ISISによる日本人人質事件はあとから読んでもわかりやすいように順序よく連続して書こうと思っていましたが、安倍氏の暴走ぶりが酷すぎて、今の日本が既に法治国家ではないこと、法治国家ではないことの問題の深刻さに気づいていない人が多すぎることが一番深刻であることを指摘しておきたくなりました。
なので人質事件関連はちょっと中断して、今国会でも取り上げられている集団的自衛権について、過去記事と重複するところも多いですが、書こうと思います。
●中東機雷、日本攻撃に相当=改憲「着実に取り組む」—安倍首相・衆院代表質問
2015 年 2 月 16 日 19:44 JST 更新
http://jp.wsj.com/articles/JJ10192600082716293630918019357192256594691?tesla=y&tesla=y
安倍晋三首相は16日午後の衆院本会議での代表質問で、政府が集団的自衛権の行使を憲法解釈変更で容認したことに関し、「さらなる国民の理解を得る努力を続け、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする安全保障法制の整備を進めていく」と述べた。具体的事例として中東からの原油輸送路に当たるホルムズ海峡への機雷敷設を挙げ、日本への武力攻撃に相当し得るとして、自衛隊による掃海活動に意欲を示した。
首相はホルムズ海峡に機雷が敷設された場合の影響について「石油ショックを上回り、世界経済は大混乱に陥る。わが国に深刻なエネルギー危機が発生する」と強調。「状況を総合的に判断して、わが国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況に当たり得る」として、昨年7月に閣議決定した自衛権発動の新3要件に該当する可能性があるとの認識を示した。民主党の岡田克也代表への答弁。
併せて邦人輸送に当たる米艦防護も例示。「米国艦船が武力行使を受ける明確な危険がある場合」も、同様に新3要件に該当し得ると指摘した。
また、首相は米軍の後方支援などを目的とした自衛隊の海外派遣について「将来、具体的なニーズが発生してから改めて立法措置を行うという考えは取らない」と述べ、恒久法制定を目指す考えを示した。維新の党の江田憲司代表への答弁。
自民党の谷垣禎一幹事長は、憲法改正への決意をただした。首相は「新しい時代にふさわしい憲法の在り方について国民的な議論をさらに深めていきたい。この議論の深まりを踏まえ、しっかりと着実に憲法改正に取り組んでいく」と語った。
[時事通信社]
まず、なんどもなんどもなんども書いている大前提をまたしても書かせて頂きます
この人達は、集団的自衛権を行使することが出来ると政府が憲法解釈を変更すれば第一関門クリアして次のステップに進めるのだ、という間違った思い込みをいつまで継続するつもりでしょうか。
集団的自衛権は、どんな条件をつけたとしても、現行憲法では認められません。なぜなら集団的自衛権とは自国が攻撃されてるわけでもないのに他国(米国)の戦争の応援に行って武力を行使することなので、「自衛権」という名前とは裏腹に「自衛」でも正当防衛でもないからです。
(これも繰り返しますが、集団的「自衛」権よりも「集団的交戦義務」のような呼称のほうがちゃんと実態を表してると思います)
正当防衛じゃないのに自衛権行使という名の武力行使認めるなんて、現憲法下では論外です。
これはちょうど現憲法の14条の平等条項の下では、戦前のように女性参政権を制限できると解釈できる余地は一切ないのと同レベルの話で、議論の余地はありません。
憲法とは国民が権力に「あれをしてはいけない、これはこうしろ」と命令する規範です。
ですから、その規範の意味を内閣が閣議決定で好き勝手に変えることが出来るのであれば全く命令規範としての役割を果たせず、意味がありません。
閣議で「これからは集団的自衛権は行使することが出来るようになりました」などと決定してみても、集団的自衛権が合憲になるわけもなく、憲法違反であることに変わらないのです。
ですから集団的自衛権について「さらなる国民の理解を得る努力を続ける」などとと言ってみたところで、そもそも憲法違反の決定は「国民の理解を得る」対象にはなりようがありません。
安倍政権はここを激しく勘違いしたままですね。
この「立憲主義」は近代民主国家のイロハであり、憲法の授業で真っ先に習う基礎中の基礎、大原則です。算数で言うと九九にあたると言っていいくらいです。
でも安倍政権の辞書に立憲主義という文字はありません。安倍首相は立憲主義を知っててとぼけてるのか、それとも本当に理解する力がないのか・・・どちらにしても本当に悪質です。
自称「先進民主主義国」の政権を担う者達が「立憲主義とは何ですか」から追試をしなくてはならないレベルって、あり得ない話です。
日本の政府は、戦後70年もたって未だに民主主義のスタート地点でつまづいたまま。日本はそんな異常状態に陥って幾久しいのだという認識を一体どれだけの日本人が持っているのでしょうか。
