裁判員制度にふさわしい報道ができているでしょうか
- 2009/05/23
- 22:59
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制度がスタートして三日目、マスコミの報道具合はどうでしょう。
マスコミは裁判員制度に向け、「被疑者の供述報道などに留意」 取材・報道指針で、報道の自由を確保しつつ、被疑者について予断と偏見を排除する努力を行うことを示しましたが、それはまもられているでしょうか。
その指針を再掲しますと、
1.捜査段階の供述の報道にあたっては、供述とは、多くの場合、その一部が捜査当局や弁護士等を通じて間接的に伝えられるものであり、情報提供者の立場によって力点の置き方やニュアンスが異なること、時を追って変遷する例があることなどを念頭に、内容のすべてがそのまま真実であるとの印象を読者・視聴者に与えることのないよう記事の書き方などに十分配慮する。
2.被疑者の対人関係や成育歴などのプロフィルは、当該事件の本質や背景を理解するうえで必要な範囲内で報じる。前科・前歴については、これまで同様、慎重に取り扱う。
3.事件に関する識者のコメントや分析は、被疑者が犯人であるとの印象を読者・視聴者に植え付けることのないよう十分留意する。
抽象的で実効性に乏しいのではと思ってましたが、今日、各局がこぞって中央大教授殺害事件についてトップニュースで流す内容を見て、マスコミの犯罪報道の在り方は何も変わらないと思わずため息が出ました。
JANJANが、上記の指針が守られてない箇所を具体的に指摘してくれてますので、お持ち帰り。
裁判員制度が始まっても旧態依然の殺人事件報道
ー マスコミ報道で裁判員が重大な判断ミス犯す危険も
(引用開始)
朝日新聞は(略)容疑者の男性の履歴を紹介する記事は職場を複数回変わったことについて「ただ、どの職場も数カ月程度しか続かなかったらしい。自分から辞めたことも、会社側から『来なくていい』と言われて辞めたこともあったという」など、現時点は事件との関連性が見えない職歴について触れている。
日本新聞協会は「裁判員制度開始にあたっての取材・報道指針」を発表しているが、その中で容疑者の個人情報の報道について「被疑者の対人関係や成育歴等のプロフィルは、当該事件の本質や背景を理解するうえで必要な範囲内で報じる。前科・前歴については、これまで同様、慎重に取り扱う」としている。加盟社は協会の指針に基づいて犯罪報道についての自主ルールを決めている。果たして、職場を複数回変わったことや、辞めた経緯についての記事は「必要な範囲」なのか、疑問である。
読売新聞のYOMIURI ONLINEは容疑者男性に警察がたどり着いた経緯として「同庁(警視庁)に『卒業生に思い込みの激しい人物がいる』との情報が寄せられ、○○容疑者が浮上した。また、高窪さんが昨年5月頃、学生に対し、○○容疑者を名指しして、『(大学に)来たら教えてほしい』などと話していたこともわかった」(容疑者氏名の部分は○○としました)と報じた。警察取材で明らかになったと思われるが、「思い込みの激しい人物がいる」という内容を報じることは勇み足だ。読者はこの男性を「思い込みの激しい人物」と植えつけられてしまい、公平な判断に悪い影響を与える恐れがある。
産経新聞のМSN産経ニュースでは供述について「殺害行為については淡々と認めながらも、動機については『今は話したくない』と話しているという」と報じた。「淡々と認めながら」とはどこからの情報か明記していない上、淡々とというのは誤解を招く表現であり戒めるべきである。(引用ここまで。下線は私)
職場を複数回変わったことや、辞めた経緯について述べるのは、指針2に背いていますね。
当該事件の本質や背景を理解するうえで必要な範囲外のプロフィールは、被疑者の人となりについて予断を抱かせてしまいます。
「思い込みの激しい人物がいる」という内容を報じることも、同様。
「淡々と認めながら」というのは警察側の主観であり、一方的な情報、一方的な言い分です。
一方の主観的情報を報道するのは、それがそのまま真実であるとの印象を読者・視聴者に与えることになってしまうのではないか(指針1)と思います。
マスコミは、記者クラブで警察からもらった情報を何も考えず安易に各社横並びに右から左に流してるだけ、という様が目に見えるようです。
初っぱなからこれでは・・・指針があることを忘れてしまったのかな?
犯罪報道は、視聴者には火曜サスペンス劇場の延長のような感覚があるのかもしれませんね。だから海外に比べ犯罪報道は人気があり、ニュースに占めるウェイトが大きいのかも。
でも、ドラマなら真犯人はわかりますが、現実の世界ではそうはいきません。
第一印象というものは強力です。
犯罪報道がプレ裁判になってしまい、本物の裁判の前に心証形成が行われないようにしなければ、公正公平な裁判は望めません。
マスコミにはより慎重な報道をお願いしたいです。
※ 裁判員制度スタート記念特集(笑)で、しばらく裁判員制度関係をエントリーで取り上げてみたいと思います。
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