大阪では国旗国歌の強制が公立学校だけでなく私立学校にもおよびはじめていることを、いつもお世話になっているブログ「【堺からのアピール】教育基本条例を撤回せよ」さんから転載させていただきます。
「国旗・国歌」私立校にも圧力 自主規制戦前と同じ 大阪私立校連合会 参加校に実施指示
http://blog.livedoor.jp/woodgate1313-sakaiappeal/archives/23159150.html
クリスチャン新聞 2013年2月3日号
http://jpnews.org/pc/modules/xfsection/article.php?articleid=2400
公立学校の卒業式・入学式などで「君が代・日の丸」の強要が問題化する中、私立学校にも「指導」の圧力がかかり、自主規制の動きが大阪で始まっていることが明らかになった。「日の丸・君が代」強制を憂慮する教会関係者やクリスチャン教員らに衝撃が広がっている。キリスト教主義学校の中には、戦前の軍国主義教育に加担した反省や信仰の見地から「国旗掲揚」「国歌斉唱」を実施しないところも少なくない。私立学校自らが権力の意向を忖度しそれに合わせていこうとすることは、戦前に教会や学校が国家主義にのみ込まれていった動きと同じで、関係者は危機感を募らせている。
国旗掲揚をしない私立学校があることについて、昨年10月15日の大阪府議会で議論された。これを受け、大阪私立中学校高等学校連合会の坪光正躬会長が同年11月22日付で、傘下の私立中学校・高等学校の理事長・校長宛てに、「入学式・卒業式等における国旗掲揚・国歌斉唱」について(配慮方お願い)とする文書を出した。学習指導要領で「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに国歌を斉唱するよう指導するものとする」と規定されていることを指摘。「つきましては、学習指導要領の趣旨、大阪府の国旗掲揚・国歌斉唱に関する条例制定や府議会の議論等の状況を踏まえ、より一層のご配慮をお願い」する文面になっている。坪光氏は、カトリック系の大阪明星学園理事長・学園長。
(別紙)には、2012年10月15日の大阪府議会で、維新の会の西野弘一議員(現在は衆議院議員)がした質問と、市橋康伸私学・大学課長の答弁が記されている。西野議員が「平成23年9月の教育常任委員会において、入学式や卒業式における国旗掲揚の実施状況についての質問をしたが、私立学校におけるその後の状況はどうなっているのか」と質問したのを受け、市橋課長は「平成24年5月に行った調査によると、入学式や卒業式で国旗の掲揚を行っている府内の私立高校は、中等教育学校の後期課程を含め78校で、全体の約76%となっており、昨年度と同じ実施状況となっている」と回答。それに対して西野議員は「全く状況が変わっていないということだが、これまでどのような指導を行ってきたのか。指導に従わない学校については、学校名について、公表すべきと考えるがどうか」とただした経緯が分かる。
それに対し市橋課長は、これまでも学習指導要領の趣旨の徹底に努めてきたのに加えて、昨年度「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」が制定されたことを踏まえ、適切に実施するよう文書通知するとともに、私学団体の校長会等において指導を行ったとして、「引き続き、学習指導要領の趣旨を踏まえ、適切に実施するよう強く求めていく」と説明。西野議員は「学習指導要領を拒否している学校に対しては、補助金をカットすべきと私は考えている。府として厳しい措置を検討するよう要望しておく」と述べた。
問題の府条例は公立校など自治体の施設が対象で、独自の教育を旨とする私立学校に学習指導要領の拘束力がどの程度及ぶかについても議論がある。そうした中で大阪私立校連合会の動きは、 戦前の教会やミッションスクールが自己防衛のため国策にすり寄り加担していった歴史を再現するものであり、見過ごせない。
国旗国歌を強制する「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」(国旗国歌条例)の批判は当ブログでもしましたし、各界からも抗議が相次いでいます。
ここでは日弁連の会長声明をあげておきましょう
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公立学校教職員に君が代斉唱の際に起立・斉唱を強制する大阪府条例案提出に関する会長声明http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2011/110526.html#公立校の教員は国歌を歌わねばならないのは公務員だからだ、公務員なら国歌に敬意を示すのは当然だし、歌えという職務規定があるならそれに従うのは公務員の義務、嫌なら私立に行けばいいし、生徒や父兄に歌えと強制しているわけじゃない、というのが君が代強制する人達の言い分だったはずです。
(橋下氏も「君が代斉唱時に起立すべきか否かという思想信条の自由に関する問題ではなく、組織として決めたことは守りましょうという組織論」と言っていました。)
なのに言ってる事が違ってきてますよね?
