日本から民主主義を奪う方法 その2.メディアの権力への迎合
- 2017/11/03
- 07:00
日本の報道の自由度は民主党政権下の2010年では11位でしたが、安倍政権下の現在2017年は、72位まで急降下しています(調査対象は180国で、G7では最下位 参考→●報道の自由度ランク、日本は72位 G7最下位に)
日本のメディアの政権への迎合ぶりはひどいものです。
たとえば、伊藤詩織さんが安倍首相の太鼓持ち友人ジャーナリスト山口敬之氏にレイプされた事件。
詩織さんが最初に顔と名前を出して会見を開いたときも、外国特派員協会(FCCJ)で会見を開いたときも、ほとんどのメディアがスルーしました。海外では山口氏は首相べったりのジャーナリストであることや、逮捕をもみ消した中村氏や官邸とのつながりまでつっこんで報じているというのに。
戦前日本のメディアは全てなだれをうって大本営発表に堕し、国民を戦争に動員する大きな役割を果たしました。しかし戦後はその反省から、市民を代表して権力に対する監視と批判を行うというジャーナリズム本来の使命を誓ったはずでした。
なのに現在はどうでしょう
東京新聞の望月記者が管官房長官の記者会見では珍しく、管氏がつっこまれたくないことに執拗に食い下がって質問しました。先進国のジャーナリズムならよくあるごく当たり前の風景なのに、望月記者jは官邸から目をつけられ、特筆すべき話題の人になってしまうほど、日本のジャーナリズムは落ちぶれてしまっています
何故愚かにもメディアは同じ過ちを繰り返して、いつか来た道を再びたどろうとするのか
その要因を思いつくままに挙げてみると
・放送免許を付与する権限は独立行政委員会が持っているのではなく、政府(総務省)が握っている
・放送法4条の政府の恣意的な解釈を強くはねのけられないメディア自身の問題
・クロスオーナーシップ
・記者クラブ
・政権との日常的な癒着
などが挙げられるかと思います
これらについて書き出すととても一つのエントリーでは収まりきらないので、ここでは、マスコミがどういう選挙報道をしたかの記録したいと思います。
一番目立ったのが、あたかも希望の党が自民党と対立する存在であるかのように扱い、自民公明vs希望維新vs共産社民立民の「3極」の闘い、とする報道でした。
今回の選挙では何が一番の争点とされるべきか。
労働問題や少子化問題など問題は山積みですが、より根源的な争点は、自民が秘密保護法、安保法制、共謀罪などでさんざんぶちこわしてきた立憲主義を取り戻すかどうかだったと思います。
日本が今後、近代民主主義国家に踏みとどまれるのか、それとも中国や北朝鮮やロシアのような国にカテゴライズされるのかの分水嶺であり、もしかしたら、もう戻れない一線を越えてしまったかもしれないと危惧しています。
希望の党や維新は立憲主義をぶちこわす方向の極右政党であることは明白です。だから自民党の対極であろうはずがありません。
海外メディアも希望の党の本質を簡単に見抜いていたので、実質、自民公明希望維新vs共産社民立民の「2極」だと報道していました。
しかし日本では最後まで自公vs希維vs共、社、立の「三つ巴の闘い」「3極」と言う言葉が紙面を飾りました。
これは、それぞれの政党の本質や選挙の争点やをうやむやにしてしまいます。
それだけではなく、自民に不満があるから対極である希望の党に投票したはずなのに結局その反対票は自民の極右路線を推進する力に回収されてしまうことにもなります。一種の詐欺のようなものです。
以前からこの手は使われてきました。自民党に不満がつのってくると、決まってその受け皿となる新党ブームがおきて話題となります。しかしその本質はどれも自民党亜流。やがてみな、自民勢力に迎合する形で消えていったり、細々存在してても自民党別動部隊でだったり。(簡単に新党ができ、簡単に消えていける背景には政党助成金というシステムがあります)
このブームを作り出すのは勿論マスコミです。
前回の新党ブームは維新でした。今回は希望の党です
事実、選挙が終わった後、自民党幹部は希望の党についてこういいました
『自民党から見ると、“最大の功労者”は小池百合子・希望の党代表と前原誠司・民進党代表
功労者の小池と前原の2人なら喜んで自民党に迎え入れてもいい』
『小池百合子さんのおかげで、(民進党が)真っ二つになった。(希望の党から立候補するための政策協定書に)憲法改正を認めるというハードルをつくり、こういう状況(私註:改憲は天の時を得た、と言う状況)をつくってもらった』
安倍氏も『野党第一党は希望の党がよかったのに』
ほらやっぱり。
なぜ3極報道しつづけたのかと小一時間メディアを問い詰めたい気分です。
