選挙戦前に中日新聞が一面トップで自民党の9条改定を取り上げています。TPPについては?な所もある同新聞ですが、「社会の木鐸」としての仕事をしてくれている記事をご紹介します。
◆中日新聞 (2012/12/12 朝刊一面)
守られた命 自覚を
9条を選ぶ 見極める衆院選 上
イラクに学ぶ
衆院選が終盤に差しかかる中、憲法9条の改定を公約に掲げる自民党の優勢が伝えられる。平和国家として歩んできた「国のかたち」を根本方変えてしまう問題にもかかわらず、選挙戦では大きな議論になっていない。背景には、民主を含め与野党を問わずに広がる改憲への容認論がある。事実上、9条の選択を迫られる投票日を前に、自衛隊がが海外派遣されたイラク戦争の実例をふまえ、元米兵や識者の言葉から9条の重みを再考する。
銃撃で、後部ガラスが砕け散った乗用車。車内に、イラク人と見られる血まみれの子どもたちと男性が見えた。母親らしき女性が助手席から出ようとしていた。
開戦間もない2003年6月。バグダッドへ向け、軍用車両を運転中だった米兵(当時の)アッシュ・キリエ・ウールソンさん(31)が目にした光景だ。
助けようとブレーキを踏んだら、隣の上官に怒鳴られた。「止まるな・助ける必要なんかない」
その場は命令に従った。しかしその後、イラク市民の暮らしを見かけるうち、通り過ぎた自分を責めるようになった。
学費稼ぎが目的で地元ウィスコンシン州の州兵となり、イラク南部の激戦地ナシリヤなどに一年間、派兵された。「人を人間扱いしないのは絶対におかしい」。その思いが消えないまま、04年4月に帰国した。
その十ヶ月後、中部地方に勤務する中堅の男性自衛官がイラク入りした。ナリシヤから西へ80キロのサマワ。不測の事態を想定し、身を守るために武器使用が許されるケースについて、仲間と何度も話し合った。
幸い、サマワは比較的治安が安定し、住民感情もよかった。給水や学校施設などの復興支援に当たる間、身の危険を感じる場面はなかった。彼は「ピリピリしていたが。1,2ヶ月すると慣れて気持ちが楽になった。家族は心配したが、余裕が出来るようになった」と振り返る。
激戦地に赴いたウールソンさんと、支援活動に従事した自衛官。二人の任務を隔てた壁は国籍ではなく、憲法9条の存在だった。
軍事ジャーナリストの前田哲男さん(74)は指摘する。「9条が改定されれば、米国の戦争に無条件で引きずり込まれる恐れがある。」米国と同盟関係にある英国軍は、集団的自衛権を行使する形で開戦当初からイラクへの軍事行動に参加し、二百人近い犠牲者を出した。
日本の自衛隊は当時時限立法のイラク復興支援特別措置法(イラク特措法)に基づいて派遣された。部隊の活動地域は「非戦闘地帯」に限られ、銃器の使用も「正当防衛・緊急避難」が条件。武力と集団的自衛権を禁じる9条が歯止めとなった。
9年近くに及んだ戦争で、米兵の死者は4500人、イラク人の死者は十万人以上とされる。一方、サマワには二年半で計5500人の自衛隊員が派遣されたが、戦死者はゼロ。イラク人の命を奪うこともなかった。
「日本の若者は9条に守られていることをもっと自覚した方がいい。選挙では、きちんと考えた上で投票すべきだ」
軍を辞めたウールソンさんは現在、芸術家として活動する傍ら、日本などで繰り返し講演している。
イラク戦争
当時の米ブッシュ大統領は、イラクが大量破壊兵器を隠し持ち国際テロ組織アルカイダと関係していると主張。2003年3月、英国などとイラクへ侵攻し、開戦した。結果的に大量破壊兵器は存在せず「大儀なき戦争」と言われる。
日本は04~08年にかけ、陸上自衛隊と航空自衛隊を派遣。昨年12月に米軍が完全撤収し、終結した。
(そっか・・9条「改正」じゃなくって、9条「改定」って言葉を使えばいいのね)
選挙戦で改憲が大きな議論になっていないのは、この改憲案があまりに過激なので自民党が出すのを控えているからです。
現在自民党の支持率は20%強くらい。
てことは4,5人に一人はこの改憲案に賛成しているのか?と言えば、
いくら「(大)日本(帝国)を取り戻す」のが悲願の安倍総裁でも、こんな改憲案を争点として前面に押し出したらさすがにまずいとの空気は読めるでしょう。
それをあぶり出すのがメディアのお仕事ですね。
民主がダメだったからお灸を据えるつもりで自民に、くらいの軽い気持ちでいると、この改憲案を支持することになるのだと知って欲しいです。
イラク戦争がどんな非人間的な地獄だったかイラク帰還兵が語った「冬の兵士」という本があります。