さて、政府は1954年の自衛隊発足以来、正当防衛と同様の要件の下で個別的自衛権のみを認めてきました。
しかし昨年7月に安倍内閣はそれを取り払い、事実上無制限に自衛権という名の武力行使を可能にする、とんでもない「新3要件」に変えてしまいました。
これまでの要件がこちら
・日本に対する急迫不正の侵害があること
・この場合にこれを排除するために他に適当な手段がないこと
・必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
昨年7月に決定した新3要件がこちら
・我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
・これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
・必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
そもそも要件を設けるのは、その要件に当てはまった時だけ限定的、例外的に行使を認めるが、それ以外原則としては認めない、と歯止めをかけることに重点があるわけです。ですから設けられた要件は歯止めとして有効に機能するものでなくては意味がありません。
ところがこの新3要件は歯止めの役割など皆無なのです。
旧要件では攻撃を受けたのが日本の場合だけに限られていました(個別的自衛権)。しかし新3要件の1番目の要件で他国(米国)が攻撃を受けたときにも自衛権行使できるように変えています(集団的自衛権の容認)
でも、この新3要件を一読すると、他国が攻撃を受けた場合といえど、それによって「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」が生じた時に限ってるのだから、正当防衛になるのでは?と一瞬思ってしまいそうです。
しかし、自国ではなく他国が攻撃を受けて「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」が生じるなんて、一体どういう事態でしょうか?具体的に思いつきますか?
そんなケースは現実的にはまずありえません。
要するに、集団的自衛権行使だって正当防衛の一形態だとすることによって正当化しようとしたのですね。だから現実にはありえないような設定になったのです。
なんとしても集団的自衛権を認めたくてわざわざあり得ないような要件に変えたくらいです。その意気込みからすれば、米が攻撃を受ければ実際には「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」なんか発生していなくても、いや、明白な危険は発生してるんだ、と強弁するのは目に見えています
問題になる事例がこの新3要件中の文言に該当するかどうかの検証も、実に恣意的に都合良くなされることでしょう。
現に安倍首相はホルムズ海峡に機雷の敷設は「石油ショックを上回り、世界経済は大混乱に陥る。わが国に深刻なエネルギー危機が発生する」と強調。「状況を総合的に判断して、わが国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況に当たり得る」と言っています。
別に日本の国土が攻撃されているわけでもないのに、それはいくらなんでも「我が国に対する武力攻撃」の文言を都合良く拡大解釈しすぎです。
こんな解釈がまかり通るなら、どんなことだって「我が国に対する武力攻撃」と同じだとこじつける事が可能でしょう。北朝鮮が「我が国への経済制裁は我が国に対する宣戦布告とみなす」(従って経済制裁に対してこちらが武力攻撃しても、それは正当防衛だ)と言ってるのと同じです。
また、安倍首相は、米国が攻撃を受けた場合だけでなく、米国が先制的自衛権を行使して先制攻撃した場合でも、集団的自衛権の3要件を満たせば自衛権を行使できると言っています。
悪名高き「先制的自衛権」は、昔から侵略戦争をしかける側が必ず使う大義名分です。
最近の最たるものは何の証拠もないのに「イラクは大量破壊兵器を持っている(実際は持ってなかった)、だからアメリカはやられる前にやる!これは自衛だ!」というイチャモンをつけてしかけたイラク戦争ですが、こういうケースも「我が国と密接な関係にある他国(米国)に対する武力攻撃が発生し」たとみなすわけですから、もうガバガバ。
今後米国が第二、第三のイラク戦争を仕掛けたら、日本も「自衛権行使」と銘打って米の戦争にお供しに行けるわけです。
おまけに安倍首相は、「邦人輸送に当たる米国艦船が武力行使を受ける明確な危険がある場合」も、同様に新3要件に該当し得ると指摘しています。
って、ちょっと待って。
これ、集団的自衛権が如何に日本に必要かを安倍首相がTVで宣伝したときに、これは集団的自衛権とは関係ない、米国艦船が邦人輸送するのはあり得ないと散々批判された、あの恥ずかしい論外なヤツじゃないですか(苦笑)
それをまた性懲りもなく引っ張り出すなんて、あのときよほど悔しかったのかな?
