明日は鳩山さんが沖縄入りする予定ですね
(※予約投稿で書いていますので、もし予定が変更になってたらご容赦を)
鳩山政権は、国内で新たな基地を提供する必要性など全くないことを
先日書きましたが、そこにもう一つ、
『もしグアム移転計画やテニアンの件がなかったとしても、「あなたはうちに基地を置きたいのかもしれないが、うちはみんなが基地はいらんと言ってるのだから、こないでね。もう出てってね」と断るべきだ』
と、付け加えておきましょう。
それが独立した主権国家というものです。自分の家を他人に間借りさせるかどうかを決めるのは、その家の持ち主です。
もし、グアム移転計画やテニアンの件も沖縄住民の圧倒的な反対も、全てブッちぎって、引き続き国内に基地存置を強行することを正当化できそうな理由があるとすれば、
「海兵隊の在留は我が国の防衛のための抑止力として欠かせないから」
これだけが唯一のもっともらしい理由です。
ですから政府も海兵隊は抑止力のために必要だと呪文のように繰り返していますし、2010/2/15の衆議院予算委員会で北沢防衛庁長官も以下のような答弁しています(要約しました)。
「沖縄における海兵隊は、我が国の周辺諸国との間に一定の距離を置いているという地理上の利点があり、高い機動力と即応性により、さまざまな緊急事態に一次的な対処を担当している。我が国の安全のみならず、アジア太平洋地域の平和と安定に大きく寄与している。
海兵隊の抑止力というのは、まず一つには、我が国が攻撃されたときの即応性、さらにまた、地理的条件から、アジア太平洋地域で事態が発生したときに極めて迅速に効果を上げることができる、そういう利点を持っている。」
ルース駐日米大使も
「海兵隊は有事に誰より早く現地に乗り込む即応部隊。日本から移されれば機動性と有効性が著しく低下する」
「周辺のあらゆる国が在日米軍の動きを注視している。日本で実戦に近い訓練をしている姿を見せることも目に見える抑止力になる」
と述べています。
ではこの「抑止力」について検証しましょう。
尚、私は沖縄から全て基地は撤退すべきだと思っていますし、軍事力でなく外交こそが本当の‘抑止力’だと思っていますが、今回はそこまで話をひろげません。
政府の主張する「抑止力」がいかにでたらめかを取り上げます。
この抑止力について、防衛研修所特別客員研究員(元防衛省官房長、内閣官房副長官補)の柳沢氏が、朝日新聞1月28日オピニオン欄に「"普天間"の核心/海兵隊の抑止力を検証せよ」を書いています。
この内容について
ザ・ジャーナルの高野氏の要約をお借りしましょう
(引用開始)
▼普天間問題の核心は、抑止力をどう考えるかにある。鳩山首相も言及したが、問われるのは「海兵隊が沖縄に駐留することで得られる抑止力とは何か」だ。それを明らかにしなければ、普天間問題は永久に迷走する。
▼海兵隊はいつでも、世界のどこへでも出動する。特定地域の防衛に張り付くような軍種ではない。したがって「沖縄かグアムか」という問いに軍事的正解は存在しない。それを決めるのは、抑止力をいかにデザインするかという政治の意思だ。
▼抑止とは、攻撃を拒否し報復する能力と意思を相手に認識させることによって、攻撃を思いとどませることだ。相手が当方の意思を疑わなければ、個別の部隊配置は2次的問題である。
▼冷戦期、米ソは明確に敵対していた。だが今日、米・中・日は生存のためお互いを必要としている。経済の相互依存の深まりが抑止戦略をどう変化させるのか、検証が必要だ。
▼「海兵隊が抑止力」という考えの本質的な意味は、いざとなったら海兵隊を使うということだ。例えば、中国が台湾に進攻した場合、海兵隊を投入すれば米中は本格的衝突になり、核使用に至るエスカレーションに至るかもしれない。米国にとってそれが正しい選択で、日本は国内基地からの海兵隊出撃にイエスと言うのか。
▼自戒を込めて言えば官僚も政治家もこれまで、そういう深刻な戦略問題を十分に検証してこなかった。専門家は、あいまいな方が抑止力強化に役立つと言うかもしれない。だが、地元にとって基地はあいまいでは許されない現実の負担だ。
▼アジア諸国の中にも海兵隊のプレゼンスを望む声があり、米当局者もアジアの多様な課題には海兵隊が必要だと言う。だがそれは沖縄でなければならない理由にはならないし、本来の意味での抑止力でもない。
▼戦略的従属性と基地負担という2つのトゲの解消は、今なお同盟にとって最大の課題であり、結論を急がず、米国と「対等な」戦略論を展開してもらいたい...。
(引用ここまで)
抑止力と漠然と一言で言うが、一体それはどこのどんな事態に対する抑止なのか、政府は今までしっかり分析してこなかった。まずそこから分析すべきだと言っていると私は解釈しました。
政府の言う抑止力のまやかしは柳沢氏の指摘で暴かれると思いますので、これに基づいて考えてみましょう。
まず、有事の際、本当に海兵隊は日本が攻撃を受けた際に日本を防衛してくれるのでしょうか?
