いよいよ橋下氏が労組弾圧のために、およそ民主憲法を持つ国家では許されない暴挙に出ました。
その常道を逸したアンケートの実物がこちら
http://homepage1.nifty.com/osaka-shiro-so/data/120209enquete.pdf よくまあこれだけ明白な憲法違反ができるものです。憲法改正が悲願のネトウヨの星、安倍晋三氏だって、さすがにここまで破廉恥な真似はできなかったでしょう。
橋下氏に比べれば自公政権などかわいいものです。
橋下氏がファシストぶりを臆面もなくむき出してきたのは、これまでの暴言や悪政にもかかわらずマスコミが男芸者よろしく提灯持ちをし、中央の保守政治家が先を争って彼にすり寄っているからです。
ここまで橋下氏を増長させたマスコミと中央の保守政治家の責任は重大です。
橋下氏率いる大阪維新の怪は国政を目指しています。もはやこれは大阪市労連だけの問題ではありません。労働界全体の問題です。労働界は団結してこれに断固として抗議しなくてはいけません。 そしてこれは来るハシズムの弾圧の津波第一波です。国民が一致してここで食い止めねばなりません 。
どう大目に見ようとも、これはもはや政治家に許された政治裁量の範囲を大幅に超えています。このような憲法違反の弾圧を平気で行う彼は権力の椅子に座る資格はありません。次の選挙まで待たずに、彼は即刻リコールされるべきです。 なお、職員の中には「やましいことは何もないのだから堂々とアンケートに答える」という考えをお持ちの方もいらっしゃるようです。
しかし私は、それは警察が行う不当なプライバシー侵害の違法捜査に対して「やましいところは何もないのだからいくらでも捜査してもらって構わない」というのと同じだと思うのです。
それでは公権力の違法な権力行使を認めていることになってしまいます。
自分にやましいところがあろうがなかろうが、違法な権力行使は断固拒否すべきだ、そうでなければ違法な公権力行使への抑制にはならないと私は考えます。権利を守るために闘うのは市民としての義務だと思います。
ところであのテレ朝のスクープ、交通局の労組が平松氏支援するのに「非協力的な組合員がいた場合は、今後、不利益になることを本人に伝え、それでも協力しない 場合は各組合の執行委員まで連絡してください」 と脅迫したというリストの件、どうなったのでしょうね?その後音沙汰無しですが・・ では、少々長くなりますが、橋下氏の暴挙に対する抗議声明をいくつかまとめてメモしておきます。
長くなりますがご容赦ください。
また、大阪の中西弁護士がツイッターでアンケートの設問一つ一つについて吟味されていますので[続き]の部分にて転載させていただきます。
まずは労働団体から。
◆大阪市労組情報ねっとわーく
http://homepage1.nifty.com/osaka-shiro-so/seisaku_teigen/20120213_enquete.html 2012年2月13日 総務局長 中尾寛志 様 大阪市役所労働組合 執行委員長 竹村博子 憲法違反の思想調査となるアンケート調査は直ちに中止を求めます 橋下市長は、2月9日に大阪市の職場で働くすべての正規職員(労働組合が存在しない消防局職員除く)に対し「業務命令」として「労使関係に関する職員のアンケート調査」への回答を求め、「正確な回答がなされない場合には処分の対象」とするとの文書を発しました。そして、2月10日から16日の間に提出することを求めています。 このアンケートが、一部の労働組合の勤務時間内の活動の問題などが背景になっているとはいえ、まったく次元の違う思想調査であり、プライバシーの侵害の憲法違反の内容となっており重大な問題を含んでいます。 1.思想調査・告発強要・不当労働行為のアンケートの異常さ アンケートは「業務命令」で処分をちらつかせ、全員に記名による提出を強制しています。この異常さもさることながら、アンケート項目は職員のプライバシーや個人の思想信条、組合所属までも必須項目として回答を求めています。また、他の職員の政治活動や組合活動の告発(チクリ)を強要する内容になっており職場を分断しバラバラにするものです。さらには、回答方法はインターネットサイトを利用して行うことになっており答えたくない設問にも必ず答えなければ先に進めないシステムになっています。まさに、憲法違反の思想調査と言わなければなりません。 このアンケートは、労働組合活動や個々の職員の政治的信条に基づく発言を一方的に違法行為と印象づけるものであり、個人のプライバシーを侵害するとともに労働組合活動への不当な弾圧に通じるものです。 