国会法改正の強行採決を懸念します。数で押し切らないって政権交代直後は言ってたのに・・
- 2010/06/04
- 08:00
最近では三宅議員が転んだのが話題になった公務員法改正法案、たった1日だけで衆院可決となった郵政改革法案、当事者である障害者自身の声を取り入れて自立支援法に替わる新法を模索していこうという合意を破り、実質的に自立支援法の延命を図った「つなぎ法案」など。
(余談ですが、公務員法改正はどうせなら堀越事件をうけて公務員の政治活動制限を見直す改正ならよかったのに。
それから言語道断の自立支援法延命については大脇道場さんのこちらとこちらを是非)
日本では議会制民主主義など高嶺の花なのでしょうか。
この調子でいくと、抜け穴だらけの派遣法改正案も比例定数削減も、国会法改正も、ほとんど議論されぬまま強行採決されそうな予感。
国会法改正については私も以前書いたことがあります。
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-380.html
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-381.html
「官僚依存の体質を改め、政治主導で国会審議の活性化を目指す」というのが改正の表向きの理由です。
「憲法解釈のような高度に政治的な判断こそ政治が担うべきであり、官僚任せにしてきたのは政治の怠慢にほかならない」から「とりわけ、憲法9条と集団的自衛権の関係など、憲法解釈をめぐる内閣法制局長官の国会答弁を禁じる」べきというのが小沢氏の持論です。(「」内は西日本新聞から引用)
しかし、公務員法改正法案では質疑を途中で打ち切ったり、自立支援法延命法案ではたった6時間だけ、郵政改革法案ではたった1日だけしか審議していません。
一応審議しましたという体裁を整えたらあとは数にモノを言わせて採決に踏み切る暴挙を行う今の実態からすれば、官僚答弁を禁止したって政治家同士の議論の活性化に全く繋がらないのは明らかでしょう。
議論の活性化というのは、9条の解釈を自分たちの好きなように変えるための見え透いた口実でしかありませんよね、小沢さん。
5/14、この国会法改正案は野党側の反対を押し切って国会に提出されました。
国会法と言えば国会を運営する上でのルールを定めたものですから、そのルール変更は与野党全会一致を目指して行うべきだと思います。
そうでなければ、‘ゲームに勝ってる強いチームの都合のいいように試合のルールが勝手に変えられてしまう’ことになりかねません。それではフェアな試合は望めないでしょう。
しかし国会では今も「数の力」でごり押しするのがまかり通っていますから、この法案の提出を撤回するよう法学者が声明を出しています。長文ですが全文引用します。
鳩山総理辞任の陰に隠れて自立支援法延命法案が強行採決されたように、次期新総理選出の話題に隠れてこれが強行採決されるようなことがあってはなりません。
ちなみに、日本ではこのごり押しが出来る状態を「安定多数」とか「安定した政治」というらしいです。「安定」という言葉がつくとまるで良いことみたいですよね。日本のいびつな政治観を表していると思います。
国会法等の「改正」に反対する法学者声明
民主、社会民主、国民新の与党3党は、5月14日、国会法等の「改正」案を野党側の反対を押し切って国会に提出した。
民主党は、2009年の総選挙のマニフェストで「鳩山政権の政権構想」の5原則の冒頭の2つに、「官僚丸投げの政治から、政権党が責任を持つ政治家主導の政治へ」と「政府と与党を使い分ける二元体制から、内閣の下の政策決定に一元化へ」とを掲げ、衆議院の比例定数の80削減を盛り込んだ。また、この夏の参議院選挙のマニフェストには参議院の定数40削減を盛り込む方針を決めた。これらにより選挙制度や議会制について大がかりな改変が構想されている。その後、民主党は11月12日、「国会審議の活性化について」と題する文書を発表した。その概要は以下の通りである。
①政治家同士の議論を阻害している政府参考人制度を廃止する。
