取り調べ全面可視化を拒む民主党の意味不明な屁理屈
- 2010/06/23
- 05:00
衆院選のマニフェストから大幅に内容を後退させた民主党ですが、取り調べ全面可視化方針の転換を決定した千葉法相には本当に失望しました。(これが取り調べ可視化と司法取引という何の関係ないものをバーターにかけようとした中井国家公安委員長ならまだわかるのですが・・(^^;)
民主党の化けの皮の剥がれっぷりをとくとご覧下さい
全面可視化を見直した理由がおよそトンチンカンで無理なこじつけであることは、弁護士でもある千葉法相自身が一番よくわかっていると思います。
ざっと上げてみましょう。
●検察の取り扱う事件は年間約200万件に上り、交通違反、事故など供述の任意性が争いとならない事件が対象に含まれるほか、コスト面の負担が大きすぎると指摘。「実務上の課題を踏まえると、全事件の可視化は現実的ではない」と結論づけた。
「供述の任意性が問題とならないものも含まれ、可視化で実現しようとするメリットに見合わない多大な負担やコストとなる」とした。。
任意性が問題となるかどうかは取調を経た後でなければ言えない結果論です。どの事件で任意性が問題となるか取り調べ前にわかろうはずもありません。起訴後に任意性が問題となったときにそれを判断するのに有効な資料として録画ビデオが欲しいのだから、「供述の任意性が問題とならないものも含まれるのだから録る必要はない」というのは全然理由になっていません。
また、交通事件や、痴漢などの比較的軽微な事件にも冤罪はあります。それによって職場をクビになるなどして人生が大きく狂ってしまった人もいますし、それを避けるため泣き寝入りも多いです。罰金刑だからと言ってそれらを軽視して良いはずがありません。
今の日本では捜査機関が取り調べできる時間が恐ろしく長いので、それを全部録画していたら確かに膨大なコストがかかります。弁護人だって裁判官だって膨大な録画を全てチェックするのは現実問題としてとても無理でしょう。
しかし、だから録画は辞めましょう、あるいは部分的にしましょう、というのは本末転倒だと声を大にして言いたいです。
現在の刑事訴訟法では、逮捕されてから(1件に付き)最大23日間拘束して取調を行うことができます。任意捜査や別件も使えば実際はもっと長期にわたり拘束して取調ができます。
1日の取り調べ時間も、1日10時間はザラ、どうかすると13,14時間だって取調官が入れかわり立ち替わりずっと連続して続けるのです。取り調べ途中に段々正気を保てなくなってくるのは容易に想像できますね。
そもそもこんな長時間、長期間に渡って被疑者を隔離して取調が行えること自体が異常な人権侵害なのですから、民主党は、この機会に長時間の取調を大幅に短縮して(勾留期間の法改正もアリ)全面可視化に臨むべきであると提案すべきなのです。
それに実際に取調の全面可視化を行っている国があるのに「現実的ではない」なんて言い訳にもなっていません。法務省関係者は全面可視化している国に視察に行ってどのように全面可視化を実現しているか学んでくるべきです。
取調を可視化することで冤罪の発生は確実に減らすことができますが、民主党は、管家さんのように無実の罪で何年も投獄され苦しむ冤罪の悲劇を防ぐよりも、可視化にかける費用の方を節約する方が大事だ、とでも考えているのでしょうか。
●「可視化は真相解明に程遠くなる」
これは全く意味不明です。自白の任意性までも含めた真実の究明に役立ちこそすれ、ほど遠くなる理由などなにもありません。
捜査機関は全面可視化に猛反発していますが、足利事件再審を受け、栃木県警も検察も管家さんに頭を下げたのではなかったでしょうか。本当に申し訳なかったと反省しているなら可視化に向けて努力を惜しんではならないのに、こんなに抵抗するということは、管家さんへの謝罪など口先だけ、面従腹背だったと言わざるを得ません。
●暴力団など組織的犯罪では報復の恐れなどから容疑者が真実の供述をためらったり、容疑者に知的障害がある場合は容疑者が取調官に迎合する可能性もあるとして、全過程にこだわらない方法も検討するとした。
これも全く意味不明。
ビデオがあろうがなかろうが「報復の恐れなどから容疑者が真実の供述をためらう」のは同じです。
また、容疑者に知的障害がある場合なら尚更可視化が求められこそすれ、逆はありえません(東金事件を思い出してみてください)
「全過程にこだわらない方法」とは一部可視化のことを指していると思われますが、一部可視化は有害でしかありません。一度罪を認めさせられた被疑者は、それ以後一見捜査に協力的となり、どこからどう見ても任意的な取り調べにしか見えなくなるものです。検察側に都合の良い場面だけをつぎはぎして出してこられたのではたまったものではないです。
●勉強会は来年6月をめどに調査を進める。
