(この記事は以前いたサイトで、Mさんというかたが、そのお父様が戦地でいかに慰安婦達が悲惨な目に遭い悲惨な最期を遂げたか、実際に見聞きした内容をコメントした時、異常なまでのバッシングがおき、その時Mさんに宛てて書いた形の記事になっています。いうまでもなく、私もひどい人格攻撃を受けました。)
慰安婦問題の時はお疲れ様でした
この記事はニュースカテにはアップしてませんが、Mさんに目を通して頂ければと思います
私は以前Nさんの所で「軍による強制連行が100%なかったと断言するのはおかしい」と主張しました。
つまり、従軍慰安婦として動員された婦女子はおそらく何千人単位で存在する。
なのに、その中のたった数十人の『任意?に参加し待遇も悪くない。強制連行されたとの証言内容もあやふや』との事例をあげてみても、残りの圧倒的大多数もそうだったとは言いきれないはずだ、と。
まぁ、ちょっと考えればわかる簡単な〈初歩の論理学〉なんですが…(これすらわからなかった人がいたのにはびっくりした)
でもこれは単純に、相手方の〈事実認定方法の誤り〉を指摘したものにすぎません。
この様に相手の論理的なミスをつくのは、ディベートとしては有効です。
しかし『ホントに従軍慰安婦=国の違法行為だったのか』という検証にはならないんですね。これは別問題です。
では、実際に慰安婦、慰安所は、「当時の法」に照らして「合法」なものであり、何ら非難を受けるべきものでなかったのでしょうか?
当時慰安婦となるべき女性の徴集は軍から委託された業者が行っており、その業者が仕事内容を偽って騙したり、強制的な手段で強引に(不任意)人集めしたことは後述する資料(②記事中に記述)等で明らかですが、この様ないわゆる「強制連行」を軍が直接実行、又は指示した証拠がなく、いわゆる「狭義の強制(軍による強制連行)」がなければ国、軍に責任はないかの様に今まで言われてきました。
ところが、「強制連行否定派」が主張する「狭義の強制」の有無は、実は国の責任の成否には全く関係ないことがわかりました。
何故、今、従軍慰安婦が国の責任だと取り沙汰されてるかご存じですか?
それは、従軍慰安婦が当時の国際法に違反していたからであり、現在に至るまで違反状態が継続しているからなのです。
(即ち、従軍慰安婦は国際法違反故に日本に責任ありと非難されているワケ)
ですから、本来従軍慰安婦の国の責任について論ずるならば、
『①慰安婦問題のどういう点が
②どの国際法に違反しているのか』
を論じなくてはならかったはずです。
ところが今までDUOでは誰も国際法について触れなかった。
これは大きなミスです。
では従軍慰安婦のどこが、どの国際法に違反しているのか、次記事の資料をご覧下さい。
専門家がハッキリ述べています。
「第一に1926年、これは奴隷条約が国際慣習法を確認して成立した年でありますが、(中略)女性を軍需品同様に軍の所有物とした日本軍慰安婦制度は、この国際慣習法に違反しておりました。
第二に、日本が1932年に批准した強制労働条約は女性の強制労働、労務を全面的に禁止していましたので、慰安婦としての性的サービスを強制した日本軍の行為は同条約違反であったと言わざるを得ません。
第三に、従軍慰安婦に対する日本軍の行為は人道に対する罪の要件中、奴隷化、強制的移送、非人道的行為にもあたります。
国際法律家委員会ICJ報告書、国連人権小委員会マクドゥーガル報告書、ILO専門家委員会報告書はそれぞれ詳しく国際法違反があったことを認定しています。
(※私見付け足し:もし、全ての慰安婦は任意に参加し、慰安所の待遇はパラダイスだったとお考えの方がいれば、これらの報告書で実態をお調べ下さい。報告書はインチキだった吉田清二のだけではありませんので。(注:あとで知りましたが、吉田証言はインチキとまで言えず、単に確実とは言えないというもののようです。)
また、日本で起こされた全ての従軍慰安婦裁判では事実認定~つまり騙されて、或いは無理矢理に慰安所に連れていかれ、そこで意に反して性行為を強要されたという原告たる慰安婦達の主張が、文句なしに認められていることも覚えておいて下さい
また、業者が違法な徴集していた判例として戦前の長崎地裁判決、インドネシアでの強制的な連行―スマラン慰安婦事件判決なども参考になります)
国際法には時効がありませんので、今も国際法の違反状態が継続していると考えられます。また人道に対する罪は国内法的にも時効を適用してはならないとされております。」
以上『平成14年内閣委員会、慰安婦立法参考人質疑議事録』の中の戸塚悦朗教授の発言を省略しつつ抜粋
もう少し説明をつけたしてみましょう。
■奴隷制度とは、ある者に対して所有権を行使することを指します。
日本軍は徴集された女性を拘束し、その場所から離れるのを禁じ、性的サービスの提供を提供を強いているが、これは軍による所有物同然の扱いであるから、奴隷条約及び国際慣習法違反は法的に疑いの余地はない(実際争われていない)
■また、強制労働とは「処罰の脅威の下に強制させられ、任意に行われたものでない一切の労務」をいうが、
性的サービスも「一切の労務」に含まれるし、軍の監視下で意に反して性行為の提供を強いられたから、労務の強要=強制労働だったのも明白
