(前の記事からの続き)
【安倍氏のウソ、ごまかしその2】
安倍氏は、第一次安倍内閣時代にいわゆる「狭義の強制連行」があったとして有名な事件の存在を国会で直接突きつけられたことがあります。
例えば2007年3月26日参議院予算委員会における安倍晋三内閣総理大臣および麻生太郎外務大臣による吉川春子議員との会議録ではこんなやりとりがあります。
少々長いのですが、安倍氏の卑怯さがよくわかる逃げの一手の反応なので、ブログ「こりゃ、ほえたな」さん経由で引用させていただきます。
○吉川春子君 日本共産党の吉川春子でございます。
安倍総理に慰安婦問題についてお伺いいたします。
安倍総理は、三月一日の夜、官邸で記者団の質問に答えて、九三年の河野官房長官談話について、当初定義されていた強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だと語られました。そうですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 既に今まで何回か答弁を申し上げているわけでございますが、私は河野官房長官談話を継承していくということを申し上げているわけでございまして、そしてまた慰安婦の方々に対しまして御同情を申し上げますし、またそういう立場に置かれたことについてはおわびも申し上げてきたとおりでありまして、今まで答弁してきたとおりであります。
○吉川春子君 当初定義されていた強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だと、このようにおっしゃったんですか、おっしゃらないんですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私は、今まで累次この場においてもまた本会議の場においても答弁をしてきたとおりでございまして、それを見ていただければ分かるとおりであります。
○吉川春子君 そういう発言はなかったと、取り消されるんですね。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 累次、今まで答弁してきたとおりでございます。
ですから、今、吉川議員がおっしゃったことも私は答弁をしてきた中の中身でございます。
○吉川春子君 総理が記者会見で官邸でおっしゃったかどうかだけを私伺っているんですけれども。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 強制性について私が申し上げたことは、記者会見で申し上げたことはすべてこれはニュースにもなっておりますから、それはそのとおりであります。
○吉川春子君 官房長官談話では、広範な地域に慰安所が設置された、慰安所は軍の要請によって設置された、慰安所の管理運営、慰安婦の移送について旧日本軍が直接又は間接に関与したとしております。これはお認めになるんですね。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほど答弁をいたしましたように、河野官房長官談話を継承しているということは、この官房長官談話を正に引き継いでいるわけでありますから、その中身も、それを引き継いでいるということでございます。
○吉川春子君 さらに談話では、慰安婦の募集について、本人の意思に反して集められた、官憲が直接これに加担したこともあった、慰安所の生活は強制的状況で痛ましいものであったと言っていますが、これもお認めになりますか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 河野官房長官談話を継承すると、このように申し上げております。
○吉川春子君 お認めになるんですね、今言ったこと。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) そうです。
○吉川春子君 河野談話の内容と、それから首相官邸での記者会見の強制性はないという発言は矛盾すると思いますが、談話を受け継ぐとおっしゃるならば、この発言は取り消されたらいいと思うんです。いかがでしょう。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) そうした発言も含めて今私は答弁をしているわけでございますが、この河野官房長官談話を継承していくということでございます。
○吉川春子君 今年一月三十一日、米下院外交委員会で慰安婦について決議案が出され、二月十五日、慰安婦被害者三女性、つまり、オランダ人一人、韓国人二人が証言しました。