日弁連が批判するように、1年もの検討を行い、立法を遅らせる理由が不明です。単なる怠慢、先延ばしでしかなく、結局可視化を積極的に実現する気はないのだと思われます。
取り調べ可視化の事実上の取りやめは、劣化著しい民主党の重大な公約違反の一例です。
民主党は野党時代、二度にわたって全面可視化及び検察官手持ち証拠全リスト開示の法案を提出しているのです。
それなのにここに来てさしたる理由もないのに全面可視かを取りやめるのは、去年のマニフェストは票を取らんがための「疑似餌」だったと非難されても仕方ないでしょう。
氷見事件、足利事件、志布志事件、など最近の冤罪を見るだけでも、全面可視化は絶対に必要であることはあらためて言う必要もないです。が、民主党は冤罪をなくす気が無いとしか思えません(怒)
日本の取り調べは国連の人権(自由権)規約委員会から何度か厳しい批判をされ続けていますが、なにも取調が可視化されていないことだけを非難されているのではありません。他にも、代用監獄制度を一向になくそうとしないことや、被疑者の接見交通権が不十分であることも非難されていることも忘れてはなりません。特に冤罪の温床といわれる代用監獄については、手つかずのままです。
とりあえず全面可視化だけでも早急に実現すべきなのに、それさえ放棄するのは取り調べにおける被疑者の酷い人権状況を改善する気は全くないという民主党政権の意思表示です。
政府はこれからも人権侵害に対して鈍感な人権後進大国でありつづけたいと希望しているのでしょうか。
民主党の化けの皮の剥がれっぷりをとくとご覧下さい
取り調べ可視化:対象事件「限定」、法相方針 民主党公約の「全面」、現実にらみ転換
千葉景子法相は18日の閣議後会見で、取り調べ可視化の対象事件を限定して法制化を進める方針を発表した。検察の取り扱う事件は年間約200万件に上り、交通違反、事故など供述の任意性が争いとならない事件が対象に含まれるほか、コスト面の負担が大きすぎると指摘。「実務上の課題を踏まえると、全事件の可視化は現実的ではない」と結論づけた。
民主党は昨年衆院選で作成したマニフェスト(政権公約)で全事件・全過程の録音・録画の実施を明記。千葉法相も昨年の就任時には「基本的には全面可視化」と発言していた。だがその後、省内の勉強会で「可視化は真相解明に程遠くなる」などと捜査現場から反発を受け、現実的な路線に方針転換した。
18日発表した中間報告は、検察受理事件の約75%が道交法違反や自動車運転過失致死傷など交通事件で、起訴される事件は約6%にとどまると指摘。「供述の任意性が問題とならないものも含まれ、可視化で実現しようとするメリットに見合わない多大な負担やコストとなる」とした。
暴力団など組織的犯罪では報復の恐れなどから容疑者が真実の供述をためらったり、容疑者に知的障害がある場合は容疑者が取調官に迎合する可能性もあるとして、全過程にこだわらない方法も検討するとした。
勉強会は来年6月をめどに調査を進める。法制審議会への諮問手続きを踏む可能性があり、早ければ12年通常国会への法案提出を見込んでいる。7月からは国家公安委員会との協議を進める。
一方、全事件・全過程の可視化導入を求める民主党の「取り調べの全面可視化を実現する議員連盟」は17日、全面可視化を早期に実現する法案提出を法相に要請した。【石川淳一】
全面可視化を見直した理由がおよそトンチンカンで無理なこじつけであることは、弁護士でもある千葉法相自身が一番よくわかっていると思います。
ざっと上げてみましょう。
●検察の取り扱う事件は年間約200万件に上り、交通違反、事故など供述の任意性が争いとならない事件が対象に含まれるほか、コスト面の負担が大きすぎると指摘。「実務上の課題を踏まえると、全事件の可視化は現実的ではない」と結論づけた。
「供述の任意性が問題とならないものも含まれ、可視化で実現しようとするメリットに見合わない多大な負担やコストとなる」とした。。
任意性が問題となるかどうかは取調を経た後でなければ言えない結果論です。どの事件で任意性が問題となるか取り調べ前にわかろうはずもありません。起訴後に任意性が問題となったときにそれを判断するのに有効な資料として録画ビデオが欲しいのだから、「供述の任意性が問題とならないものも含まれるのだから録る必要はない」というのは全然理由になっていません。
また、交通事件や、痴漢などの比較的軽微な事件にも冤罪はあります。それによって職場をクビになるなどして人生が大きく狂ってしまった人もいますし、それを避けるため泣き寝入りも多いです。罰金刑だからと言ってそれらを軽視して良いはずがありません。
今の日本では捜査機関が取り調べできる時間が恐ろしく長いので、それを全部録画していたら確かに膨大なコストがかかります。弁護人だって裁判官だって膨大な録画を全てチェックするのは現実問題としてとても無理でしょう。
しかし、だから録画は辞めましょう、あるいは部分的にしましょう、というのは本末転倒だと声を大にして言いたいです。
