自民党はこんな「主権者」を育てたがっている(2)
- 2015/08/02
- 15:00
その続きです
●自民 教員の政治的行為の制限違反に罰則を[NHK]
7月2日 17時41分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150702/k10010136321000.html(リンク切れ)
自民党の文部科学部会は、選挙権が得られる年齢を引き下げて18歳以上にする改正公職選挙法の成立を受けて、学校教育の政治的中立性を確保するため、教員の政治的行為の制限違反に罰則を科すための法改正などが必要だとする提言をまとめました。
自民党の文部科学部会は、選挙権年齢の引き下げに伴って、今後、必要となる教育の在り方を議論していて、2日の会合で提言をまとめました。
提言では、「来年夏の参議院選挙から高校3年生のクラスに有権者がいるという、これまで経験したことがない状況が生じる。学校の秩序を守りながら、生徒が政治参加への意欲を高める努力を重ねなければならない」として、主権者教育の充実や学校教育の混乱を防ぐための取り組みを求めています。
そして、提言では、学校教育の政治的中立性を確保するため、教員の政治的行為の制限違反に罰則を科すための教育公務員特例法の改正などが必要だとしています。
また、昭和44年に当時の文部省が出した「高校生の政治活動は教育上望ましくない」とする通知については、選挙権年齢の引き下げに伴って見直すとしつつ、「高校生の政治活動は、学校内外で生徒の本分を踏まえ、基本的に抑制的であるべきだ」としています。
自民党の文部科学部会は、この提言を政府に提出することにしています。
高校3年生は選挙権を行使するようになるのだから「主権者教育を充実しろ」と言う一方で、逆に学校での政治教育のあり方を罰則まで導入して締め上げるという、驚くべき矛盾
「高校生の政治活動は、学校内外で生徒の本分を踏まえ、基本的に抑制的であるべきだ」
って、これ、結局高校生は政治について考えるなって事じゃないですか。
政治活動に抑制的であらねばならない主権者って、なにそれ初耳。それ、主権者っていうんですか?
自民党は、政治について積極的に考え参加することは「学生の本分」に反すると考えてるらしいですが、じゃあ何故選挙権を付与したんでしょうね、矛盾してます
「学校の秩序を守りながら」とか「学校教育の混乱を防ぐための」
という発想が根底にあるのも畏れ入ります。高校が学校で政治について学ぶのは、欧米では当たり前の子どもの権利です。
でもそれは学校の秩序を乱し混乱を招く災いの元だと思ってるんですよね?自民党の頭の中は、未だに「下々の民には政治は劇薬、よらしむべからずしらしむべからず」の中世なんですか?
高校生は一日の殆どを学校で過ごします。
自主的な政治的意見を持てれるようにするには学校で自由に十分な情報を得て、自由闊達な議論ができることが必要不可欠です
なのにこんな萎縮した授業の中で、どうやって政治センスを養えと言うのでしょう、できるわけないじゃないですか
もう、新たなる主権者をどんな風に育てたいのかミエミエ。
だいたい今まで政府や地方公共団体、教育委員会が「政治的に中立でない」とクレームをつけてきたのは、政権の意向に反した時ばかりです
最近こんなことがありました
安保関連法案:山口の高校授業で模擬投票…県教委は問題視
毎日新聞 2015年07月03日 21時32分(最終更新 07月04日 00時42分)
http://t.co/sg3ArJYs8U
山口県柳井市の県立柳井高(小林真理校長)で先月、安全保障関連法案について2年生の生徒が自分たちの考えを発表し、どの意見が説得力があるかを問う模擬投票をする授業があった。これについて、浅原司・県教育長は3日、県議会で「法案への賛否を問う形になり、配慮が不足していた」と授業を問題視する見解を示した。さらに県教委として「指導が不十分だった」と監督責任にも言及した。来年の参院選から18歳の高校生が投票権を行使する公算も大きい中、専門家から「現場を萎縮させ、教育の自由を奪う発言だ」と批判が起きている