答えはノーです。
『1982年、レーガン政権時代のワインバーガー国防長官は、「沖縄の海兵隊は、日本の防衛には充てられていない」とはっきりいいました。1991年、ブッシュ政権時代のチェイニー国防長官は、沖縄の海兵隊が「世界的な役割を果たす戦力投射部隊」――つまり世界的規模で「殴り込み」をかける部隊だといいました。日本を守るための任務を与えられている海兵隊員は、一兵たりともいないんです。』(赤旗2010年4月14日より引用)
『現実をみても、ベトナム侵略戦争、アフガニスタン戦争、イラク侵略戦争、ファルージャでの虐殺、みんな投入されたのは海兵隊ではありませんか。』(赤旗2010年4月15日より引用)
抑止力とは「もし攻撃してきてみろ、こっちも受けて立つから覚悟しろ」ということで成り立つのですが、海兵隊は日本が攻撃を受けても守ってくれないのですから、およそ抑止力ではありえません。
それに、「海兵隊は誰より早く現地に乗り込む即応部隊」だそうですが、決して常駐して東アジアの有事に備えてなどいません。1年の半分以上はイラクやアフガンや訓練で海外に出かけていますから、あまり「即応部隊」として役立ちそうにないですね
そもそも海兵隊は防衛部隊ではなく攻撃部隊です。防衛部隊なら国内にいる必要がありますが、侵略攻撃部隊はかならずしも国内にいる必要はありません。相手国に殴り込みをかけるのだから、拠点は攻撃するのに便の良いところが良いに決まってます。
もし仮に百歩譲って海兵隊が日本を守るため敵国に乗り込んで戦ってくれるのだとしても、その基地が沖縄や日本国内になければならぬ必然性は全然ないわけです。(ちなみに岡田外相もかつてはそういってましたが、それを2/15の予算委員会で社民党の服部氏に聞かれてノーコメントの回答をしています)
しかし、これに対し「日本から移されれば機動性と有効性が著しく低下する」から沖縄に在留する必要があるのだという反論がかえってきます。海兵隊は場所的に沖縄に置くのが戦略上最も好都合だという主張です。
では一体どんな有事を想定して沖縄が最も良い場所だと言っているのかと言えば、よく言われるのが台湾有事です。
そもそも、紛争はある日突然唐突にはじまるわけではありません。随分前から予兆があるわけですが、もうじき台湾有事がおこりそうな現実的な危険性がせまってるとでもいうのでしょうか?
現在の所そのような予兆は見られず、台湾有事のおこる蓋然性は低いと言えるでしょう。
中国と台湾のもめ事がおこったら海兵隊がクビを突っ込みに出かけるらしいのですが、それはいつおこるのか、いえ、本当におこるのかどうかもわかりません。
そんないつおこるともわからない蓋然性の低い想定に備えるために、何故こんなにも長期間限界を超える犠牲を、沖縄が払い続けねばならないのでしょうか。
しかもそれ、中国と台湾のもめ事であって、日本、当事者じゃないし・・・‘自国の防衛’でもないのに何故沖縄が我慢しなきゃならないのでしょう?私にはわかりません。
それを機に中国が日本に侵攻するからそれから日本を守るんだ、とかいうウワサもまことしやかに聞きますが、それもこれまた現実から遊離している空想っぽいです。
万一台湾有事がおこって沖縄海兵隊が出動することを日本が認めれば、かえって出撃する基地を持ってることで紛争当事者としての立場に巻き込まれる危険が高まるんじゃないでしょうか
それは「防衛」どころか逆に我が国を危険に晒す行為ではないのですか?