また、職員の考え方・思想を個別に詳細に把握し、橋下市長にとって好ましいか好ましくないかに分類し人事支配に利用することを可能にするものであり、職員を処分で脅し、住民福祉の向上に努める全体の奉仕者から橋下市長の顔色を伺うだけの物言えぬ職員を生み出す結果につながります。 2.憲法違反であり職務に関係のない職務命令は無効 昨年12月8日に総務局長名で「民意、選挙、公選首長と公務員、行政と政治についての基本認識の徹底について」との文書が出されました。これは11月28日の朝にマスコミのインタビューに答えた「民意」に係わる職員の発言を問題にした就任前の橋下市長の指示によって発せられたものですが、そこで引用された法律の条文の一つが「地公法第32条(法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)」でした。 今回の橋下市長の「業務命令」は、この条文を根拠としていると考えられますが、地公法第32条は「職員は、その職務を遂行するに当って、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規定に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない」と明記されおり、「職務の遂行」と関係がなく、法令に規定されているどころか憲法違反のアンケートへの回答を「命令」することは、違法であり無効です。 アンケートの実施を直ちに中止し、既に回答されたアンケートについては破棄することを求めます。
◆大阪自治労連
http://osaka-jichiroren.com/modules/contents/content0126.html 暴挙!橋下大阪市長は憲法違反の思想調査(職員アンケート)を即時中止せよ(談話) [2012.2.13] 2012年2月13日 大阪自治体労働組合総連合 書記長 荒田 功 大阪市の橋下市長は2月9日、「労使関係に関する職員のアンケート調査」を一方的に実施した。その内容は、職員に氏名・職員番号・所属部署を書かせたうえで、「組合加入の有無」や「組合活動への参加」、「組合に誘った人の名前」まで回答させ、他の職員の政治活動や組合活動の告発を迫るという、およそ常軌を逸したものである。 さらに、「職員アンケート」は「市長の業務命令」(職務命令)として発せられ、「正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえます」と市職員を恫喝しているのである。 この「職員アンケート」は、職員のプライバシーや思想信条の自由(憲法19条)、組合活動の自由(地公法の制限はあるものの)を侵害する明白な違憲行為であり、市長としての職権濫用である。 「アンケート調査」について橋下市長は、「市の職員による違法ないし不適切と思われる政治活動・組合活動」を、「特別顧問のもとで徹底した調査・実態解明を行っていただき、膿を出し切りたい」としている。 そもそも、「違法ないし不適切と思われる政治活動、組合活動」に問題があれば、当局が調査をし、適切に対処、処分をすればすむことである。 橋下市長は、大阪市の職員が今どんな気持ちで働いているのか、考えたことがあるのだろうか。職員は市長の奴隷ではない。現代の「踏み絵」ともいえる今回の「職員アンケート」は、「処分」「命令」「免職」という言葉で職員の不安をかりたて、思想・良心の自由を侵害し、人格権を侵害するものである。 「市長の業務命令」(職務命令・地公法32条)というが、その要件は「職員の職務上に関するものではなく、職務と全然関連のないような私生活に関するものには及ばないし、職員組合の活動への干渉のように行政庁の関与が禁止されている公務員の活動には及ばない」とされている。さらに「重大かつ明白な瑕疵がある場合は、職員は職務命令に従う義務はなく、かつ従ってはならない」とまでされているのである。今回の「職員アンケート」は、市長の職務命令権を逸脱し、濫用したものであり、回答を強制されるようなものではない。 また、「職員アンケート」は労働組合に対する支配介入そのものである。「組合費がどう使われたか」「組合加入のメリット」「組合加入しないことによる不利益」など、実名で調査することは労働組合の存立・運営に対する重大な介入であり、不当労働行為そのものである。 今回、橋下市長はマスコミに対し「職員には今までの価値観を変えてもらう」「いやだったらやめりゃいいだけの話」などと公言している。しかし、選挙で選ばれれば何でもできるわけではない。市長は特別職の地方公務員であり、当然憲法を遵守し、法を遵守する立場である。 憲法の理念を尊重し、住民の福祉の向上をめざすことが地方自治体の使命であり、選挙で選ばれた首長はその使命を果たすことに力を尽くさなければならない。 大阪自治労連は橋下市長に対して、思想信条の侵害と不当な労働組合への弾圧を狙う「思想調査」をただちに中止するよう求めるものである。