安倍総理は、この証言内容について強制性を裏付ける事例、証拠というふうにお考えになりますか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) この米議会の証言について私がここでコメントする立場にはございませんが、河野官房長官談話について、これは継承していると、継承していくと申し上げたとおりであります。
○吉川春子君 強制性を裏付ける証拠がないというふうに言われているわけですけれども、これは強制性を裏付ける証拠であるというふうにお考えになりませんか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 米議会における証言については、私はここで立ち入ることはいたしません。既に私も累次その強制性については申し上げてきたとおりであります。
○吉川春子君 外務大臣、お伺いしますが、この三人の証言のうちの一人はオランダ人です。オランダ人が慰安婦にされた経過はどのように報告されていますか。
○国務大臣(麻生太郎君) 経過ですか。
○吉川春子君 そうです。
○国務大臣(麻生太郎君) インドネシアはオランダ領だったんだと思いますが。
○吉川春子君 それだけでは慰安婦は発生しませんね。その後どうなったんですか。
○国務大臣(麻生太郎君) 今の御質問の内容は、その経過はと言われたんで、インドネシアはオランダ領だったから起きたと申し上げたところまでは御理解いただけているという前提でよろしゅうございますね。
○吉川春子君 はい、結構です。
○国務大臣(麻生太郎君) その後、先ほど河野官房長官談話の話というのを安倍総理からずらっと言われた一連の関係の中にすべて物語っていると私もそう思います。
○吉川春子君 オランダ人は強制収容されて、強制収容所から女性たちが軍隊によって拉致されて慰安所に入れられたと、こういうことですね。
○国務大臣(麻生太郎君) 私は、その方の証言はそうなっておるというように理解しております。
○吉川春子君 アジア女性基金の報告書はそれと違う内容になっていますか。
○国務大臣(麻生太郎君) オランダのところ、オランダ人のところの細目はよく存じませんけれども、そのようになっておるかどうか、ちょっと今のこの段階で存じているわけではございません。
○吉川春子君 事務局、答えてください。通告してあるでしょう。
○国務大臣(麻生太郎君) 事務局から何か言われておりませんので、私が代わりに読ませていただきます。
平成五年八月、河野官房長官談話の際に発表された調査結果でも明らかにされているとおり、現在、インドネシアに慰安所が存在したこと及び慰安婦の出身地としてオランダが含まれていることは確認されましたと書いてあります。
○吉川春子君 強制収容所にオランダ人を収容し、その中から若い女性だけを選んで拉致して慰安所に連れていった、この証言があったと外務大臣言われました。これは強制性に当たらないんですか、総理大臣。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) このオランダ人の女性も含めてこの官房長官談話は出されているわけであります。ちなみに、軍がその事実を知って直ちに慰安所を閉鎖したと、こういう事実関係があるわけであります。
○吉川春子君 軍が関与し、強制されて慰安婦にされたんですね。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) これは、つまりその事実を軍が知って、軍がその慰安所を閉鎖をしたと、こういう事実関係がございます。
○吉川春子君 法務省に伺います。
平成十六年十二月十五日、東京高裁において中国山西省の慰安婦の事件が判決が出ましたけれども、事件の背景事情としてどのようなことが認定されていますか。
○政府参考人(大竹たかし君) お答えいたします。
御指摘の判決は、原告らの主張は法的根拠がないとして請求は棄却されておりますけれども、その御指摘の判決文によりますと、旧日本軍の北シナ方面軍が一九四〇年から四二年にかけて、いわゆる三光作戦を実施する中で、日本軍構成員らが駐屯地近くに住む中国人女性を強制的に拉致、連行して性的暴行を加え、監禁状態にして、いわゆる慰安婦状態にする事件があったとの事実認定がなされております。
ただ、判決文において、慰安所においてそのような行為が行われたという事実は認定されておりません。
○吉川春子君 四人の控訴人の中の二人の女性の事実について報告していただきたいと思います。
○政府参考人(大竹たかし君) 判決文によれば、原告の供述に基づいて以下のような事実を認定したということでございます。
まず、原告のうち十五歳の未婚の女性については、一九四二年、日本軍兵士らによって自宅から日本軍の駐屯地のあった村に拉致、連行、監禁され、複数の日本軍兵士らに性的暴行を繰り返されたとされ、もう一人の未婚の原告については、一九四二年、三人の中国人と三人の武装した日本軍兵士らによって無理やり自宅から連れ出されて日本軍駐屯地に拉致、連行、監禁され、上記三人の中国人のほか多数の日本軍兵士らによって性的暴行を加えられたとされております。
