「テロに屈しない」=「人質を見殺しにする」ではないはずです
- 2015/02/13
- 15:00
前回までの記事を読んで
「そうはいっても『身代金は支払わない、テロリストと交渉はしない』という方針は、世界のスタンダードなのでは?」
と思ってらっしゃる方も多いと思います。
テロリストとは取引しない!という米の勇ましい「テロとの戦い」宣言のおかげで、いつのまにかこれがスタンダードだとすり込まれてしまってるのでしょう
まず「身代金を払うという選択肢は存在しない」と思い込んでいる方はこちらをご覧下さい。
報道ステーションで身代金払った国を紹介してました。15人が解放されたと。 pic.twitter.com/ceLJHWgFDw
— かばさわ洋平 (@ykabasawa) 2015, 1月 21
●「米英以外の人質は解放」 米紙 NHKニュース
1月26日 2時25分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150126/k10014958981000.html
(リンク切れ)
イスラム過激派組織「イスラム国」にこれまでに拘束された欧米のジャーナリストや援助団体の職員などについて、アメリカの新聞「ニューヨーク・タイムズ」は、アメリカとイギリスの人質の多くが殺害されている一方で、それ以外の国の人質はいずれも無事に解放されていると伝えています。
「ニューヨーク・タイムズ」によりますと、イスラム国がこれまでに拘束した欧米のジャーナリストや援助団体の職員は、アメリカやイギリスのほか、フランスやスペイン、デンマークなど、分かっているだけでも10か国、合わせて21人に上るということです。
このうち、アメリカ軍が空爆を始めた去年夏以降、イスラム国はインターネット上で人質の映像を公開し、空爆の中止などの要求を突きつけたうえで、いずれもアメリカ人とイギリス人の合わせて5人を殺害しています。
また、2人が依然として拘束されたままとみられ、このうち1人は拘束期間が2年以上に及ぶということです。
その一方で、アメリカやイギリス以外の欧米の国の出身者では殺害されたケースはなく、スペイン人のジャーナリスト3人は去年3月、フランス人のジャーナリスト4人は去年4月、半年以上の拘束の後、最終的には解放されるなど、これまでに合わせて14人が無事に助け出されたということです。
ただ、解放にあたって身代金が支払われたかどうかについては、各国の政府は明らかにしていません
このように、ISの人質は身代金支払いも含む交渉次第で解放されているのです。決して「身代金を払わない、テロリストとは交渉しない」がスタンダードではありません。
脊髄反射のように真っ先に「身代金は払わない」と表明しないと「世界のスタンダード」に属することはできない、と多くの国民は勘違いしているのではないでしょうか。
しかし「身代金を支払えばテロリストへの資金提供になり、味をしめて次の人質事件を誘発するから、絶対に身代金要求に応じてはならない」との声が根強く聞かれます。オバマ大統領もそういってますね。
では、ISは「アメリカからは身代金が取れないから、アメリカ人を人質にとるのはやめておこう」と学習したのでしょうか?
それに、仮に身代金を支払わない方針をとるにしても、様々な取引内容を含む「交渉」そのものまで放棄していいことにはならないでしょう?アメリカだって人質解放に向けてタリバンと「交渉」したことがあるのです。
犯人側と交渉することなしに人質を解放してもらうことなんか不可能ですから、当然ですね。
ところが日本は交渉すら最初から除外してました。
交渉しないで一体どうやって人質を救うんでしょうか?そんなの100%不可能ではないですか。
まるで交渉のテーブルに着くこと自体がテロリストに屈すること、負けたことになると頑なに思い込んでるかのよう、一種の思考停止ですね。
こうなると、もう「テロに屈しない」=「人質は絶対に助けない。見捨てる。人質は死ね」なのです。
少なくともお政府様やそれに追従する人々の「テロに屈しない」はそういう意味です。
これは、日本は国が国民を守るという最も大事な責務を放棄する、という宣言です。
「テロに屈しない」を口実に国が棄民するのを正当化して良いはずがありません。
しかし恐ろしいことに、それは仕方ないことなのだと半ば諦めている国民が思いの外たくさんいるのです。
もちろん、テロが恐ろしいからと言ってテロを肯定するようなことをすべきではないのは当然です。そういう意味でテロに屈してはならないのはわかりきったことです。
ではもう一歩進んで、「テロに屈しない」をどのようにとらえるべきなのでしょうか。
私は次のような考え方が一つの答えであると思います。
政治家の言う「テロに屈しない」はほとんど「どうしたらいいかわからない」と同義。
テロに屈しないとは、テロを口実に民主主義を後退させないこと、軍事化を促進させないこと、暴力を容認しないこと、民族差別・宗教差別を招かないこと、理性を放り出さないこと。そしてより真っ当な世界にすること。
— 上丸洋一 (@jomaruyan) 2015, 2月 5
テロとは、それを相手に戦うものではなく、なくすように努めるものだ。「テロに屈しない」と息巻いてもテロは無くならない。まして武力で根絶できるものでもない。テロが起きる原因、背景を冷静に分析し、テロが発生しないような環境を整えることこそが、本来のテロ対策である。空虚な言葉は無意味だ。
— m TAKANO (@mt3678mt) 2015, 1月 28
テロに屈しない態度とは、やられたらやり返すと威勢のいいことを言うのではない。武力ですぐに解決できないという現実を見据え、テロリストにひかれる人間を減らしていく迂遠な作業を、迂遠と分かりつつ、粘り強く続けていく態度だと思う。
— 山口二郎 (@260yamaguchi) 2015, 2月 2
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