◆愛労連(ブログ)
橋下大阪市長の「思想調査」に抗議 橋下大阪市長の違法な思想調査への抗議集中についてhttp://rodo110.cocolog-nifty.com/aichi/2012/02/post-5afa.html (引用開始) このアンケートは労働組合活動に対する介入にとどまらず、権力者が思想信条の自由を侵すもので断固許すことはできません。決して労働組合だけの問題でも大阪市民だけの問題ではありません。愛知や全国の市民にとっても重大な意味を持つものです。 (引用ここまで)
続いて法曹界から。
◆民主法律協会
思想・良心の自由、労働基本権を侵害するアンケート調査の即時中止を!http://www.minpokyo.org/release/2012/02/1155/ 思想・良心の自由、労働基本権を侵害するアンケート調査の即時中止を!2012年02月12日 橋下徹・大阪市長は、9日、野村修也・市特別顧問に依頼して、「労使関係についての調査」(原文はこちら)を行わせるとともに、全職員に対し、16日を期限として同調査に回答するよう職務命令を発しました。 ★アンケートはまるで「踏み絵」★ しかし、調査項目には、組合活動への参加の有無や、組合への加入の有無などを訪ねたり、組合加入のメリットや不利益、組合に対する評価など、組合活動にストレートに介入する不当労働行為といわざるを得ません。 また、街頭宣伝に参加したり、誘われたことがあるかどうかや、他の職員から投票依頼を受けたことがあるかどうかを尋ねるなど、職員及び職員組合による正当な政治活動についても調査しており、職員個人の思想・良心の自由や組合活動への参加の自由を侵害し、職員団体の活動に介入するもので、違憲・違法な思想調査です。 このような内心や自立的な職員組合の活動に土足で立ち入るような調査は許されるものではなく、回答を義務づけるのは、まさしく「踏み絵」を踏ませるものというべきです。 ★違法な職務命令に従う義務なし!★ 橋下市長は、調査への回答は「市長の業務命令」に基づくものであると述べています。しかし、職務上の命令(地方公務員法32条)は、文字どおり、職務に関連したものでなければなりません。職員や職員団体の政治活動は職務に関しないものである上、高度なプライバシー性を有する事項であって、これらを詮索することは職務の権限を大きく逸脱し、明白に違法です。また、職員組合の活動については支配介入が厳しく禁止されており、労働基本権(憲法28条)を著しく侵害する違法な調査です。このように、職務に関連せず、違憲・違法な調査については、職員が回答すべき義務を負うものではありません。 ★違法なアンケート調査の即時中止を!★ このように、違憲・違法なアンケート調査は、即時中止しなければなりません。また、すでに回収した回答データについても破棄しなければなりません。 大阪市に対し、アンケート調査の即時中止を求める抗議の声を集中させましょう。 (送付先)大阪市情報公開室市民情報部広報事業担当 〒530-8201 大阪市北区中之島1丁目3番20号(大阪市役所5階) ファクス: 06-6227-9090
「労使関係に関する職員のアンケート調査」の問題点2012年02月13日http://www.minpokyo.org/information/2012/02/1182/ 第1 はじめに 橋下大阪市長が職員(任期付職員、再任用職員、非常勤嘱託職員、臨時的任用職員、消防局職員を除く)に対して行っている「労使関係に関する職員のアンケート調査」(以下、「本件調査」という)は憲法違反・法律違反の内容を含んでおり、これを職務命令として強制することはできず、また、職員はこれに応答すべき義務はないといわなければなりません。 以下では、本件調査の法的問題点を具体的に明らかにするとともに、市職員の疑問にもお答えしたいと思います。 第2 本件調査の問題点 (1) 本件調査の目的 本件調査は「市の職員による不適切と思われる政治活動、組合活動」について「徹底した調査・実態解明」を行い、「膿を出し切」るために行うとされています。 そもそも地方公務員もひとりの国民であり、憲法上、思想良心の自由や表現の自由、政治活動の自由が保障されています。 