湯浅誠氏の著書「反貧困」には、
『貧困の最大の特徴は「見えない」ことであり、そして貧困の最大の敵は「無関心」です。』
と書いてあります。
今現在生活保護に関係ない人間にとっては、バッシングの風潮がどれだけ生活保護の当事者を苦しめているか、なかなか見えないのではないでしょうか。
生活保護バッシングを受けて、苦しんでいる人々の存在を可視化し、その声に関心を払いたいと思います。
前の記事にいただいたCWアンさんのコメントを是非お読みください。
バッシングは本当にやめてほしい
2012.07.11 ( Wed ) 21:35:09 | CWアン
生活保護のケースワーカーです。一連のバッシングが始まってから、精神的な不調を訴えるかたや、死にたいとおっしゃる利用者が増えました。思春期の娘さんから、保護は恥ずかしいと責められて悩み、望まない職業選択をされるひとり親のかたも出てきました。個人情報保護の観点から詳しく書けないのですが、どれほどバッシングが個人の尊厳を傷つけているか推してください。心当たりのかたはバッシングをやめてください。とりわけ大きな力を持った代議士の先生方、どうかおねがいします。現場で小さな力しか持たない末端公務員のケースワーカーには、そうした溜息すべては受け止めきれないのです。どうぞ、責められても溜息しかつけない彼女らをもう追い込まないでください。
1ヶ月ほど前のものですが、こちらのダイアモンドオンラインの記事をお持ち帰り。
不正受給問題であたかも犯罪者扱い!?
生活保護受給者が脅える凄惨な仕打ちと悲惨な日常
http://diamond.jp/articles/-/19744#
大震災を機に、ちっぽけな見栄とか私利私欲といったものよりも、命や安全といったものを大切にしていかなければいけないと、みんなで気づいたはずだった。
しかし、それがいつのまにか、原発にしても、今回の生活保護騒動にしても、“巻き戻す力”が働いているように感じられる。
「生活保護受給者が外へ食事に行った」「うちの子はゲームを買っていないのに、あそこの子は買った」など、ある役所では、そんな通報を奨励し、適正かどうかの確認に行っていたという。
もちろん、生活保護の不正受給者が、一部に存在しているのも事実。しかし、役所は、明らかに受給者が不正受給かどうか、暴力団が関係しているかどうかなど、見分けがつくはずである。
本来、セーフティネットは、命を守るためにつくられた制度のはずなのに、いつから「あいつは、けしからん」と、生活保護受給者や家族の生活のちょっとした“楽しみ”まで妬んで、告げ口を奨励するような世の中に逆戻りを始めたのだろう。
「迷惑をかけたくないから…」
受給を躊躇する“真面目な人たち”
一連の騒動を見て、本来、家庭の事情などから受給しなければ生活できないのに、他人に迷惑をかけたくないと気遣う真面目な気の弱い人たちほど躊躇してしまっている。これは「引きこもり」状態の人はもちろん、いまは会社に勤めているサラリーマンにとっても他人事ではない。
「まるで魔女狩りですよ…」
こう脅えるのは、40歳代の当事者のAさん。人気お笑いタレントの河本準一さんの母親が生活保護を受給していたとして『女性セブン』が報じたのを皮切りに、駅の売店で『夕刊フジ』が「“生活保護”モラル崩壊!若者が不正受給でグーダラ生活」という見出しを掲げ、受給者の現状を無視した記事を掲載。テレビでは、ワイドショーなどの番組が、連日のように偏見や誤解を煽るような生活保護受給者に対するバッシングを続けていた。
「ちょっとテレビをつけると、たいてい生活保護の話を長々とやっている。あ~、もう生活保護の報道番組を見るのが怖くて…。でも、気になって、つい見てしまい、眠れなくなるんです」
バッシングとともに、Aさんからは、そんな不安に駆られたメールが次々に送られてくるようになった。
Aさんは15年ほど前、体調を崩して、会社を退職。以来、就職がうまくいかず、アルバイトを転々としたものの、次第に仕事に就くことができなくなり、実家で母親が細々ともらう年金を頼りに、引きこもり状態の生活を送ってきた。
しかし、家族は日々の生活費に追われて、少しずつ貯金を切り崩し、困窮状態に。Aさんは家の中に居づらくなって、「働いて、自立したい。でも、どうすればいいのかがわからない」と悩んだ。
そこで、当初は「他人に迷惑をかけたくないから」と、生活保護の受給に及び腰だったAさんと母親を筆者が説得。Aさんが貧困な環境にある親元を離れてアパートを借り、新たな仕事先が見つかって生活が軌道に乗るまでの間、生活保護を申請することに、ようやく決心がついたところだった。
テレビ、ネットが怖い!
