取調の全面可視化で注意すべき点
- 2009/11/02
- 14:00
千葉法相になったことで、取調可視化の実現はほぼ間違いないでしょう。
取調を可視化するのなら、一部可視化はダメ、やるなら全面可視化でなければ無意味であることは以前から指摘されているところです。捜査側に都合良く編集されたら何にもならないからです。
また、検察官の取調だけを録画しても意味がありません。虚偽の自白は警察による取調で強要され、検察の取調はほとんどその追認になるだけだからです。
次に、全面可視化されても留意しなくてはならないことがあると思います。
丸山重威先生は次のように指摘されています。
◆丸山重威の「法とメディアのあいだ」
全面可視化は、取調機関による脅迫等による虚偽の自白の強要をチェックし、未然に防ぐために儲けられるのですから、逆に、全面録画のもとで得られた自白は強制されたものでなく任意である、真実であると、裁判員や裁判官が思いこむ危険があります。
すると、録画があることで、被告人は一旦自白すると今以上にそれを覆すことが困難になってしまうおそれがあります。
菅谷さんは裁判官、弁護人もいる公判廷で虚偽の自白をしました。富山の氷見事件では弁護人との接見でも公判廷でも「私がやりました」と自白しています。
これはつまり公判廷という自白を強要されない公開の状態の時でも、人は虚偽の自白をしてしまうケースがある、ということです。
同じように全面可視化されたからと言って、虚偽の自白が絶対起こりえない保障はありません。
任意同行の段階から逮捕、起訴されるまで、捜査機関による拘束は長期間に及び、また、悪名高い代監制度があるので、取調時間は長時間に及びます。(憲法38条2項は、「強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることはできない。」とあるにもかかわらず、実際には拘束期間、取調時間は先進諸国の中で際だって長期に及んでおり、国連の人権委員会から勧告されています。)
もし取調室以外の場所で、取調官からきつく言い含められたり、取引を持ちかけられても、それはビデオには映りません。
今のような長期間拘束できる制度だと、録画されてる分が取調の全部だという保障はないと言えるでしょう。
そもそも長時間に及ぶ取調そのものが違法な人権侵害なのですから、取調全面可視化と並行して、代監制度の廃止、取調時間をもっと短く規制する、また、取調の弁護人立会権も確立していかなければいけないと思います。
可視化された状態での自白も、必ずしも100%信頼できるとは限らない。全面可視化は万能ではない、という意識を持たないと、今以上に自白あり→有罪になってしまい、全面可視化がかえって被疑者被告人に不利益に働くおそれがあります。
それと同時に、そもそも自白とは客観的な物的証拠に比べ決して信用性が高い証拠ではない、と根本的認識をかえることが大事ではないかと思います。
なんだかんだいって未だに自白は証拠の女王的存在ですが、自白の証拠価値はもともとさほど高いわけではないのだ、と考え方を転換すること、これが大事ではないでしょうか。
取調を可視化するのなら、一部可視化はダメ、やるなら全面可視化でなければ無意味であることは以前から指摘されているところです。捜査側に都合良く編集されたら何にもならないからです。
また、検察官の取調だけを録画しても意味がありません。虚偽の自白は警察による取調で強要され、検察の取調はほとんどその追認になるだけだからです。
次に、全面可視化されても留意しなくてはならないことがあると思います。
丸山重威先生は次のように指摘されています。
◆丸山重威の「法とメディアのあいだ」
「全面可視化」しても「真実」が見えるとは限らない
(前略)「全面可視化」になったとしても、その映像の証拠能力については、やはり慎重であるべきだと思う。「全面可視化」も要するに、捜査主体がその映像を録画するのであれば、「見えないところ」で何が起きているのかは、その映像からはわからない。どうしても、それを利用しようとするなら、例えば、弁護士の立ち会いがある映像が必要なのではないかと思う。
(中略)
新たに開発されたメディアには、常に落とし穴があり、「真実に近いもの」を伝えることも「真実に見えること」「真実と思われること」も伝えることはできるが、「伝えているのは真実そのものではないこと」を確認しなければならないのであり、「慎重な扱い」が必要なことは、いくら強調されてもされ過ぎることはない。
(中略)
こうした問題に本気で取り組み、捜査段階での自白の誘導を含めた人権侵害を解消していくために必要なのは、捜査段階からの弁護士の立ち会いだと思う。その立ち会いがない限り、証拠として採用できないようにしていくくらいの運動を弁護士が中心になって進めることが必要なのではないかと思う。弁護士会の「全面可視化」の主張は、「一部可視化」への反対という意味はある。しかし、全面可視化の要求の背景には、当番弁護士制度を含めた「取り調べ段階での立ち会い」が基礎的な要求としてあるからだ、という論理に立つべきではないかと思う。(引用ここまで)
全面可視化は、取調機関による脅迫等による虚偽の自白の強要をチェックし、未然に防ぐために儲けられるのですから、逆に、全面録画のもとで得られた自白は強制されたものでなく任意である、真実であると、裁判員や裁判官が思いこむ危険があります。
すると、録画があることで、被告人は一旦自白すると今以上にそれを覆すことが困難になってしまうおそれがあります。
菅谷さんは裁判官、弁護人もいる公判廷で虚偽の自白をしました。富山の氷見事件では弁護人との接見でも公判廷でも「私がやりました」と自白しています。
これはつまり公判廷という自白を強要されない公開の状態の時でも、人は虚偽の自白をしてしまうケースがある、ということです。
同じように全面可視化されたからと言って、虚偽の自白が絶対起こりえない保障はありません。
任意同行の段階から逮捕、起訴されるまで、捜査機関による拘束は長期間に及び、また、悪名高い代監制度があるので、取調時間は長時間に及びます。(憲法38条2項は、「強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることはできない。」とあるにもかかわらず、実際には拘束期間、取調時間は先進諸国の中で際だって長期に及んでおり、国連の人権委員会から勧告されています。)
もし取調室以外の場所で、取調官からきつく言い含められたり、取引を持ちかけられても、それはビデオには映りません。
今のような長期間拘束できる制度だと、録画されてる分が取調の全部だという保障はないと言えるでしょう。
そもそも長時間に及ぶ取調そのものが違法な人権侵害なのですから、取調全面可視化と並行して、代監制度の廃止、取調時間をもっと短く規制する、また、取調の弁護人立会権も確立していかなければいけないと思います。
可視化された状態での自白も、必ずしも100%信頼できるとは限らない。全面可視化は万能ではない、という意識を持たないと、今以上に自白あり→有罪になってしまい、全面可視化がかえって被疑者被告人に不利益に働くおそれがあります。
それと同時に、そもそも自白とは客観的な物的証拠に比べ決して信用性が高い証拠ではない、と根本的認識をかえることが大事ではないかと思います。
なんだかんだいって未だに自白は証拠の女王的存在ですが、自白の証拠価値はもともとさほど高いわけではないのだ、と考え方を転換すること、これが大事ではないでしょうか。
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