自衛隊員に遺書を強要する自衛隊の精神性は大日本帝国の特攻隊と同質
- 2015/07/13
- 14:00
●陸自北部方面隊:隊員に「遺書」指示 元隊員が証言 毎日新聞 2015年07月11日 10時00分(最終更新 07月11日 12時51分)
http://mainichi.jp/select/news/20150711k0000m040151000c.html
◇総監部「服務指導の一環。遺書ではない」
陸上自衛隊の北部方面隊(北海道)で2010〜12年、隊員たちが「遺書」とも受け取れる「家族への手紙」を書くよう指示されていたことが、元隊員や陸自北部方面総監部への取材で分かった。総監部は「服務指導の一環で、遺書ではない」とするが、元隊員は「事実上の遺書だった」と証言した。安全保障関連法案の衆院審議が大詰めを迎える中、波紋を呼びそうだ。【三股智子、前谷宏】
元隊員は、陸上自衛隊を今年1月に定年退職し、北海道東部に住む元2等陸曹、末延(すえのぶ)隆成さん(53)。1980年に東京の私立高を卒業して陸自に入隊し、北海道や関東各地で任務に就いた。
北部方面隊鹿追駐屯地(北海道鹿追町)に所属していた2010年12月、上官から突然、「休暇前に『家族への手紙』を書き、個人用ロッカーの左上に入れておくように」とA4判の白紙1枚と茶封筒を渡されたという。
目的を問うと、「万が一、何かあった場合に家族に残す言葉を書いてみろ」と言われた。上官の指示には逆らえない。<楽しい人生ありがとう>と妻への感謝を短く書き、封筒に入れて封をした。同僚たちも、みんな同じ指示を受けた。紙に何も書かず封筒に入れた仲間もいたという。
北部方面総監部によると、方面隊トップである当時の北部方面総監が隊員に手紙を書かせるよう部隊長らに口頭で伝えた。総監部は取材に、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努める」という自衛隊法の規定(服務の本旨)を実践するのが目的で、「任意であり命令ではない。遺書という認識はなく、あくまで家族への手紙」(広報)と説明した。10年より前や12年より後は、手紙を書かせる指導はしていないという。
末延さんは12年以降は肺の病気で休職し、定年退職3カ月前の昨年10月、総監部に手紙の返却と理由の説明を求める苦情申し立てを行った。手紙は返却され、苦情処理通知書で「長期の急な任務に備え、懸案となり得る事項についてあらかじめ本人の意思を整理しておくことで、個人の即応性を向上させるもの。遺書とはまったく別物」と説明された。
しかし、末延さんは「手紙は遺書と受け止めた。同僚たちもみな『あれは遺書だった』と言っていた」と振り返る。そして「国を守る忠誠心はある。しかし、今の時代、どんな大義があって命をかけろと言うのか」と、戦後の安全保障政策を転換する安保関連法案に疑問を投げかける。
法案は早ければ来週にも衆院を通過する見通しで、成立すれば自衛隊が米軍を後方支援する機会が増える。末延さんは「自分が入隊の宣誓をした時は、よその国の戦争に加勢することは想定していなかった。加勢で海外へ派遣される仲間は死んでも死にきれないだろう」と話す。
後輩らは今も手紙をロッカーに保管しているかもしれない。末延さんは「都合よく死を美化するために使われかねない。勇気を持って疑問の声を上げてほしい」と語る。11日、札幌市である北海道弁護士会連合会の集会で手紙の問題を訴える。
◇安保法制できれば現実化
軍事評論家の前田哲男さんの話 自衛隊流の死生観を隊員たちに持たせるための一種の精神教育として指導したのだろうが、旧日本海軍の兵士が出撃の際に出した家族や知人への手紙をほうふつさせる。
安全保障関連法案が成立すれば、陸上自衛隊もこれまでの人道支援から、戦闘部隊とより一体化した後方支援などを担う可能性が高まる。その時には単なる精神教育ではなく、実際に遺書を書かせることが現実化するかもしれない。
◇陸上自衛隊北部方面隊
全国を五つに分けた陸自方面隊のうち最大規模の部隊で、北海道の防衛と警備を担当している。二つの師団と二つの旅団、約50の方面直轄部隊で構成され、隊員は約3万人。トップは陸将の方面総監が務め、本部に当たる方面総監部は札幌市に置かれている
実はこれは赤旗が今年の3月に既にスクープしています
●陸自北部方面隊、隊員に“遺書”強要
「家族への手紙」置いていけ
「戦争立法」備える事態
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-03-25/2015032501_01_1.html
●陸自隊員への“遺書”強要
「軍人の心構えだ」総監は言った
海外派兵強化 背景に
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-04-09/2015040915_01_1.html
(引用開始)
隊員うめきごえ
元隊員からのメールと聞き取りをもとに再現すると―。
2010年夏、札幌市の陸上自衛隊真駒内駐屯地のグラウンド。整列した隊員による号令一下、一糸乱れぬ敬礼を受けて「総監着任初度視察」をした千葉新北部方面総監が訓示をすると、隊員のなかからうめき声がもれました。
「隊員の勇姿に接して総監として大変頼もしくうれしく思う。総監着任にあたって五つの要望をする」として真っ先に切り出したのが“遺書”だったからです。
