自衛隊が軍隊になる日
- 2015/03/01
- 14:00
一年も立たないうちにざっとこれだけの動きが。
簡単にまとめてみました。
■集団的自衛権閣議決定
2014年7月 それまで集団的自衛権の行使は憲法法認められないとしてきた政府見解を認められると閣議決定で変更、
そして自衛権行使が行使出来る要件も変更しました。
■周辺事態法の改正と自衛隊海外派遣恒久法の制定を提案
これまでは自衛隊海外派遣となるといちいち特別措置法を立法してからでないと出来なかったし、自衛隊が行ける場所も一定の地理的制約があるとされてきました。
しかし、もういちいち立法する手間を省き、地理的制約も取っ払い、いつでもどこへでも自衛隊派遣できるように法律を変え、集団的自衛権を存分に行使できるように(即ち、米の要請があればいつでもどこへでも即座に武力行使も含めた助太刀にいけるように)しようとしています。

こうして憲法違反の閣議決定と法律を整備した後にいよいよ憲法を変えて、「どうだ、もうこれで集団的自衛権は違憲ではなくなったぞ」と正当化しようという腹づもりなのですから順番が逆、無法すぎます
●<周辺事態法>地理的な制約を撤廃、政府が提案
毎日新聞 2月20日(金)11時51分配信
http://mainichi.jp/select/news/20150220k0000e010179000c.html
◇与党協議会 公明、法律からの削除に慎重姿勢
政府は20日午前、安全保障関連法案の整備に向けた与党協議会で、朝鮮半島有事などで米軍を後方支援するための周辺事態法を改正し、「周辺事態」という事実上の地理的な制約を撤廃する考えを示した。同法を米軍や他国軍を支援する法律に改正したうえで、これとは別に人道支援や復興支援のために自衛隊を派遣する恒久法を制定する。自衛隊を派遣できる範囲が拡大することとなり、派遣時の歯止めをどう確保するかが与党協議の焦点となる。
政府は、周辺事態は「事態の性質に着目した概念」で、地理的な概念ではないと説明してきたが、「周辺」という言葉を用いているうえ、1999年に当時の小渕恵三首相が国会で「中東やインド洋で起こることは想定されない」と答弁するなど、一定の地理的制約があると考えられてきた。
与党協議後、自民党の高村正彦副総裁は記者団に「地理的概念と誤解されないように『周辺』は取った方がいいと政府は考えているのではないか」と述べた。
安保法制の整備に関する昨年7月の閣議決定は、弾道ミサイルの開発などにより、「脅威が世界のどの地域で発生しても、我が国の安全保障に直接的な影響を及ぼし得る」と明記している。
政府側は与党に対し、周辺事態法が制定された99年以降、アフガニスタン戦争で、テロ対策特別措置法により自衛隊が派遣されインド洋で多国籍軍への給油を行ったことや、イラク戦争でイラク復興特別措置法により輸送支援を実施した実績を強調。「自衛隊が我が国の平和と安全につながる活動を行う範囲は拡大している」と説明した。
そのうえで、周辺事態法の冒頭にある目的の規定から「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態など」との文言を削除し、「周辺事態」という表現を変える。
公明党は、周辺事態法の改正により自衛隊の活動範囲や支援対象を広げることには一定の理解を示す一方、周辺事態を法律から削除することには慎重な姿勢だ。概念の名称が変わる場合でも一定の地理的な制約が残るように求めていく考えだ。同党の北側一雄副代表は協議会冒頭で、「自国防衛のための後方支援と、国際協力での局面は切り分けて議論すべきだ」と語り、改正する周辺事態法は日本の周辺有事のための法律として残すことが望ましいとの考えを示した。【飼手勇介、高本耕太】
◇周辺事態法
朝鮮半島有事や台湾有事を想定し、1999年に成立した。「日本周辺地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態」を周辺事態と規定し、武力行使をする米軍に自衛隊が後方支援をすることができる。政府は、周辺事態を地理的概念ではないと説明してきたが、事実上の地理的制約と考えられてきた。燃料や水などの輸送、補給や負傷者などへの医療行為が可能だが、武器・弾薬の提供や発進準備中の航空機への給油は除外されている。
●自衛隊派遣 歯止め撤廃 政府、恒久法素案で拡大
2015年2月21日 朝刊(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015022102000150.html
政府が二十日、安全保障法制をめぐる与党協議で示した自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法の素案は、地理的制約を設けず、支援対象の国も限定しない内容だった。政府は朝鮮半島有事を想定した周辺事態法も改正して「周辺事態」の概念を撤廃する意向。自衛隊の海外派遣の根拠や活動内容の歯止めを外す方針が次々と盛り込まれ、自衛隊の活動拡大を目指す政府の姿勢が鮮明になった。 (新開浩)