○吉川春子君 この事実について、強制の事例と安倍総理大臣、お認めになりますね。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) いわゆる従軍慰安婦については河野官房長官談話で申し上げているとおりでございます。
○吉川春子君 日本軍が拉致、連行して慰安婦にしたという事実を裁判所が認定していますが、これは認めますか。証拠になりませんか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) この裁判の結果については、これは国側が勝訴していると、このように承知をしておりますが、いずれにせよ、河野官房長官談話で述べられているとおりであります。
○吉川春子君 日本軍の兵士による拉致、連行によって慰安婦にさせられたという事実を裁判所は認定しているんです。それを強制性と認めるかどうかということを安倍総理に聞いています。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) これ請求自体は棄却をされているわけでありまして、この判示の事実認定部分は傍論であるということでございまして、言わば法律上重要ではないと、このように考えております。
○吉川春子君 それでは、証拠にはなり得ない、総理のおっしゃる証拠にはなり得ないということですか。確認します。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今申し上げたとおりであります。
○吉川春子君 これを、裁判所の認定は認めるのか認めないのか。否定するんですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今申し上げたとおりであります。
○吉川春子君 甘言であれ、強制連行、拉致であれ、慰安所は日本軍管理下の下、逃げられず、慰安婦とされた女性たちは毎日レイプされたんです。ワシントン・ポストによれば、身の毛のよだつような体験の証言をしたと、こう言っているんです。これをもって強制性はなかったとそれでも総理大臣はおっしゃるんですか。そのことを端的に、あなたの考えを言ってください。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 既に私の考えは申し上げているとおりでありまして、河野官房長官談話で述べられているとおりでございまして、この考え方を継承していくということでございます。
○吉川春子君 兵士による拉致、連行も河野官房長官談話の中に含まれているということでいいですね。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) ただいまの裁判の事案につきましては、別途私が答弁したとおりであります。
○吉川春子君 裁判の事案でなくても、オランダも挙げました。どうですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) オランダの事案につきましては河野官房長官談話で述べられたとおりであります。
○吉川春子君 オランダの事案は、日本軍による拉致、連行によって慰安婦にさせられた事例です。それを安倍総理はお認めになったということですが、安倍総理、慰安婦の被害者の女性たちが今何を一番望んでいるとあなたはお考えですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私は、もう常々申し上げておりますように、慰安婦の方々が辛酸をなめられたわけでありまして、御同情申し上げますし、当時そういう状況に置かれたことにつきましてはおわびを申し上げているとおりであります。
○吉川春子君 今日までまだPTSDで苦しんでいるんですよ。日本政府が本当に心から公式に謝ってほしいと思っているんです。
総理、公式に謝る必要があると思いませんか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今、私はここでおわびを申し上げているわけであります。内閣総理大臣としておわびを申し上げているわけでありますし、河野官房長官談話で申し上げているとおりであります。
○吉川春子君 河野官房長官談話は閣議決定されていません。
それでは、閣議決定しますか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 河野官房長官談話ですべてでございます。