選挙報道は毎度毎度、まるで国盗りゲームのごとく覇権争いの政局劇場になるのが日本のメディアの特徴です。おかげで政治=政局だと無意識のうちに思っている人々が少なくないと思います。
テレビは連日話題の小池百合子氏ばかり露出させての政局ばかり。
メディアにたくさん露出するだけで、「知ってる人」「有名人」「話題の人」という心理が働いてその人に投票するようになる作用があると言われていますので、このようなタレントまがいの露出のさせ方は公平性を欠くのではないかと思われます
政局報道をするなとは言いませんが、大事なのは、それぞれの政党の政治スタンスや主張や公約の詳細、それが実現可能か、票ほしさの口から出任せではないかの検証までしっかり行い、有権者の投票行動に役立つ情報を提供することです。
しかし政局劇場の方に、より多くの時間が割かれてる感は否めません。
それをちょっとでも削って、たとえば、自民は改憲についてほとんどアピールしないが、一番の狙いはそこにあるのではないか、前回も選挙では安保法制や共謀罪についてはほとんど触れなかったのに、勝ったとたん信任を得たとしてこれらを強行するという詐欺的手法を使ったんだから今回もあり得るのではないか、という掘り下げた検証を視聴者に提供してこそ、メディアの存在意義があると思います。
(現に自民党は教育無償化について、早速詐欺的な手法を発揮しています)
こういう検証はほとんどテレビで見られません。政治関連情報はほぼテレビから得るという人が圧倒的に多いことを考えれば、憂うべき状況です。
また、安倍自民党はもはや本来の意味での「保守」(conservative)ではなく「極右」(ultra right)と評されるべき存在になっており、海外メディアは随分前から安倍をultra rightと呼んで批判しています。しかし、日本の報道は絶対に「極右」どころか「右翼」とすら言いません。
安倍首相が無数の日の丸に囲まれてる極右集会のような絵図は今回の秋葉原以外にも報道局は持っているはずですが、それらは絶対に報道しません、印象が悪くなるから忖度してるんでしょうね。
そして、毎回出される投票直前に出される結果予想
なんのためにこんな発表をするのでしょうか
●浜矩子「自公連合の圧勝を予測したメディアの責任は大きい」
https://dot.asahi.com/aera/2017103100047.html?page=1
(引用開始)
留学生対象の授業で、今回の衆院選を話題にした。英語の授業で、学生さんたちは日本人を含めて概ね世界20カ国から集まっている。平均年齢は30歳弱というところだろう。アジア、アフリカ、アメリカ、ヨーロッパ。実に多彩な顔ぶれだ。
彼らの一人が質問した。なぜ日本の若者たちの安倍政権への支持率は高いのか。それに対して、面白い答えを提供した別の学生がいた。いわく、「最初から結果がわかっていたからじゃないか」。
確かに、事前調査をもとに、新聞各紙が自公連合の圧勝を予測していた。相当に細かい数字を示して、与党の地滑り的大勝になると大見出しを掲げていた。それを見て、「どうせこうなるなら、別の党に投票しても意味ないじゃん」という心理が働いた、というのである。
それだけではないと思う。今の若者たちは、将来に対する不安がとても深い。そのため保守的になる。寄る辺が欲しい。だから、「強い日本を取り戻す」式のメッセージに弱い。「高い有効求人倍率」や「人手不足」などというフレーズに引き寄せられる。彼らのなえる魂に、権力亡者たちがつけ込んでいく。
だが、「結果わかってる論」も、なかなか怖い。実は筆者も少し似たことを考えていた。まだ投票日前なのに、実に緻密な予測表が新聞に出る。こんなものを見たら、有権者はみんなすっかりやる気がなくなるのではあるまいか。実際にそう考えた。
やる気がなくなるだけなら、まだいい。ひょっとして、予測に沿った投票をしなくちゃいけないと思ってしまった人もいたかもしれない。日本人は、他者を失望させることや、他者の意向に沿えないことを嫌う。この優しきサービス精神に、あの事前予測が誘導効果をもってしまっていなかったか。
いくら何でもそれはないだろう。多分。だが、どう投票すべきかわからず悩んでいた有権者の中には、あの一連の予測値を行動指針にしてしまった向きがあったかもしれない。特に若者がそうだったかもしれない。だとすれば、メディアの責任は大きい。そもそも、あそこまで懇切丁寧な予想を各紙競って示すのはなぜなのか。教えてほしいものだ。
※AERA 2017年11月6日号
(引用終了)
観測霊さんのコメントからも
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-2265.html#comment13751
日本の選挙の場合、「勝ち馬こそ正義」という価値観も若干加わっている気もします。
