これもエントリーとしてはやや遅れ気味なのですが、日本のポピュリズムがまた一段階進化したことを表す出来事として記録しておきます。
民主・原口氏が維新の会…橋下知事らと連携へ
民主党の原口一博前総務相(衆院佐賀1区)は13日、佐賀市内で開かれた民主党県連常任幹事会で、地域主権の推進を目的に掲げた政治団体「日本維新の会」と「佐賀維新の会」を結成する考えを明らかにした。
大阪府の橋下徹知事や名古屋市の河村たかし市長らとの連携を目指すという。
佐賀県内の民主党系議員や首長らに参加を呼びかけ、佐賀維新の会を今月中にも結成、その後、自身が代表となって日本維新の会を発足させ、全国的なネットワークづくりを進めるという。
総務相当時、地域主権を推進していた原口氏は、「地域主権を前進させる人はすべて同志。改革を進める力を結集し、幅広く支援できる団体にしたい」と語った。
(2011年2月14日12時03分 読売新聞)
(もっとも最初連携に乗り気だったハシモトシが、原口維新の会とは「一線画さないと」と慎重に転じたらしいですが。
http://www.yomiuri.co.jp/election/local/news/20110223-OYT1T00397.htm)
原口氏、自民参院議員と会談
2011.2.24 08:03
民主党の原口一博前総務相は23日、都内の洋食レストランで、中村博彦氏ら自民党の参院議員5人と会談した。出席者によると、地方分権をめぐり、原口氏が中心となる「日本維新連合」との連携は可能との認識で一致したという。会合には、自民党の元参院議員会長、村上正邦氏も同席した。
これは、根を張り巡らせ成長してきた地方のポピュリズムに今度は中央のポピュリズムの方から触手を伸ばして繋ってネットワークを広めようとしている、ということです。
原口氏は政権交代前からハシモトシに秋波を送っていましたからやっぱりねという印象でした。今をときめく地方ポピュリスト達の人気に便乗しようという原口氏の動きは浅ましく情けないものです。
日本維新の会立ち上げとハシモトシらへのすり寄りは、地方発信の草の根ポピュリズムを全国に広める役割を果たし、更に加速させるだけでしょう。
(なんでも
立ちあがれニッポソの民主党の中山氏(鳩山氏側近)も「東京維新の怪」を立ち上げたとか・・やれやれ)
※ puyonyanさんのご指摘により間違いを訂正しました。失礼しました。そして、新自由主義を地域単位で徹底的に押し進める事が狙いの地方分権で自民党と連携可能であるとの認識を示したことで、原口氏は民主党の本質(新自由主義体質)は自民党と変わらないことをあらためて証明したわけです。
-・-・-・-・-・-・-
さて、中央もすり寄るほど地域政党が台頭してきていることを、地域vs全国、あるいは地域発の新政党と既成政党の対立と位置づける向きがあるようです。これは最近よく言われる減税vs増税の闘い、あるいは、菅陣営vs小沢陣営(民主党Avs民主党B)の闘いという図式にもリンクすると思われます。
大雑把な色分けをすると
・ハシモト、河村などの地方ポピュリスト、原口維新の怪ー減税ー民主党小沢陣営
・増税ー民主党菅陣営
といった具合でしょうか。
しかし私はこういう対立図式に胡散臭さを覚えます。何故なら、一見対立するようでありながらこれらは真に対立するものではないからです。
まず減税vs増税の図式ですが、所得税減税と消費税増税という本来同列に扱えないものを対立軸にしている点でおかしいでしょう。
こちらのエントリーでも書きましたが、
・河村減税→大多数の富裕層でない市民はほとんど恩恵なし。恩恵受けるのは一握りのカネモだけ→税収減によって福祉、介護、教育予算カット→大多数の富裕層でない市民負担増
・菅政権の消費税増税→一握りのカネモは痛くも痒くもないが大多数の富裕層でない市民負担増
で、結局は同じ事。所得税減税して富裕層でない多数の庶民に行政サービス低下というしわ寄せをするか、消費税を増税して富裕層でない多数の庶民に増税のしわ寄せするかのアプローチの違いだけで、本質的な違いは何もありません。(所得税)減税vs(消費税)増税の図式って、なんてばかげた茶番だろうかと思います。
また、地域政党を名乗ってはいても、減税日本も大阪維新の怪も、例えば大坂都構想や中京都構想ひとつ取ってもわかるように、およそ真に地域活性化のためになる政策を行っていません。やってることはもっと小さな政府、弱者切り捨てという構造改革路線を地方で冷徹に実行することです。
財界は地域主権改革を構造改革の集大成であり最優先課題と位置づけ、強力に推進しようとしています。ハシモトシ、河村氏率いる地方政党がやってることを見れば、まさに財界の先兵としての仕事そのものです。
ようは「地域」を名乗っていてもその正体は、既に破綻した新自由主義路線のばく進する財界の妾であり、日本全体のポピュリズム推進の原動力です。これは中央の既成政党である民主党、自民党、みんなの党に共通する本質です。
(ハシモトシが原口氏との連携について態度を変えたのは、地域vs全国だからではなく、単に次の選挙でボロ負け確実な民主党幹部との連携に慎重になったからではないかと想像しています。つまり世渡りのための日和見ですね)
それから、菅さんも小沢さんも所詮は自民党内の派閥争い同様、同じ新自由主義の穴の狢でしかないことは
こちらで述べたとおり。
向かう先、目指す先がちがうことが真の対立軸となります。
しかし、台頭してきた地域政党も中央の既成政党(民主党、自民党、みんなの党)も、消費税増税も所得税減税も、小沢さんも菅さんも、皆本質は同じ新自由主義です。対立してもそれは所詮内部の派閥抗争に過ぎず、いずれも向かう先は結局同じ方向です。
だから、地域vs全国、地域発の新政党と既成政党、菅陣営vs小沢陣営という対立構造は、意味を持たない見せかけに過ぎません。
こういう実在しない見せかけだけの対立図式に騙されて乗せられたら、それはポピュリズムを更に加速させ、悲惨な末路をたどることになるだけだと肝に銘じるべきでしょう。私達は真の対立軸を見据えなければいけないと思います。
真の対立軸は「新自由主義・小さな政府・自己責任をばく進する地域政党、民主党、自民党、みんなの党」 vs「 北欧的な社会民主主義路線・大きな政府・再分配の強化を目指す社民党(最近はちょっと怪しい?)、共産党」となります。そして私は後者を支持します。
しかしこれが対立軸だとはっきり伝えるマスメディアはあるでしょうか?
余談ですが、大阪維新の怪、日本維新の怪、佐賀維新の怪、東京維新の怪と「維新」のネーミングオンパレードですね。「明治維新やその頃の有名人に自らをなぞらえたがる政治家はろくなもんじゃないの法則(
こちらを参考に)」の正しさを確信しつつあるこの頃です(笑)
- 関連記事
-
スポンサーサイト