慰安婦問題はじめ、戦前の歴史認識について暴言がたくさん出てきています。橋下発言のみならず、最近だけでも西村氏、石原氏、平沼氏といった維新のメンバーや、自民党では高市早苗氏、稲田朋美氏も。
また、大本保平茨木市長 上田清司埼玉県知事も橋下氏に援護射撃を堂々と行っています。
http://d.hatena.ne.jp/Stiffmuscle/20130531 現在安倍氏は村山談話、河野談話の見直しを封印していますが、海外向けにどんなに表面を取り繕おうとしても本音は隠せずぽろぽろこぼれ落ちるといった感じ。
公職に就いている者達がこれほど歴史修正主義をむき出しにすることが許されることを、海外の人々は驚きと非難と警戒の念をもって見ています。
橋下発言が出てきた背景は、海外報道でも指摘されているように日本の極右勢力、歴史修正主義の台頭です。
安倍氏は昔から筋金入りの極右国粋主義者であり、村山談話、河野談話を葬りたいと願い続けている歴史修正主義者であることは周知の事実です。
安倍氏は官房長官だった2001年にはNHKに圧力をかけて慰安婦問題を扱った番組内容を事前に変更させました。
去年11月にはニュージャージー州の新聞に掲載された「The Fact」第二弾ともいうべき「Yes, we remember the facts.」という広告に名前を連ねています。
また安倍氏は3月8日の衆議院予算委員会で、前回総理大臣だった時には「ブッシュ大統領との間の日米首脳会談においては、この問題(慰安婦問題)は全く出ていません」と答弁していたのに、実は会談で「辛酸をなめられた元慰安婦の方々に、人間として、また総理として心から同情するとともに、そうした極めて苦しい状況におかれたことについて申し訳ないという気持ちでいっぱいである」と話していたことが分かりました。
今までウソをついていたわけですね。
(
http://www.kiyomi.gr.jp/blogs/2013/05/17-917.html 辻元清美オフィシャルサイトより)
海外では橋下発言は、日本の極右化、歴史修正主義の台頭の流れの中で起きたことだと受け止められています。
元凶は安倍氏のような極右国粋主義者が政権を握ったことなのです。
ですから、海外の批判は、橋下氏だけに向いているのではなく、安倍政権にも向けられています。
しかし、国内では必ずしもそういう見方はされていません。
だから「橋下さん、女を何だと思ってるの、風俗勧めるなんてサイテー」という批判になっても、橋下氏と同じ主張をしている歴史修正主義者の親玉である安倍氏に対する批判にはなっていかないのです。
そこが海外と認識の仕方が違うところです。
何故でしょうか。
やはり、国民の間で慰安婦問題についてきちんとした知識が共有されていないのが大きな原因だと思います。
ドイツでは学校でホロコーストについてみっちり学びますが、日本では慰安婦問題は検定により学校の教科書から記述が消されました。時の自民党政権はなんとかしてドイツで行われているような歴史教育を排除しようと努力してきたからです。学校での歴史教育は非常に不十分です。
そしてマスコミは、歴史修正主義者達がどれだけ妄言を吐こうがほぼ無批判に垂れ流し。たまに批判しても「外交上よろしくない」と言った程度のコメントくらい。
「慰安婦は戦地売春婦だった」とか「強制連行はなかった」といった類の言説は明らかに歴史的事実に反しているのに、そういう指摘や批判を報道してきませんでした。
それは今回の事でも変わりません。
橋下氏の一件を報じる間、橋下氏の言い分は事実に反している、慰安婦制度の歴史的事実はこうだ、とハッキリ報じたマスコミはどれだけあったでしょうか?
たまにみかけても「強制連行があったかどうかはいまだによくわかっていない」という、誤った報道です。
日本のマスコミは、慰安婦制度は日本軍、日本の国家が主体となって運営した国内法、国際法違反の許されない性暴力制度、性奴隷制度であることを決して公然と明確に言いません。
それどころか「強制連行があったかどうかは事実は不明で争いがある」という伝えかたなのです(先日読んだ週刊誌でもそう紹介されていました)
日本では歴史修正主義が大手を振って表通りを闊歩できますが、海外では20000%認容されません。
「ユダヤ人は強制的に収容所に入れられたのではなかった」とか「当時ホロコーストが必要だったのは誰でもわかる」などと言ったら大変なことになります。
村野瀬玲奈さんのエントリ-を引用させていただきますが
「従軍慰安婦をめぐる史実は裁判でも学問でも確立している 」のです。
いまどきまだ「強制連行はなかった」「戦地売春婦に過ぎない」などと述べることは『地動説が理解されている時代に天動説を頑強に主張するようなもの』であり、トンデモなのです。
橋下発言はいけないと感じながらも「確かに日本ばかりが責められるのはおかしい」と感じている人達は決して少なくありません。
しかしそれは、慰安婦制度についての正しい知識がないこと、そして、日本が今責められているのは、当時のことを直接責められているのではなく、今現在、歴史を都合良く歪曲することをやめず、侵略の被害者を侮辱し貶める行為をやめないことを責められているのだ、ということがよくわかっていないせいだと思います。
ですから、これを機に慰安婦問題について正しい知識を広く国民の間で共有することが大事だと思います。
日本が求められていることは、橋下氏一人を批判することだけではなく、より根本的に、歴史修正主義を放逐することです。それは必然的に極右化した安倍自民党に対峙するのでもあるのです。
河野談話に関して言えば、大筋で良いとは思いますが、百点満点というわけにはいきません。表現の仕方がぬるいので、歴史修正主義者につけ込まれるところがあるといえましょう。国は国内法国際法違反の法的責任を負うことを明記して欲しいと思います。
ブログ「アフガン・イラク・北朝鮮と日本」さんが吉見教授の講演を記録してくださっていますのでそこから引用させていただきます。
吉見教授の橋下への反論 慰安婦の強制性についての講演録2http://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/70bf0630f6eedd6bc2c4fa9eab9f3692 (引用開始) 河野談話は、日本軍の責任をほぼ認めていると思います。問題があるとすれば、このような問題を起こした主役が誰だったのかということをあいまいにしている点でしょう。業者に責任があるのか、軍に責任があるのか、主役はどっちだったのかということは、現在の史料状況ではもはや明白だと思うのですが、「あいまいさのない明確な認知」という点では、はっきりさせることが必要だと思います。 それから、さきほど引用しましたように、河野談話で「慰安所における生活は、強制的な状況のもとでの痛ましいものであった」とされています。これでほぼ十分だといえるかも知れませんが、性奴隷制度であったということに踏み込むべきではないかと思います。 (引用ここまで)
河野談話は、橋下氏が提起した「明確化」とは別物の「明確化」が必要だと思います。
(これで一旦、橋下発言関連のエントリ-は一息つく予定です)
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