「ニュース女子」の凄まじい沖縄ヘイトスピーチがBPOから「重大な放送倫理違反」と指摘された件をメモ
- 2017/12/23
- 06:00
今年1月東京MXテレビの「ニュース女子」で報道された沖縄基地問題特集に対し、BPO放送倫理委員会が重大な放送倫理違反だとの意見書を出しました。「重大な」という表現がなされたのは過去に二例しかないそうで、この番組が如何にデマとヘイトスピーチに満ちていたかを示しています。
現在、BPO放送人権委員会の方でも審議中だとのこと
こういうヘイト番組見るのって精神衛生上良くないと思いますが、内容を確認できるので一応載せておきます
チャンネル桜そのまんまのヘイトに満ちた内容ですが、高評価が低評価を遙かに上回っていることに闇を感じます。
私は「ニュース女子」を初めて見たのですが、オープニングで速攻こちらのツイートと同じ事を思いました
私は「ニュース女子」という番組をネット上で見ただけだが、あの作り方からして女性蔑視の極みだと思う。何も知らないおバカな女の子に、訳知り顔のおっさんたちが世間を教えてあげる…というスタイル。キャッほんとぉ? 知らなかったぁ、と嬌声を挙げさせて悦に入っているおっさん連中の醜いこと。
— 鈴木 耕 (@kou_1970) 2017年12月15日
まだ番組内容をご存じない方は、できれば、最初の取材の部分だけでも動画をごらんになった後で(10分ほどです)、以下を読んでいただく方が良いと思います。
さて、この番組はDHCシアター(現・DHCテレビ)制作の「持ち込み番組」であり、審査対象となったMXテレビは制作に関わっていません。持ち込まれた番組を放映する前の段階で行うMXテレビの考査(完パケ)が適正だったか否かが今回のBPOの審査対象です。
今年の1月に放映されてからBPOの意見書が出るまでの流れは、こちらの記事が詳しいです
↓
●MX「ニュース女子」問題の1年 沖縄デマはどのように作られ、否定されたか
https://www.buzzfeed.com/jp/takumiharimaya/news-joshi-oneyear?utm_term=.if21WpJ8O#.eipB7YL9p
BPO意見書の全文
↓
●東京メトロポリタンテレビジョン
『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見
https://www.bpo.gr.jp/?p=9335&meta_key=2017
BPOは
放送は、沖縄の基地問題について十分な知識を持たない視聴者が見ると、“抗議活動に参加する人々は、反社会的な行動に出ることがある。これらの人々は誰かが出す日当をもらって活動している疑いがある”という印象が残るものとなっている
ので、MXからの聞き取り調査の他に、委員会としても独自に調査を行う必要があると判断し、なんと二回の現地調査を行いました。ちなみに、制作側のロケはたった一泊だったそうです。
現地に足を運び、直接事実を確認し裏を取る作業は、制作会社よりもMXテレビよりも、遙かに報道番組制作のあるべき姿に近いです。
(なお、制作会社のDHCにも対面による聞き取り調査の協力を要請したけれど断られ、書面で質問&回答になりました)
現地調査は実に緻密に行われました。
例えば、基地建設反対派は救急車を止めたのかについては、国頭地区行政事務組合消防本部に出向いて、同消防本部消防長に聴き取り調査を行ってます。そして、消防長から高江地区ヘリパッド建設現場付近からの通報20件について個人情報を含まない客観情報が記載された一覧表の提供を受け、ひとつひとつ時刻等を精査する、といった具合です
ちなみに、制作側は同消防庁に取材には来ていませんでした。(やっぱりね)
放送内容を裏付ける事実が存在するのか否か、一つ一つ丁寧にしらみつぶしに確認し、「取材というのはこうやるのだ」というお手本をBPOが身をもって示した格好ですね。これじゃあどっちが放送人だかわかりません(苦笑)
こうした調査結果を踏まえた上で、
考査という重要な仕事を担当する放送人であれば、視聴して疑問を抱き、意見をつけるなり、制作会社に問いただすなりすべき点や、そうすることが可能であったと考えられる点が、本件放送にあったのかどうかを検討しなければならない
として、MXの考査に関し次の6点を指摘しました。ここでは項目を抜き書きするにとどめますので、是非リンク先でお読みください
1.抗議活動を行う側に対する取材の欠如を問題としなかった