「遺書を書き、自分の身辺整理をしてほしい。遺書を書くと今、解決しなければならないこと、言い残す相手などが見えてくる。これこそが軍人として有事に即応する心構えである。言い換えれば命を賭す職務につく軍人としての矜持(きょうじ)である」
千葉新総監は、この訓示を、「てっぱち」と呼ばれる実弾をはね返す鉄製のヘルメットを着用、迷彩服姿で行いました。新総監着任式では常装とよばれる制服着用が一般的なだけに印象は強烈でした。
北部方面隊は、この訓示にそって、3万8千人の全隊員に対し、「家族への手紙」という形で、事実上の“遺書”の執筆を強要したのです。
元隊員は、遺書は強要されるべきものではない、と強い反発を感じました。
「遺書は、『家族への手紙』に変更されたが、(命を賭す覚悟で)有事に即応する軍人の矜持をもてという狙いや本質は何ら変わらない」
軍事作戦に投入
千葉総監が「軍人の矜持」を力説する背景があります。北部方面隊の「役割」です。同方面隊は「冷戦時代」は対ソ作戦を担う「北の守備隊」でしたが、ソ連崩壊後はイラク派兵の先陣を切って、各地のPKO派遣など「国際貢献」で毎年のように複数の部隊が海外での軍事作戦に投入されています。
千葉総監は在任中、部外での講演で、「これほど海外任務で貢献している方面隊はない」と豪語しています。
元隊員は北部方面隊の「暴走の連鎖」をこう指摘します。
「隊員に“軍人の矜持”としての遺書の強要は2年で終わったが、方面総監部は有事即応で海外任務につく隊員の留守家族を支援する『銃後の備え』的協定の締結を道内の自治体との間で急速に増やしている。いずれも集団的自衛権行使をにらんだ日本の防衛とは無関係の海外で戦争する国・自衛隊づくりであり許せない」
震える。
総監が鉄製のヘルメットと迷彩服に身を包み、遺書を書けと檄を飛ばすーどこの大日本帝国軍人がタイムスリップしてきたかとびびります。
遺書の強要が行われたのは2010年ですが、自衛隊は既に専守防衛の域を超え、戦争へ出撃する態勢を整えてきていた、
そして日本の場合、それは必然的に戦前戦中の日本軍の精神性を帯びるのだ、日本にとって戦争が出来る軍隊の復活とは戦前戦中の軍国主義時代の価値観の復活を伴わずにはあり得ない、ということを強く感じます。
これについてmzpontaさんが既に私の思うところを書いていて下さったので、そっくりお持ち帰りさせていただきます
<みんなどこか変わってるから大丈夫>
●これは「現代版特攻隊委員の遺書」だ
http://d.hatena.ne.jp/mzponta/20150712/p4
え~、「万が一、何かあった場合に『家族に残す』言葉」って、
どない考えても、遺書そのものやんけ…と思うんですけど、
防衛省は「遺書とはまったく別物」と、多分、防衛省しかわからんような呆れる言い逃れをしてはりますわ
(こういう呆れた言い逃れは、およそ「一般社会では通用しない」はずですが
さすがは防衛省、言うことが違う…って感心してる場合やないねん!)
ぼくね、強制的に遺書を書かせることを上官が「命令」できる…なんて組織は
なんだか戦前の「大日本帝国の軍隊」を思い出してしまうんですけども
戦前の軍隊と戦後の自衛隊とで、そういうトコはまったく変わってない…というのは
めっちゃ怖ろしい話であると思います
ちなみに、この遺書は上官がいつでも開くことができるロッカーに入れることを命じられ
白紙の文書を入れた者に対しては、上官が注意したそうですから
「検閲されること」が当然に予定されているもの…という点で思いっきりプライバシーの侵害になってるし、
防衛省の期待しない内容に関しては訂正を強いられるという点で自発的に書いたものでもなく、かつ、
その誘導にしたがった内容になってる点で、まったく信頼のできない文書(遺書)になってるんです
ほな、なんでそんな「信頼できない文書」を書かせんねん?…と言えば、
それはやっぱり、隊員が死んだ後に公開して何かをアピールしたい…という意図があるように思えてきて
ぼくは、知覧の特攻平和記念館で公開されている遺書とダブって仕方がありません
(この点に関しては、「文書に残ってるからって、それが真実とは限らないのです」(2015-06-12)でも触れてますので、
よかったら合わせてお読み下さい)
※ちなみに、自衛隊はこの文書について
自衛隊員の服務指導の一環で、隊員に「死生観を確立」してもらうため…と説明してるんですが
(→7/11TBS「報道特集」より)
「死生観」なんてもんは「思いっきり個人の内心に関わるもの」であって
「他者からとやかく言われるもんではない」んです
これは憲法19条で百パーセント保証される内心の自由の侵害であり明確な憲法違反なんですけど、
実力組織である自衛隊が憲法違反するとはなんちゅう怖い話なんでしょうか…
自衛隊は上官の命令は絶対の世界ですから、内心への介入という重大な人権侵害、憲法違反があってもなかなかそれに刃向かうことができない状況だと思います。
命令は絶対という環境では、そもそもそれを人権侵害だと認識できる思考能力が奪われかねませんね。
こうした精神性や、思考能力を奪う「国民教育」は自民党の悲願でしょう。
次第に学校教育もこういう色彩をおびてきていますね
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