在特会の許されない暴挙、そしてそれを後押しするかのような警察の黙認について過日にエントリーをあげましたが、欧米ではこのようなレイシズムの暴挙は立派に犯罪となることが指摘されています。
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村野瀬玲奈の秘書課広報室憎悪犯罪を禁止するアメリカ連邦法、拡大◆
米国からの便り英国でも間違いなく逮捕される在特会しかし日本ではレイシズムを罰する法律はなく、レイシストはやりたい放題なのが現状です。
コメント欄でASさんから次のようなご指摘をいただきました。
日本は「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(人種差別撤廃条約)を1965年に締結しているのですが、対応する国内法(人権擁護法が該当するのか?)を未だに整備していません。
だからヘイトトークさえ「自由権の行使」になってしまうのです。(引用終了)
そこで調べてみたところ、日弁連のHPに情報がありました。結構長いレポートなので以下、私なりに簡単に要約してみました。
人種差別撤廃条約に関する第1・2回日本政府報告書に対する日弁連レポートあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)参考
1)人種差別を禁止するための法律が日本に存在せず、また、法律を補うような体系的な人種差別禁止政策が存在しない日本の現状は、条約2条1項に違反する。
2) 条約は国内法的効力が認められているが、日本政府はしばしば裁判などで条約の規定の直接適用可能性について異議を述べるため、条約の直接適用による差別行為に対する処罰、救済、撤廃措置は、不確実な状況にある。
憲法の差別禁止に対して、裁判所や日本政府は「合理的差別」は禁止されていないとの解釈論を持っているが、内容や基準の不明確な「合理的差別」論を条約における人種差別禁止に適用することは、条約1条1項、2条1項、5条及び6条に違反する。
3)私人間の差別行為に対しては、そのような差別行為を捜査し、処罰し、被害者を救済するための法律を整備すべきである。
即ち、
民法第1条、第90条、709条の諸条項は、きわめて一般的なもので、人種差別行為に適用されるかどうかは極めて不安定なものである。
これらの民法の諸条項を人種差別に適用して救済した裁判所の判決例は極めて少ない。日本政府報告書が紹介する民族差別に関する2つの判決例は、ほとんどすべてであるが、このように判決例が極めて少ないこと自体がまず、民族差別や人種差別に対 して、司法的救済を受けることの困難さを物語っている。加えて、これらの判決は、日本が条約を批准する以前の民族差別に関する判決例であり、日本の裁判所が条約の 下で人種差別の被害を効果的かつ確実に救済していくかどうかは明確ではない
実際、訴訟による救済が効果的な救済手段とはなっていない。
それゆえ、人種差別に対する訴訟上の救済をより確実なものとし、かつそれによって私人間の人種差別の防止を図るために、あらゆる人種差別行為は無効なものとして排除されること、ならびに人種差別行為は不法行為に該当し損害賠償の対象となることを確認する立法措置を取るべきである
このような人種差別的意図に基づく暴力行為を効果的に禁止し、抑止するためには、そのような意図をもたない暴力行為をも禁止する一般の刑事法に委ねるだけではなく、人種差別的意図に基づく暴力行為を特定的に禁止し、処罰するための法律が必要とされる
以上のことから、
・日本政府は、条約第4条の留保のもとでも、憲法の保障する表現の自由及 び集会・結社の自由を侵害しない限度で、人種差別的暴力行為を処罰するための立法を行うなど、条約4条の義務を履行するべきである。
また
・人種差別に対する調査、救済、教育を通じて、人種差別に対する効果的な 防止と救済とを実施するための国内人権機関が設置されるべきである。
・日本政府は、人権教育を系統だったやり方で学校カリキュラムに導入するための迅速かつ効果的な措置をとっていない。これは、条約第7条に違反する。また、日本政府は、人権の実現に影響を与える特別な地位にある人々(特定職業 従事者)、特に、裁判官、検察官、行政官及び法執行官に対する人権教育を実施していない。これも、条約第7条及び一般的勧告XIIIに違反する。
よって、日本政府は、学校カリキュラムや特定職業従事者に対する研修をはじめとする人権教育のプログラムの策定及び実施の措置を早急に取るべきである
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ちなみに日本政府報告書は、
1)について
人種差別を禁止するための法律や体系的な人種差別禁止政策については述べていない
2)について
憲法の差別禁止規定について、日本政府の解釈及び裁判所の判例法において、「合理的差別」を禁止の対象から除外している事実、ならびに原告が条約1条1項の意味での人種差別の存在を主張する多数の訴訟において原告の請求が 「合理的差別」を理由に斥けられている事実について、何ら記載していない。
3)について
第2条「私人間における差別の禁止」及び第6条「司法機関による救済」において、人種差別行為が民法の諸規定に違反する場合には同法によって救済される場合があり、また、「犯罪を構成する場合には」刑事法上の訴追手続が取られる場合のあることを述べているが、人種差別行為それ自体に対して救済を与える法律については何も述べていない
日本は他にも国際人権条約を批准していますが、単に条約を批准した、というだけでそれを国内で実効性あらしめる措置をこれといってとってないことが多く、様々な人権状況について国際人権(自由権)規約委員会から厳しい指摘がなされています。自公政権は女性差別撤廃条約の選択議定書の批准を頑なに拒んでいたことからしても、条約批准することで一応人権先進国の体裁は整えるもののそれを前向きに実現しようと本気で考えてないのではないか、という感じがします。(この点での進展を千葉法相に期待します)
現段階に於いて人種差別行為(特に私人間に於いて)は、民事では民法1条(信義則、権利乱用の禁止)90条(公序良俗規定)709条(不法行為)という一般的な条項によって救済されることになるわけですが、このような一般条項ではなかなか救済されないのが現実です。
また、刑事では侮辱罪、名誉毀損罪などで罰せられることになるかと思いますが、これも特に人種差別に限ったものではない一般の刑事法です。
そこで人種差別撤廃をより実効性あらしめるために、直接人種差別を禁止する法律が必要です。
(公開後の加筆→)特に日本の警察は、共産党のビラ配りには住居侵入罪を適用して取り締まる一方で在特会の暴挙は止めにも入らない(普通なら「まあまあ」となだめに入るもの)など、法を恣意的に運用して右翼的な運動に肩入れしますから、そういう逃げを許さないためにも明確に差別を禁じる法を定めて警察を縛る必要があります。(加筆ここまで)
また、より早期に効果的に差別行為の防止と救済を図るために、差別を禁ずる立法だけでなく、人権救済機関の設置も必要だと思います。そうでなければ訴訟をおこすしかなく救済までに時間と費用がかかってしまいます。裁判では迅速な救済は望めません。
そしてまず、このような差別行為自体を無くすためにも、人権教育が何よりも大切だと思います。日本の人権教育は差別に関することに限らず全般的に非常に貧困なままで、とても先進国の教育内容とは思えないほどです。
ところで立法に当たり、留意しなくてはならないのは、いわゆる
戦う民主主義との境界線だとおもいます。
在特会のようなレイシスト達が集会を行うのに公民館を借りたいと申し出たとき公民館側がそれを拒んだり、デモ申請したときに警察がこれを許可しなかったりするのは、集会結社の自由の侵害になるから認められないか、という大きな問題があります。
結論から言えば私は戦う民主主義には賛成しかねますが、これについてはまた改めて別のエントリーにしてみたいと思っています。
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