日本の真の民主主義を阻害している要因にマスメディアと権力の癒着がありますが、それを如実に物語る報道を3つ記録しておきます。
いずれも必読です。
まず、村野瀬玲奈さんのブログでもピックアップしていた赤旗の2記事をお持ち帰り
大手5紙・在京TVトップ 首相と会食
元官邸記者「首相批判の記事 載せにくいよね」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-03-31/2013033101_02_1.html#
倍晋三首相が就任以来続けてきた大手5紙トップとの会食懇談が28日夜の朝比奈豊・毎日新聞社長との会合で一巡しました。3カ月で新聞トップを総なめにした首相の思惑は、どこにあるのか。
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安倍首相と大手紙トップとの「宴会」は、1月7日に、渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長と東京・丸の内のパレスホテルの高級割烹で3時間近く会ったのが最初でした。
翌8日にANAインターコンチネンタルホテル内の日本料理店で産経新聞の清原武彦会長、熊坂隆光社長。
2月7日は帝国ホテル内の中国料理店で朝日新聞の木村伊量社長。
同15日は東京・白金台の高級割烹「壺中庵」で共同通信社の石川聡社長。
3月8日は帝国ホテル内フランス料理店で日本経済新聞社の喜多恒雄社長。
同15日は芝公園のフランス料理店でフジテレビの日枝久会長(フジサンケイ・メディアグループ最高経営責任者)。
同22日はテレビ朝日の早河洋社長。
そして同28日は椿山荘内の日本料理店「錦水」で「毎日」の朝比奈社長というわけです。
毎回、ほぼ2時間を超える長談議に及んでいます。日時は異なりますが、政治権力者との会食懇親の席に「権力の監視役」であるべき大新聞の社長が、これほど轡(くつわ)を並べる図は、いかにも異様です。
大手紙首相官邸クラブ・キャップ経験者は語ります。「社トップが首相と会食懇談した日程は翌日付の紙面に『首相の動静』として載る。同じ紙面に首相批判の記事は載せにくいよね」
首相と新聞社トップの懇談は取材現場の記者に無言の影響を及ぼしていると指摘します。
欧米メディアには、現職メディア経営者は現職大統領、首相在任中は接触は控えるのを不文律とする例があります。政治の最高権力者が接触を求めるのは政治的な意図がないはずはなく、無防備に会うのは権力との癒着につながったり、不明朗な関係がメディアの信頼性を損ない、ひいては民主主義社会を支える「国民の知る権利」がゆがめられる恐れがあると考えるからです。
日本新聞協会が定める新聞倫理綱領は、国民の知る権利は「あらゆる権力から独立したメディアの存在」によって保障されると明記しています。自分たちで決めた「倫理綱領」に照らして疑問の声がでなかったのでしょうか。
日本新聞協会は1月15日、消費税増税にあたって新聞に軽減税率を適用するように求める声明を出しています。昨夏の消費税国会で消費税増税を推進する立場から報道キャンペーンを展開し、増税のレールが敷かれたら、新聞だけは例外として消費税を軽くして、という言い分は世論の批判を浴びたものでした。
一連の首相と大手紙トップとの会食懇談の結果として、新聞に対する消費税の軽減税率適用がほぼ固まったとも新聞界の一部で伝えられます。恩恵を受ければ、受けた相手にたいする筆も鈍るというものです。
新聞の権力監視機能は著しく低下しているとは最近のジャーナリズム論のもはや「定説」です。首相との懇談を受けて、各紙の憲法報道に影響が表れてくるだろうとの指摘が新聞界にはあります。
社トップが安倍首相と数時間も懇談した各紙は、報道姿勢との関係を購読者に説明する責任を負っているのではないのか。
これでいいのか大手メディア
首相と会食 とまらない
社長に続き政治部長・論説委員長らも
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-11/2013041101_01_1.html
安倍晋三首相と大手メディア幹部との会食が止まりません。本紙3月31日付で「大手5紙・在京TVトップ 首相と会食」と報じて以降も、4日には曽我豪・朝日新聞政治部長、小田尚・読売新聞論説委員長、田崎史郎・時事通信解説委員らが永田町の高級中国料理店で会食。翌日には、大久保好男・日本テレビ社長が東京・内幸町の帝国ホテル内の宴会場で会食しています。
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会食はいずれも2時間から3時間にもおよんでいます。高級割烹(かっぽう)やフランス料理店などを舞台にした大手メディア幹部との会食は別項のとおりですが、このほかにも「報道関係者」との会食が1月10日(赤坂の日本料理店)、3月13日(赤坂の会員制クラブ)に行われています。
ある大手紙記者OBは「社長から局長・部長へ、部長からデスク・キャップへと『会食作戦』はエスカレートするかもしれない」と指摘。「こうした会合は割り勘ではないだろう。ジャーナリズムの世界では『おごってもらったら、おごり返せ』とされている。安倍首相にどう、おごり返すのだろうか」と語っています。