2. 「救急車を止めた」との放送内容の裏付けを確認しなかった
3.「日当」という表現の裏付けを確認しなかった
4.「基地の外の」とのスーパーを放置した
5. 侮蔑的表現のチェックを怠った
6. 完パケでの考査を行わなかった
BPOは、
「MXは放送してはいけないものを放送してしまった」
「この番組は率直に言って、抗議活動に参加している人々を徹底的に揶揄するだけの内容である」
とまで厳しく言及しています。ボロクソです。
この番組の考査はMXの社員二人が行ったのですが、二人とも「全く問題を感じなかった」とのこと。
これは、放送人に必要な差別に対する嗅覚が欠けている上、事実確認や裏を取るというジャーナリズムのイロハさえ身についていないと言うことで、大問題ではないでしょうか。事実や裏付けを軽んじるのは放送人として失格です。
MXは今回のBPOの意見を真摯に受け止め、全社を挙げて再発防止に努めてまいります、と一応真摯な発言をしてるけれど、制作したDHCは
〈基地反対派の言い分を聞く必要はないと考えます〉
〈言論活動を言論の場ではなく一方的に「デマ」「ヘイト」と断定することは、メディアの言論活動を封殺する、ある種の言論弾圧であると考えます〉
〈今後もこうした誹謗中傷に屈すること無く、日本の自由な言論空間を守るため、良質な番組を製作して参ります〉
と、反省ゼロ、且つ、挑戦的です。
「基地反対派の言い分を聞く必要はないと考えます」とはスゴイ。対立する双方を取材するのは報道のイロハではないですか。それを否定するとは、もはやこの番組は「ニュース」「報道」を冠する資格はゼロです。
また、「(BPOは)一方的にデマ、ヘイトと断定」とか「言論封殺」とかいう位なら、BPOがDHCに対面調査を要請してきたとき、何故応じなかったのですか。面と向かって反論する機会を蹴ったのはDHC側ではないですか
それに、反対派に一切取材することなしに誹謗中傷した加害者本人が被害者面をするなんて、盗人猛々しいとはこのこと。
DHCの吉田嘉明会長は公式ホームページにヘイトスピーチを載せるような極右ですから、BPOの意見などどこ吹く風なのでしょう
DHCテレビは、今後もこういう差別番組をどんどん作っていきますよ、と居直ってBPOに宣戦布告したわけですね。
この態度からすれば、今後も「ニュース女子」の内容改善はまず望めそうにないです。
BPOの意見には何の強制力もありません。でも、これまではどの放送局もBPOに権威を認め従ってきました。スポンサーも「BPOにかけられた」というのはイメージダウンとして嫌うので、番組制作側も「BPOだけは避けたい」と思うようです。
しかしMXテレビの筆頭スポンサーはDHCです。なので、DHCが「BPOなんかくそくらえ」という態度をとれば、MXはBPOを怖れる理由はなくなります。MX自身もDHCテレビとよく似た体質ですから、今はしおらしい反省を口にしてても、BPOの意見書を誠実に実行するとは考えにくいです
BPOの判断に従わない制作会社が出てきたらBPO体制自体が崩壊する。MXは報道の自由を守るためには番組打ち切り以外の方法がないのではないか>番組制作のDHCテレビジョンは朝日新聞の取材に「1月に出した見解と相違ございません」=ニュース女子制作会社「中傷に屈しない」 https://t.co/wINH9C1mK6
— 紀藤正樹 MasakiKito (@masaki_kito) 2017年12月14日
「重大な放送倫理違反があった」とまでいったBPOは、もしこの事態を静観すれば自らの存立基盤を失うことになるね。デマを撒き散らしたことを批判された『そこまで言って委員会』は「BPOに訴えるのだけはやめて!」と恐れていたけど、「なーんだ、知らんぷりしたらいいんだ」って底が抜けるよ。
— 金明秀 KIM, Myungsoo (@han_org) 2017年12月14日
MXがBPOの判断を無視すれば、今後その悪しき前例に習うところが出てくるでしょう。
それは放送界から自浄能力が失われたことを意味すると思います
この危険性は大きいのではないでしょうか
メディアが、嘘、デタラメ、事実に基づかない誹謗中傷、反社会的、反倫理的な差別や侮蔑を電波に乗せてまき散らすことを是とし、自主規制しなくなったら、もうその社会は末期です
ニュース女子の沖縄特集については、BPO放送人権委員会の結論が出たら、またメモする予定です
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