県議会の一般質問で、笠本俊也県議(自民)が「政治的中立性が問われる現場にふさわしいものか、疑問を感じる。県教委としてどういう認識なのか」と尋ねた。浅原教育長は投票を実施した点を問題視したうえで「(県教委として)主権者教育の進め方について学校への指導が不十分だった」とし、今後、政治的中立性の確保や授業の進め方、資料の取り扱いなどを盛り込んだ新たな指針を学校に示すと述べた。
県教委などによると、模擬投票は先月24日に2年生の「現代社会」の授業(45分間)であった。生徒たちは同22日の授業(同)で、教諭が配布した日経新聞と朝日新聞の記事を参考に政府与党の見解や野党の主張、憲法学者の意見などを学習。翌日までに各自が自宅学習を行い、集団的自衛権について「どんな時に行使するのか」「他国の領域で行使する可能性は」「違憲か合憲か」などの論点を、B4判の資料にまとめて同24日の授業に臨んだ。
同24日は生徒たちは4人ずつ8グループに分かれて議論し、それぞれ法案への賛否を明らかにした。2グループは「自衛隊の活動範囲を広げないと米国を助けられず、友好関係にひびが入る」などと賛成を表明し、残りの6グループは「戦争に巻き込まれる可能性がある」「集団的自衛権の定義があいまいだ」などの理由で反対と主張。法案の賛否ではなく、どのグループの意見が最も説得力があったかを問う模擬投票を実施した。その結果、「他国を守るのであれば、非戦闘地域での食料供給や治療(医療)でも貢献できる。自衛隊が戦争に巻き込まれてからでは遅い」と反対を訴えたグループが最多の11票を獲得した。
高校によると、この2回の授業の前にも、2時限を使って安全保障関連の授業をした。授業を担当した教諭は同24日、毎日新聞の取材に「一番の狙いは政治への関心を高めること」と説明。翌日の新聞で毎日、朝日、読売、中国の各新聞などが好意的に取り上げた。
浅原教育長は取材に対し「配布した資料が新聞2紙では少ない。全体像が完全でない資料を使い、かつ時間も十分でない形で投票させた。高校生に賛否を問うこと自体、私自身は微妙だ」と答えた。【松田栄二郎、蓬田正志】
◇大東文化大の村山士郎名誉教授(教育学)の話
安全保障関連法案に限らず、原発の必要性や消費増税など、是非の定まらない事象は多々ある。生徒が自由に意見を述べ、討論できる環境で結論を出したのであれば、問題はない。そこに教育長が口を挟むのは、教育の自由を奪うことを意味する。来年の参院選から投票権が18歳以上に引き下げられ、高校生も選挙権を持つ見通しになった。政治教育に試行錯誤をしている現場を萎縮させることにもつながる、時代錯誤的な発言だ。
集団的自衛権について、どういう考え方があるかを生徒達自身に調べさせ、どの立場に賛成できるか生徒達自身で議論させる
この授業のどこが政治的中立性に反してるのかさっぱりわかりません
・・え?使った資料が朝日と日経だけだったことが「政治的に中立じゃない」っですって?
どんな無茶な言いがかりですか。全国紙としてはオーソドックスな朝日と日経ではご不満ですか?そんな細部まで県議や教委が口を挟むのは完全に「教育の自由」への侵害です
高校模擬投票の中立性不十分 安保法案授業、山口県教委 #excitenews 朝日と日経なら十分中立だろう。こいつは、読売と産経だけを提供しなければ中立じゃないと言うに決まってる。 http://t.co/jR39M6rUTG
— tyu-yann (@jurist60176) 2015, 7月 4
自民党はそもそも現実の政治問題を考えさせる授業自体がお嫌いなんですよね?
だって生徒が自分で調べてちゃんと議論したら現政権批判という結論に達する可能性が高いことばかりしてるのだから。
自分の頭で自主的に考える生徒が増えてくれば、自然と政権に反対する生徒も増えてくる。
そしたら、今日行われる史上初の高校生によるデモなんていう政治参加もでてくる
当日のコースが決定しました🙆💕
渋谷と原宿そしてセンター街を通ります!
集合場所▷代々木公園けやき並木
集合時間▷15:30
出発時間▷16:00
みなさんお待ちしています!!
#制服デモ #teensSOWL #夏デモ pic.twitter.com/rrgpK8CCZC
— T-ns Sowl (@teensSowl) 2015, 7月 27
せっかく高校3年生にも投票権を与えたのに、これじゃあ逆効果じゃないか
そういうことでしょ?
