8日の記事
「教育に投資しない国は未来に投資しない国」で、奨学金について
「今や貧困ビジネスと化している日本の奨学金制度が改善されないことにも、教育の公的支出の貧弱さが現れています。
確か民主党は奨学金も給付型にするってマニフェストで言ってなかったっけ?」
と書いてそれ以上詳しく触れなかったのですが、すくらむさんが奨学金についてすばらしい記事を出してくださったので、長文ですが引用して記憶しておきたいと思います。
是非全文をリンク先でお読み下さい
◆
すくらむ奨学金が返せない - 若者の貧困に追い討ちをかけ、国際人権規約から逸脱する日本の奨学金制度
(引用開始)
文科省がこのデータを公表する前日の9月6日に、NHKクローズアップ現代で、「奨学金が返せない~若者たちの夢をどう支えるか」が放送されました。「未来への投資」を怠り続け、国際的な常識からも逸脱している日本という国のとても悲しい現実が告発されていたので、その要旨を以下紹介します。(※いつものように丸めた表現ですので御了承を。文責ノックオン)
奨学金の返済に追われ、生活苦に陥る若者が急増しています。その背景には学費が高騰し、借りる奨学金が高額になった上、かつて無利子だった奨学金が有利子中心に変化してきたことがあります。
国の奨学金制度を担う独立行政法人・日本学生支援機構には、景気が低迷するなか負担が重すぎて「返したくても返せない」という声が殺到しています。
奨学金の滞納者はこの10年で2倍の33万人に増加。高額費に加え、雇用の悪化が深刻な事態を生んでいるのです。
Tさんは、図書館司書を夢見て奨学金で大学に進学。資格を取りましたが、非常勤職員の仕事しかなく月10万円の賃金で正職員の募集を待ちながら図書館で働いていました。しかし、奨学金の返済は月2万円。賃金の2割を奨学金の返済にあてるため生活が苦しくなり、トリプルワークもしましたが体調を崩してしまいました。Tさんは仕方なく、図書館司書をあきらめ、正職員の募集があった別の仕事に就くことにしました。
「奨学金を返すために夢をあきらめなきゃいけない状況は、やっぱりすごく悲しい…」と語るTさん。日本の奨学金は若者に夢や希望を与えていると言えるのでしょうか?
日本の奨学金制度では、有利子の奨学金がこの間増え続け全体の7割を占めます。この有利子奨学金の増大に比例して滞納者も急増しているのです。
Oさんも正規の職に就けないため、奨学金の返済が滞り、延滞金が加算されて借りた奨学金は2倍の270万円に膨れ上がりました。「八方ふさがりです。こんなに人の生活を追い込んで奨学金と言えるのかな…」と語るOさん。日本学生支援機構は、2010年度より奨学金の返済を3カ月滞納すると、個人信用情報機関に通報する――いわゆるブラックリスト化――を進めています。ブラックリスト化されると住宅ローンやクレジットカードが利用できなくなります。先月末までに2,386人がブラックリスト化され、Oさんのところにもその通知が来ています。若者の貧困にさらに追い討ちをかける日本の奨学金制度となっているのです。
《※以下はコメンテーターとして出演していた北海道大学教授の宮本太郎さんのコメント要旨です》
奨学金制度の本来の目的は人材の育成です。人材育成のための公的機関が“借金の取り立て”として、ここまでエネルギーをさいているというのは、違和感を通り越して危機感を感じます。
借りたものは返さなくちゃいけない――それはその通りですが、奨学金を現在返済中の人は273万人いて、そのうち21万人が3カ月以上の滞納という実態を見なければいけません。ここまで来ると個人のモラルの低下だとか、あるいは督促の不徹底だとかという種類の問題ではなくて、奨学金制度の構造的な問題ととらえる必要があります。
ひとつは奨学金の返済の重さに大きな問題があります。日本の奨学金はすべてが返さなければいけない貸与です。しかも日本の奨学金の総額の7割が利子をつけて返さなければいけない有利子貸与です。先進国を見ると、返さなくてもいい奨学金=給付型の奨学金制度がある国がほとんどです。
「小さな政府」とか「市場原理主義」と言われているアメリカでさえ、機会の平等を大変重視していて、連邦政府が517万人に返済不要の給付型の奨学金を提供しています。先進主要国で、返済不要の給付型奨学金がまったく無いのは日本だけなのです。その結果、大学を卒業しただけで、日本の若者は、数百万円もの借金を背負って社会に出て行くことになってしまう。これまでのように安定した日本型の雇用が続いているというのであればまだ良かったかも知れません。ところが労働市場の状況は根本的に変わってしまっているのです。いま初めて仕事につく若者のうち、男性は35%、女性は58%が非正規労働者というのが現実です。非正規労働者の実態は、ワーキングプアで、毎日の生活も困窮しているわけですから、結果として奨学金を返したくても返せないのです。1カ月以上奨学金を滞納している人を見ると、年収200万円以下が7割です。
先ほどのTさんも収入の2割を返済にあてていたわけで、さらに年率10%の延滞金がかかってきたOさんのように雪だるま式に奨学金の返済が増えてくるというのは、まさに構造的な問題です。日本は、高等教育への公的支出があまりに少な過ぎるのです。子どもが勉強ができても奨学金の返済の負担の重さを考えて大学進学をあきらめるケースが増えています。これでは何のための奨学金なのかわかりません。奨学金制度の再設計が求められています。いま奨学金が返せないという人が増えるだけでなく、将来の進学の夢もあきらめざるをえない状況になってしまっています。
(引用ここまで・赤字は私)
「どうしてもと言うならカネを貸してやるが自己責任でちゃんと全額(場合によっては利子付きで)返せ。それができないなら大学なんかお前には過ぎた贅沢だ、諦めろ。」
これが日本の奨学金制度の考え方ではないでしょうか。その根底には高等教育という物を「欲しければ各自が自腹を切って買うべき贅沢品」と捉えている貧しい教育観があります(
こちらにて述べました)
これじゃ、奨学金は学問を志す若者をサポートする制度ではなく、学びたいという子どもの当然の要求につけ込んだ悪徳金融業です。そこには「貧富の差なく子供達が等しく教育をうける権利は社会が保障しなければならない。奨学金は教育を受けれるように社会が子供達をバックアップする制度の一つだ。」という考えは全く感じられません。
大学を卒業したときにすでに何百万という借金を背負わせてマイナスからのスタートをさせること、そしてそのせいで自分の夢を諦めざるを得ない状況に追い込むことが、どうして「学生が学ぶことを奨励した」ことになるのでしょう?
奨学金について、村野瀬玲奈さんのこちらの記事も必読です。
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奨学金制度も「貧困ビジネス」に成り下がったのでしょうか●
「貸与型奨学金制度」が高等教育と日本の未来を空洞化させる。 (「社会科学者の時評」ブログを読んで)●
「学生サラ金機構」と化した「日本学生支援機構」も格差貧困拡大の一因のような。村野瀬玲奈さんはこれらの他にも教育を受ける権利は等しく国民に保障されなければいけないことについて、いくつも詳しく書いていらっしゃいますので、是非お読み下さい。
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