4日は、安倍政権が誕生して100日。「朝日」も「点検100日・安倍政権」という連載を1面トップから開始していました。その検証すべき対象と政治部長が会食・懇談しながら影響はないのか。ちなみに同日夜、日本政治に詳しい米国の政治学者は都内の講演で、安倍政権について論じつつ、「メディアも安倍政権の宣伝紙のようになっている。ひどいのは今日の『朝日』。まったく客観性がなく、安倍首相の言っていることを並べているだけだ」と述べていました。
政治の最高権力者が何の政治的意図も持たずに接触を求めるはずはありません。欧米では、メディア経営者は現職の政権トップとの接触を控えるのが不文律です。
欧米ではありえない
門奈(もんな)直樹さん(立教大学名誉教授、メディア研究者)の話 消費税増税の大キャンペーンを張る裏で時の最高権力者と会食し、自らの利権を守る新聞への軽減税率導入を図るなど、日本のメディアは異常だと思います。
英国では首相とメディア幹部が会食することはまったくない。そんなことをしたら独立性を失うからです。イラク戦争時のBBC(英国放送協会)会長は、就任以前はブレア首相(当時)と刎頸(ふんけい)の間柄でしたが、会長就任と同時に首相からのBBCへの注文を全部暴露しました。それぐらい権力に対して毅然(きぜん)としています。
欧米のメディア界にはウオッチドッグ(権力を監視する番犬)という用語があります。今の日本のメディアは、誰にでも愛嬌(あいきょう)をふりまくプードルになっています。戦前、権力との妥協の所産として「不偏不党」の用語を使って権力の補完装置になった歴史が日本にはあります。それと似た状況が出てきています。
続いてNEWSポストセブンから
安倍首相 朝日新聞社長と会談で詫び受け入れたと側近が証言
http://www.news-postseven.com/archives/20130501_185647.html
厳しい安倍晋三首相批判が売りだった朝日新聞だが、社説で経済政策をべた褒めするなど、このところ論調が一変している。
安倍首相と朝日には因縁がある。NHK番組改変事件だ。「朝日にとってそれが“トラウマ”になっている」(同紙政治部記者)のだという。
この事件は、朝日新聞が2005年1月に、「NHK『慰安婦』番組改変 中川昭・安倍氏『内容偏り』前日、幹部呼び指摘」との見出しで報じた。NHKの従軍慰安婦問題番組の放映前、安倍氏が、「公平ではない」として番組内容を変えるように政治圧力をかけたという報道だ。
当時、自民党幹事長代理だった安倍氏は報道を否定して朝日の取材を拒否する抗議の姿勢を取り、両者の関係は決定的に悪化した。その1年半後、安倍氏は首相に就任する。朝日のトラウマはそこから生まれた。同紙の政治部記者が“苦悩の安倍政権時代”を振り返る。
「当時は安倍総理だけでなく、秘書官や官房副長官ら官邸まるごとわが社の取材に協力してくれない状況だった。安倍総理に食い込んでいた社がスクープを抜く中で、うちは記者が情報をつかんでも、裏が取れないから書けない。特オチもひどかった。事務所費問題で辞任した佐田玄一郎・行革担当相の後任に渡辺喜美氏が起用されたときは、完全に他紙に抜かれた」
記者クラブメディアにとって政権から情報を遮断されるのは死活問題だ。追い込まれた朝日は“相打ち”に持ち込もうとした。
「こっちも、“だったら政権を潰してやろう”という気になる。当時、安倍さんは公務員改革で官僚の反発を浴びていたから、政権批判の材料なら官僚からどんどんリークが来る。官僚と仲良くなって、追い落としをかけたら政権が本当に潰れてしまった」(同前)
第1次安倍内閣では閣僚のスキャンダルが相次ぎ、「官邸崩壊」と報じられて支持率が急降下した。その背景に官邸情報から干しあげられた朝日と、公務員改革を骨抜きにしたい霞が関の共同戦線があったことを物語る証言だ。
そんな朝日にすれば、6年後に安倍氏が再登板する情勢になったとき、“悪夢の再来”と背筋が寒くなったことは十分に想像できる。社説で安倍氏の自民党総裁返り咲きに「大きな不安を禁じ得ない」と書いたのは、自分たちへの“報復の恐怖”だったのではないか。
そこで朝日は先手を打って、安倍氏が総理になる前に手打ちに動いた。昨年10月3日、朝日新聞に驚くべき記事が掲載された。就任したばかりの安倍総裁のインタビューが他紙にさきがけて載ったのである。「なぜあの朝日に」と他紙の記者たちを慌てさせたほどの“事件”だった。その裏では極秘会談がもたれたという。安倍側近の1人が明かす。
「なんの挨拶もないまま安倍さんが朝日のインタビューに応じる理由がない。総裁選後に朝日の木村伊量・社長が安倍さんと会談した。安倍さんにとっても、総選挙をひかえて朝日を敵に回したままではマイナスが大きい。言ってみれば朝日の詫びを受け入れたということだ」
この会談は、朝日の政治部記者の間にも伝わった。
「政治部は総裁選の前から、安倍さんに番記者をつけて関係修復を図ってきた。その集大成がトップ会談。そこで関係修復できたから、安倍さんが一番にわが社のインタビューに応じてくれた。おかげで他紙を出し抜けたし、7年前のような取材拒否にあわなくてすむ」
※週刊ポスト2013年5月17日号
この記事をもとに、五十嵐仁先生も朝日を批判したエントリ-を書いてらっしゃいますのでご一読を。
●今度は『朝日はなぜおかしくなったのか』という本を出さなければならないのかも
http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2013-05-02最後に、故・日隅弁護士の著書もご紹介
クロスオーナーシップや記者クラブの問題点についても書かれています
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