まだ安保法制に賛成している人々へ~「我が国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るため」という理由が存在しないことが明らかになりました。だからもう安保法制要らないでしょ
- 2015/08/07
- 07:00
ですから、安保法制の危険性を十分お分かりの方は、このエントリ-はスルーしてくださいね
何故安保法制を作るのか、その理由の説明を、私達は次のように聞かされてきました
(内閣官房HP参照)
我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しています。我が国の安全を確保していくには、日米間の安全保障・防衛協力を強化するとともに、域内外のパートナーとの信頼及び協力関係を深め、その上で、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする法整備を行うことが必要なのです。これにより、争いを未然に防ぐ力、つまり抑止力を高めることができます
我が国の存立を全うし国民の命と平和な暮らしを守るために、このたび安保法制で、やむを得ない範囲内だけで集団的自衛権を行使出来るようにします。これは集団的自衛権全てを認めるわけではありません。容認するのは一部だけです。
もう少し具体的に言うと、我が国は攻撃をうけていないけどアメリカが攻撃されることによって我が国が存立の危機に陥るような場合(水色の部分)には、これまでの個別的自衛権では対処することが出来ませんでした
今回、今までの個別的自衛権では対処できなかったこの水色部分に相当する新たな事態に対処する範囲でだけ、安保法制で集団的自衛権を認めます。それにより更に安全保障が徹底され、抑止力が高まり、日本の平和と安全に役に立つのです
こう教えられてきました
そして、具体的にどういう新たな態に対処できるようになるのかとして挙げられた事例が、
・朝鮮有事の際、邦人を保護して日本に輸送する米艦船が攻撃されてもこれまでの法制では自衛隊は指をくわえてみているしかなかったが、集団的自衛権を認めることによって米艦船を防護できるようにする
・ホルムズ海峡に機雷が蒔かれて封鎖されたとき、わが国が武力攻撃を受けたのと同様に深刻、重大な被害が及ぶことは明らかで、わが国の存立が脅かされ国民の生命が根底から覆される明白な危険があるといえるので集団的自衛権行使の新3要件にあたり、機雷除去できるようにする
・北朝鮮(中国も?)の弾道ミサイルから日本を守るため巡回していた米艦船が攻撃されたとき、集団的自衛権がないと米艦船を防護することができない
でした
政府もこれ以外のケースは今の所想定していない、と言いました。史上最長の国会延長してまでも、なんとしてもこの法案を成立させなべならないという意気込みでしたから、これらは相当現実味のある差し迫った危険であるはずです
しかしこれらのケースは現実には起こりえません
それをひとつひとつ説明していきます
<朝鮮有事の際、逃げ遅れた邦人を輸送する米艦船を防護>

(この絵図、有名になりましたね。わざわざお母さんと子どもの絵を使い「助けなくて良いのか」と迫るのが嫌らしかったです)
・米艦船は民間人を運ばない。日本人が運んでもらえることはあり得ない
・だいたい輸送する米艦船に寄り添って防護するくらいなら、何故最初から自衛艦が邦人を運ばないのか。不自然すぎる
政府も認めた…「米輸送艦による邦人退避」はあり得ない事例
2014年6月15日 日刊ゲンダイ(リンク切れのためasyuraから)
http://www.asyura2.com/14/senkyo166/msg/797.html
(引用開始)
しかし、そんな事例があり得ないことは、多くの専門家が指摘してきた。そしてついに、政府関係者も認めたのである。
11日の衆院外務委員会。民主党の辻元清美議員が、「米輸送艦による邦人輸送」について、過去に例があるのか質問したところ、外務省領事局長は「海外における邦人の退避の事例については、過去の戦争時に米輸送艦によって輸送された例は承知しておりません」と明言した。
さらに驚いたのは、辻元議員がこう質問した時のこと。
「米国政府は、すべての外国政府は自国民の避難についての計画を立て、米国政府の手段に依存しないことを求めている。防護の要請どころか、米輸送艦による日本人の避難は想定していない。この米国の方針を知った上で、米輸送艦護衛の事例を提示したのか」
これについて、官房長官の代理で出席した加藤官房副長官は「米国の方針はその通りだ」とアッサリ認めたのである。
(引用ここまで)
なんと1年以上も前にこんな事態はありえないと政府自身が国会で認めてるのに、安倍首相はつい最近まで壊れた機械のように繰り返しましたよね。国民をバカにしてます
最近は北朝鮮にいる拉致被害者を運んでもらえるよう米国と交渉する、なんて悪あがきを言い出してますが、どこまで拉致被害者を利用すれば気が済むのか、と腹が立ちます
米艦は民間人は乗せないと言ってるのだし、拉致被害者だって一カ所に閉じ込められて助けを待ってるわけではないのです。何を荒唐無稽なことを。
あと、こちらも目をお通しください
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/147618
それから米艦船は安倍首相肝いりの図のように単独で行動することはなく、自衛隊が防護する必要もないことも付け加えておきます
<ホルムズ海峡の機雷除去>