恒久法の素案は、国連決議に基づく各国軍の武力行使や有志国連合の自衛権行使を支援対象として明記。自衛隊の活動範囲を絞る「非戦闘地域」の概念も取り払い、昨年七月の閣議決定で示した「現に戦闘行為を行っている現場」以外なら活動を認めるとした。自衛隊が多様な任務に対応できるよう「適切な武器使用権限のあり方を検討する」として、武器使用基準の緩和も盛り込んだ。
恒久法のほかにも、政府は自衛隊の活動範囲を広げようとしている。十三日の前回協議では、武力攻撃に至らない侵害「グレーゾーン」事態で、日本周辺で警戒活動や訓練を実施中の米艦を自衛艦が防護できるようにする法整備をめぐり、閣議決定が米艦に限定していた防護対象を米軍以外に拡大する法整備の検討を与党側に求めた。
これに対し、公明党側からは二十日の協議で、恒久法の素案に対し「自衛隊の安全をどう守るのか」と懸念する声が出た。グレーゾーン事態での防護対象についても「日米同盟と同様に密接な協力関係のある国」に限定するよう主張。該当する国の定義を明文化するよう求めた。
与党協議後に開かれた公明党の党内協議では、事実上の地理的制約だった周辺事態の概念撤廃について「好ましくない。納得できない」との意見が出た。
次回協議では、国連平和維持活動(PKO)協力法に基づいて派遣された自衛隊員の武器使用基準を緩和し、他国部隊や民間人を警護できるようにする同法改正についても協議する。
◆集団的自衛権 行使にらむ
政府が二十日の安全保障法制に関する与党協議で、周辺事態法を改正して「周辺事態」の概念を廃止する方針を示したのは、他国を武力で守る集団的自衛権を行使する際に混乱要因になりかねないと判断したからだ。例えば朝鮮半島有事では、安倍政権が集団的自衛権行使を想定する事態と周辺事態の双方に当てはまる状況になる可能性があり、法体系の改変を図った。
周辺事態法は「そのまま放置すれば、わが国に対する直接の武力攻撃に至る恐れのある事態」を周辺事態と定義する。政府が朝鮮半島有事を周辺事態と認定すれば、自衛隊による米軍への給油や輸送の後方支援は可能だが、集団的自衛権行使は認められない。
政府は昨年七月の閣議決定で集団的自衛権の行使が許される状況を「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、わが国の存立が脅かされ、国民の生命に明白な危険がある場合(存立危機事態)」と定めた。
朝鮮半島有事で韓国を防衛する米軍が攻撃された場合、存立危機事態と認定すれば日本は集団的自衛権を行使できるが、周辺事態と解釈すれば後方支援しかできない。安倍政権はこうした制約をなくすために「周辺事態」を廃止したいと判断。政府からは「本当は法律自体をなくしたい」との本音も漏れる。
一方、政府が与党に示した自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法の素案では、最初から自衛隊派遣に地理的な制約を設けていない。政府の考えに沿った恒久法が成立すれば、仮に周辺事態法を廃止しても、自衛隊は世界中で米軍をはじめとする他国軍を支援できるようになる。
だが、公明党は日本の安全を確保する周辺事態法と自衛隊による国際貢献のための法律は目的が違うとして、周辺事態法の存続を主張。このため政府は同法改正を提案した。同法改正をめぐる与党協議は、最大の焦点となる集団的自衛権行使の議論に直結している。 (竹内洋一)
■文官統制の廃止の改正案
文民統制(シビリアンコントロール)は、職業軍人でない文民が、軍隊に対して最高の指揮権を持つことことで軍部の政治への介入を抑制し、民主政治を守るための原則です(デジタル大辞林より)
我が国では特に戦前軍部が強大な力を持ち軍国主義となった反省に基づき、文民統制をより実効あらしめるために設けられている補助制度が文官統制です。
朝日のこちらの図がわかりやすいです。
http://www.asahi.com/articles/photo/AS20150223005623.html
ところがその文官統制を廃止しようとする動きがあります。
●防衛相「文民統制を強化」 「文官統制廃止」の法改正案
2015年2月24日 夕刊(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015022402000248.html
中谷元・防衛相は二十四日午前の記者会見で、防衛省が内部部局の背広組(文官)が制服組自衛官をコントロールする「文官統制」の規定を廃止する同省設置法改正案の提出を予定していることに関し「(防衛相が直接)背広組と制服組の双方から意見を聞いて判断していくので、より文民統制が強化される」と述べた。
「文官統制」規定の廃止をめぐっては、文民統制(シビリアンコントロール)が低下するとの指摘が出ており、それに反論する発言といえる。
