死刑を執行した中国政府と、執行の中止を求めなかった日本政府に強く抗議します
- 2010/04/07
- 02:40
中国政府に、そして執行中止を要求しなかった日本政府には更に強く、抗議したいと思います。
日本政府は懸念を表明したものの、「中国の司法の問題だ」として執行取りやめは求めない考えを示していました。死刑を中止させる気は毛頭なかったわけで、この日本人受刑者たちは最初から国に見捨てられていたのです。
(中国では、干渉しようとしなかったこの日本の姿勢を理性的だと評価する意見が目立ったようです。)
執行について日本政府の対応です
死刑執行は「残念」=鳩山首相
「それぞれの国の司法制度があるので、内政干渉的なことを言うべきではないが、ギョーザ(中毒)事件が一応解決の方向に向けて動いていた矢先だけに、残念だ」と語った。
日本人の対中感情に与える影響については「通常の感情からすれば(刑が)厳しすぎるという思いは当然あるだろうが、国の違いを理解してもらうしかない」と指摘。「日中関係にいろんな亀裂が入らないように努力する。影響が出ないように国民にも冷静に努めていただきたい」と強調した。
中国に新たな懸念表明せず 死刑執行で政府
4月6日19時41分配信 産経新聞
日本政府は中国当局が日本人死刑囚の刑を執行したことについて、「残念」(鳩山由紀夫首相)としながらも、中国側に新たな懸念などを表明することはなかった。
首相は6日夕、記者団に対し、「司法制度が違う状況の中で(刑罰が)厳しすぎるという思いはあるが、このことで日中に亀裂が入らないように政府としても努力する」と述べた。
岡田克也外相も同日夕の記者会見で、「どういう行為にどういう刑罰を科すかはその国の立法政策の問題だ」と述べ、中国とは司法制度が異なる以上、死刑執行そのものに抗議はできないとの考えを示した。
一方で、社民党党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相は「大変ショックだ。日本であれば死刑にならないし、国際的にみても量刑が重すぎる」と述べ、中国側の対応を批判した。
中国側は週内に他の3人の日本人死刑囚についても刑執行を行うと通告している。今回の死刑執行について政府内には「日本と比べかなり刑罰が重い」(千葉景子法相)との指摘も出ており、国内世論の動き次第では今後の対中外交に影響がでる可能性もある
新たな懸念さえ表明しないとは、イギリスのブラウン首相と随分違いますね。
日本国民数人の命より日中関係を重視したのか、毒入り餃子の犯人逮捕は死刑執行とのバーターなのか、と勘ぐりたくなります。
鳩山首相が所信表明演説で繰り返した言葉、「命を大事にしたいのです」が、なんと虚しく聞こえることか・・・
個人的に、千葉法相にはがっかりしました。死刑廃止やアムネスティの活動をしていただけに、執行のとりやめを訴えるかと期待していたのですが、閣内でハッキリ執行取りやめを訴えたのは、社民党の福島党首だけではないですか。
(余談ですが、何故法相就任時に、死刑廃止議員連盟やアムネスティ議員連盟ぬけるひつようがあったのか、私は疑問です)
鳩山総理や岡田外相、平野官房長官らのような
「中国とは司法制度が異なる以上、死刑執行そのものに抗議しない」という態度が本当に正しいのか、もう一度、日弁連会長の声明を再掲しましょう
国際人権(自由権)規約の第6条2項は、「死刑を廃止していない国においては、死刑は(略)最も重大な犯罪についてのみ科することができる。」としており、(略)「最も重大な犯罪」とは、少なくとも人の死という結果を伴う犯罪に限定されることを意味する
国内法では死刑を科し得ない事件について、国際人権基準に明確に反する死刑によって日本国民の生命が奪われようとしている事態を座視するべきではない
グローバル化が進みだんだんボーダーレスが進んできた現代においては、世界人権宣言や国際人権規約に見られるような「基本的人権を尊重すべし」という一定の価値観は基本的に世界で共有できていると言えるでしょう。
もちろんそれぞれの国が独立した主権国なのだから、内政不干渉は原則ではあるけれど、その共通の国際基準に基づいて要求したり抗議したりすることは可能なはずです。
ミャンマーの軍事政権による自国民弾圧に抗議声明を出しても誰もそれを内政干渉だとは非難しませんね?
