外国人参政権FAQにいただいたosamuさんのコメントがきっかけで、見落としていた民主党提出予定の永住外国人の地方参政権法案の記事に気付くことが出来ました。osamuさんありがとうございます。
今国会に提出は断念されましたが、民主党の案は次のようなもの。読んでみて、私は意表を突かれ一瞬ポカンとしてしまいました。
「相互主義」はとらず 民主、外国人参政権付与法案より
(引用開始)
(参政権付与対象者は)「我が国と外交関係のある国の国籍を有する者やこれに準ずる地域を出身地とするものに限定する」とした。
特別永住者については当面、国交のある韓国籍を持つ人か、「準ずる地域」として国交はないが交流の活発な台湾の関係者に限る立場をとる。朝鮮半島出身者やその子孫で、韓国籍でない人は適用外になる可能性が高い。(引用ここまで)
相互主義を取らなかったことは評価できますが、特別永住者に関してがいただけません。
同じ朝鮮半島出身の特別永住者でも、韓国籍の人には認められて国交がない北朝鮮出身の人には認められない可能性が高く、一方で、国交がなくても交流が活発な台湾出身者は参政権を持てる可能性が高いことになります。
私は民主党が外国人参政権を推し進めてることを評価してきましたが、法案の蓋をあけたらがっかり、これでは賛成できません。
なに、この差別。目が点・・・(?-?)
こんな差別を設けた理由について、
・朝鮮籍の相当数が在日朝鮮人総連合会(総連)支持者という日本国内の反北世論と党内一部保守派の主張を意識した措置(ハンギョレ新聞より)
・民団は参政権を要求していたが総連はしていなかった
と推測されていますが、何故こんな発想になったか、小沢さんの次の発言を読んでわかりました。
小沢さんは外国人参政権は「外交政策が背景にある問題だ」という認識なのです。
だから、外交政策としては友好関係にない朝鮮籍には与えなくても良いか、という判断を優先したのでしょう。
しかし、外国人参政権は本質的に外交政策の問題ではなく、日本国内における地方自治や民主主義や人権の問題ではないでしょうか。
外国人参政権が認められるべき理由をFAQから再掲しましょう。
民主主義とはそこで暮らしていく社会の構成員が自らの事を自らで決めていくというものです。定住外国人の生活の拠点は日本であり、根を張って暮らしていく社会の一員なのですから、社会の意思決定に参加する参政権は認められるべきです。
最高裁判例を引用しますと
「憲法第8章の地方自治に関する規定は、民主主義社会における地方自治の重要性に鑑み、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務はその地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨にでたものと解されるから」、「我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させる」ことは地方自治の本旨(住民自治)にも合致するのです。
これをみてもわかるとおり、外国人参政権の本質は、外交政策上の問題ではないことがわかると思います。
特に、特別永住者には
『在日コリアンその他特別永住資格を持つ旧植民地出身者は、日本の植民地支配により日本国民(帝国臣民)として扱われ、1952年のサンフランシスコ講和条約発効時にその意思によらずに日本政府の内部通達によって日本国籍を喪失した取り扱いがなされた。その結果、日本国家は、彼らに対しその意思に基づかず、日本の政治的意思決定過程に参加する地位を奪い、現在に至るまでこれを与えていない。(日弁連HP)』
という特別な理由があり、ここには韓国籍か朝鮮籍(と便宜上呼びます)かで区別する理由がまったくありません。従って朝鮮籍に参政権を与えないというのは理由のない差別を助長するものであって認められないと思います。
ちょっと想像してみましょう。
三代にわたって日本に定住し、日本で生まれ育ち日本しか知らない在日三世の子どもがここに二人いる。
二人とも今年めでたく二十歳になった。
しかし片方は地方選挙に投票しにいけるが片方はできない。
なぜなら、一人の子の親は韓国籍だが、もう一人の子の親は朝鮮籍だったから。
これ、どうみても理不尽な差別ではないでしょうか。
北朝鮮と国交が無く活発な交流もないことが2世3世達の地方参政権の有無を差別する合理的理由になると思えません。
地方自治や民主主義の原理原則から考えれば、韓国籍でも朝鮮籍でも、その他どの国の国籍でも、永住外国人には参政権が認めるのが最終的な論理的帰結だと思います。
(ただ、一足飛びに全て認めるのではなく段階的に認める範囲を広げていくことは許されていいと思います。しかし、そこに不合理な差別を持ち込んでは良くないと思います。韓国籍と朝鮮籍で差別するのは不合理な差別でしょう)
「国交が無くても活発な交流があれば」という条件を入れたのは、台湾は入れて北朝鮮外したいというあからさまな差別的意図が見えます。
人権の問題を外交上の思惑で理不尽に歪めようとするのは、人権や民主主義に対するセンスに難ありと言えるのではないでしょうか。
外国人参政権については今後も小沢さんに一任されるそうです。
小沢さんには、外国人参政権は外交施策のカードではなく国内の地方自治、民主主義、人権の問題なのだ、という認識に改めて貰いたいと思います。
あと、並行して国籍法を改正することも視野に入れて良いのではないでしょうか。
血統主義から出生地主義に変え、二重国籍を認めるよう国籍法を変えるだけでも、少なくとも2世、3世のかなりの問題は解決すると思います。
<追記>
buhiさんからのご指摘:「朝鮮籍」とは、朝鮮戸籍を有した方のうちで、韓国籍登録をした方を除く方を総称する「記号」で、例えば済州島出身の方で「朝鮮籍」の方も多数いらっしゃいます(逆に、北部出身の「韓国籍」の方も。)
従って、北朝鮮出身者ばかりが皆外れるわけでもないのですね。拉致事件がきっかけで総連から抜ける人も多かったと言う話も聞きますし。ご指摘ありがとうございました。
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