都教委は今年の入学式に君が代斉唱時の不起立で懲戒処分に処した3名の教員に対し、「再発防止研修」中止の申し入れにもかかわらず、「研修」を強行しました。
この「再発防止研修」というのがまるで戦前の特高のように「転向」を迫る思想弾圧に等しいものとなっているようで、自由主義・民主主義国家ではあってはならない人権侵害だと言わざるをえません。
◆レイバーネット
都教委「良心よりも命令が重要」~窓のない地下室で再発防止研修
http://www.labornetjp.org/news/2013/0508hokoku
5月8日、東京都は4月の入学式で「君が代」不起立をした教員3人にまたもや再発防止研修を実施した。水道橋の研修センター前には早朝から研修者支援の人々が集まった。研修の始まる前に、東京『君が代』裁判弁護団の澤藤統一郎弁護士は、「(ドイツの戦争犯罪を裁いた)ニュルンベルグ裁判では、上司の命令、国家の命令といえでも、犯罪は免罪されないとした。都教委が研修で思想・良心の自由をくりかえし圧迫するなら、それをした公務員個人への訴訟もあえて辞さない。」と都教委に申し入れた。
研修を終えた田中聡史さん(不起立5回目で減給1ヶ月の処分・都立板橋特別支援学校・写真下)は、「研修ではどの講師も職務上の命令に従わなくてはならないと言う。良心より命令が重要だという人々で構成される社会は恐ろしい。良心に基づけば、従えない命令があるということを認めさせていかなければならない」と話した。
川村佐和さん(不起立2回目で戒告処分・都立高校・写真下)は、「窓のない地下室での研修は想像以上に寒く、それ自体がイジメだ。国旗・国歌の尊重を何十回もくりかえし言われた。再発防止研修のあり方を問題にしていきたい」と語った。
田中さんは、昨年卒業式と入学式の2回の不起立で、4月以後、校内研修を含め18回の研修を受けさせられた。今年も同じような研修が待ち受けている。(佐々木有美)
◆パワー・トゥー・ザ・ピープル!!パート2
再発防止研修:私たちは決して都教委の「懲罰・弾圧」に屈しない
★ 入学式処分に係わる服務事故再発防止研修に抗議する声明
http://wind.ap.teacup.com/people/7524.html#
(引用開始)
この「研修」は、「思想・良心の自由」ど「教育の自由」に基づく信念から不当にも処分された教職員に対して、セクハラや体罰などと同様の「服務事故者」というレッテルを貼り、精神的・物理的圧迫により、執拗に追い詰め「思想改造」を迫るものであり、日本国憲法の精神を踏みにじる暴挙である。
都教委は、「服務事故再発防止研修」と称して昨年度より、「センター研修」2回(各200分)と長期にわたる「所属校研修」を被処分者(受講者)に課している。
しかも受講者のうちの1人は、既に、4月5日に卒業式処分を理由にした「再発防止研修」を受講しており、わずか1ヶ月余りで2回も同研修の受講を強制されている。
これは、「繰り返し同一内容の研修を受けさせ、自己の非を認めさせようとするなど、公務員個人の内心の自由に踏み込み、著しい精神的苦痛を与える程度に至るものであれば、そのような研修や研修命令は合理的に許容される範囲を超えるものとして違憲違法の問題を生じる可能性があるといわなければならない」とした東京地裁民事19部決定(2004年7月23日)に反することは明らかである。
これらは、硬直化した処分行政による教育環境の悪化を危惧して、「適切妥当な解決のための具体的な方策を見いだすよう最大限の努力」を求めるという最高裁判決(2012年1月16日)の補足意見を顧みることなく、都教委が「紛争を拡大」させていることを物語っている。
(引用ここまで)
東京『君が代』裁判弁護団の澤藤統一郎弁護士の申し入れはこちらに書かれています。
◆澤藤統一郎の憲法日記
「再発防止研修」という名の思想弾圧に抗議するhttp://article9.jp/wordpress/?p=282そこでこのようなことが指摘されています。
確認しておきたい。都教委は、最高裁判決によって、これまで鋭利な武器としてきた懲戒処分の機械的累積加重システムを放棄せざるをえなくなった。その代わりとして考え出したのが、被処分者に対する服務事故再発防止研修の厳格化である。回数を増やし、時間を長くし、密室で数人がかりでの糾問までしている。今や、あなた方が、思想弾圧の最前線に立っている。
昨年の最高裁判決により不起立の回数で機械的に懲戒処分を重くしていくことが出来なくなったので、都教委は「再発防止研修」の内容を過酷にするという嫌がらせに出るのではないかということは危惧されていました。その危惧通りになったわけです。
「窓のない地下室での研修は想像以上に寒く、それ自体がイジメだ。国旗・国歌の尊重を何十回もくりかえし言われた」