こういう教育委員会等の態度が「考えない日本人」「政治を忌避しお上任せにする主権放棄の日本人」をずっと作ってきた。(委員自身のアタマもそうやって馴化されてきた)
安保関連法案:山口の高校授業で模擬投票…県教委は問題視 - 毎日新聞 http://t.co/sg3ArJYs8U
— Hideyuki Hirakawa (@hirakawah) 2015, 7月 4
続)続)そして、こういう「考える主権者教育」をやると「偏向教育」と見なされ、教師が罰せられる世の中はすぐそこに。
教員の政治的中立「違反に罰則を」 選挙権18歳で自民
http://t.co/UhAwT7TQdz
— Hideyuki Hirakawa (@hirakawah) 2015, 7月 4
憲法的価値観に立脚した民主主義をみっちり教え、生徒がそれを現在の政治状況に当てはめて考えたら、現政権批判の意見を持つ生徒だって出てくるに決まっています
それを、「一方の立場にしか立っていない。中立性を欠く」と攻撃することは、永遠に政権批判する意見を持つな、と言ってるのに等しいのです。それは自分の頭で考え自分の意見を持つこと自体を萎縮させます
この国では意見を持つ行為そのものが、空気が読めないってことになってしまうらしいんです(福田和香子「折々のことば:115=鷲田清一」『朝日新聞』2015年7月27日付 http://t.co/HARBKmR89q SEALDsのスピーチ pic.twitter.com/mBnjquLS49
— 氏家法雄 (@ujikenorio) 2015, 7月 27
「学校教育に政治的なイデオロギーが持ち込まれることがあってはならない」とやたら言いたがりますけど、これ実際には「政権に批判的な政治的志向が持ち込まれることはあってはならない」になってますよね?
政権に迎合するイデオロギーにも、それを持ち込むのは好ましくない、とちゃんと言いますか?いわないでしょう?
大日本帝国下の国家教育の要であった教育勅語を基軸に教える幼稚園では首相夫人が涙を流して感激したらしいですね
●安倍首相夫人・アッキーも感涙…園児に教育勅語教える“愛国”幼稚園 「卒園後、子供たちが潰される」と小学校も運営へ
http://www.sankei.com/west/news/150510/wst1505100014-n1.html
来年設立されるであろうこの小学校に関して、「政治的中立ではない」「政治的イデオロギーを持ち込んでいて好ましくない」という声は未だかつて政権側から聞こえた試しはありません。
そもそも戦前美化&歴史修正いというおもっきり政治的に偏った育鵬社の教科書を爆推しするような「政治的に偏った」政府及び文科省、地方公共団体が「政治的中立性」を公正に判断できますか?そういう政権がいう「中立」の基準は何なのでしょうか?
こちらのエントリ-で、この「政治的中立性」の名の下に押しつけられる「政治的偏向」について、もう少し考えたいと思います。
少し長くなりますが、毎日新聞の記事を末尾にお持ち帰りしておきます。
●特集ワイド:続報真相 自民部会「教師に罰則」提言 主権者教育の「中立性」って何 毎日新聞 2015年07月31日 東京夕刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20150731dde012010018000c.html
「18歳選挙権」が実現し、高校生への「主権者教育」の必要性が叫ばれ始めた。一方、自民党文部科学部会は「政治的中立」を逸脱した教師に罰則を科すことなどを提言、教育現場に波紋が広がっている。主権者教育における「中立性」について考えた。【小国綾子】
「何だ、これは?」。模擬選挙など主権者教育を10年以上実践してきた東京の私立玉川学園社会科教諭、〓合(そあい)宗隆さんは、自民党文科部会が7月、安倍晋三首相に提出した主権者教育への提言を見て仰天した。
タイトルは「選挙権年齢の引き下げに伴う学校教育の混乱を防ぐための提言」。学校を政治闘争の場にしてはならないとし、高校生の政治活動を抑制的にするよう指導することや、「政治的中立」を逸脱した教師に罰則を科せられるよう教育公務員特例法を改正することを求めている。おまけに日本教職員組合(日教組)をけん制する狙いか、「教職員組合の収支報告の義務付け」も盛り込まれている。
〓合さんは「これではまるで1925年に普通選挙法で選挙権を拡大すると同時に、治安維持法で思想の自由を縛ろうとしたのとそっくりだ。主権者教育はまだ、実践を積み重ねる段階なのに、先に罰則ありきでは学校現場が及び腰になる」と怒りを隠さない。
一方、生徒を連れて身近な戦争遺産などを巡る見学会を続けてきた都内の私立高社会科教諭、川口重雄さんは「森喜朗元首相が過去に『無党派層は寝ていてくれればいい』と言ったのを思い出した。『寝た子』を起こしたくないから先に教師に足かせをはめ、『何もするな』というわけでしょう。でも生徒は寝ていません。政治家がこんな動きをすれば、きな臭いぞ、と気付きます」と語る。