それはともかく、一体これがどう新3要件に該当する、とこじつけるつもりでしょうね?
もしかして、輸送されている邦人に対する攻撃も「我が国に対する攻撃」と同様だから新3要件にあたるとでも言うのかしら?
(そんな事言うのなら、沖縄県民に対する米軍による長期間の蹂躙は「我が国に対する攻撃」と同様だ、と言えると思うのですけど)
ま、なんとでも「新3要件に該当するんだぁ!」と強弁するのでしょうね。日中戦争は海外の邦人保護=自衛が口実でしたから、激しいデジャヴですね。
もうどんなことでも新3要件には該当することにしちゃって自衛権発動OK~\(^o^)/
安倍首相の発言だけでも、新3要件なんて歯止めをかける機能はゼロ、それどころか好き勝手に自衛権発動(武力行使)できる場面を際限なく広げていく口実を与えるツールでしかないことがよくおわかりいただけたかと思います。
現憲法はかつて日本が自衛の名の下に侵略戦争に走っていった反省の上に立ち、二度と「自衛」を口実にした戦争をしないために定められたというのに、過去の重い歴史に対するなんたる蹂躙でしょうか。
そして安倍政権は、いつでも米軍の後方支援の要請に応えられるよう、自衛隊海外派遣恒久法制定に乗り出しました。
これまでは自衛隊を派遣する度にいちいち特別法を立法しなくてはならなかったのですが、そういう手間や縛りを一足飛びに超えて、いつでも自由に米軍の武力行使の現場に駆けつけ、米軍と一体となって武力行使できることになります。
改めて説明しなくても、これも明白な憲法違反だとおわかりになるでしょう
ところで、これに対するマスコミの世論調査はなんともふがいないものになっています。例えば
●自衛隊海外派遣、反対5割超=集団的自衛権で-時事世論調査
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201502/2015021300566
時事通信の2月の世論調査で、中東ペルシャ湾での機雷掃海活動を例示し、集団的自衛権に基づく自衛隊の海外派遣について賛否を尋ねたところ、反対が53.2%を占めた。賛成は33.4%だった。
政府は集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案を今国会に提出する方針。自民党は地理的な制約を設けず、ペルシャ湾での機雷掃海も認めたい考えだが、公明党は慎重だ。(2015/02/13-15:07
ちょっと時事通信さん、これだけですか?
まず集団的自衛権は憲法違反だと周知しましたか?
憲法違反のものに基づく自衛隊海外派遣は「賛成、反対」を問う以前の問題だという認識はありますか?
単に賛成か反対かを問うて「一応世論調査しました、マスコミの役目果たしました」という体裁を整えただけでは、読者は「賛成が多かったら何の問題も無いのかな」と受け止めかねません。
それでいいのですか?それでマスコミの社会的責務を果たしていると言えるでしょうか?
これまで70年間戦争はなかったからこれからだって起こらない、戦争なんて対岸の火事だと他人事でいたら取り返しがつかなくなります。その時になって「だって日本は戦争しない平和憲法でしょ?」などと言ってみても遅いのです。
なぜなら憲法とは、権力がそれを遵守しているかどうかを常に国民が監視し、遵守していなかったら憲法に従えと厳しく追及する、国民全体がそういう監視を継続しなくてはたちまち機能を失う存在だからです。
安倍政権は憲法の縛りなどガン無視してるのですから、まさに「朕は国家なり」です。
しかし国民の大半は羊の群れのように大人しく、立憲主義に反するというあり得ない重大な事態にも関心を示しませんし、本来先頭に立って追及すべき大マスコミも、今ではすっかり安倍政権に手なずけられ、NHKを筆頭に大本営発表に成り下がっています。
一般市民が些細な法律違反をすれば鬼の首でも取ったように責め立てるくせに、国家権力が憲法という国の根幹である憲法に違反してもまるで無頓着で寛容な国民性。
安倍政権にとって国民とは、何をやっても「無関心」という支持をくれるありがたい存在です。おかげで安倍政権の支持率は50%超えを維持しています。
だから安倍政権は国民を舐めきって、傍若無人な振る舞いを続けることができるのです。
戦前もそうやって国民が知らないうちに取り返しのつかない戦争に突っこみました。日本人はその苦い過去から何も学ばず同じ過ちを現在進行形で繰り返しているとしか言えません
本当の危機は安倍政権そのものではなく、こうした「善良で無関心な国民」なのだとこれまでも繰り返してきましたが、私はこれからもより一層くりかえしていくつもりでいます。
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