ただ、政治的行為については、行政の公正な運営のために、地方公務員法36条によって例外的に制限が加えられているものです。逆に言えば、地公法36条によって規制されている政治的行為以外の政治活動については、地方公務員であっても、他の国民と同じく完全に保障されているわけです。 組合活動については、地方公務員も労働者である以上、憲法上、労働基本権が保障されるのが原則です。ただ、地公法37条が団体行動権を制限し、地公法55条が団体交渉権について一部制限しています。逆に言えば、これらの制限されているもの以外の労働組合活動は、地方公務員であっても、民間の労働者と同じく完全に保障されています。ただ、勤務時間内の組合活動に関しては、地公法35条の職務専念義務に抵触する場合には制限されます。 本件調査は、「不適切と思われる政治活動、組合活動」を調査することを目的とするものですが、問題とされるべきなのは、「不適切」かどうかではなく、「違法(地公法の規制に抵触する)」かどうかです。この点をあいまいにしている本件調査は、そもそも地方公務員の政治活動・組合活動の自由についての基本的な理解を欠いているのではないかと言わざるを得ません。 (2) 本件調査の法的性質 本件調査は、「アンケート調査」と銘打たれてはいますが、市長の「業務命令」(職務命令)としてなされるものであり、「真実を正確に回答」すること、「正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえ」ることとされています。 これは、本件調査を地方公務員法32条の職務命令として職員に回答を義務づけるものであり、その義務違反については、同法29条1項2号による懲戒処分を行うということを意味します。 ただ、後述のように、本件調査に回答せよという職務命令は違法であると考えられます。違法な職務命令に従わなかったからといって懲戒処分をすることは、やはり違法です。 (3) 本件調査の態様 本件調査は、記名式であり(Q1)、記載者が特定される形式となっています。また、同頁の全ての項目について回答しないと、次頁の回答ができないシステムになっているため、本件調査に応じるには全ての項目に回答しなければなりません(この点は、「正確な回答」をしなければ懲戒処分を行うという点からも強制されています。)。 憲法19条は「沈黙の自由」を保障していると解されています。誰しも自分の思想信条の表明を強制されないということです。本件調査は、全ての項目への回答を懲戒処分の威嚇によって強制するものですから、明らかに、「沈黙の自由」を侵害するものです。刑法223条1項の強要罪に該当する可能性もあります。 第3 職務命令の規制について 1 地公法32条は、職員は、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならないと規定しています。 しかし、まずそもそも、命令は、職務に関連するものでなければ、職員を拘束する命令にはなりません。職務と関連しない日常的な生活や社会的活動、思考・表現等に関する職務命令は違法となります。 次に、職務命令の内容が憲法、法律、条例等に違反する場合にも、もちろんその職務命令は違法となります。 2 では、違法な職務命令が行われた場合、職員はこれに従う義務があるのでしょうか。 この点については、違法が明白な場合や客観的に明らかな場合のみ従う義務がないとする裁判例があります。 ただ、日本は法治主義の国なのですから、職員は全体の奉仕者として法令を遵守する義務があるのであって(憲法15条2項、地公法30条、32条)、その義務は職務命令に優先するはずです。職員は違法な職務命令には従う義務がなく、むしろ違法が明白であるにもかかわらず、その職務命令に従うことは、法令遵守義務に違反する行為と考えるべきです。 第4 本件調査の違憲性・違法性について 1 それでは、具体的に、本件調査について見ていきましょう。 本件調査の質問項目は、全部で22問ありますが、Q1からQ5は記述者の特定に関する項目ですので、残る17項目について検討します。以下では、説明の都合上、問題となる法令ごとに検討していきます。 2 職務に関連しない事項に関し回答を強制することは違法です。 (1) まず、前記のように、職務に関連しない事項についての質問に対する回答を職務命令として強制することはできません。これは当然の事理ですが、職務命令としては地公法32条に反し違法です。 (2) 本件調査の質問項目をみれば、個人の組合活動の有無を問題にする項目(Q6、Q16から21)や、個人の選挙活動の有無を問題にする項目(Q7~Q10)などは、職務に関連しない事項である(少なくとも関連しない事項を含む)ことが明らかであり、これらの回答を強制する行為は違法です。 3 職員の内心の自由を侵害し、憲法19条に違反します。 (1) 憲法19条は、個人の思想及び良心の自由を保障しています。個人の内心について公権力が介入できないことは近代国家の大原則であり、同条の保障の内実として、「内心の告白を強制することの禁止(沈黙の自由の保障)」が含まれています。 したがって、公権力が個人の個人の世界観、人生観、主義、主張などを告白させあるいは推知することは、たとえそれが具体的な不利益取扱いと直接連結させられていなくても、それ自体、思想・良心の自由の侵害となります。 (2) この点、本件では、組合活動や選挙活動についての考えを強制的に回答させており(Q15、17~19)、内心の自由を侵害することが明らかです。また、組合活動や政治活動に関する事実の摘示を強制する行為(Q6、7など)も、内心の思想を推知させるものであり、同様に思想及び良心の自由に違反するというべきです。 4 職員の団結権を侵害し、憲法28条に違反します。 (1) 地方公務員にも団結権が保障されており(憲法28条、地公法52条3項)、その保障内容の一つとして、使用者である当局から労働組合の結成や運営(参加)について介入されたり、妨害されたりしない権利があります。 (2) 組合活動への参加の有無・誘った人の有無(Q6)、組合加入の有無(Q16)、組合への相談の有無(Q20)の回答を強制する行為は、組合の自由な活動やその参加を抑制するおそれの強いものであることから、労働組合の組織・運営に対する支配介入行為として違法とされています。 また、組合に加入するメリットについてどう感じるか(Q17)、組合の力にはどのようなものがあるか(Q18)、組合に加入しないことによる不利益にどのようなものがあると思うか(Q19)、などの意見の回答を使用者である当局が強制する行為も、組合の運営・活動に関する外部からの不当な干渉行為として許されないというべきです。 5 職員の政治活動の自由を侵害し、憲法21条に違反します。 (1) 選挙活動・政治活動の自由は、憲法の国民主権の原理に直結した国民の重要な権利であり、憲法が保障する表現の自由(21条)の根幹をなすものです。地方公務員にも当然にこの保障は及びます。 ただ地方公務員法36条は、この保障の例外として、地方公務員の政治的団体の結成への関与等の禁止(同条1項)と、特定の政治的目的を有する特定の政治的行為の禁止(同条2項)を定めています。 第1項の行為のうち「政党など政治的団体」の「結成への関与」とは、政治団体の発起人となったり、代表者となったりすることで、単に団体の構成員になったり、政治団体の会合に出席するなどの行為は禁止されていません。また、「構成員になることの勧誘運動」とは、「不特定多数の者を対象として、組織的・計画的に決意をさせるよう促す行為」を指すのであり、限定された友人に入党を勧めることや、個々の政治団体への入会を依頼することは禁止の対象ではありません。 第2項は、「投票勧誘運動」(同項1号)、「署名運動の企画・主催」(同項2号)、「寄付金募集」(同項3号)、「文書又は図画の庁舎への掲示」(同項4号)を規制しています。ただ、これらの行為であっても、行政の公正な運営を実質的に阻害する場合に限って制限されると、限定的に解釈されています。例えば、「投票勧誘運動」については、組織的、計画的、又は継続的に勧誘する場合に限って規制され、そうではない個人的な投票勧誘については規制の対象ではありません。このように、地公法36条は極めて限定された行為を禁止しているだけであり、その以外の政治活動は自由に行うことができるのです。 (2) 以上からすると、特定の政治家を応援する活動に参加したかどうか・どのように誘われたかの質問(Q7)は、職場の関係者から特定の政治家に投票するよう要請されたかどうかの質問(Q8)、「紹介カード」の配布を受けたか否か、記入返却したか否か、返却した理由に関する質問(Q9)は、それ自体、何ら禁止される行為にあたらない質問であり、これを強制的に回答させる行為は憲法21条の表現の自由に反するというべきです。 第5 結論 以上のように、本件調査は、憲法上・法律上種々の内容に明白に違反するものであり、職務命令としてその回答を強制することは違法で、職員はこれに従う義務がないと言わなければなりません。 なお、本件調査項目のいくつかについてはさらに検討を要する事項が含まれている可能性はありますが、質問内容が無限定で明らかに違憲・違法な部分を含んでいること、明らかに違憲・違法なものを含め全ての項目への回答を強制していることからして、本件調査全体について回答に従うべき義務はないというべきです。
