大津市でおきた痛ましいイジメ自殺事件はまだ記憶にあたらしいところですが、今度大津市がイジメ防止の条例案を出すそうです。
しかし残念ながら、それはとてもいじめ対策にふさわしいとはいえないシロモノのようです。
まずはこの条例案についてのツイートを拝借しましょう
にゃご@クハ201-89@shido_tk
大津市は子どもたちに『相談』を【義務付け】しようとしている!これでは去年の事件への反省は無いも同然だ。 「大津市子どものいじめの防止に関する条例(案)」より。 第7条 子どもは、互いに思いやり共に支え合い、いじめのない明るい学校生活に努めるものとする。
にゃご@クハ201-89@shido_tk
(承前)2. 子どもは、いじめを受けた場合には、一人で悩まず必ず家族、学校、友達及び関係機関等に相談するものとする。 相談しなければならないと「法的に義務付けられる」ことで、子どもたちを二重に追い込むことになる。そんな簡単なことにこの自治体の市議や市長は気づかないのか。
にゃご@クハ201-89@shido_tk
いじめられた子どもに『相談を義務付け』する条例が施行されたらどうなるか。相談できない自分を自分で責めるようになる。いじめられることで自己肯定感を失いつつある子どもが絶望の淵に叩き落されることは想像に難くない。少なくない子どもたちは自分だけを責めて命を絶つだろう。
住友剛@tsuyo0618
こういう規定を設ける前に、学校や行政として何をどうすべきか、ということの規定と、その実施状況の検証作業が必要なんですけどね。 RT @shido_tk: 大津市は子どもたちに『相談』を【義務付け】しようとしている!これでは去年の事件への反省は無いも同然だ。
にゃご@クハ201-89@shido_tk
@tsuyo0618 仰るとおりだと思います。去年自殺した男の子ご遺族もこんなことを求めてはおられないと思います。子どもが安心して過ごせる学校づくりから始めないといけないのでは。大津市教委の隠ぺい体質と、このような密告奨励、義務付け条例案が出てくる土壌は同根ですね。
住友剛@tsuyo0618
RT @shido_tk: いじめ防止条例をつくるな、と言う気はないのですが、同じ作るならもっと別の方向からものを考えるべきだろう、といつも思いますね。ちなみに高橋史朗氏あたりの「親学」推進派は、「いじめ防止条例」の「保護者の責務」にひっかけて親学をやろうとしています。
にゃご@クハ201-89@shido_tk
@tsuyo0618 全然筋違いですが、ナオミ・クライン氏の『ショック・ドクトリン』(惨事便乗型資本主義)のようですね…。身を引き裂かれるような辛さが一日も癒えることのない、いじめ自殺遺族の心情を慮ることなく、エセ科学であり、復古主義でもある「親学」を導入しようと目論むとは!
住友剛@tsuyo0618
実は同じことを私も考えていて、それをフェイスブックに書きました。で、それを自分のブログに転載しようと思っていたまま時間が過ぎました。急いでやりますね。RT @shido_tk: 全然筋違いですが、ナオミ・クライン氏の『ショック・ドクトリン』(惨事便乗型資本主義)のようですね…。
住友剛@tsuyo0618
RT @shido_tk: たぶん、ですが、子どもの人権オンブズパーソン条例や子どもの権利条例をつくらせたくない人々は、ここぞとばかりに、いじめ防止条例に飛びつくかもしれません。その際には、すでにできている岐阜県可児市や、これから制定予定の大津市の案をコピペしそうな気がします。
親学と言えば自爆史観の日本会議とも関係のあるとんでもない似非科学の教育論で、以前大阪市がこの親学に基づいて「発達障がいは親のしつけで予防できる」というでたらめな条例案を出そうとしていたことがわかり、撤回を余儀なくされました。
これについては以下を参考にしてください。
●
子どもが泣く街、大阪(3)~親も泣く家庭教育支援条例●
togetter 大阪維新の会: “家庭教育支援条例案”が、驚愕以前にツッコミどころ満載…な件 大津市が提出しようとしている条例案もこの親学導入を想像させるような内容となっています。
とりあえず、問題があるとされる主な条文のうち3つだけピックアップしておきます。条例案全文は後に引用させていただく住友先生のエントリ-にありますので、リンク先で参考にしてください。
(保護者の責務)
第6条 保護者は、子どもの心情の理解に努め、子どもが心身ともに安心し、安定して過ごせるよう愛情をもって育まなければならない。
2 保護者は、いじめが許されない行為であることを子どもに十分理解させるよう、家庭教育を行わなければならない。
3 保護者は、いじめを発見し、又はいじめのおそれがあると思われるときは、速やかに市、学校又は関係機関等に相談又は通報をしなければならない。
(子どもの役割)