これも現実的には起こりえないことです。100歩譲っても、この夏に慌てて安保法制を制定して対処せねばならないような必要性は全くありません
・ホルムズ海峡封鎖のジレを出してきたのは、反米のアハマディネジャド前政権(イラン)が2011年に「ホルムズ海峡封鎖」を示唆したことに由来すると思われる
しかし、イランは昨年、穏健派のロウハニ政権に交代。経済制裁の解除をめざし核開発問題で欧米と協議に入っている
「イランは経済制裁で原油の輸出量が半減し、大きなダメージを受けた。これから制裁が解除されるというのに、なぜ封鎖などする必要があるのか」「おととし岸田外相がイランを訪問した際に両政府が出した共同声明では、イランと日本との間の航路の安全確保をうたっている」「イランが機雷封鎖すると想定しているのであれば、全く根拠がなく非現実的」とイラン大使が指摘した
・1000歩譲って機雷封鎖されたとして、誰に要請されて集団的自衛権行使しにいくのか?
ホルムズ海峡の航路帯は公海ではなくオマーンの領海だから、イランが蒔けばオマーンに対する宣戦布告となる。よって集団的自衛権行使するとしたらオマーンからの要請がなくてはならないが、オマーンは「我が国と密接な関係にある同盟国」ではないので、新3要件を満たさない
従って、アメリカが機雷掃海でイランから攻撃を受け、日本に集団的自衛権を要請する、とういケース以外には集団的自衛権行使の出番はない
・もし単に、海峡封鎖されて石油が手に入らなくなったら武力攻撃を受けたに等しい大打撃を被り存立危機事態に陥る、それは困るから機雷除去しに行く、と言いたいのだとしたら、経済的理由で先制攻撃を仕掛けたことになり(機雷除去は武力行使とされている)、国際法上違法である
石油が入ってこないと危機感煽れば国民の賛成が得られるだろう、という浅はかな下心が透けて見えますね
安倍首相も、ホルムズ海峡の機雷除去はレアケースだと認めました
参考:ホルムズ海峡の機雷掃海――安倍首相の「妄想」
http://www.asaho.com/jpn/bkno/2014/0623.html
<北朝鮮のミサイルから日本を守ろうとする米艦船への攻撃>

これについては前エントリ-の前半をご参照ください
それから、政府が弾道ミサイルが飛んでくるなんて本心では全然思ってもいないこともこちらのエントリ-でご確認ください
<中国の脅威が~>
この「脅威」に軍事で対応したいのなら、それこそ個別的自衛権のケースど真ん中でしょ!
こういう時のために政府は9条下でも個別的自衛権は認められると言ってきたんですよ?
来月には安倍首相は訪中を検討してるらしいのに、その中国をここまで名指しで敵国指定するなんて、もうネタがつきていよいよ血迷ったとしか思えません
中国の脅威なんて集団的自衛権行使の理由にならない。 (Everyone says I love you !)
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/308a51b712c3ac7a9e9df9f8ef1ec27d
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以上、これで「安保法制は日本の防衛を強固にするためだ」という理由は全部がらがらと崩れ去りました。
我が国を取り巻く安全保障環境が厳しくなったため防衛を強化する必要がある、と政府が説明してきた立法事実(その法律を成立させなければならない理由)は、最初から全然存在しなかったのです。
つまり詐欺。
もし安保法制が成立したとしても、ここにあげた事例が発声して集団的自衛権行使することは120%ないでしょう
じゃあ、政府はこの法律で何がやりたいの?
この法律で今まで出来なかったことの何が出来るようになるの?
わざわざ詐欺を働いてまでこの法律を成立させたい理由は何?

政府がこの法律でやりたいこと、やれるようになること、それは、米軍の武力と一体化し、いつでもどこへでも米国の戦争に参加して武力行使することです
これこそがこの法律の本当の狙いなのです
それがどんな恐ろしいことを招くか、想像してみてください
安保法制に賛成の皆さんは、そんなことを望んでるのですか?って話なのです
というわけで、次のエントリ-に続きます
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