②内閣法制局長官を「政府特別補佐人」から削除する。
③各委員会において、政治家同士による審議の場とは別に、行政公務員、各界有識者、市民団体、業界団体等から広く意見を聴取する新たな場を設置する。
④質問通告の規則を改善・厳格化する。
⑤政治主導体制を強化するため、大臣政務官を増員する。
これを受けて、民主、社会民主、国民新の3党は、2009年12月28日、幹事長・国対委員長会談を開き、上記①から⑤の内容を盛り込んだ「国会審議の活性化のための国会法等の一部改正について(骨子案)」(以下、「骨子案」と略)を了承した。
私たちは、将来提起されてくることが予想される議員定数削減も、国民主権と議会制民主主義にとって重大な問題を惹起するものと考えるが、このたび国会に提出された国会法や議院規則などの改定は、必ずしも国会審議の活性化に資するものではなく、むしろ立憲主義の意義を弱め、国民主権の原理に背馳し、憲法が予定する議会制民主主義の形骸化を導くおそれがあるものと考え、この喫緊の問題についての声明を発表し、その危険性を世に訴えることとした。
1.政府参考人制度の廃止について
国会の審議において、議員同士あるいは議員と大臣・副大臣・政務官との間で議案について十分な議論を尽くすことが重要であるのは、国会が国民主権のもとでの「国権の最高機関」であることから当然のことである。その点では、現行の「政府参考人制度」(衆議院規則45条の3、参議院規則42条の3)は、議長の承認や委員会が必要があると認めるときに答弁できるとしているにすぎないのであって、現状でも政府参考人に頼らずに政治家同士で審議をすることは十分可能である。
それにもかかわらず、「行政に関する細目的又は技術的事項について審査又は調査を行う場合において、必要があると認めるとき」に「その説明を聴く」としている政府参考人の制度を廃止することは、むしろ国会における審議の質を低下させ、そればかりか、憲法62条が規定する国政調査権を不当に制限するものである。
上記の「骨子案」では、政治家同士による審議の場とは別に「意見聴取会」を設けるとしているが、そのような場の設定が国会での審議の充実に資する保障はない。「行政に関する細目的又は技術的事項について審査又は調査」は、法律案などの議案の審議のなかで行われることでこそ、現状の問題点の検証や改革の必要性の検討に役立つのであって、制定される法律の質を確保する上でも重要である。そのような審査や調査を「意見聴取会」に切り分けて集めてしまうことは、かえって審議を散漫なものにしてしまいかねない。この「意見聴取会」が大臣等の出席義務なしに開催される場合は、なおさらである。
また、政府参考人制度の廃止は、官僚による行政運営を、国会とりわけ野党議員の追及からかばい、ひいては政府・与党の政権運営に対する監視や批判の手がかりを国会から奪うことにつながる。その点でも国会の審議機能に低下をもたらす。
2.内閣法制局長官の「政府特別補佐人」からの削除について
「骨子案」は、国会法の69条2項が定める「政府特別補佐人」から内閣法制局長官を削除して、「意見聴取会」で「意見を聴取」する「行政機関の職員」の中に内閣法制局長官を含めるとしている。
内閣法制局は、「閣議に附される法律案、政令案及び条約案を審査し、これに意見を附し、及び所要の修正を加えて、内閣に上申すること」や「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること」(内閣法制局設置法3条1号・3号)などの事務をつかさどり、内閣法制局長官は、閣議の陪席メンバーである。こうした法律問題の専門的部署として内閣の法律顧問的役割を果たし、政府の憲法・法律解釈の統一性を確保するべき内閣法制局の長官を、「意見聴取会」への出席は可能になるとはいえ、国会での法案審議の場から排除することは、国会審議自体はもとより、政府による憲法運用全般にも大きな歪みをもたらすことが危惧される。