現在の刑事訴訟法では、逮捕されてから(1件に付き)最大23日間拘束して取調を行うことができます。任意捜査や別件も使えば実際はもっと長期にわたり拘束して取調ができます。
1日の取り調べ時間も、1日10時間はザラ、どうかすると13,14時間だって取調官が入れかわり立ち替わりずっと連続して続けるのです。取り調べ途中に段々正気を保てなくなってくるのは容易に想像できますね。
そもそもこんな長時間、長期間に渡って被疑者を隔離して取調が行えること自体が異常な人権侵害なのですから、民主党は、この機会に長時間の取調を大幅に短縮して(勾留期間の法改正もアリ)全面可視化に臨むべきであると提案すべきなのです。
それに実際に取調の全面可視化を行っている国があるのに「現実的ではない」なんて言い訳にもなっていません。法務省関係者は全面可視化している国に視察に行ってどのように全面可視化を実現しているか学んでくるべきです。
取調を可視化することで冤罪の発生は確実に減らすことができますが、民主党は、管家さんのように無実の罪で何年も投獄され苦しむ冤罪の悲劇を防ぐよりも、可視化にかける費用の方を節約する方が大事だ、とでも考えているのでしょうか。
●「可視化は真相解明に程遠くなる」
これは全く意味不明です。自白の任意性までも含めた真実の究明に役立ちこそすれ、ほど遠くなる理由などなにもありません。
捜査機関は全面可視化に猛反発していますが、足利事件再審を受け、栃木県警も検察も管家さんに頭を下げたのではなかったでしょうか。本当に申し訳なかったと反省しているなら可視化に向けて努力を惜しんではならないのに、こんなに抵抗するということは、管家さんへの謝罪など口先だけ、面従腹背だったと言わざるを得ません。
●暴力団など組織的犯罪では報復の恐れなどから容疑者が真実の供述をためらったり、容疑者に知的障害がある場合は容疑者が取調官に迎合する可能性もあるとして、全過程にこだわらない方法も検討するとした。
これも全く意味不明。
ビデオがあろうがなかろうが「報復の恐れなどから容疑者が真実の供述をためらう」のは同じです。
また、容疑者に知的障害がある場合なら尚更可視化が求められこそすれ、逆はありえません(東金事件を思い出してみてください)
「全過程にこだわらない方法」とは一部可視化のことを指していると思われますが、一部可視化は有害でしかありません。一度罪を認めさせられた被疑者は、それ以後一見捜査に協力的となり、どこからどう見ても任意的な取り調べにしか見えなくなるものです。検察側に都合の良い場面だけをつぎはぎして出してこられたのではたまったものではないです。
●勉強会は来年6月をめどに調査を進める。
日弁連が批判するように、1年もの検討を行い、立法を遅らせる理由が不明です。単なる怠慢、先延ばしでしかなく、結局可視化を積極的に実現する気はないのだと思われます。
取り調べ可視化の事実上の取りやめは、劣化著しい民主党の重大な公約違反の一例です。
民主党は野党時代、二度にわたって全面可視化及び検察官手持ち証拠全リスト開示の法案を提出しているのです。
それなのにここに来てさしたる理由もないのに全面可視かを取りやめるのは、去年のマニフェストは票を取らんがための「疑似餌」だったと非難されても仕方ないでしょう。
氷見事件、足利事件、志布志事件、など最近の冤罪を見るだけでも、全面可視化は絶対に必要であることはあらためて言う必要もないです。が、民主党は冤罪をなくす気が無いとしか思えません(怒)
日本の取り調べは国連の人権(自由権)規約委員会から何度か厳しい批判をされ続けていますが、なにも取調が可視化されていないことだけを非難されているのではありません。他にも、代用監獄制度を一向になくそうとしないことや、被疑者の接見交通権が不十分であることも非難されていることも忘れてはなりません。特に冤罪の温床といわれる代用監獄については、手つかずのままです。
とりあえず全面可視化だけでも早急に実現すべきなのに、それさえ放棄するのは取り調べにおける被疑者の酷い人権状況を改善する気は全くないという民主党政権の意思表示です。
政府はこれからも人権侵害に対して鈍感な人権後進大国でありつづけたいと希望しているのでしょうか。
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「ギリシャになる」発言・「取調べ可視化見送り」で炎上?
IMF専務理事は、既に日本の財政について「差し迫ったリスクはない」と発言しています。
さらに、日本共産党も、以下のような記事で、「ギリシャと日本はココが違う」と「日本はすぐギリシャのようになってしまう」という菅総理の発言を「論破」してしまっています。
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- 2010/07/03(01:40)
- 広島瀬戸内新聞ニュース