憲法記念日から日にちがたってしまいましたが(こればっか・・f^^;)、GWということで、お許しをm(_ _)m
今回は、9条改正を推進したい側から古典的に言われるいわゆる「戸締まり論」について考えてみました。
これは一見もっともらしく感じる例えなので、「9条は変えないほうがいいとは思うけど、そういわれると確かに不安・・」という人が多く、以前
このエントリーを書いたときにも典型的な戸締まり論コメントがきました(引っ越し時にコメントは持ってこれなかったので今はありません)
なので、自分なりにこれについて反論しておきたいと思います。
戸締まりの他に火事に備えての消化器やスプリンクラー、あるいは保険にもたとえられるようですが、この比喩にはいくつかの巧妙なトリックが隠されていると思います。
まず、9条を変えて軍隊を持つことを、戸締まり、スプリンクラー、保険にたとえることは出来ません。マガジン9条にちょうど同じ内容がありましたので引用させていただきます。
http://www.magazine9.jp/interv/nagai/nagai.php
「例え話のトリック」に騙されるな
編集部 たしかに、「9条は守りたいのに〜」の中には、そういった「反論」の材料になりそうな場面がたくさん出てきましたね。
たとえば、主人公が通っているパッチワーク教室の先生は護憲派なんだけれど、生徒のひとりに「国が戦力を持つのは、強盗から身を守るために家に戸締まりをするようなもの。非武装中立を主張するなら、家のセキュリティシステムを解除して、鍵をかけるのもやめないとおかしい」と言われて反論できず、しょうがないから鍵を閉めずに暮らし始めて、あまりの不安のために病気になってしまう。主人公がそれを夫に話したところ、夫は「家の戸締まりは外からの侵入を防ぐだけだが、武力は人を殺す。家の戸締まりをいくら厳重にしても周囲には不安を与えないけれど、軍備を増強すれば周囲の国を警戒させる。そもそもそれは例えになっていないんだ」と指摘するというシーンがありました。たしかにこの「国家戸締まり論」は、9条を守りたいと思っている人の「弱点」の一つになっていますね。
永井 「家にも戸締まりが必要なように、国にも戸締まりが必要だ」と言われると、一瞬「なるほど」とか思ったりしそうになるんですよね(笑)。本当は「鍵で人は死なない」というところまで言わないと意味がないのに。例え話という古典的なトリックですね。
あとは「軍備を持たないというなら、あなたは道で暴漢に襲われても抵抗しないんですね」とかね。
編集部 これについても、主人公の夫が「暴漢を他国の襲撃に例えるのなら、“暴漢に襲われるかもしれないから必ずナイフを携帯して、教われたら迷わず刺して、その暴漢の家も壊して、家族も殺しましょう”というところまで言わないと「軍備を持つ」ことの例えにならない。そもそも、他国が攻めてくる前には、必ず両国の関係が悪化する期間があるのだから、ある日突然襲いかかってくる強盗や暴漢に、国を例えること自体に無理がある」と指摘していました。
永井 以前、テレビの討論番組で、こういうことがあったそうですよ。「9条を守りたい」という若い女性に対して、やっぱり「じゃあ、あなたは夜道で暴漢に襲われてもやられっぱなしで抵抗しないのですね」と言う人がいて。女性は最終的に「しません!」と言っちゃった。それを聞いて、思わず「バカ!」と言いそうに(笑)。
本来は、夜道で暴漢に教われることと、他国が攻めてくることとは全然違うんだということを言わなきゃいけないのに、その例えを受け入れてしまうから、「襲われても我慢します」みたいな変なことになってしまう。そうすると、ほかの人たちも「9条は守りたいけど、襲われても無抵抗なんて、そんなのは嫌だ」となっちゃうでしょう。
編集部 そもそもの例えが間違ってるんだということを、きちんと指摘していく必要がありますね
(引用終了)
軍隊を備えることとスプリンクラーやセコムを設置することとは決定的な違いがあります。
スプリンクラーなら火を消し止めてその後は無事収まります。災難の可能性は確かにぐっと減ります。
しかし、武力はそれとは逆に、行使したら相手から更なる反撃が来るというもっと大きいリスクが間違いなく高まるのです。相手もテンパってるのですから、一旦武力を行使すればその先際限ない報復、泥沼は避けられません。
スプリンクラーやセコムは泥沼にはなりません。
ですから、もし台風が来て暴風で看板が飛んできたらどうするんだ、雨戸を準備しとかなきゃいかんだろう、というのと同じようには考えられないと思うのです。
これに対し、でも実際攻撃を受けたら、やられっぱなしよりはせめて一矢でも報いるほうがマシだ、との反論もあるでしょう。
でもこの反論にもトリックがあると思います。
泥棒にしろ火災ににしろ台風にしろある日運悪くふってきた災害です。
