「誤判の原因を究明する調査委員会」の設置を求めます。
- 2010/04/01
- 06:00
先週のサンプロでは福島党首が委員会の設置実現に向けて頑張ると言ってくれました。スピード感が恐ろしく乏しい鳩山内閣ですが、まだ足利事件の記憶が新しいうちに是非設置して欲しいです。
「誤判原因を究明する調査委員会」の設置を求める意見書
(引用開始)
1.設置の必要性
(1)近年、我が国の刑事事件において、志布志事件、氷見事件、引野口事件、足利事件事件など、重大な無罪確定事件、再審無罪事件が相次いでいる。
これまでも、免田、財田川、松山、島田の4死刑事件について再審無罪が確定した例を見るまでもなく、多くの誤判が繰り返されてきた。
にもかかわらず、総合的な誤判原因の究明(検証)が行われたことはない。(日弁連をはじめ、弁護士の調査研究活動や、一部の事件で検察庁、警察による内部検証が行われたに、留まる。)。
そのため、誤判を生み出す原因が国民の共通の認識となることなく、その改善は放置されてきたといって過言ではない。それゆえ誤判による教訓が全く生かされず、誤判が発覚する度に同様の問題点が指摘されてきた。
(2)ところで、司法手続での誤判原因の究明(検証)には限界があり、足利事件を契機として、第三者機関による誤判原因の究明(検証)の必要性が認識されるようになった。
例えば、昨年の最高裁国民審査にあたって、足利事件を例に、「誤判が起きた理由について、裁判所として検証すべきだと考えるか。また、検証する場合はどのような形が適切と思うか」と裁判官にアンケートを実施した(報道各社の共同案ケート)結果、「誤判という結果が確定した場合に、何らかの形で検証する必要があり、その際、検証作業への第三者の参加を得ることが望ましい」(竹内行夫最高裁判事)、「一般にどのような原因で誤判が生ずることになるのかという視点から、調査、研究を行うことは必要」(涌井紀夫最高裁判事)、「刑事裁判の本質に関わる問題として、真剣に検討すべきだと考える。その方法、広がりについては・・・できるだけ広い視点に立って、裁判と科学、技術のあり方全体について建設的な方策を検討することが必要である。」(竹内博允最高裁長官)といった回答がよせられたことが報道されている。
(3)諸外国では、誤判原因を究明(検証)して制度改革に結びつける例が多く見られる。
英国やカナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどでは、著名な誤判事件が発生した場合に、王立委員会などが報告書をまとめ、その提言をもとに刑事訴訟法改革を実現した。アメリカのイリノイ州では政府の諮問委員会が誤判の原因究明を行った。
同様の制度は欧米諸国に広く見られるものであり、誤判の経験を繰り返さないために必要不可欠なものである。
(4)「無辜の不処罰」は刑事裁判の最も重要な目的である。誤判原因を究明(検証)し、冤罪による悲劇を繰り返さないための方策を講じることは国の責務である。
裁判員制度の導入に伴って、刑事裁判に対する一般市民の関心はかってないほどの高まりを見せている。この時に当たって、我が国の刑事司法において、誤判事件が生じた原因を掘り下げ、誤判を防ぐため、どのような刑事手続が求められているかを明らかにする調査委員会(第三者機関)の設置の必要性は、誰も否定できないはずである。
(引用ここまで)
ここ数十年の間にいくつも大きな冤罪が繰り返されてきたのに、いまだに公に何の総括もされずにきたということに驚きです(←追加)
全文はリンク先でお読み下さい。
他国の調査委員会について少しですが拾ってみました。
http://www.bll.gr.jp/sayama/syutyo-346.htmlより
事件のおきたノヴァ・スコシア州の政府は、無実の罪で十一年間投獄されたマーシャルさんのえん罪の原因を究明するための 「ドナルド・マーシャル・ジュニア訴追に関する王立委員会」を設置し、七百万ドルをかけて二年間にわたる調査をおこない報告書を作成している。一五〇〇ページにおよぶその報告書は、えん罪・誤判の事実経過にとどまらず、警察のありかたの問題、ネイティブ・カナディアンや黒人にたいする差別(この事件は殺された被害者が黒人だったのでズサンな捜査がおこなわれたことが判明した)と刑事司法とのかかわり、検察、法務省と刑事司法制度の問題にまでふれた検討と提言をおこなっているのだ。
(私→一つの冤罪事件の究明に700万ドル!日本も予算をケチらないで欲しいですね)
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/local/news/20091022/223063より
欧米では冤罪事件の検証制度を持つ国も多い。イギリスは再審無罪事件があった場合、行政や裁判所から独立した王立委員会が設置される。調査権限を持ち、誤判原因を徹底調査する。結果は国民に公開するほか、捜査当局や裁判所に勧告も行う。
またカナダでも再審無罪が決まると調査委員会が設置される。調査結果から司法制度改革につながったケースもある。同様の制度はオーストラリアなどにもある。
再審に詳しい一橋大法科大学院の村岡啓一教授(刑事法)は「再審での証拠調べは判決に絡む周辺事情に限られる。問題を総合的、構造的に解明するには、第三者機関による検証制度をつくる必要がある」と提言している。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20100323_2.htmlより
米ノースカロライナ州で先月、殺人事件が再審無罪になったが、その調査に当たったのが第三者機関の誤判解明委員会だ。イギリスの刑事再審委員会は死刑制度があった当時に執行された人の誤判までも証明している。
http://www.bll.gr.jp/sayama/syutyo-345.htmlより
重要なことは諸外国ではこれらの証拠不開示による誤判事件を教訓にして、弁護側に証拠開示を保障する制度、手続きを確立しているということである。イギリスでは、弁護側が利用するしないにかかわらず、検察官手持ち証拠の一覧を弁護側に示すというルールが定められた。
実際に制度改革に繋がるところが素晴らしいですね
意見書にもあるように、委員会が設置されれば誤判の原因、構造が広く国民に認識される機会になるのではないでしょうか。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の大原則もやっと国民の共通認識になり国民の人権法意識が一歩進むきっかけになるかも、と期待しています
最終的にはマスコミのあり方、国民の認識がかわらなくては、刑事司法は本当には変わらないのですから。
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