○委員長(尾辻秀久君) 時間が参っております。吉川春子君。
○吉川春子君 安倍総理、一度被害者に直接お会いいただきたいと思います。細田元官房長官はお会いになりましたけれども、安倍総理も直接、慰安婦にお目に掛かって謝罪をしていただきたい。そのことを最後にお願いします。いかがですか。
○委員長(尾辻秀久君) 時間が過ぎておりますから、指名はいたしません。
以上で吉川春子君の質疑は終了いたしました。(拍手)
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/166/0014/16603260014013a.html
強制連行はあったと認めざるを得ないけど、それは口が裂けても言いたくないので、的外れな「河野官房長官談話で述べられているとおりであります」をナントカの一つ覚えで頑強にリピートするだけ(苦笑)
同年5月28日に
強制連行が明らかなマゲラン事件について辻元清美議員質問されたときも、吉川議員の時と同じ反応です。
「平成五年八月四日の内閣官房長官談話(河野談話)のとおりである。」
「平成五年八月四日の内閣官房長官談話(河野談話)を継承しているというものである。」
何も答えていないに等しいですね。
しかし喉もと過ぎれば何とやら。
第二次安倍内閣がスタートした去年の12月には高支持率に調子にのってまたしても「強制連行はなかった」「河野談話を見直す」とやらかしたので、世界から叩かれ大人しくせざるを得ませんでした。
そこで「強制連行なかったってのが日本政府の見解ですから(キリッ」とフライングしたのがトオルちゃんだったわけです
しかしここに来て安倍氏もとうとう逃げ切れず、
赤嶺氏は、安倍内閣が「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」(2007年の答弁書)としていることについて、「『政府が発見した資料』とは何か」と質問。答弁書は「内閣官房内閣外政審議室(当時)が発表した『いわゆる従軍慰安婦問題の調査結果について』において、その記述概要が記載されている資料を指す」とのべ、日本軍による強制連行を示す資料である「バタビア臨時軍法会議の記録」があることを認めました。
(赤旗より)
ところがまだ、日本政府の立場は変わらない、強制連行があったという事実を否定して元慰安婦を傷つける公人がいても、反論する必要はない、と開き直っているのですから、まさに悪質な「居直り強盗」です。
このままでは日本が「ならず者国家」認定される日が来るかも。
<参考記事>
◆
慰安婦めぐる国連委勧告「従う義務なし」 安倍内閣http://www.asahi.com/politics/update/0618/TKY201306180289.html
安倍内閣は18日、旧日本軍の慰安婦問題に関する国連の拷問禁止委員会の勧告について、「法的拘束力を持つものではなく、締約国に従うことを義務づけているものではない」とする答弁書を閣議決定した。紙智子参院議員(共産党)の質問主意書に答えた。
委員会は勧告で、日本維新の会の橋下徹共同代表らの発言を念頭に、「当局者や公的人物による事実の否定や、それによって被害者を再び傷つける行為に反論すること」を日本政府に求めている。菅義偉官房長官は記者会見で、「日本政府の立場は何回となく会見している。政府として改めて発言することはないという趣旨だ」と説明した。
◆辻元清美オフィシャルサイト
橋下徹大阪市長の慰安婦を巡る発言の背景となった安倍首相の「閣議決定」に関する発言について
2013年5月23日
http://www.kiyomi.gr.jp/blogs/2013/05/23-933.html
辻元清美は慰安婦問題をはじめとする歴史認識問題について、国会議論を積み重ねてきました。
その結果、河野官房長官談話をめぐる国会での議論や歴代総理の見解と、安倍首相・橋下市長の発言との間の矛盾が明らかになってきました。
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橋下徹大阪市長の慰安婦を巡る発言の背景となった安倍首相の「閣議決定」に関する発言について
2013.5.23
民主党衆議院議員 辻元清美
日本維新の会の代表である橋下徹大阪市長の慰安婦を巡る発言が波紋を巻き起こしている。これは、安倍晋三総理の慰安婦問題についてのこれまでの認識と発言が、橋下発言を誘発したと考えられる。
河野官房長官談話について、安倍首相は、第一次安倍内閣で「強制連行を直接示すような記述はなかった」ことを初めて「閣議決定」(D)をしたとし、それを根拠に河野官房長官談話の見直しを示唆する発言(A・B)を繰り返している。また、橋下市長は、これらの安倍首相の発言を根拠に「強制連行はなかった」という趣旨の発言(C)を繰り返している。