◆大阪労働者弁護団
http://homepage2.nifty.com/lala-osaka/ketugi120213.htm 大阪市による職員アンケート調査の即時中止と廃棄を要求する緊急声明 2012年2月13日 大阪労働者弁護団 代表幹事 大川一夫 このアンケート調査の目的は、「市の職員による違法ないし不適切と思われる政治活動、組合活動などについて」明らかとするためであるとされている。 しかし、地方公務員法第36条第2項は、地方公務員による政治活動を一部制限しているが、公務員労働組合は何ら政治活動を制約されておらず、特定の政治家を応援することも含めて何ら違法行為でも不適切な行為でもない。公務員個人についても、後援会活動は地公法に抵触しないし、現在取りざたされている「知人友人紹介カード」の提供についても、何ら地方公務員法第36条第2項に抵触するものではない。 それにもかかわらず、この間市側は「労使関係を適正なものにする」としながら、公務員労働組合の弱体化を意図した動きを強めており、今回の「アンケート調査」もその一環であると言わざるをえない。 今回のアンケート調査は、その内容においても、組合活動への参加や組合への加入、加入のメリット、組合の力、組合費の使われ方など、大阪市の唱える調査目的とすら無関係の設問が多数設けられており、憲法第28条で保障される労働者の団結権侵害となり、さらには不当労働行為として違法行為でもあることは明白である。 さらに、上記の設問や投票行動に関する質問は、個人の政治的信条や価値観を問う思想調査ともいえるものであり、事態は労働組合との関係に止まらず、憲法第19条で保障される思想信条の自由、憲法第13条で保障される人格権に対する侵害にまで及んでいる。 このようなアンケート調査を実施すること自体、違憲違法であることは明白であるが、そのうえ職務命令として、正確な回答をしなかった場合には懲戒処分を科すことを明言して強制するに至っては、甚だしい人権侵害である。このような明白な違法行為を地方公共団体の首長が率先して行うこと自体、前代未聞であり信じがたいことであるが、本件は労働者だけの問題ではなく、橋下市政下で全市民の人権保障が危機に瀕していることを端的に示している。 大阪市は、本件アンケート調査を行うにあたっていかなる適法性チェックを行い、いかなる根拠をもって適法であると判断したのか等について、直ちに市民に対して説明すべきであるし、アンケート調査自体を即時中止し、既に回収したアンケート調査結果については、直ちに廃棄されることを強く要請するものである。 以上
以下は中西基弁護士によるアンケート設問の個別検討です。お役立ちツイート、感謝です。
kanamenakanishi 中西 基 橋下さんの思想調査「アンケート」。これに応えなければならないか?私は、応える義務はない、と考えます。理由は、職務命令として違法だから。地公法32条の職務命令は、内容および手続上法令に違反しないものなければなりません。今回の職務命令は、その内容が明らかに違法です。 橋下さんの思想調査「アンケート」。違法な職務命令に従う義務があるか?学説は3通り。1.重大かつ明白な瑕疵がある職務命令には公定力はない。2.職務命令に瑕疵があることが明白な場合には服従を拒否しうる。3.違法な職務命令に従うことはむしろ法令遵守義務に違反する。 橋下さんの思想調査「アンケート」。回答を拒否したら、懲戒処分(地公法29条)を受けるか? まともな首長なら、このアンケートの回答を拒否したことで懲戒処分をすることなどあり得ません。が、いまの市長はまともな首長ではないので、懲戒処分を強行するかもしれません・・・ 橋下さんの思想調査「アンケート」。回答拒否して、懲戒処分を受けたらどうなるか? まず、懲戒処分としては、戒告、減給、停職、免職の4種類(地公法29条)。減給、停職、免職はあり得ないでしょうから、たぶん戒告。もちろん、まともな首長なら、戒告なんてするはずがありません。 橋下さんの思想調査「アンケート」。回答を拒否して、まともじゃない首長から、戒告処分を受けたらどうしたらいい? 処分があったことを知った日の翌日から60日以内に人事委員会に不服申立をすることになります。http://www.city.osaka.lg.jp/kansajinji/page/0000151454.html 橋下さんの思想調査「アンケート」。