現在の防衛省設置法一二条は、防衛相が制服組トップの統合幕僚長や陸海空の幕僚長に指示する場合などに、背広組の官房長や局長が「大臣を補佐する」と規定している。
<文民統制と文官統制> 文民統制は政治が軍事に優越するという民主主義国家の基本原則で、シビリアンコントロールの訳語。旧憲法下で軍部が暴走し、第2次世界大戦の惨禍をもたらした反省から採用された。首相や閣僚は文民でなければならないと憲法で規定し、首相が自衛隊に対する最高指揮権を持つ。さまざまなレベルで行われることが必要とされ、防衛相を支える背広組(文官)を制服組自衛官より優位とする防衛省内の「文官統制」もその一つ。ほかに(1)防衛出動の承認など国会による統制(2)首相や防衛相による政府内の統制-がある。
シビリアンコントロールは日本に限らず、民主主義国が得てきた教訓です。
文官統制を廃止してシビリアンコントロールを低下させようなんて、戦前軍部が力を握った時に歴史の針を逆戻りさせたいのでしょうか。
もしも緊急事態法まで盛り込んでる自民壊憲案が実現したとしたら、再び軍部が国民の統制のために力をふるう悪夢もまんざら絵空事ではなくなりそうです。
ところが、これを言い出した中谷元防衛相の唖然とする発言がこちら。
●中谷氏会見 文官統制「軍部暴走の反省でない」
2015年2月27日 夕刊(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015022702000261.html
中谷元防衛相は二十七日午前の閣議後の会見で、現在の防衛省設置法に同省の内部部局(内局)の背広組(文官)が制服組自衛官より優位を保つと解釈される「文官統制」の規定が盛り込まれた理由について戦時中の軍部暴走の反省からかと問われ「そういうふうには思わない」と述べた。
中谷氏は、理由や経緯について重ねて尋ねられると「私はその後生まれたので、当時どういう趣旨だったのかは分からない」と述べた。中谷氏は防衛大学校卒で、陸上自衛隊出身。
政府は、文官統制廃止などを盛り込んだ防衛省設置法改正案を三月上旬にも閣議決定する方針。文官統制を廃止すれば、文民統制(シビリアンコントロール)を弱体化させる恐れが指摘されている。
<文官統制> 政治が軍事より優先されるという、民主主義国家の基本原則「文民統制(シビリアンコントロール)」の一環。防衛省設置法の規定では、背広組の文官を制服組自衛官より優越した立場に置くことで、防衛省内の文民統制を補強する役割を果たしている。憲法では、首相や閣僚は文民でなければならないことを明記。国の防衛に関する事務は内閣の行政権に属し、国会が防衛出動の承認などの権限を持っている。
陸上自衛隊出身の元防衛相が、何故文官統制が設けられてるのか理由を知らなかった!!
もうこれは、憲法改正発案を担う礒崎議員が「立憲主義なんて知らない聞いたことない」と言ったのに匹敵すると思うんですが。
一体自衛隊ではどういう教育をしてるのですか?!
文官統制の趣旨を知らない人間がどうして防衛相というトップになれるんですか?!
(というか、そもそも元自衛官が大臣になるのって文民統制の趣旨からするとグレ-ゾーンではありますが)
しかも「その制度が出来た後に生まれたから知らないもん」なんて言い訳になると思ってるんでしょうか?!
(追加のtw)
"@tokunagamichio: この発言だけで中谷は防衛大臣失格だろうに。。。 pic.twitter.com/uh18jumQFi"→不見識極まりない。 更迭にあたいします。首相の責任も問われます。
— 上丸洋一 (@jomaruyan) 2015, 3月 1
あ、そうか、安倍さんも現憲法が制定された後に生まれたから、憲法が集団的自衛権禁止してるなんて知らなかったんですね(棒読み)
本来ならこんな一言で首が飛んでもおかしくないのですが、悲しいかな、カネの不正が出てこない限り進退は問われない、政治家の不見識に寛容な国ニッポン・・・
昨年の7月からまだ一年たたないうちにこの有様なのです。
思えば一切の武力行使を禁じた世界で初めての平和憲法の下で、警察予備隊が設置されたのが1950年でした。
警察予備隊→保安隊→自衛隊、日米安保条約、PKO、イラク派遣、集団的自衛権行使容認、自衛隊化以外恒久派遣法制定予定、そして201x年に9条改定予定
という流れを見渡すと、警察予備隊という蟻の一穴が60余年かけて徐々に平和憲法という堤防を決壊させる様をまざまざと見せつけられます。
いかにも日本的な「なあなあのなし崩し、既成事実の積み重ね」に一歩一歩後退してきた結果がこれです。
言いしれぬ不安を覚えますが、こんな安倍政権を50%を超える国民が支持し続けています
このことが一番恐ろしい病巣なのだと、これまでも言い続けてきました。
これからも言い続けていくでしょう。
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