早く二大政党制に移行を、というマスコミの決めつけ、ミスリード
- 2009/09/08
- 19:30
「これからは二大政党制に移行して政権交代が可能な政治に!」
まるで二大政党制にならなければ政権交代は起こらない、二大政党制に移行することが政治先進国への仲間入り、のような言い方です。
ここでハイ、村野瀬玲奈さんお借りします、「決まり文句を疑う」です。
本当に二大政党制でないと政権交代は起こらないのか。これも決めつけ、ミスリードではないか。
以前も書きましたが、多様な国民の声を吸い上げるのは二大政党制より多党制の方が優れています。しかし二大政党制より多党制で行くべきという論者をテレビではほとんど見かけません。
また、「二大政党制に移行して政権交代を可能に」という論調は、まるで二大政党制でないと政権交代は起こらないかのように聞こえてしまいます。
でも、議会制民主主義の成熟した西ヨーロッパ、北ヨーロッパは多党制ですが、政権交代が起きてないかと言えばそんなことはありません。ちゃんと政権交代は起こっています。
もし衆議院選挙を民意をもっとも性格に反映する比例代表のみで行っていたら多党制になっていたのですが、実はそれでもちゃんと政権交代出来ていた、という記事をお持ち帰り。
五十嵐仁の転成仁語
◆9月6日(日) 比例代表区での民意は何を示していたのか
今回の選挙で、比例代表区での得票は次のようになっていました。
自民党 26.7
公明党 11.5
民主党 42.4
社民党 4.3
国民新党 1.7
日本新党 0.8
共産党 7.0
みんなの党 4.3
諸派・無所属 1.4
これがそのまま議席率を表すとすれば、各党の議席はこの割合で分配されます。一応、参考までに議席数を掲げておきましょう。
自民党 128
公明党 55
民主党 204
社民党 20
国民新党 8
日本新党 3
共産党 34
みんなの党 20
諸派・無所属 7
(略)
比例代表区が示している政党制は、民主党中心の多党制なのです。これは多様化した国民の政治的意見の反映にほかならず、「一党優位政党制」でも「二大政党制」でもありません。
このことから、民意が選択しているのは、実は「多党制」だったということが分かります。
(略)
旧与党の自民党は128議席で公明党は55議席、合わせて183議席ですから、与党は過半数を失います。つまり、小選挙区制でなくても、比例代表制であっても政権交代は実現していました。
新与党はどうなるでしょうか。民主党204議席、社民党20議席、国民新党8議席で、合計232議席になります。過半数の241議席には9議席足りません。
ここでキャスチングボートを握るのが、共産党の34議席とみんなの党の20議席です。共産党が閣外協力すれば、新与党は266議席となって過半数を超えます。
もし、共産党が閣外協力しなくても、みんなの党が協力すれば252議席となり、やはり過半数を超えることができます。これに日本新党の3議席が加われば、与党の数はさらに多くなります。
つまり、小選挙区制でなくても政権交代は可能だったのです。それは連立政権にならざるを得ませんが、かえって民主党の独走などを心配する必要はなくなり、まして「小沢独裁」などは起こりようがありません。
かねがね言ってきた、民主党を一人勝ちさせず、第三極が議席を伸ばし、キャスティングボートを握る理想的な政権交代が、民意をもっとも性格に反映する比例代表制ならば実現できていたのに、それが歪んだ選挙制度で実現できなかったのは返す返すも残念です。
政権交代を「一党だけで過半数とること」と定義したなら、それは比例代表制、中選挙区制の選挙制度では起こりにくいかもしれません。
しかし、政権交代とは第一党をとる政党が変わること、あるいは多数派を占める勢力分布図が変わることと考えれば、多党制でも十分に起こりえます。
実際、『西ヨーロッパや北ヨーロッパの成熟した議会制民主主義国家では、この穏健な多党制にある場合が多く、比較的規模が大きい保守主義政党と社会民主主義政党が政権交代を行い、その他にその二党より規模が小さい自由主義・環境主義・共産主義・民族主義政党等が存在し、必要に応じて連立政権を組むというパターンが一般的』で、政権交代がなされています。(ウィキペディアより)
一党のみが過半数を占めるような政権交代がいいとは思えません。
その一党でなんでも決められ、真剣な議論を尽くす必要はないのですから、必ずしも健全な議会運営になるとは限りません。拮抗した多党制の方が政策をすり合わせなくてはならないので、より真剣に議論をつくすという民主主義の原点が実現できるのです。
議席の三分の二を一党が占めたらどうなったか、まだ記憶に新しいですね。
しかしマスコミは政権交代=一党だけで過半数とることという前提で話をしているように思えます。
二大政党でないと政権交代が起こらないかのような論調は、物事を単純化して大衆に差し出す「決めつけ」ミスリードだと思います。
そしてこういうミスリードを行うと誰が得をするのか。
ところで連立協議が難航してるようですね。自民党政権では何の苦もなくすんなり決まることにながらく慣れっこになっていますが、これは真摯な議論が尽くされなかったということでもあります。
連立といっても民主党は圧倒的多数ですから、協議で数の力を振りかざすことがないようにと願っています。
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