『生活保護』の文字に震える日々
そんなときに降りかかったのが、今回の騒動。そのきっかけとなったのが、片山さつき参議院議員、、世耕弘成参議院議員ら自民党の「生活保護に関するプロジェクトチーム」のブログやツイッターなどによる実名を挙げての追及だ。
こうした空気に乗っかる政治家が表れて、小宮山洋子厚生労働相は、生活保護受給者の親族が受給者を扶養できない場合、親族側に扶養が困難な理由の証明を義務づけるという、扶養義務を厳格化する生活保護法改正を検討する考えまで示唆した。
Aさんが電話の向こうで、こう縮こまる。
「今日もテレビを見ていて、さすがに、怖くなりました。どこかの局で、誰かが“生活保護は、生きるか死ぬかという人がもらうものだ”と言っていたけど。僕が生きるか死ぬかという状態なのかというと…。父親は、僕が生活保護を受けることについても、ずっと知らん顔なんです」
家の中でも居場所がなくなり、追い詰められているAさんは、つい先日まで「父親を刺しかねない」と、さんざん明かしていた。
そこまで我慢して、生活をギリギリまで切り詰めた揚句、何かの拍子に爆発する。孤立死も餓死も殺傷沙汰も、Aさんのような貧困家庭では、同じ延長線上で起き得る他人事ではない問題だ。
しかし、そういう人たちのためのセーフティネットは、生活保護しかない。
「司会の女性アナウンサーが淡々と、“はい、次に(生活保護受給者を)いじめたい人は?”って、コメンテーターを指してるように聞こえて、体が震えるんです。タイミング的に、きついですね。途中でテレビを消しましたが、どういう結論になったのか、気になります」
一連の報道は、周囲の偏見や誤解ばかりを煽って、本当に困窮している人たちを追いやるだけで、受給者が増える社会の構造的な背景については、一切触れられていない。
そんな中で、5月27日付けの『デイリースポーツ』によると、元国会議員でタレントの杉村太蔵は、テレビ番組の中で「国家議員なら、不正受給よりも、役所の不正支給のほうを追及すべきだ」などと、同じ小泉チルドレンだった片山議員を批判したというが、まさにその通りだろう。
「かなり落ち込んでいるのは事実ですが、考えても仕方がない。しばらく、テレビやネットは一切見ないようにしています。日本人は飽きやすいし、そもそも、今回の騒動の発端となった河本さんのお母さんは、すでに生活保護の受給をやめている。その上、謝罪会見もしたからには、これ以上河本さんの件そのものは発展…というか継続報道しても、解決も何もないから…。一部の週刊誌も、世間の食いつきが悪かったら、もう騒がないだろうし…。あと3日くらい我慢すれば、テレビ番組表から『生活保護』という文字は消えるはず…。いまはじっと我慢です」
荒れ狂うバッシングの嵐の中、Aさんは必死に自分を言い聞かせるかのように、そんなメールをせっせと筆者に送ってきた。
(引用ここまで・続きはリンク先でどうぞ)
この記事からもわかりますが、「見えない」貧困者は、CWアンさんの仰るように「責められても溜息しかつけない」のが悲しいです。声を大きく上げられないことをいいことに好き放題バッシングしまくっている感すらありますね。
片山議員の言葉「普通に日本人として義務を果たしている人が『もう、こんなのおかしい』と声を上げるときが来ている」をもじれば、それこそ
「これまでバッシングされてきた人が『もう、こんなのおかしい』と声を上げるときが来ている」のだと思います。
(前の記事にいただいた鍵コメ提供者さん、この言葉だけ拝借させてくださいね)
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