地獄のような戦場からせっかく運良く生きて返ってきても、あちらの世界とこちらの世界のギャップに苦しむのです。
あちらでは人間らしさを捨て去ることを命令されるのに、こちらでは人間らしくあれと要求される。
あちらでは人を殺せば英雄、でもこちらでは死刑に処せられるであろう重罪人。
このギャップについて行けなくなり、精神に異常を来す帰還兵も多いのです。
(ちなみに沖縄の海兵隊はこういう戦争に行かされます。こういう体験をしたら精神がすさみ、「こちらの世界」で女性を暴行することなど何とも思わなくなるでしょう)
9条改定とは、集団的自衛権を認めてイラクアフガン戦争のような「アメリカの戦争」に日本を参加させ、日本の若者を否応なしにアメリカのイラク兵のような目に遭わせるようにすることなのです。
日本が当事者の戦争ではなく、アメリカが勝手に始めた戦争に強制参加させられることを強調しておきましょう。
ちょっと冷静に考えてみましょう、「自国を守る」ためならば既に今の自衛隊で十分です。(建前上は)そのために設立されたのですから、わざわざ9条を改定する必要は全くないのです。
9条をわざわざ改定しなければできないことがあるから改定しようとしているわけで、じゃあ改定して何が出来るようになるかというと、集団的自衛権の行使です。
集団的自衛権は「自国を守る」こととは関係がありません。アメリカの戦争に参加できるかどうかに関係するのです。
幾度か書いてきましたが、
9条改定は、アメリカの要請に基づき、イラク戦争のようなアメリカの戦争に日本を引きずり込むのが目的で為されるのです。
でもそんなことをいえば誰もが反対しますから、9条改定は「自分の国を自分で守る」「他国の侵略から自国を守る」ためになされるかのようにすり替えて言うのです。これにあっさり騙される人のなんと多いことか・・・
(というか、勇ましい軍事に憧れて、進んで騙されたがってる人々も多いようです)
今回それに利用されたのが尖閣諸島です。
石原氏が何故、衆議院解散が見えてきたあの時期に突然にあんなこと言って日中関係を悪化させたか考えてみて下さい。
「中国の脅威」を煽って、9条改定への心理的なハードルを低くするためです。
(ちょうどオスプレイ配備への賛同を増やすためでもありました)
その石原氏ですが、
選挙後は自民と連携する気満々です。(「第三極」ではなく単に第三自民党または自民党別動隊でしかないのがバレバレ。ちなみに第二自民党は民主党です)
そして徴兵制核武装が持論の石原氏は、改憲では自民と協力する、とも言っています。
改憲案の下では徴兵制の法整備も可能ですから、自民と維新が議席の大半を取れば、徴兵制もぐんと現実味を帯びてきます。
仮に国民の反対で徴兵制にならなかったとしても、どうってことはありません。そこはアメリカの方式を真似ます。
貧困率16%で先進国第二位、だてにワーキングプアを大量生産してきたわけではありません、彼らを「国防軍」にリクルートすればよいのです。
アメリカのように、国防軍は国家による究極の貧困ビジネスになるでしょう
そこで殺し合いをさせられるのは、前の記事
「ちょっといい話」でご紹介した普通の気の良い人々であることも覚えておきたいです。
そして二言目には自民系の政治家が口に出したがる「日米同盟」ですが、次のことも知っておきましょう。
日本は、9条が制定されてから一人の戦死者も出さなかったし、一人も戦争で人を殺すことはありませんでした。
9条はオゾン層のように日本を守ってきました。
これ以上の「安全保障」がどこにあるでしょうか?所詮9条は日本民族には分不相応な過ぎた宝、この宝の価値わからぬなら、これによって庇護してもらうに値しない民族だったのだ、
などと後世の人々に嘲笑されたくないものです
もう一度ウールソンさんの言葉を載せましょう
「日本の若者は9条に守られていることをもっと自覚した方がいい。選挙では、きちんと考えた上で投票すべきだ」 関連記事
●恐怖を煽るのに乗せられず、論理的、合理的に考えたい
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-87.html●殺させられない権利 (追記あり)
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-370.html●9条の実践
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-44.html
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