これ、もはや「研修」などと言える代物ではなく、「拷問」「洗脳」の恐怖すら覚えます。こんなことは旧ソビエトみたいな弾圧国家のやることです・・・とういか、これ、戦前の日本のお家芸でしたね。
いえ、戦前のみならず現在も続く日本のお家芸です。
人間の尊厳を傷つけるこの弾圧の実態を国内のみならず広く国際社会に知ってもらわなければ、自浄能力のない日本での改善はもはや望めないのではないかでしょうか
その一方で、こんなことがありました。
入れ墨訴訟の大阪市職員「不当な処分」配転取り消し求め提訴へ
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2013/05/09/kiji/K20130509005768510.html
大阪市が実施した職員の入れ墨調査の回答を拒否して懲戒処分を受けた市交通局の男性職員(55)が、処分取り消しなどを求めて起こした訴訟の取り下げを交通局長に迫られ、断ったところ配置転換をされたとして、配転の取り消しや慰謝料など370万円を求めて9日、大阪地裁に訴訟を起こした。
訴えによると、市バス運転手の男性は昨年8月、入れ墨調査の回答を拒否したとして処分を受けた。10月、処分の取り消しや損害賠償を求めて大阪地裁に提訴すると、藤本昌信交通局長との面談が設けられ、訴訟を取り下げるよう要求された。
取り下げない意向を伝えると後日、事務担当部署に勤務するよう上司から指示され、12月、正式に辞令が出た。
男性側は、局長との面談の経緯などを踏まえ「提訴に対する報復措置なのは明らか。裁判を受ける権利を侵害するもので、不当な処分だ」と主張している。
藤本交通局長は9日、訴訟取り下げ要求や配置換えを認めた上で「提訴されるなら極めて残念。(交通局を)訴えている運転手に、市民の安全を任せるわけにはいかない」と話した。
この交通局長は「裁判を受ける権利」が憲法で保障された権利だと言うこと、自分はそれを侵害してるのだと言うことがわからないのでしょうか?
公務員のくせに憲法をしらないのですか?
憲法尊重義務(憲法99条)が課せられているのに、これはあかんでしょう?
どうしてこの交通局長のような職員には、再び憲法違反の人権侵害しないよう「再発防止研修」を行わないのでしょうか?
憲法尊重義務があることからすれば、職務命令に盲従しろという「研修」(と言う名の弾圧)よりも、職務命令より上位にある憲法に従うべきという「研修」をすべきではないですか?例えば、違憲違法な労組アンケートを強要した橋下市長や野村特別顧問なども、二度と違憲違法な権力濫用をしないよう厳しい「再発防止研修」を受ければよいのです。
都教委の委員達も「再発防止研修」で、憲法の保障する内心の自由とは何か、みっちりしごかれてしかるべきです。
それが公務員の憲法尊重「義務」を果たすということでしょう。
<公開前追記>
Lさんから頂いたコメントを皆さんにも是非ご覧頂きたいので追記しておきます
"収容所を思わせるような"、海外ではズバリ”強制収容所”と翻訳・表現しているそうな
義務不存在訴訟を戦っている方に差し上げてしまったので詳しく書けないのですが、森巣博さんの「越境者的ニッポン」で、”海外のメディアでは、こうした研修を”再教育キャンプ”と表現している。婉曲でなくはっきりと本質を表すと、”再教育キャンプ”としか翻訳できない。世間的な日本人は、この異常さを自覚できていない・理解していない。”という趣旨のことをおっしゃっていました。
という訳で、"収容所を思わせるような"なんて婉曲に言うことはありませんよ。他のOECD諸国では、国連の人権関係の会議のレベルでは、”再教育キャンプ””矯正労働キャンプ””労働改造所”そのものという認識のようです。
あ、検索したらあったので貼っておきますね。http://jiyuu-gennsou.at.webry.info/201010/article_8.html
> 国旗・国歌に不起立で処分される教職員の多くには、「再発防止研修」という名のもと、都教委から研修命令が下され、彼ら彼女らは「研修所」に送られた。もちろん「思想改造」のための研修だ。(22頁)
(「研修所」は、英語のメディアでは“REEDUCATION CAMP”と表記されるという。
これは、ただならぬ雰囲気をかもし出す用語である。)
ここでチューサン階級は、素朴な疑問を発したい。それも、激しく問いたい。
国旗掲揚や国歌斉唱の時に起立しなかったという理由で(あるいは、生徒が起立しなかったという理由で)、教師を“REEDUCATION CAMP”に送る国が、日本以外にこの地球上に存在しているのか?
と書いてから、気づいた。あった。北朝鮮だ。(23頁)
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