碧猫さんからトラバいただきました。
PCが不調?でトラバ下さったエントリーにリンクを貼れないので、そのまま全文転載させていただきます。
こんな欠陥がぎりぎりまで気付かれなかったなんて、裁判員制度がいかに拙速に設けられたお粗末なものかよくわかります。
以下転載
九州発 読売新聞2009年5月6日付
『性犯罪被害者名も裁判員候補に開示、情報流出懸念の声』
(略)
裁判員は事件と無関係でなければならず、数十人から約100人の候補者に被害者の氏名などを伝えることになる。選任されなかったほとんどの人は、裁判員法が定める守秘義務を負う必要がない。(略)
性犯罪のうち裁判員制度対象の重大事件は強姦致死傷、強盗強姦、強制わいせつ致死傷、集団強姦致死傷事件。2008年の全国の対象事件2324件のうち約2割を占める。
被害者のほとんどが、被害を他人に知られたくないと強く願っている。(略)ところが裁判員の選任手続きでは、候補者に事件との関係の有無を確認する。そのため被害者の氏名や事件の概要を知らせることは避けられないという。また、裁判員に課せられる守秘義務も候補者には及ばず、情報を他人に教えても罰せられることはない。
最高裁も「情報流出による二次被害の恐れが考えられる」と懸念するが、対策の指針は示さない予定で、最終的には各地裁で対応を判断することになりそうだという。
性犯罪の被害体験を書籍にした方は、
「被害を届け出ない女性は今でも多いのに、対策もないまま制度が始まるなんて」と憤る。
性犯罪のうち、被害者がけがを負ったりPTSD(心的外傷後ストレス障害)などにかかったりする「致傷」事件になると、裁判員裁判の対象になる。「そうなることを嫌がる被害者が、心や体の傷を負っても申告しない事態が起きる恐れもある。重罰を求める気持ちが強くても、かなわなくなる」と(略)
その後、『akira's room』さんが14日に関連情報をまとめてエントリにあげて下さった。
『裁判員制度に新たな問題点が浮上』
一部引用させていただくと、
裁判員制度が導入される事件の中には、「強盗強姦」「強姦致死、致傷」「強制わいせつ致死・致傷」のような性犯罪が含まれています。
刑事訴訟法は被害者の申し出があれば氏名や住所などを法廷で伏せるよう定めていますが、事前に漏れてしまうのであれば何の意味も持ちません。
また、公判前に多数の人(被害者からしてみれば不特定多数の人と言うことになりましょう)に、自分のプライバシーが知られてしまうとしたら、被害者の心理的な重圧はいかばかりでしょうか。
裁判員に課せられる守秘義務も候補者には及びません。候補者は守秘義務違反で罰せられることはないのです。
もし情報が流出してしまったら誰から漏れたのかなどは調べようがないだろうと思いますし、もし訴えるとしても被害者はさらなる負担をおわざるを得ません。
また、性犯罪においては他の事件にはない、被害者へ批判や二次加害が後を絶ちません。このように性暴力被害は一般に未だ偏見の多い分野です。一般市民から選ばれた裁判員に公正な判断ができるのかという強い危惧を抱いています。
当面考えられる対策として、性犯罪事件には裁判員制度を導入しない事を強く望みます。
そして、こういった問題には常に取り組んでくださっている、アジア女性資料センター様が緊急要請を開始してくださったとのことで、ご連絡いただいた。裁判員制度が始まるのは21日。ということで、賛同署名を携えた最高裁への申し入れは19日。
とても〆切間際ではあるのですが、女性団体の方達が情報を得たのがakiraさんのアクション後だったかも?ぐらいの話なので、ご協力いただける方、どうぞよろしくお願いします。
以下、賛同署名要請文の転載;
以下、強調は当方によります。〆切の明記はないようですが(^^; 最高裁への申し入れは19日だそうです。
***大至急!**転載転送大歓迎**
///////////////////////////////////////////////////////////////
裁判員選任手続きにおける性暴力被害者の安全とプライバシーの確保を求める緊急要請にご賛同ください
///////////////////////////////////////////////////////////////
みなさま
5月6日付読売新聞九州版で報じられたように、21日に開始される裁判員制度の裁判員選任手続きにおいて、性暴力事件被害者の氏名が裁判員候補者に開示されてしまうことが明らかになりました。しかし最高裁はこの問題について対策指針を出していません。
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20090506-OYS1T00229.htm
被害者保護の手段を講じることなく制度を開始してしまわないよう、緊急の要請を行うことにしました。21日まで時間がありませんが、できるだけ多くの団体・個人の声を届けたいと思いますので、どうぞご協力をお願いいたします。
なお最高裁への申し入れを19日に予定しています。
●賛同署名の集約先●
以下のフォームを利用してajwrc.shomei@gmail.comにお送りください。
------------------------------------
裁判員制度における被害者のプライバシー確保を求める要請に賛同します。
●団体賛同の方
団体名:
●個人賛同の方
氏名:
肩書き(あれば):
------------------------------------
要請書
/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
裁判員選任手続きにおける性暴力被害者の安全とプライバシーの確保を求めます
/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
最高裁判所長官 竹崎博允 様
