Ａｆｔｅｒｎｏｏｎ　Ｃａｆｅ

検察は、菅谷さんの釈放に続き、再審公判が始まれば無罪論告を行う見込みです。
一刻も早く冤を濯ぐという意味では、一見すると無罪論告は好ましいようにも見えます。しかしよくよく考えるとそうとも言えないようです。

もし検察が無罪論告をしたらどうなるでしょうか。
弁護側は無罪について争う事由がなくなり、再審の弁論で何も主張することが無くなります。
それは、警察がどんな汚い手で菅谷さんを自白に追い込んだか、如何に裁判所が自白を偏重し当時のDNA鑑定神話を無条件に信用してしまったか、いかにしてこの冤罪が作られたか、が再審公判で一切検証されなくなってしまうことを意味します。（取調の実態については国賠請求で明らかにする手もありますが、DNA鑑定については難しいでしょう）

もちろん弁護側の、旧鑑定のMCT１１８でも菅谷さんのDNAと一致しなかった、という主張についても公判で検証されないままになります。
もしこれが再審公判で認められると、同じ鑑定で有罪、死刑となった飯塚事件の見直しに火種が飛ぶのは必至です。検察はこれを避けようとしているのではないでしょうか。
ボクが悪うございました！ゴメンナサイ！と早々に頭を下げることで先手を打って、幕引き封じ込めを計ろうとしているように思えます。

何故足利事件という冤罪がつくられたのかを徹底的に追及し、白日の下に晒すことが次の冤罪を防止するのに繋がります。再審にはそうした社会的な意義があると思います。
それをせず足利事件を幕引きさせては過去の教訓をいかせません。
早期釈放無罪で良かった良かったと喜んでばかりはいられないのです。

もし検察のこういう意図を読めず、その姿勢を好印象で伝えられるなら、それはとんだお笑いぐさです。

一方では己の非を潔く認める検察という評価を手にすることが出来、もう一方では違法で前近代的な人権無視の捜査への追及に蓋をすることが出来るーある意味、死刑再審が相次いだ時の「過去の教訓」をいかした行動に出たのは、検察、といえるかもしれません。

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