費用対効果、ではありませんが一票が無駄になるのが嫌だから勝ちそうな(多くの場合は与党)候補に入れる、みたいな投票行動が一定ありそうな(個人の印象です。統計は取っていません)。
選挙結果予想を大々的に報じることは世論誘導の危険があります。
どうせ結果が分かってるなら投票しても無駄と感じて棄権する人も増えるでしょう、投票率も下がります。
投票日当日はこんな出血大サービス
↓
前回の参院選投票日(2016年7月10日)の新聞各紙朝刊には、自民党の広告と、同年6月9日に出た山口敬之『総理』(幻冬舎)の広告が載っていた。今回の衆院選投票日である2017年10月22日の新聞各紙朝刊には、自民党の広告と共に、10月16日に出た小川榮太郎氏の本の広告が載るかも。 pic.twitter.com/6E9hcE5Wp0
— 山崎 雅弘 (@mas__yamazaki) 2017年10月21日
やっぱり出た。衆院選の投票日当日の日経新聞と毎日新聞の朝刊。予想通りというか、行動パターンがわかりやすすぎだろう。新聞各紙での「自民党だけ安倍首相の写真入り広告掲載」もそうだが、こんな汚いやり方を、平気でやらせるのが、今の日本の総理大臣。日経分(下)には、安倍首相礼賛のコピーが。 pic.twitter.com/YEwMNLsJjU
— 山崎 雅弘 (@mas__yamazaki) 2017年10月22日
日経は次のページはこれ。
— MASAKO (@megusurinokiko) 2017年10月22日
もう安倍だらけ。 pic.twitter.com/yaJyGZtfao
静岡新聞朝刊もここ2、3日政治欄にこんな広告ばかり。 pic.twitter.com/1E9hCO0qyp
— TOMO (@KazuShogun) 2017年10月22日
そしてこれも毎度のことですが、選挙がおわるとメディアはまるでアリバイ作りのように、やっといろいろ報じます。
池上彰氏の番組で、秋葉原でのラスト街頭演説の模様が放映されました。極右集会にしか見えない無数の日の丸や旭日旗、安倍に反対するプラカなどを安倍に見えないように隠し、朝鮮人だろ!と差別爆発ですごむ支持者達の映像にスタジオドン引き
前に言いましたが、選挙終わってから候補や政党や支援団体のことを特番で見せられてもどうしろと言うんですか?
— デーブ・スペクター (@dave_spector) 2017年10月22日
遅いだろう!全く役に立たない。メディアが公職選挙法の改正を大優先にしないなら開票特番やめて全部アニメでいいです。オチはありませんm(__)m
池上さんの選挙特番は、選挙が終わってからじゃなくて、是非とも選挙期間中にやって欲しいんだよね。でなくちゃあんま意味ない。っていうか、なんで選挙中にやろうってプロデューサーや局はいないんだろう。
— 想田和弘 (@KazuhiroSoda) 2017年10月22日
せめて選挙後でもこういう情報を流せば免罪符になるとでも考えているのでしょうか。
海外では考えられないような政権とメディアの癒着
↓
2017.7.13(木) 18:49~21:53
— 総理!今夜もごちそう様! (@today_gochisou) 2017年7月13日
紀尾井町「WASHOKU蒼天」にて、曽我様、山田様、小田様、石川様、島田様、粕谷様、田崎様のマスコミの皆様と総理はご会食なされました。 https://t.co/93aAyedf10
総理!今夜もごちそう様でした! pic.twitter.com/dV1YBKhpDT
【皆さん忘れてませんか? メディア介入③編】
— 総理!今夜もごちそう様! (@today_gochisou) 2017年10月3日
権力監視する側が政権と会食すれば、ジャーナリズムは成立しない。米国では「コーヒー1杯」が上限で、それ以上の飲食は「癒着」。わが国の総理は「私の考えは読売新聞に書いてある。よく読んでいただきたい」と発言する始末。
~お忘れでしたか?~
国連人権理事会からも指摘されています
↓
●「日本政府はメディアに圧力」国連人権理事会の特別報告者は、なぜ放送法改正を要請したのか
http://www.huffingtonpost.jp/2017/06/12/story_n_17065866.html
●海外メディアの特派員たちが安倍政権の報道圧力と権力に飼いならされた日本の報道機関に警鐘を鳴らす!
http://lite-ra.com/2016/01/post-1889.html
いかに日本から民主主義が奪われていったかを後世の人々が検証するとき、その原因として「メディアの権力への迎合」は外す事ができないでしょう
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