「統治主体意識」は新保守主義、新自由主義そのもの

今朝テレビに映っていた橋下氏の顔を見ながら、昨日久々に書いた「統治主体意識」についてぼんやり考えていました。
というのは「統治主体意識」って裁判員制度の目的を議論するときに使われた言葉ですが、なにも裁判員制度の話に限らないな、とふと思ったのです。

橋下氏が、将来赤字になり税金の無駄遣いになる可能性が高い道路建設を、ゼネコンのために強行して幼稚園児を泣かせた時も
大阪の赤字解消のためと私学助成金を無くし、考え直してくれと陳情に来た高校生を自己責任だと責めて泣かせたときも
大阪府民の多くは橋下氏を非難するどころか彼の支持にまわりました。
あれも、一種の統治主体意識の表れじゃないでしょうか。

このような血も涙もない冷淡さに世間が拍手喝采する傾向は、コイズミ改革で新自由主義全盛となり、「自己責任」が流行語になった頃から特に顕著になった気がします。

イラク人質事件での激しいバッシング、
あの論理を突き詰めれば、要は「お上に楯突くとは何事だ」、ということに他ならないです。
その論理では、危険を冒してまでイラク人のために役立とうとした賞賛されるべき志は、偽善、ワガママだと嫌悪の対象になります。
こういう発想は人権尊重のために働くことを蔑む方向に向かいます。

家が貧しくて高校の入学金が払えない子供の入学式参加を拒否した学校に支持が集まる。
貧困はなまけた自己責任。そんなやつの生活保護に何故自分たちの税金を使うんだと言う。

これ、全て「統治主体」、つまり権力者側が上から目線で下を見るときの見方です。‘身分の低い者は分相応を心得よ’、という露骨な上から目線、これを‘身分の低い者’自身が持っている、という皮肉な状態なのです。

子供の頃、困っている人には手を差し伸べる心の温かい人間になれという教育を受けて育ってきたはずですから、普通、一般常識からいって、支持されるべきは逆の言動ではありませんか？
いくら新自由主義の本家アメリカでも、もしオバマ氏が高校生の陳情に対してマジギレし、自己責任だと言い放ったら、きっと支持率がた落ちで激しい非難が起こるでしょう。
あるアメリカ人は、イラクで人質になった三人はアメリカだったら英雄扱いでパレードが行われるだろう、なのに日本では犯罪者扱いとは、と驚いていました。
それほど日本人のファッショ的な傾向は突出しているのです。

新保守主義、新自由主義と統治主体意識はセットになりやすい性質をもっていると思います。

新自由主義も、それで恩恵を受けるのはほんとにごくわずかな限られた人々。残りの圧倒的多数は不利益を被るのだから、新自由主義や自己責任論に圧倒的な反対が出てくるだろうと想像するのが普通です。
ところが不合理なことに実際はそうはならない。
自己責任論は弱い者が更に弱い者を攻撃する行為を正当化してくれる論理だからです。

あくまで一つの心理傾向の話ですが、新自由主義という体制からはじかれた者達は、自己の社会での居場所を探し、強いニッポンにアイデンティティを求める。オレは強く正しいニッポソの一員なんだと誇りを持ちたがる。
そして栄誉ある真性日本人（笑）ではない在日韓国人への差別感情をむき出しにする。
国家と自分を同一視したがるから、日本の過去の過ちや現政権の体制への批判をまるで自分に対する攻撃であるかのように受け取り、「日本を貶める反日行為だ」とヒステリックになる。

新保守主義に走る者の心理ってこんな感じじゃないかと思います。
自分と強いニッポソ（支配する側、国家の側）との同一視、これは自分を統治主体の一員と見る統治主体意識そのものだと思います。

「歴史修正主義者はコイズミ橋下支持で社会的弱者に冷たい」、という公式はかなりの確率で当てはまります。

統治主体意識を持たせるのは、新自由主義の時代における支配の道具であり支配の技術だというのは本当だと思います。
妙な統治主体意識に毒されたら国民自身が官僚目線になります。弱者を蔑む冷たい管理社会を弱者が支持するのです。

しかし、そのアイデンティティは幻想。大多数の人は権力側、支配される側にはいないのが現実です。

では、末路はどうなるか
支配層に良いように利用され、捨てられる運命・・・ではないでしょうか。