ところがミサイル攻撃は「ある日突然」降って湧いたようになされるものではありません。
意思疎通がうまくいかず、互いに脅威と考え、敵視政策をいくつもとってきた積み重ねの上でとうとう交渉決裂、一触即発、そして武力攻撃となるわけです。
実際に歴史を見ても、戦争はなにか天災が防ぎようもなく突然訪れた訳ではありません。
太平洋戦争はある日突然ふって訪れたのではなく、ちゃんと武力攻撃を開始するまでには過程があるのであり、その過程での交渉が成功していたら戦争に至らないのです。
従ってそれまでの外交努力、経過を捨象しといて最後の最後「ミサイルが飛んできた」事象だけ切り取って、そこだけでの対策ばかりを強調しても非現実的、非効果的なわけで、ここが「台風や火事の備え」とは決定的に違うところなのです。
「もし相手が攻撃してきたらどうする?」という仮定は、現実にはまるで地震か何かのように何の前触れもなく飛んでくるかのよう、ミサイルが飛んでくる羽目になる前の現実的なファクターを全て捨象し、「攻撃されたら」という抽象的なレベルで問いかけるというトリックを使っています。これは物事の一部(真珠湾攻撃で戦闘機が攻めてきた、アルカイダがテロをしかけてきた)だけを切り取って、そこだけで防衛を考えているのであり、非現実的で無意味なのです。
コスタリカの市民に」「他の国から武力行使された時のことを考えると不安を感じないか」について質問したところ、
武力は、問題が解決できず山積みになった結果使われる。大事なのは、そうなる前に話し合いで解決をはかること。その努力を議論せず、武力行使された時のことだけ問題にしても現実性がない。
と答えています。
(そしてコスタリカは”災害に対する備え”がなかったからといって攻め込まれたことはありません)http://www.jca.apc.org/costarica/siryo/hujiwara.html(2010/05/16訂正:コスタリカは軍隊廃止後、4回の軍事的侵攻をうけています。でも安易に軍事力に頼ろうとはしませんでした。警察力を増強して対応しつつ、できるだけ早く話し合いに持ち込む、という方法をとってきました。それは被害を最小限にとどめたと思われます。そういう経験を積み重ねることにより、非武装を武器にできるまでになったのですが、決して一朝一夕でできたわけではありません。非武装にした次の日から自動的に100%の平和が手に入ってもう安心、と安穏としていたわけではありません。、常に軍事に頼らない道を努力して探してきた結果、非武装こそ最大の防衛と言えるまでになったのです)
また、これに対し戸締まり論は、「外交が大事なのはもちろんだが、備えあれば憂い無しではないか」とよく言います。
しかしこれは、軍隊や武力を備えることによって「備えあれば憂い無し」の状態になれる(あるいは近づける)という前提がなければ成立しません。
怪しい前提ですね。
まず、新しい武器が開発されればそれを上回る最新の武器も次々開発されるのですから、これさえあれば安心、というものは存在せず、切りがありません(だから軍事産業は儲かります)
太平洋戦争の時、互いに各国が軍隊を備えていたことは戦争を開始の抑止には全くなっていなかったのは明らかです。
それに、世界一の「備え」があったはずのアメリカは9.11を防げたでしょうか、という検証で「備えあれば憂い無し」の幻想は崩れ去ります。
9.11を防ぐには、軍事力を増大しておくより、イスラム世界との関わり方を根本的に見直した方がはるかに現実的な効果があったはずです。
武器を備えよ、それは保険だと声高に叫ぶ人ほど、ミサイルが飛んで来る前の考察をスッポリ抜け落としているのです。
また、自衛のための武力行使も認めないのでは、9条のせいで国民は危険にさらされる、と危機感を煽るのもよくあります。
では、日本は9条により軍隊がないのをいいことに他国が侵略しようとしてきた、なんてことが起こったことがありますか?9条のせいで国民の安全はおざなりにせざるをえなかった、なんてことが一度でもあったでしょうかと逆に問いたいです。
9条があったから朝鮮戦争にもベトナム戦争にも行かずに済みました。
9条があったからイラクでアメリカに巻き込まれず自衛隊員が一人も死なずにすみました。
9条があるような国だからこそ、国際紛争の仲裁役に日本人の伊勢崎さんが選ばれたのです。
このように、むしろ9条が自国の安全を守り、国際的信頼を高めた例しか私は思い浮かばないのです。
抽象論や比喩のトリックに引っかからないように気をつけなくてはなりません。
前提にうっかりそのままのってしまわないこと
もし攻められたら、という抽象論のレベルでの応酬は無意味、より具体的に現実に即して考えるようにすることが大事だと思います。
次回もまた9条に関して考えてみたいと思います。
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