しかし、ここで安倍首相がいう「閣議決定」は、歴代内閣の認識(E・F)と同じ認識を示したにすぎず、またすでに、1997年に橋本内閣でも同じ内容の答弁の閣議決定(G)がなされており、第一次安倍内閣であらたな事実を閣議決定したわけではない。
歴代内閣では、「強制連行を直接示すような記述は見当たらなかったが、関係資料の調査や関係者からの聞き取りなどから全体として判断し、河野官房長官談話となった」との認識が繰り返し示されている。すなわち、「強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」ということは認めた上で、河野官房長官談話を発出したとの認識が示されてきたのであり、第一次安倍内閣での「閣議決定」もそれを踏襲したにすぎない。
したがって、「強制連行を直接示すような記述はなかった」ことを根拠に河野官房長官談話を見直すことはできない。
<安倍首相の発言>
A)「さきの第一次安倍内閣のときにおいて、質問主意書に対して答弁書を出しています。これは安倍内閣として閣議決定したものです。つまりそれは、強制連行を示す証拠はなかったということです。」(2013年2月7日・衆議院予算委員会)
B)「河野洋平官房長官談話によって、強制的に軍が家に入り込み人さらいのように連れていって慰安婦にしたという不名誉を、日本は背負っている、安倍政権のときに強制性はなかったという閣議決定をしたが、多くの人たちは知らない、河野談話を修正したことをもう一度確定する必要がある、孫の代までこの不名誉を背負わせるわけにはいかない。」(2012年9月15日・日本記者クラブでの討論会〔野党党首時代〕)
<橋下市長の発言>
C)「河野談話は閣議決定されていませんよ。それは河野談話は、談話なんですから。だから、日本政府が、日本の内閣が正式に決定したのは、この2007年の閣議決定だった安倍内閣のときの閣議決定であって、この閣議決定は慰安婦の強制連行の事実は、直接裏付けられていないという閣議決定が日本政府の決定です。」(2012年8月24日囲み)
※安倍首相、橋下市長の発言は同種のものが多くあるため、一部を掲載。
両者の発言で、強制連行がなかったという根拠に挙げている「2007年の第一次安倍内閣での閣議決定」とは、辻元清美が提出した質問主意書に対する答弁(D)を指す。
※質問主意書とは、議員が政府に対して文書形式で質問をすること。それに対する政府の答弁は文書でなされ閣議決定して回答をする。
D)「安倍首相の『慰安婦』問題への認識に関する質問主意書」(2007年3月8日辻元清美提出)への答弁(2007年3月16日)
「関係資料の調査及び関係者からの聞き取りを行い、これらを全体として判断した結果、同月四日の内閣官房長官談話のとおりとなったものである。また、同日の調査結果の発表までに政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」
安倍首相は、上記答弁の後段の部分だけを引用して、「強制連行を直接示す記述はなかった」とし、この部分を、河野官房長官談話を見直す根拠にしようとしている。
しかし、この答弁は、前段とセットになっていて、「強制連行を直接示すような記述は見当たらなかったが、関係資料の調査や関係者からの聞き取りなどから全体として判断し、河野官房長官談話となった」という内容になっている。
これは、歴代の内閣と同じ答弁(E・F)を繰り返したに過ぎない。
<歴代の内閣の答弁>
E)片山虎之助委員の質問に対する平林博官房外政審議室長による政府答弁(1997年1月30日参議院予算委員会)
「政府といたしましては、二度にわたりまして調査をいたしました。一部資料、一部証言ということでございますが、先生の今御指摘の強制性の問題でございますが、政府が調査した限りの文書の中には軍や官憲による慰安婦の強制募集を直接示すような記述は見出せませんでした。ただ、総合的に判断した結果、一定の強制性があるということで先ほど御指摘のような官房長官の談話の表現になったと、そういうことでございます。」
F)板垣正委員の質問に対する村岡官房長官の政府答弁(1998年4月7日総務委員会)
「第一点は、先生今御指摘になられましたように、政府が発見した資料、公的な資料の中には軍や官憲による組織的な強制連行を直接示すような記述は見出せなかったと。第二点目は、その他のいろいろな調査、この中には、おっしゃったような韓国における元慰安婦からの証言の聴取もありますし、各種の証言集における記述もありますし、また日本の当時の関係者からの証言もございますが、そういうものをあわせまして総合的に判断した結果一定の強制性が認められた、こういう心証に基づいて官房長官談話が作成されたと、こういうことでございます。」