市橋課長は、「(この国旗国歌条例)が制定されたことを踏まえ」などと言っていますが、実際この条例が対象にしているのは府立学校及び府内の市町村立学校の教職員であって私立学校ではないのです。
ところが今度は学習指導要綱を盾に私立の高校まで強制しようとしており、すかさず大阪私立中学校高等学校連合会の忖度や自主規制が始まりましたね。とても日本的だし、デジャヴです。
維新の怪の西野議員は
「指導に従わない学校については、学校名について、公表すべきと考えるがどうか」
「引き続き、学習指導要領の趣旨を踏まえ、適切に実施するよう強く求めていく」
「学習指導要領を拒否している学校に対しては、補助金をカットすべきと私は考えている。府として厳しい措置を検討するよう要望しておく」
などと息巻いていますが、越権甚だしいことこの上ないです。
そもそも学習指導要綱には君が代斉唱を強制できる強制力なんかないのです。
学習指導要綱の法規範性については
こちらの過去記事でご紹介しましたが、一部をここに引用しましょう。
学習指導要領の法規範性に関する最高裁判例(旭川学力テスト事件)は、
教育行政機関が教育の内容、方法について基準を設定する場合には、教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準を定めるものにとどめられるべき、としている。
そうとすれば、設定した教育の内容、方法について基準が大綱的基準を逸脱し、内容的にも教職員に対し一方的な一定の理念や観念を生徒に教え込むことを強制するようなものである場合には、教育基本法が禁じた「不当な支配」に該当し、ひいては、「教育の方法に対する国家的介入については抑制的であるべき」という憲法上の要請に反するものとして、その法規範性は否定されるべきである。
(略)
「同条項は教職員に対し国旗に向かって起立し国歌を斉唱する義務を負わせている」という学習指導要領の解釈とこれに基づく運用は、最高裁判例に照らしても誤りと言わざるを得ない。
西野議員は「学習指導要領を拒否している学校に対しては、補助金をカットすべき」などという権限はありません。勉強不足と言えましょう。
しかしこういう横暴な権力に対し私立学校自らが忖度しては何にもなりません。
日本では人権侵害は往々にして、直接的な弾圧に至る前に上を忖度し、自主規制することから始まります。戦前も私立学校自らが権力の意向を忖度しそれに合わせていこうとして、教会や学校が国家主義にのみ込まれていったのです。
ニーメラーの警句そのままですね。
最初は「公務員だから」という理由にもならない理由で公立校の教職員に君が代を強制し
ついで、公務員ではない私立学校の教職員にも強制し
最終的には生徒、父兄にも歌わせるのが目的です。
ちなみに東京では「卒業式で多数の子どもが国歌を歌わない、起立しないことは、教師の指導力不足であるか学習指導要領に反する恣意的な指導があったと考えざるを得ないので、処分の対象になる」とされており、教職員が歌うだけではダメで生徒にも歌わせなければならず、実質生徒にも強制されているのです。
つまり公立校の教職員に強制したのは「思想信条の自由」を崩しはじめる口実でしかなく、それを足がかりに全国民に君が代を強制したいのが本音です。
そして全国民に逆らえない空気が行き渡った頃にはあからさまな思想信条の自由の侵害でであるにもかかわらず、もうその自由を守る気概も失われていることでしょう。「公務員は君が代斉唱という職務規定に服従する義務があるから強制されても仕方ない」という当初の理屈は忘れ去られて、「国民なら君が代を歌う義務がある」ことにされてしまっているでしょう、それは典型的な思想信条の自由の侵害なのに。
ですから、私立学校の先生達はどうか戦前たどった同じ道をなぞらないでください。一体先生達は歴史から何を学んだのだと軽蔑されてもしょうがないです。
権力におもねることを学校が子どもに教えてはいけません
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