回答拒否して、懲戒処分されたらどうなるか?懲戒処分も行政処分ですから、違法な懲戒処分については、職権で当然に取り消されなければなりません。まともな首長なら、職権で取り消すはずです。まともでない首長なら・・・。人事委員会に不服申立をしましょう。 橋下さんの思想調査「アンケート」。Q6「組合が行う労働条件に関する組合活動に参加したことがありますか?」 →そもそもこの質問については、調査の目的において、違法であり不適切です。公務員といえども労働基本権(憲法28条)は保障されています。もちろん、組合活動に参加するのは自由です。 橋下さんの思想調査「アンケート」Q6について。地公法35条は職務専念義務を規定していますが、これは勤務時間中にのみ課せられる義務です。勤務時間外なら組合活動は完全に自由です。 橋下さんの思想調査「アンケート」Q6について。地公法上問題になりうるとすれば、勤務時間内における組合活動が地公法35条の職務専念義務に違反する場合。しかし、Q6は、勤務時間内外の限定なく、ひろく組合活動全般について調査するものであって、憲法19条、21条、28条に違反します。 橋下さんの思想調査「アンケート」。Q7「特定の政治家を応援する活動に参加したことがありますか」。 まず、「応援する活動」の意味が不明確。「知り合いの住所等を知らせたり、街頭演説を聞いたりする活動」が例示されていますが、いずれも地公法36条で制限される行為ではありません。 橋下さんの思想調査「アンケート」Q7について。地方公務員ももちろん一人の市民であり国民ですから、政治活動の自由が保障されます。ただし、行政の公正な運営の確保のために、地公法36条によって、一定の政治的行為について制限があります。なお、国公法とは異なり、罰則はありません。 橋下さんの思想調査「アンケート」Q7について。地公法36条2項が制限する政治的行為とは、(1)投票勧誘運動、(2)署名運動の企画・主催、(3)寄付金の募集、(4)庁舎への文書掲示です。「知り合いの住所を知らせたり」、「街頭演説を聞いたり」することは、まったく自由です。 橋下さんの思想調査「アンケート」Q7について。地公法36条で制限されているわけではない政治活動(知り合いの住所を知らせたり、街頭宣伝を聞いたりすること)を調査する理由はまったくありません。回答を命じることは明らかに、憲法19条、21条に違反します。 橋下さんの思想調査「アンケート」。Q8「職場の関係者から、特定の政治家に投票するよう要請されたことはありますか?」。まず、「職場の関係者」が不明確です。どこまでが「関係者」でしょうか?地公法36条は、公営企業職員と単純労務職員に適用はありません。 橋下さんの思想調査「アンケート」Q8について。地公法36条2項1号は、「投票勧誘運動」を制限しています。ただし、あくまでも、当該職員の属する地方公共団体の区域内についてです。区域外の選挙については何ら制限はありません。Q8は、この点も曖昧にしており、違憲違法の可能性が高いです。 橋下さんの思想調査「アンケート」Q8について。地公法36条2項1号の「投票勧誘運動」とは、組織的、計画的、継続的に勧誘することです(人事院規則14-7の「運用方針」参照)。http://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/14_fukumu/1402000_S24houshinhatsu2078.htm 個人的に投票を依頼することは自由です。 橋下さんの思想調査「アンケート」Q9。「紹介カード」について。個人的に知り合いを紹介することは何ら問題ないでしょう。問題になるのは、公職選挙法136条の2「地位利用による選挙運動の禁止」にあたるような場合。典型的なのは上司が地位を利用して部下に命じること(沖縄防衛局長のように)。 橋下さんの思想調査「アンケート」。Q10「組合の幹部は職場において優遇されていると思いますか?」 → 質問の目的がまったく不明です。個々の職員に、優遇されていると「思う」かどうかを聞いてどうするのだろう・・・。優遇しているのだとすれば、それは任命権者の側の問題でしょう。 橋下さんの思想調査「アンケート」。Q11は縁故採用について聞くもの。これもなんで全職員にそんなことを聞かないといけないのか、理由が不明です。採用するのは任命権者でしょう。任命権者が胸に手を当てて考えればいいことです。あえて、全職員に書かせる狙いは、別にあるとしか考えられません。 橋下さんの思想調査「アンケート」Q12。「職場において選挙のことが話題になったことがありますか。」 → 公務員が(というよりすべての市民・国民が)職場で選挙のことを話題にすることは、完全に自由です。「休み時間に仲間同士で話題になった」かどうかについて、職務命令で回答させるって・・ 橋下さんの思想調査「アンケート」Q12。「投票依頼の意図を感じたかどうか」を応えさせるのも、あまりにも広汎にすぎます。地公法36条2項1号は、組織的、計画的、継続的な投票勧誘運動を制限し、公選法136条の2は地位利用による選挙運動を禁止していますが、それ以外は完全に自由です。 橋下さんの思想調査「アンケート」Q12について。地公法36条2項1号違反や、公選法136条の2違反があったと疑われるのなら、アンケートへの回答を命じることが許されるか?無記名での密告を募れば十分で、記名で答えさせることは、沈黙の自由を侵害する。なにより職場の人間関係を破壊する 橋下さんの思想調査「アンケート」。Q13は、完全に違憲・違法です。選挙活動・組合活動について、問題ないと「思う」かどうか、個々の職員の内心の認識を問うもの。このような質問を設ける狙いはどこにあるのでしょう?橋下さんに絶対服従する人間かどうかが試されているとしか思えません。 橋下さんの思想調査「アンケート」。Q14からQ19についても、いずれも内心の認識を問うものですから、やはり、完全に違憲・違法です。 Q14は、大阪市の広報誌についての「認識」を問うもの。大阪市は、「市長からの指摘を受け」、『「行政と政治の分離」についての見解』を公表しています。そこで、「市政だより」に都構想に否定的な記事が掲載されたことが問題点として挙げられています。 http://www.city.osaka.lg.jp/johokokaishitsu/page/0000156284.html ちなみに、市政だよりの2月号は、さながら維新の会の広報誌でしたが・・・。 http://www.city.osaka.lg.jp/johokokaishitsu/cmsfiles/contents/0000118/118802/20120201.pdf 橋下さんの思想調査「アンケート」Q15「大阪市の組合活動や選挙運動に関して自由に回答してください。」 質問の目的がわかりませんね。何を聞きたいのでしょうか?職務命令で回答しなければ処分の可能性があると明記されているのに、何を答えていいのか不明確な質問をすること自体がナンセンス 橋下さんの思想調査「アンケート」Q16「あなたは組合に加入していますか?」この質問への回答を職務命令で命じて、回答しないと懲戒処分すると言うことについては、弁護士100人いれば、98人は違憲違法だと答えるでしょう。 橋下さんの思想調査「アンケート」Q17。「組合に加入するメリットをどのように感じていますか?」 →これも質問の意味が理解できません。これを聞いて何の意味があるのでしょうか?組合に加入するかどうかは、労働者の自由です。憲法で保障された基本的人権である労働基本権です(憲法28条)。 橋下さんの思想調査「アンケート」Q18。「あなたは、組合にはどのような力があると思いますか?」 →これも質問の意図が理解できません。職員がどう「思う」かを聞いて何の意味があるのでしょうか? 橋下さんの思想調査「アンケート」。Q19「組合に加入しない(脱退する)ことによる不利益はどのようなものがあると思いますか?」 職員がどう「思う」かを聞いて何の意味があるのでしょうか。まさに、思想調査そのもので、憲法19条違反です 橋下さんの思想調査「アンケート」。Q20「あなたはこれまで組合に相談したことがありますか?」 これも思想良心の自由、労働基本権を侵害して違憲ですね。ちなみに、Q17からQ20については、「回答するか否かは自由です」との注記があります。Q16にはそのような注記がありません。 橋下さんの思想調査「アンケート」。Q21「あなたは組合費がどのように使われているかご存じですか?」 労働基本権への侵害であるとともに、組合の内部自治への干渉でしょう。そもそも、それを聞いてどうするのでしょうか・・・。 橋下さんの思想調査「アンケート」。Q22は平成17年の『厚遇問題』以降の労使関係の適正化の達成状況を尋ねるもの。個々の職員に「どう思うか」を聞くよりも、いまの達成状況をあらためて辻公雄弁護士に調査してもらえばどうでしょうか?
橋下さん、あなた弁護士でしょう?
同業者からこんなに突っ込まれるなんて、あなたは法のド素人ってことですよ?弁護士として恥ずかしいと思いませんか?
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