赤旗ではこう述べています
台湾海峡や朝鮮半島の「有事」で沖縄の海兵隊を投入するという事態は、本格的な戦争を意味します。
昨年8月まで首相官邸の内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)だった柳沢協二氏(※前出)は20日、国会内での与党議員らの懇談会で普天間基地問題について講演しました。
柳沢氏は「『抑止力』というのは有事に実際に使うことが基本だ。例えば、台湾海峡の紛争でオバマ米大統領は海兵隊を投入する意思決定をするのか。その時、沖縄の海兵隊が出動するとなれば、安保条約6条に基づく事前協議で鳩山総理は『分かりました。OKです』と言えるのか」と提起。「海兵隊という陸上兵力が台湾に上陸して中国軍と直接たたかうことになれば事態をコントロールできなくなる恐れがあると、まともな政治指導者なら思うはずで、そうならないようにするはずだ」と述べました。
「海兵隊=抑止力」という立場を認めることは、東アジアでの本格的な戦争の引き金に指をかけているのに等しいのです。
柳沢氏はまた、朝鮮半島「有事」については、北朝鮮の現状から「1950年の朝鮮戦争のように、北朝鮮軍が南下してきて(米韓合同軍が)釜山まで追い詰められるような戦争はまずあり得ない」と分析。沖縄からの海兵隊投入の可能性を否定しました。(引用ここまで)
海兵隊を台湾有事のために沖縄に配備する、なんていうのは紛争に巻き込まれるのを抑止するどころか、火薬の前でマッチをするような危険極まりない行為なのですね
こちらのブログも納得できるものでした。
引用すると長くなりますのでリンク先でご一読下さい。
◆
白砂青松のブログ『支離滅裂な「沖縄海兵隊ヘリ部隊は台湾有事のための即応部隊」論』
http://plaza.rakuten.co.jp/whitesand72/diary/201002260000/『台湾有事に米軍ヘリが下地島で給油というおとぎ話』
http://plaza.rakuten.co.jp/whitesand72/diary/201002040000/『アメリカの海兵隊が沖縄に居なければならない理由はない』
http://plaza.rakuten.co.jp/whitesand72/diary/201001280000/米ソの冷戦以後、世界の枠組みは変わり、それに伴って米軍の戦略も変更を迫られました。
もう中国やロシアなど共産圏を第一の仮想敵国として戦力を配備する時代は終わり、米軍は再編がすすんでいます。
前出の高野氏は
『海兵隊は近年、対テロ作戦能力を強化しているが、アジアで対テロが必要になるのは(イスラム勢力との絡みで言えば)北東アジアより東南アジアの方で、それなら沖縄よりグアムの方が「機動性と有効性が著しく向上する」のではないか。』
と指摘されていますが、それならアメリカが沖縄海兵隊をグアムに移そうとしているのも頷けます。
そんなわけで、唯一国内に海兵隊基地をとどめることを正当化できそうな理由「沖縄に海兵隊を駐留させるのは我が国の防衛のための抑止力であり、アジア太平洋地域で事態が発生したときに極めて迅速に対応できる」もなりたちそうにありません。
抽象的な「抑止力」という言葉を伝家の宝刀のように持ち出されると「そうかもしれない」と丸め込まれてしまいがちですが、中身を具体的に検証してみると空虚なものです。
明日、沖縄入りする鳩山総理、まわりに流されてばかりいないで、魔法の言葉「抑止力」についてきちんと検証すべきではありませんか?その曖昧な「抑止力」とやらのせいで、沖縄は「あいまいでは許されない現実の負担」をこれからも強いられ続けるのですから。
そうだ、いっそのこと平野さん、「お願いですからコレで本国にお帰り下さい」と、官房機密費からいくらか包んでアメリカに渡してみたらどうでしょう?
おそらく今までで一番有効な官房機密費の使い方だと思います(笑)
- 関連記事
-
スポンサーサイト