さらに、安倍首相は「いわばその重たい閣議決定をしたのは初めてであります」(2013年3月8日の辻元の予算委員会質問に対する答弁)と、歴代内閣で初めて、「強制連行を直接示す記述はなかった」ことを閣議決定したと答弁している。ところが、これも虚偽答弁である。
すでに1997年11月21日、高市早苗議員の提出した質問主意書に同じ内容の答弁(G)が橋本内閣によって閣議決定されている。
G)高市早苗議員の質問主意書「慰安婦」問題の教科書掲載に関する再質問主意書(1997年11月21日)に対する答弁書
「いわゆる従軍慰安婦問題に関する政府調査においては、発見された公文書等には、軍や官憲による慰安婦の強制連行を直接的に示すような記述は見られなかった。他方、調査に当たっては、各種の証言集における記述、大韓民国における元慰安婦に対する証言聴取の結果等も参考としており、これらを総合的に判断した結果、政府調査結果の内容となったものである」
上記のように、河野官房長官談話について、第一次安倍内閣で新しい内容の閣議決定をしたわけではない。第一次安倍内閣は、歴代の内閣と同じ答弁や閣議決定を繰り返したに過ぎないのであって、河野官房長官談話を見直す根拠は存在しない。
にも関わらず、第一次安倍内閣であたかも新しい認識を示したかのような答弁を繰り返し、河野官房長官談話を見直す根拠にしようとする安倍首相の姿勢は、国民をあざむこうとしていると言わざるを得ない。
また、こうした安倍首相の発言をもとに発言する橋下市長も認識不足と言える。
◆こりゃ、ほたえな
デマ「安倍晋三内閣は河野談話の否定を閣議決定している」を検証 http://yunishio.blogspot.jp/2012/12/blog-post_30.html◆平成十九年五月二十八日提出
質問第二六七号
極東国際軍事裁判の証拠資料と安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する質問主意書
提出者 辻元清美
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a166267.htm◆赤旗
「慰安婦」問題 赤嶺氏に回答
政府資料に強制証拠
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-06-19/2013061901_01_1.html
安倍内閣は18日、日本共産党の赤嶺政賢衆院議員が提出した質問主意書に対する答弁書で、「慰安婦」問題に関して日本軍による強制連行を示す証拠が政府の発見した資料の中にあることを初めて認めました。
赤嶺氏は、安倍内閣が「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」(2007年の答弁書)としていることについて、「『政府が発見した資料』とは何か」と質問。答弁書は「内閣官房内閣外政審議室(当時)が発表した『いわゆる従軍慰安婦問題の調査結果について』において、その記述概要が記載されている資料を指す」とのべ、日本軍による強制連行を示す資料である「バタビア臨時軍法会議の記録」があることを認めました。
同記録は、日本軍がジャワ島セマランほかの抑留所に収容中のオランダ人女性らを「慰安所に連行し、宿泊させ、脅すなどして売春を強要するなどした」と明記。答弁書は「ご指摘のような記述がされている」と認めています。
答弁書は「強制連行を示す証拠はなかった」という安倍内閣の認識は「同じである」としていますが、その根拠が根底から覆される内容となっています。
答弁書の誤り認めただちに撤回を
赤嶺政賢衆院議員の話 政府が発見した資料の中に、法務省のバタビア臨時軍法会議の記録があることを認めた以上、第1次安倍内閣が2007年に閣議決定した「強制連行 資料なし」との答弁書が誤りであったことは明白です。
2007年の答弁書は、橋下徹大阪市長(日本維新の会共同代表)など「慰安婦」強制否定派が最大限に利用していますが、安倍内閣は答弁書の誤りを認めて、ただちに撤回するべきです。
「慰安婦」強制連行示す文書
安倍内閣 存在認める
否定派の論拠総崩れ
赤嶺議員への答弁書http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-06-24/2013062402_02_1.html◆中央日報
慰安婦強制連行の文書、河野談話の時すでに確保…安倍政権、知りながら隠ぺいか
http://japanese.joins.com/article/051/173051.html?servcode=A00§code=A10#