第7条 子どもは、互いに思いやり共に支え合い、いじめのない明るい学校生活に努めるものとする。
2 子どもは、いじめを受けた場合には、一人で悩まず必ず家族、学校、友達、関係機関等に相談するものとする。
3 子どもは、いじめを発見した場合(いじめの疑いを含む。)及び友達からいじめの相談を受けた場合には、家族、学校、関係機関等に相談するものとする。
(市民及び事業者の役割)
第8条 市民及び事業者は、それぞれの地域において子どもに対する見守り、声かけ等を行い、子どもが安心して過ごすことができる環境づくりに努めるものとする。
2 市民及び事業者は、いじめを発見し、又はいじめのおそれがあると思われるときは、速やかに市、学校又は関係機関等に情報を提供するものとする。
では、住友剛先生のブログを読ませていただきましょう。リンク先で全文をどうぞ。
◆できることを、できる人が、できるかたちで
●2012/11/05
岐阜県可児市の「子どものいじめ防止条例」をめぐって
http://tsuyokun.blog.ocn.ne.jp/seisyonenkaikan/2012/11/post_aaca.html
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121030/k10013128251000.html
(「いじめ自殺“学校は保護者と情報共有を” NHKニュース2012年10月30日 ※リンク切れです)
このNHKのニュースを見れば、学校でのいじめ自殺などで我が子を亡くした保護者たちが、まずは学校や教育行政が迅速な調査を行って報告をすること、再発防止策を確立するためのシステムをつくること、そして、調査や再発防止策づくりにあたって遺族との対話、情報共有をすすめていくこと、この3つのことを求めていることがわかります。
そのことを前提にして、次のブログの記事を読んでください。
http://blogos.com/article/49341/?axis=g:1
(片山さつき:大津いじめ自殺事件遺族記者会見、自民党いじめ問題対策分科会は答えを出します!文科省が初めて出してきた「いじめの定義と態様別分類」とは?:ブロゴス、2012年10月30日)
これを読めばわかりますが、上記のNHKニュースで遺族の側が求めていることと、まったく見当ちがいのことをやろうとしていることがわかりますね。
たとえば、このブロゴスの記事には、片山さんたち自民党の政治家が、岐阜県可児市のいじめ防止条例の内容にふれつつ、高橋史朗氏らのコメントなども参照しながら、「家庭教育支援法、条例、いじめ防止法、条例」のセットをつくろうとしていること。あるいは、「親学」をこのいじめ防止にひっかけてやろうとしていること。そのことがうかがえますよね。そこには、こうしたいじめ防止条例にある「保護者の責務」を強調しようという、そういう意図がうかがえます。
しかし、そんなことは、上記のNHKニュースの中身を見ればわかりますが、遺族の側は何も求めていません。むしろ、学校や教育行政の責務として、再発防止策の確立やそれに向けての調査の実施、遺族への説明の実施等が確実に行われるような、そんなシステムをもとめているわけですよね。
とすれば、いろいろ熱心に動いているように見えますが、この自民党の政治家のような発想にもとづいて条例をつくったり、新たな施策を展開すると、さらなる「隠蔽」へとつながるのではないか。あるいは、今後いじめ自殺が起きたときに、その責任を保護者や子どもの側に押し付けていくことにつながるのではないか。そういう危惧を私は覚えます。
(引用ここまで)
●2012/11/11
大津市子どものいじめの防止に関する条例(中間案)に思うこと
http://tsuyokun.blog.ocn.ne.jp/seisyonenkaikan/
(引用開始)
以下、条文の内容を読んで、気づいたことをまとめます。具体的な条文は、下記に書いてあります。
「家庭の責務」や「子どもの役割」などを条例で定めて、今まで以上に当事者である子ども、そして我が子がいじめている・いじめられているかもしれないということで悩んでいる親たちを追いつめて、どうするんだろう、と思います。
特に6条などを見ると、いじめが起きるのは家庭教育の責任、だから、家庭教育の強化ということから「親学」導入を・・・と、「親学」推進派が大喜びするような中身になっていますね。
また7条の「子どもの役割」で、いじめを受けた子どもは「相談するものとする」と。それが簡単にできない状況に追い詰められている、そこをどう考えるのか。一番しんどい状況にある子どもに、「お前らが動かないからダメなんだ」と言っているようにも思えます。
あるいは「学校の責務」を定めているのなら、それを学校が実施できるように徹底したバックアップ体制を市がとるべきだと思うのですが、条例のなかには14条で「適切な財政的措置」という言葉がひとつあるだけですね。
