成金も『仕分け』の対象にしてはどうか。共産党以外の政党が320億円を『山分け』しており、国会議員が身を削るなら、このほうがより実質的意味がある」(「東京新聞・社説」 2010.7.8)、
「国会のムダ削減をいうならば、企業・団体献金に頼らないためにつくった政党助成金をなくした方がよっぽどすっきりする」(「岩手日報・論説」 2010.7.14)と指摘するようになりました。
テレビや4大全国紙では、この点の指摘は、まだまだ不十分です。
私たちが、広く国民に訴えていくのであれば、必ず国民の支持は得られるものと確信します。
【政党助成金は、どこの国にもあるのか】
政党助成金が導入されたのは、政治改革関連法案の一つとして、1994年、小選挙区制導入と一緒に導入されました。
その趣旨は、1989年に政財官を含めた大規模汚職事件であったリクルート事件を“教訓”に、「企業からお金をもらうから政治家が腐敗する。企業に代わって国が政党に政治資金を助成する」と言われ、「民主主義のコスト」であり、コーヒー1杯分の少額の助成であることが吹聴されました。
当時、国民は、「民主主義のコスト論」「世界中どこにもあるシステム」と誤解したのですが、政党助成金制度は、1965年にスウェーデンで導入され、1994年段階では、世界に10か国程度しか、普及していませんでした。当時、民主党が議会制度の“お手本”とする、イギリスにも導入されていなかったのです。
当時の議論も巧みで、当初、総額600億円が提案されましたが、それを総額300億円に減額して成立させています。“これだけ減額したのだから、認めてください”という、国民騙しの手法がとられました。
その後、2010年まで、総計で5038億円、共産党を除く政党に分配されています。
“ムダをなくせ”というなら、政党助成金に大胆にメスを入れることが必要です。
【何に使ってもかまわない日本の政党助成金諸外国では規制がある】
政党助成金は、「政党が政治活動に使用するもの」という以外に、その使途を制限する規定はなく、逆に、「使途を制限してはならない」(政党助成法第4条)と使途の規制を禁じているのです。
ただし、5万円以上の支出については領収書等を徴することの定めがある(法15条2項)だけで、5万円以下の支出については制限がなく、報告すればたりることになっています。
イギリスは、1970年代から政党助成金導入の議論を繰り返した結果、2000年、部分的政党助成制度(「長期的政策立案経費に限定)」を導入しました。その額は200万マルク、日本円にして2億9200円としています。日本の使途を制限されない320億円と比較しても、その110分の1に過ぎません。
民主党は、議会制度の“お手本”としてイギリスを引用するのであれば、政党助成金についても“お手本”とすべきです。
フランスでは、閣僚の汚職事件を受けて1994年、企業献金が全面禁止となりました。現在、約98億円の政党助成金制度がありますが、政党が男女同数の候補を擁立しない場合は、パリテ(平等)法(2000年施行)にもとづき政党助成金を減額する規制をしています。
ドイツでは、政党助成金について連邦裁判所から“政党の政治資金を補完する部分的なものでなければならない”と違憲判決(1992年)が出ています。連邦・州合わせた政党助成金(約174億円)の上限額が定められ、党費・寄付など政党が自ら集めた収入額に応じて受け取る仕組みとなっています。
諸外国では、さまざまな規制を設けているのに対し、日本の政党助成金は“何に使ってもかまわない“と、規制を設けていないのは異例のことです。
【アメリカ・イタリアには政党助成金がない】
実は、アメリカには、政党助成金の制度はないのです。
アメリカは、議員立法の国ですから、議員の立法活動のための秘書制度などは発達していますが、政治活動一般の資金は、国からの援助はもらわないという点で徹底しています。“国からカネをもらうと紐つきになる。国家の介入を認めることになる。政党が堕落する。政党は私的結社として、国家から自由でなければならない”という、政党の自由結社の考え方が非常に強く残っているのです。
イタリアは、1974年、政党助成金の制度ができました。ところが、20年ほど経過し、公共事業をめぐる汚職で多数の国会議員が摘発され、1993年4月、国民投票の結果(廃止賛成・90.3%)、政党助成金を廃止しました。