第1次安倍晋三内閣(2006~2007年)が、従軍慰安婦の強制性を明確に表す資料の存在を知りながら、2007年に「強制連行を直接的に示す記述はない」という趣旨の政府の立場を決めていたことが明らかになった。日本共産党の赤嶺政賢衆議院議員が最近、安倍内閣から提出させた答弁書でこのような事実が確認されたと共産党がホームページで公開した。
日本政府は1993年、慰安婦動員の強制性を認めて謝罪する河野談話を発表した。 だが安倍内閣は2007年3月に「政府が発見した資料には軍や官憲による強制連行を直接示すような記述は見られなかった」という政府答弁書を出した。河野談話の趣旨を事実上ひっくり返したというのが、慰安婦動員の強制性の可否についての現日本政府の公式立場だ。最近「慰安婦は必要だった」という妄言で波紋を起こした橋下徹大阪市長もこの答弁書を根拠に「強制動員はないというのが日本政府の立場」と主張している。
これに関して赤嶺議員は10日、2007年の政府答弁書の内容のうち「政府が発見した資料」の範囲とは何か、「バタビア臨時軍法会議記録」がその範囲に含まれのるかを質問した。「バタビア臨時軍法会議」は、太平洋戦争の末期である1944年に日本軍がインドネシアのジャワ島に抑留中だったオランダ人女性たちを強制的に売春に動員したことを断罪するために戦後インドネシアのバタビアで開かれた戦犯軍事裁判だ。この裁判記録には「(日本軍が)売春をさせる目的で(女性たちを)慰安所に連行して、宿泊させ、脅迫しながら売春を強要した」という内容が含まれている。
赤嶺議員の質問は一言でいうと「慰安婦が強制的に動員された事実を、具体的で直接的に示しているバタビア軍法会議資料があったのに、なぜ2007年の答弁書でこうした資料の存在を否認したのか。2007年の誤った答弁書を直さざるをえないのではないか」ということだ。
これに対して安倍内閣は、赤嶺議員の質問に対する答弁書を閣議で決定して18日国会に提出した。答弁書は“バタビア臨時軍法会議記録”が1993年の河野談話発表当時の政府調査の時にはすでに存在していたという事実を認めた。また2007年の政府答弁書の中の“政府が発見した資料”にもこの記録が含まれていると認めた。“バタビア記録”の存在を知っていながら「政府が発見した資料には強制連行の記述はない」と発表したということだ。答弁書はしかし、なぜそうしたかについては言及しなかった。
共産党や赤嶺議員側によれば「従軍慰安婦が日本軍によって強制連行されたとのことを表す証拠が、政府の発見した資料に含まれている」と日本政府が認めたことは今回が初めてだ。赤嶺議員は「2007年の答弁書が誤っていたことが明白になったのだから直ちに撤回して当然だ」と主張した
安倍内閣、「慰安婦強制連行」証拠資料を隠ぺい=韓国
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0624&f=politics_0624_004.shtml
複数の韓国メディアは24日、第1次安倍晋三内閣(2006-07年)が従軍慰安婦の強制連行を示す証拠があることを知りながら、07年に「強制連行を直接的に示す記述はない」との答弁書を閣議決定していたと伝えた。各メディアは、安倍内閣が強制動員の証拠を「黙殺」したと非難した。
報道によると、安倍内閣は18日、1993年に河野洋平官房長官談話を発表するにあたって日本政府が収集した資料の中に、日本軍による慰安婦の強制連行を示す資料である「バタビア臨時軍法会議の記録」が含まれていたことを、日本共産党の赤嶺政賢衆院議員への答弁書で認めた。
バタビア臨時軍法会議は、日本軍が1944年2月から約2カ月間に渡り、ジャワ島セマランなどの抑留所に収容していたオランダ人女性24人を慰安所に連行し買春を強要させた事件を裁くため、48年にインドネシアのバタビアで開かれた軍事裁判。同裁判では、日本軍将校7人と軍属4人が有罪、うち1人は死刑判決を受けた。日本は1951年のサンフランシスコ講和条約を通じて判決を受け入れた。
安倍内閣は答弁書で、バタビア臨時軍法会議の記録に「慰安所に連行、宿泊させ、脅すなどして買春を強要するなどした」との記述があることも認めた。
第1次安倍内閣は07年3月、慰安婦問題に関連し、「政府が発見した資料には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」との答弁書を国会に提出。安倍内閣は最近も同様の主張を繰り返している。
赤嶺議員は、第1次安倍内閣が閣議決定した07年の答弁書は橋下徹大阪市長など「慰安婦」強制否定派が最大限に活用してきたと指摘し、政府が発見した資料に「バタビア臨時軍法会議の記録」があることを認めた以上、安倍内閣は07年の答弁書を撤回するべきだと主張した。(編集担当:新川悠)
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