よって強制労働条約違反
また、金銭の授受は「強要」だったことに何ら影響を及ぼすものではない(これも争われていない)
■この様に従軍慰安婦制度は既に当時の日本も遵守義務のある国際法に違反していた。
そして国際法に時効はないから責任は現在も存在しつづける。
しかし日本はいまだ補償等の責任を果たしていない。
だから日本は今尚、責任追及を受けている。
以上が国際法における従軍慰安婦の法的評価です。
(『日本が知らない戦争責任』戸塚悦朗著参照)
もっと簡単に言うと
誰が強制連行したかのは国の責任の成否には関係ない、
委託業者が騙して連れてきたにしろ親に売られたにしろ、
連れて来られた婦女子を軍の管理の下、意に反して無理矢理性行為を強要したことが国際法違反であり戦争犯罪だ、というのが国際法の判断だったのです。
(この解釈自体に争いはありません。ですからこの解釈に明確な〈法的根拠〉を示すことなく異を唱える方は、残念ながら法解釈学という学問がどういうものかをわかってないと言わざるを得ないでしょう)
しかしDUOでは、あたかも軍や国による強制連行(狭義の強制連行)がなければ国に責任はないかの様に論じられてきた。
この前提が疑われもしなかった。
でも、これ自体がナンセンス、大間違いだったってわけですね
日本の責任を否定する何の法的根拠にもならなかったわけです。
よって「軍による強制連行は無かった」という証拠をいくら示してみても、的はずれと言えるでしょう。
反対に強制連行は軍が直接行った事例を無理矢理証明する必要もない。
だって問題の所在はそこではなかったのだから。
これをMさんのお父様の話にあてはめてみると…
やはりお父様が直に目撃されたことは日本が戦争責任に問われるべき犯罪だった、と言わざるを得ない。
お父様がお会いになった女性達。
彼女達を『業者や民間人』が騙して連れて来たとしても、それは国の責任を否定しない。
重要なことは、
お父様が見た慰安所は軍の管理下にあったことに間違いなく、そこにおいて女性達は意に反して強制的に『休みなく一日10人以上の相手をさせられ夢も希望もない(これはタダの売春ではなく強制売春又は強姦だ)』
という凄惨な状態に置かれてた、ということ。
これこそが奴隷条約(国際慣習法)、強制労働条約、国際人道法の3つの国際法に違反する戦争犯罪行為そのものだったのです…
Mさんがお父様の声をここに届けて下さったのは、決して無駄ではありませんでした。
まさに日本の戦争犯罪を示す「証言」だったからです。
日本は既に過去何度も謝罪しているではないか…そう言う人もいるでしょうが、口頭の謝罪のみ(河野談話など)では「法的責任」をとったことにはなりません。
単なる道義的責任を認めたにすぎない。
(法的責任は道義的責任とは異なります)
しかも最近になって安倍総理は、従軍慰安婦の道義的責任すら否定するかのような発言をしている。
これでは日本が世界から非難されてもいたしかたないのではないでしょうか。
実はこの他に、もっとダイレクトに「軍による強制連行の有無」が全く抗弁にならない(言い訳にならない)国際法違反も犯しています。
それは1925年に日本が批准した「醜業」3条約違反です。
長くなるのではしょりますが、要はこれら3条約は『売春を目的として、詐欺、暴行脅迫、権力乱用その他一切の強制手段を持って女性を誘引してはダメ』であることを定めています。
つまり慰安婦を無理矢理な方法で集め、慰安所を設けることそのものが既に国際法違反だったのです。
慰安所は発案から運営に至るまで軍主導監督の下、軍所属の施設であったことは明らかです(これについてはアジア女性基金HPに掲載されている政府調査報告をご覧下さい)
その運営の一部である女性の調達は業者に委託していたのですが、業者が女性を調達しやすいよう、軍の方からかなりな便宜を計り特権を与えています(先ほどのアジア女性基金HP資料参考)いわば軍は業者を下請けとして使用しているのです。
とすれば、軍はその業者が不正なことを行わぬよう監視監督する義務があり、もし業者が騙したり、強制的に連れて来た女性がいるのなら、即座にその女性を帰し、業者を処罰する義務を負っていました。
しかるに業者が連れて来た女性を当然の如くその支配下におき、醜業に就労せしめたのは業者の違法行為を追認、利用することに他ならず、軍自らが違法行為を行うも同然です。
従って、業者が勝手に不正な手段で女性を連れて来たんだから、軍の責任ではない、というのは、無責任な言い逃れにすぎず、不作為による醜業3条約違反が成立します。
ちなみにこれも何ら疑義ははさまれていない普遍的な法的解釈です。私が勝手に考えたんじゃありませんから
(前掲の戸塚氏の著書参考)
これで従軍慰安婦問題で狭義の強制云々を論じるのは「お話にならない」ことがお分かり頂けたかと思います。
現実に「狭義の強制連行」云々はもはや世界に堂々と主張できる有力な反論ですらなく、残念ながら相手にもされていない、というのがどうやら実情のようですよ
(2007/3/27)
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