私たちは、性暴力被害者の権利回復の観点から、5月21日より開始される裁判員制度における性暴力犯罪の取り扱い、とりわけ被害者のプライバシー保護について、重大な懸念を抱くものです。
裁判員が参加する刑事裁判が対象とする事件には、性暴力犯罪である強姦致死傷、強盗強姦、強制わいせつ致死傷、集団強姦致死傷が含まれますが、これらは対象事件の2割以上を占めると予想されています。にもかかわらず、報道によれば、性暴力犯罪事件においても、他の事件と同様に、それぞれの事件で100人にも及ぶ裁判員候補者に対し事件の概要と被害者の氏名が知らされるとのことです。
裁判員候補者が事件の情報を漏洩することは「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」の秘密漏示罪の対象とはならず、漏洩を防止する確実な手段は整備されていません。しかし最高裁判所はこの問題に対する対策の指針を出さず、各地方裁判所に解決をゆだねる方針であると報じられています。これでは、地裁によってまちまちな解決策となり、被害者のプライバシー保護が公平に保障されない可能性が否めません。現在刑事裁判において被害者のプライバシーが保障されていることとも大きく矛盾します。
性暴力犯罪は他の犯罪と異なり、性・ジェンダーに関わる社会的偏見ゆえに、しばしば被害者の側に責任が転嫁されたり、スティグマが付与されてきました。適切な配慮が行われなければ、裁判プロセスそのものが二次被害を及ぼす場となる危険性があります。こうした性暴力犯罪の特殊な性質が考慮されることなく、他の刑事事件と同様の選任手続きが行われれば、被害者に二次被害発生の不安を呼び起こすだけでなく、二次被害を避けるために、被害にあっても被害届を出さないといった傾向を助長することにもなりかねません。
一般市民が参加する裁判員制度で性暴力犯罪を取り扱う上では、性・ジェンダー偏見を排除するために十分な配慮を払い、被害者のプライバシーと安全を確保することが必要不可欠です。事件情報の漏洩を確実に防止する措置を講じることなく、拙速に裁判員制度を開始すれば、この制度そのものが、被害者にさらなる加害を招き、性暴力犯罪の訴追と被害者の救済を阻害する原因となりかねません。被害当事者および支援者との協議のうえ確実な安全保護の措置が講じられるまで、裁判員制度の開始を延期するか、それが困難な場合は、性犯罪に関連する事件について裁判員選任手続きを開始しないよう要請いたします。
「適切な配慮が行われなければ、裁判プロセスそのものが二次被害を及ぼす場となる危険性」
あるいは、
「性暴力犯罪の特殊な性質が考慮されることなく、他の刑事事件と同様の選任手続きが行われれば、被害者に二次被害発生の不安を呼び起こすだけでなく、二次被害を避けるために、被害にあっても被害届を出さないといった傾向を助長することに」の箇所は、下記の『みどりの一期一会』さんの2008-11-28付『「性差別の理解少なく」 「女性に冷たい」~問題だらけで見切り発車の「裁判員制度」』経由の中日新聞 2008年11月27日付記事『【特報】裁判員制度 女性に冷たい』を参照してもらえれば、具体的にどのような懸念があるかは解りやすいのではないだろうか。(以下、強調は引用者)
性犯罪、家庭内暴力 対象の20%以上
性差別の理解少なく/配慮なき尋問 被害者追い詰め
裁判員制度をめぐる議論で素通りされた課題がある。レイプなど性にまつわる犯罪だ。泣き寝入りしがちな被害たち。法廷で市民の前に姿をさらす心理的圧力や、尋問による精神的苦痛の恐れは一段と高くなる。「市民感覚」という常識も偏見をぬぐえるとは限らない。「裁判員制度が、告訴を阻害しかねない」という懸念の声が上がっている。(田原牧)
□■被害届出せぬ
「法廷で一般の人たちにあれこれ聞かれると思っただけで、被害届は出しにくくなる」。自らの性犯罪被害を実名で語っている小林美佳さんは顔をしかめた。
小林さんは8年前、男性二人組に襲われ、性的暴行を受けた。事件は未解決で時効。今年4月手記を出版し、電子メールでの相談を始めた。
これまでセクハラ(性的嫌がらせ)含め、700人の被害者からメールが来た。迷う相談者には、他の被害者の体験も含め警察や裁判所の対応をありのまま伝えている。(略)
□■課題に上らず
裁判員制度の対象犯罪には通常強姦は含まれない。だが、強姦致死傷や強制わいせつ致死傷などは入る。昨年事件数に当てはめると別表のとおり、扱う事件の20.3%が対象で、家庭内暴力(DV)絡みの事件を足せば、それ以上になる。しかし、裁判員制度をめぐる法曹界の議論で、性犯罪被害者やDV殺人では加害者になりうる女性への配慮が課題に上ったことはなかった。(略)
□■男女比は無視
(略) だが、そんな原田弁護士でも『弁護士の間ではジェンダーを意識する人はまれだし、いまは裁判員制度への実務の準備で手いっぱい」という。
「実際、法曹界も裁判員のジェンダー構成(男女のバランス)を無視したし、乳児や幼児を抱える保護者の参加についても、託児施設を準備するより辞退の理由としてしまった。女性の人権への配慮という観点がまるで抜けている」
現状でも女性への偏見が横行する法廷。偏見に無自覚な「世間常識」の重石が加わることで、性犯罪被害者の人権が押しつぶされかねない--当事者や支援者たちはそんな不安を募らせている。
…ただでさえこんな話だったのに気付いていなかったorz
『託児施設を準備するより辞退の理由としてしまった』『現状でも女性への偏見が横行する法廷』の手配であれば、今回、やっと私も(教えてもらって)気付いたような問題に配慮がないのも当然と思えるのが何ともはや…
こんな問題が今頃浮上してくるようでは、性犯罪被害を裁判員制度で裁く時に、「適切な配慮」や「性暴力犯罪の特殊な性質が考慮」されるなんて、有り得ない。絶対無理。
すくなくとも、性犯罪被害は裁判員制度で裁くべきではないだろう。
(転載終了)
- 関連記事
-
スポンサーサイト