南米のボリビアでは、2008年、政党助成金を廃止し、その廃止分を障害者支援の基金に当てることを決定しました。廃止の理由は、「国民の税金は、本来、教育や医療など国民のために使うべきだからです。しかも国民の多くが貧困に苦しんでいる時に政党が税金を食いつぶすのは犯罪的です」(グスタボ・トリコ下院議員)と言われています。
政党助成金の弊害、問題点をもう一度、確認することが大切です。
【日本の政党助成金は、世界で一番多い】
現在、アメリカやイタリアに政党助成金がないことは、すでに述べましたが、政党助成金のある国の中でも、日本が世界一多いという事実は重要です。【資料4】は、主要国の政党助成金をみたものですが、日本が319億4199万円で、断トツの一番です。
次に、ドイツは、日本の約2分の1の147億2300万円、フランスは、日本の約3分の1の98億円、イギリスは、日本の110分の1の2億9200円となっています。
日本の政党助成金は、どの国と比較しても、最も多いのであり、これを削減することが、「ムダをなくす」最も有効な手段です。
【政党助成金は、なぜいけないのか?】
政党は、国家から独立して活動する私的な政治結社として生まれてきました。活動資金は、出版活動による収入や党員の党費、支援者からの寄付金などで活動を支えてきました。その私的結社が、国からお金をもらうと国家的規制を受け、自ら堕落します。
さらに、一般国民からの寄付や支援金に頼らなくても党運営ができるようになり、国民の声に耳を貸さなくなり、政党として自らの気風を失い、硬直化してしまいます。
政党助成金は、支持していない政党に税金を交付することになり、憲法19条の「思想良心の自由」に違反します。与謝野馨氏(元財務大臣)は、「自ら努力しないで獲得できる政治資金があるのは、政党のある種の堕落を招くのではないか」と述べていますが、その通りです。
政党助成金を導入した1994年当時は、将来、企業・団体献金を禁止することを国民に約束していたのです。ところが、政党助成金を導入して16年経過する現在でも、国からの政党助成金をもらいながら、企業・団体からも献金を受け続ける二重取りの状態が改善されないままです。
民主党は、マニフェストで企業・団体献金の禁止をうたっていますが、2010年11月、党として自粛していた公共事業を受注している企業のうち受注額1億円以下の企業からの企業献金を受けることを認めました。企業・団体献金をなくしていく方向から逆行する行為で、国民の信頼を裏切るものです。
【議員定数を減らしても、政党助成金は1円も減らない】
議員定数を80削減しても56億円の削減にしかならないことは既に述べたとおりです。
そのうえ、議員定数を減らしても政党助成金は、1円も減りません。
議員が80人減っても、政党助成金はそのままですから、議員総数642人となり、(共産党は受け取り拒絶しており、獲得議員数を衆院4人・参院6人として)、632人で配分すると国会議員1人当たり、約5000万円となり、500万円増加します。
すでに検討したように、第一党の民主党の議席占有率が大きくなるので、民主党は、政党助成金の配分も増加することになります。大政党に有利な、議員定数削減は、政党助成金の配分においても有利に働くのです
(引用ここまで)
自分が甘い汁を吸えるところはちゃっかり温存させたまま、タダでさえ逼迫している福祉や文化振興の分野ばかり切り詰め絞り上げ、そのしわ寄せは庶民にいく。
それでも足りないからと、消費税を上げて更に庶民の負担を増やそうとする。
でもその一方で法人税を下げて、戦後最高の貯金(内部留保)をため込める余力のある大企業の負担は減らす。
マスコミもこの政党助成金のおこぼれにあずかっているのであまり追及しない。
という構造を見ていると、
政府主導の「ムダを削る作業」こそムダだ、と感じます。
ちなみに、自由法曹団がこのような意見書を作成しても一銭の儲けにもなりませんが、こういうお金にならない「いい仕事」が、民主主義や人権擁護を推進する力になるのだと再認識する次第です。
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-591.html
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