たとえば、もしも学校がこの責務を十分に果たすためには、大量の教員の増員が必要と判断されたときには、大津市は「適切な財政的措置」ということで、市費負担教職員を増やすんですかね?? あるいは滋賀県・県教委や文科省に増員の要求を出すんですかね?? そんなときには、大津市及び大津市議会は、市の財政負担をタテにとって、きっと増員に難色を示すと思います。
さらに、5条や11条との関係を考えると、一応「人権」という言葉をかぶせつつも、実態としてはこれ、「道徳教育強化」条例です。
ほかにも、3条でいう学校に高校と特別支援学校が入りますが、県立・私立・国立の高校、あるいは県立の特別支援学校に、市の条例で5条でいう「責務」を課すことができるのかどうか。もしも今の法解釈上、大津ではこれが「できる」というのであれば、当然、川西市の子どもの人権オンブズパーソンは、川西市内の県立高校でおきたいじめ自殺事案に介入してもいい、ということになるでしょう。
あるいは、18条の「委員会への協力」。一応、この条例では第三者委員会を常設して、その第三者委員会が日常的にいじめなどの相談・調整などに応じるシステムにしていますが、この「協力」義務を負う立場に、「市の機関」って入っていないですよね。条例3条でいう「関係機関等」って、警察署や児童相談所などを想定しているようですし。たぶん3条の「関係機関等」の解釈で、なんとか市教委を入れるのでしょうけど。でもこれ、18条の条文を字面どおり解釈したら、市教委の対応に問題があったとき、市教委はこの「協力」義務、自分らには適用されないとか言い出しかねないですね。
総じて、「子どもが安心して学ぶ環境」を「社会全体でつくる」というタテマエに立ちながら、市は計画つくって、啓発キャンペーンやって、第三者委員会さえ開いていればそれでOK。あとは学校現場にややこしいことを丸投げし、また、いじめの解決は子どもと家庭(保護者)の責任でなんとかしろ、というかのような条例です。
要するに、前文などで掲げているタテマエを、個々の条例が裏切っていく。いちばん困っている子どもや、その子どもの過ごす家庭を支えたり、困難を抱えた子どもたちと真剣に向き合おうとしている学校現場を、大津市及び市教委で全力で支えようとする条例にはなっていない、ということです。
■(資料)「大津市子どものいじめの防止に関する条例」(中間案)全文(2012.09.14)
(これはリンク先でどうぞ。引用ここまで)
日本共産党滋賀県委員会が作成している「大津中学生自殺事件を考えるページ」にも的確な批判が掲載されています。
http://www3.ocn.ne.jp/~jcpshiga/sinbun.htm#20120912
(引用開始)
(1)第5条、第6条、第7条において、学校、保護者、子どもの責務・役割を規定している。これらいずれも「…をせよ」と命ずるものとなっており、特に内心に関わることを規定することは、それぞれの自主性を奪うもので、学校、保護者、子どもを追い詰め、いじめ防止につながるどころか、逆行させてしまいかねない。
(2)重大な事件が発生したこともあり、この間の議論では、条項の中身が対処療法的になりがちであったためか、いじめを防ぐために何が必要かということよりも起きたときにどうすべきかに重きが置かれた内容になっている。
本来子どもには、憲法と子どもの権利条約の理念にたって、安心して生きる権利、守られる権利、ありのままの自分でいる権利など大切な権利がある。権利の主体者としての子どもの意見が生かされ、子どもの権利を保障するために、社会や市、教育委員会、学校が何をどのようにすべきかが問われていると考える。
(3)いじめを防ぐためにどうすれば良いのかということは、今回の事故をきちんと検証し、原因を究明した後に教訓とすべきことを明らかにして初めて具体的に検討されるものだと考える。
現在、第三者調査委員会、大津市いじめ対策検討委員会を設置したばかりで、これから調査、議論がおこなわれる。このような段階で条例で結論づけて、学校、教育委員会をしばってしまうことは、いじめ防止の有効な方法にふさわしくない。
(引用ここまで)
子どもの自殺という痛ましい事件さえ親学普及のチャンスに利用しようとする思惑が感じられて、やりきれない気がします。
子どもの健やかな成長を願って力を尽くそうとしない行政が、悲しいです。
日本の行政って、酷い方へ酷い方へと向かうチャンスを虎視眈々と狙っているようで、油断も隙もないですね。そういう動きはチェックしておきましょう、子供達の幸せのために。
子どもを取り巻く環境は多難です。
●滋賀民報

(ブログ「
(新版)お魚と山と琵琶湖オオナマズの日々」さんより画像を拝借しました)
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