主権者教育研究の第一人者、東大教育学部の小玉重夫教授も自民党提言には批判的だ。「学校教育の混乱を防ぐための提言と銘打っていますが、混乱は学校に政治権力が入り込むことで起こる。罰則を科すこと自体が学校をかえって混乱させます」
小玉教授は、主権者教育の目的は生徒の政治的リテラシー(知識や判断能力)を高め、能動的で積極的な市民を育てることと指摘。そのためには現実に論争の起こっている問題を取り上げ、なぜさまざまな意見が生まれ、対立しているのかを生徒自身に考えさせることが大切だ、と説いてきた。
「これまでの学校現場では、例えば安全保障関連法案や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)、原発など論争のある時事問題に触れないことが『中立』だという風潮があった。しかし、それではかえって中立性が損なわれ、政治的リテラシーは育ちません。これからは授業で積極的に時事問題を取り上げる教師や学校を後押しし、守るべきなのです。処罰というのはイデオロギー対立の激しかった55年体制時代の旧態依然とした考え方です」とも。
実際、小玉教授の懸念する通りの事態がすでに山口県で起こっている。県立柳井高で6月、安保関連法案について論点などを紹介した複数の新聞記事を参考に、賛成、反対に分かれて議論し、どの主張に説得力があったかを投票する授業が行われた。ところが自民党県議が県議会で授業の「政治的中立性」を問題視し、県教育長が謝罪したのだ。
小玉教授は「県教育長が謝罪したとすれば問題です。論争的なテーマを扱うことに慎重になれ、というメッセージとして現場に伝わり、学校を萎縮させてしまう」と指摘し、こう批判する。「自民党提言は『学校を政治闘争の場にするな』と書いていますが、罰則を科そうという提言内容や、山口の自民党県議の授業の中立性を問題にした発言は、かえって学校を政治闘争の場にしてしまう危険性をはらんでいます」
来夏の参院選から高校3年のうち18歳の生徒は選挙権を持つ。文科、総務両省は公職選挙における基礎知識や注意点などを盛り込んだ主権者教育の副教材を秋までにまとめ、年内に配布する見通しだ。
(中略)
◇もの言えないと逆効果
旧満州(現中国東北部)からの引き揚げを経験した漫画家のちばてつやさん(76)は「中立性」の名の下に自由にものを言えなくなるのを危惧する。「国に都合の悪いことを言うと罰するぞ、という雰囲気がすでにある。『中立性』と言うがその『まん中』の線は誰がどの目線で引くのですか。そんな線は引いちゃいけない。自由な議論ができる社会を守ってこそ、若者は政治に関心を持ち、政治的リテラシーを深められるのでは」と語るのだ。
高校生たちはどうか。選挙のたび街頭などでの模擬投票を実施してきたティーンズライツムーブメント代表、法政大第二高(川崎市)3年、百瀬蒼海(あおい)さん(17)は「自民党提言の罰則は行き過ぎ。また、山口県の高校の件で教育長には謝罪しないでほしかった。どちらも当事者である子供の声の届かないところで語られているのはおかしい」と残念がる。「中立性が大事なら教師はディスカッションのお題だけくれればいい。僕らは自分たちで調べ、資料を集め、極端な考えに安易に染まることなく、何が問題なのかを話し合いますよ」とも。
〓合さんの授業を受けてきた高校3年女子たちは言う。「私たちは学校で時事問題や差別、メディアリテラシーの授業を受けてきたから、先生が意見を述べても、いろいろな意見の一つと受け止められる。むしろそういう授業を受けたことのない生徒の方が、先生の話をうのみにし、影響を受けちゃうんじゃないかな」
実は、小玉教授も同じ指摘をしている。「政治的リテラシーがないと、特定の考え方がすり込まれやすい。だからこそ論争的なテーマを授業で教え、政治的リテラシーを身につけさせることが、本当の意味で中立性を守っていくことにつながるのです」
<開かれた十分な議論は健全な民主主義にとって不可欠である>。これはクリック・リポートの一節だ。日本の民主主義の将来を占う、主権者教育の行方が気になる。
==============
◇自民党文部科学部会の「提言」骨子
▽模擬投票、公職選挙法違反事例といった政治参加などに関する副教材を全高校生に配布
▽高校に新科目「公共(仮称)」を創設
▽高校生の政治活動は抑制的にするよう指導
▽教育公務員特例法を改正し、政治的中立を逸脱した教員に罰則を科す
▽地方公務員法を改正し、教職員組合の収支報告を義務づける
- 関連記事
-
- 自民党が学校教育に要求する「政治的中立性」は、自民党の意図に沿う強い「政治的偏向」の押しつけに他ならない (2015/08/04)
- 自民党はこんな「主権者」を育てたがっている(2) (2015/08/02)
- 自民党はこんな「主権者」を育てたがっている(1) (2015/08/01)