法案の審議の場では、その合憲性や従来の政府見解との整合性が問題とされる際には、政府の憲法解釈が問われる場面がしばしば現れる。そのような場面で、「政治主導」を理由にして首相や閣僚が、その時々の政治判断で憲法解釈を行い、それによって政府の憲法解釈やその統一見解がなし崩し的に変えられてしまうならば、立憲主義国家の憲法運用のあり方としては、重大な問題を生むことになる。とりわけ、憲法9条に関する政府の憲法解釈が安易に変更されることの影響ははかり知れない。
3.憲法9条の重大な危機
内閣法制局長官の排除に対する小沢一郎民主党幹事長の意欲は、並々ならぬものがある。同氏は自由党時代の2003年5月には、「憲法や条約の有権解釈の権限を官僚の手から奪い返す」として、「内閣法制局設置法を廃止する法律案」を国会に提出している。また、同氏は、「国連の平和活動は国家の主権である自衛権の行使を超えたもの」であり、自衛隊による国連の平和活動への参加は、「たとえそれが武力の行使を含むものであっても、日本国憲法に抵触しない」という持論を持っている。こうした独特の憲法解釈は、「(国連憲章上の)集団安全保障に関わる措置のうち憲法9条によって禁じられている武力の行使、または武力の威嚇にあたる行為については、我が国としてこれを行うことが許されない」(1994年6月13日、種田誠衆院議員に対する大出峻郎内閣法制局長官の答弁)とする内閣法制局の憲法解釈と鋭く対立するものである。
鳩山由起夫首相も、2009年11月2日の国会で、集団的自衛権の行使を禁じているこれまでの政府の憲法解釈を当面踏襲する考えを明らかにしたが、その2日後の11月4日には、憲法解釈について、「内閣法制局長官の考え方を金科玉条にするというのはおかしい。その考え方を、政府が採用するか採用しないかということだ」と述べ、政府に決定権があると強調した。また、平野博文官房長官も同日の記者会見で、「鳩山内閣以前の内閣での解釈は、法制局長官が判断をしてきている。鳩山内閣では政治家が政治主導で、内閣において責任を持って判断する」と述べた。これは、集団的自衛権の行使は違憲とする内閣法制局が長きに渡って維持してきた憲法解釈を、政府の判断で変更することもありうるということである。
明文改憲路線を掲げた自民党の安倍晋三首相が、2007年の参院選の敗北の結果を受けて退陣を余儀なくされたことを目の当たりにした民主党は、2009年総選挙では、2005年の「憲法提言」に込めた改憲の方針を鮮明にすることなく勝利した。このように明文改憲が提起しづらい政治状況が生まれたなかで、解釈改憲が現実的な路線として追求されようとしている。そうした解釈変更による9条改憲が容易な国会づくりが、内閣法制局長官の「政府特別補佐人」からの除外によって目指されているといえる。
国民主権の観点からするならば、本来の意味での政治主導とは、国会をすべての議員が国民の代表としてその力能を発揮できるものとする必要がある。そして、内閣は、そのような国会に対して連帯して責任を負い、そうした内閣の責任を実効的あるものにするために行政機関に対する国会による監視と統制を確保することを基軸にして、国会と内閣の関係は構想されるべきものである。与党三党による国会法等を改正する「骨子案」は、そのような国民主権に基づく本来の意味での政治主導の実現には程遠く、「政治主導」を謳い文句にしつつも、政権党なかんずくその執行部による権力の独占、議会軽視、官僚組織の囲い込み、憲法運用の不安定化、政府解釈の安易な変更による憲法の歪曲をもたらしかねないものである。
私たちは、このような国会法等の改正に強く反対し、法案の撤回を求めるとともに、国会と内閣の運営を、国民主権と議会制民主主義に立脚したものとするよう広く呼びかけるものである。
2010年5月20日
(賛同者名は略)
こちらも参考に。
◆赤旗
国会法等「改正」撤回を 法学者声明 71人が賛同
◆自由法曹団HP
与党3党による「国会改革」関連法案の国会提出に抗議し、同法案の取り下げを求める(声明)
◆上脇博之 ある憲法研究者の情報発信の場
国会法等の「改正」に反対する法学者声明と賛同者の紹介
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