「死刑を廃止していない国においては、死刑は最も重大な犯罪についてのみ科することができる。最も重大な犯罪とは、少なくとも人の死という結果を伴う犯罪に限定されることを意味する」
この基準はグローバルスタンダードだといえます。
また、裁判は被告人が十分言いたいことを伝えられる適正公正な裁判でなくてはなりません。死刑という重罪であれば尚更です(←追加)。
このような国際基準を要求することは理不尽な要求ではないし、内政干渉とは言えないと思います。
でも中国は、「いや、アヘン戦争など麻薬に苦しめられた歴史を持つ我が国では、麻薬こそ殺人に匹敵する最重大犯罪なのだ」と抗弁することでしょう。
政府はそれを忖度し、中国に国際基準に照らして行動するよう要求することを放棄してしまいました。
しかしもしこれがイスラム教国の、姦通した女性に対する死刑だったらどうでしょう?
もしイスラム教国の在留邦人か旅行者の日本人女性が、姦通罪で石打ちによる死刑を宣告されたら?
石打ちによる死刑は非常に残虐だと非難を浴びています。
しかもあちらの刑事裁判も適正手続が十分保障されておらず偏った裁判が多いです。冤罪の可能性もあるでしょう。
13歳の少女が既婚の男に強姦されたのに姦通の罪を問われ、世界の非難を無視して石打ちの刑で死刑にされたのは非常にショッキングな出来事でした。
それでも「どういう行為にどういう刑罰を科すかはその国の立法政策の問題だ」として、政府は日本人女性の石打ち刑に抗議しないのでしょうか?
もちろんそのイスラム教国は「我々イスラムの社会では姦通こそ、殺人に匹敵する重罪なのだ」と抗弁することでしょう。
中国は麻薬を、イスラム教国は姦通を、殺人罪に匹敵する、死に値する罪だと考えています。
しかしこれを単なるお国柄、価値観の違いですまして良いものものでしょうか
文化の違いを尊重するのと同レベルで考えて良いものでしょうか
国際基準に立って、それに明確に反していると主張するのは政府の義務だったと思います。
たとえ自国民の命がかかっていても、他国の制度に抗議するのは一切慎むべきだという内政不干渉は、度が過ぎれば、著しい人権侵害の黙認になります。
全てのケースに内政不干渉を貫けば、世界の人権状況を進歩させることは決してできないでしょう。(バランスが難しい所ではありますが)
まあ、「あなたの国も死刑してるじゃないか。あなたたちは死刑しても良くて我々はダメなのか」といわれればその通りなので、死刑執行するなと強く要求しづらいとは思います。
日本も中国人の死刑を執行しているし、現在外国籍の死刑囚は4人いるらしいです。そのうちの3人は中国、一人はマレーシアです。
でも、「いや、我々は殺人しか死刑をかしてないからギリギリ国際基準をクリアしてる」という反論はできたはずです。苦しいには苦しいんですけどね。
だってもし、死刑を廃止してる国の人間が日本で死刑の確定判決を受けた場合、日本は当然その国からの抗議によって死刑判決を覆したりしないでしょうから。
中国の死刑は悪いが自国の死刑は良いのだとはやはり胸を張って言いにくいです。
日本の死刑制度が殺人の重罪に限ったものであっても、中国に対し奥歯に物が挟まったような言い方しかできません。
正々堂々と死刑執行中止を強く要求するには、やはり死刑存置ををみなおすより他にないのです。
対中世論が悪化するおそれがある、と新聞は書いていますが、同情する気が起きないのか、今のところ世論が中国にそんなに反感を抱いてるようには感じません。
まだ毒入り餃子の方が中国に対する反感が高まったのではないでしょうか
通訳がろくでもなく、きちんとした手続を経ていない可能性が高い、つまり、公平で適正な裁判を受けられないまま死刑に当たらない罪で邦人が処刑されても、日本の世論は平気なのでしょうか。
それは人権保障がきちんとなされていない中国の刑事裁判や年間1000人を超える中国の死刑を肯定しているのと同じです。
中国は人権に関しては後進国ですが、日本の人権感覚のレベルは中国と大差ないような気がしてきました。
- 関連記事
-
- 千葉法相、死刑執行に激しく抗議します。 (2010/07/29)
- 死刑を執行した中国政府と、執行の中止を求めなかった日本政府に強く抗議します (2010/04/07)
- 日本政府は中国の日本人死刑執行通告に抗議し、執行回避のために全力を尽くして欲しい(若干修正と追記あり) (2010/04/04)
トラックバック
厳罰化を求める世論>反中感情
- 2010/04/08(23:00)
- 非国民通信