反対を押し切って開かれた「主権回復の日」式典についてもう少し。
安倍総理は「本日を大切な節目とし、これまで私たちがたどった足跡に思いを致しながら、未来へ向かって希望と決意を新たにする日にしたい」とのべたようです。
「4月28日を主権回復記念日にする議員連盟」の設立趣意書には、主権回復したあかつきには「自主憲法制定と国防軍創設は最優先手順だった」とあることからもわかるように、
この式典は「自主憲法制定と国防軍創設という未来へ向かって希望と決意を新たにする日にしたい」という決意表明だったことはあきらかです。
もし日本が憲法を備えた一人前の独立国家として再出発した日を祝うのなら、5/3の憲法記念日だってふさわしいでしょうに、現憲法を敵視している安倍総理はそっちはガン無視です。
また、安倍氏にとっては61年前、戦犯だった自分の祖父、岸信介が、公職追放から解かれた日を祝う日でもあったでしょう。
この日の案内状には「我が国の“完全な”主権の回復」と書かれていたそうです。
これは沖縄は日本に入っていないのだと堂々と宣言したに等しいですね。
恐ろしいほどの沖縄差別にまるで自覚のない安倍総理は、アメリカ様のためにオスプレイ導入や辺野古献上を強行して土足で沖縄を踏みつけておきながら、「沖縄が経てきた辛苦に、深く思いを寄せる努力をすべきだと訴えようと思う」などと、どの口でいけしゃあしゃあと言えるのか、その図々しさにあきれ果てます。
日米安保はもとよりTPPで実質アメリカの属国化を強化し、アメリカの要請で9条も変えようと画策し、嬉々としてアメリカにごまをすりまくる恐るべきポチぶりを発揮しながら、「アメリカの押しつけ憲法を破棄して自主憲法を」「主権回復だ」と叫ぶ安倍氏の倒錯ぶりにクラクラしますし、こんな人物が高支持を得ていることにも更に目眩を感じます。
Satoko Oka Norimatsuさんのツイートから抜粋したこの式典への抗議を[続きをよむ]の中にメモしておきますので、ご覧下さい。
さて、菅義偉官房長官は、天皇夫妻の出席は天皇の政治利用だという批判はまったくあたらないなどと述べましたが、まるで右翼集会と言ってもいいような式典に「国事行為」しか行ってはいけないはずの天皇を出席させるのは明らかに天皇の政治利用であって、憲法上許されることではないです。
「自主憲法制定」にむけての決意の日ですから、早速現憲法をないがしろにしたわけですね。
沖縄タイムスによると『児童合唱団が歌声を披露する場面でも不可解な空気が漂った。出席者に向かって舞台上で歌うのではなく、出席者と同じ舞台下から、天皇皇后両陛下や首相などが並ぶ舞台上に向かって「翼をください」などの歌を合唱した』そうですから、一体誰が主役なのか、トリモロシタイ国はどんな国か、よくわかろうというものです。
そして天皇夫妻が壇上から去ろうとしたとき「天皇陛下万歳三唱」がおきました。まるで戦前の「天皇主権回復の日」かと勘違いしてしまいそう、この時代錯誤ぶりは本当に気持ちが悪いです。
この「天皇陛下万歳」こそ日本が軍国主義、国家神道の下で数多くの人々を犠牲にしてきた象徴であり、この式典の本質を象徴しています。
この万歳三唱は国民主権の観点から適切かという質問に対して、菅官房長官は「予想もしていなかった」「自然発生したもので、政府として論評するべきではない」と述べ、問題ないとの認識を示しました。
しかし安倍総理も麻生副総理もこの万歳三唱に加わっており、到底「問題ない」などと言いのがれできるものではありません。
ふとこんな悪夢を想像したり・・・
かつては卒業式で君が代は何ら強制されていなかったし歌われもしなかったのに、今ではこの有様です。
万が一「天皇陛下万歳三唱」が卒業式で義務づけられたあかつきには「これは思想良心の自由も国民主権も関係ない。単に規則なんだから従えってだけの話。嫌なら公務員を辞めればよい」と強弁するのもありえなくないかも・・・
式典に出席した維新の怪の西村眞悟議員のHPは、安倍総理の本音をずばり代弁していると言っていいでしょう。
「主権の回復」とは何か
http://www.n-shingo.com/cgibin/msgboard/msgboard.cgi?page=849
(引用開始)
主権回復を祝う日ができたら嬉しいだけでは、ダメだ。
(2)、主権が回復する前には、主権が奪われていたのだ。
従って、その奪われていたものを取り戻さなければダメではないか。それを取り戻さずに「祝う日」を祝っていてどうする。
では、「奪われたもの」は何か。
それは、「軍隊」ではないか。
そして、「軍隊」を動かす「天皇大権」ではないか。
(3)、さらに、大日本帝国憲法を奪われた。
皇室典範を奪われた。
そして、民族の記憶である「祝日」を奪われた。
皇室典範は「法律」ではないのだ。万世一系百二十五代の天皇家の「家憲」なのだ。
新嘗祭、明治節、これらの日は何処にいった。奪われたままだ。勤労感謝の日、文化の日など、訳がわからんではないか。それらは新嘗祭であり明治天皇のお誕生日つまり明治の日だ。
主権回復とは、奪われたこれらのものを回復することである。
(略)
なお、午前中に実施された政府主催の記念式典には、生活第一の党と社民党と共産党が欠席し、沖縄県知事も欠席した。
理由は、天皇の政治利用だから、そして沖縄県知事は、この日は沖縄が本土から取り残された屈辱の日だからというもの。
つべこべ言わず、一言で言っておく。
こいつらは頭がおかしいだけだ。
(略)
また、沖縄県知事は、マインドは日本人ではないのだろう。
彼は、既に中国共産党を喜ばせ、沖縄と沖縄県民を辱める存在である。
(引用ここまで)
何の躊躇もなくアナクロニズム全開にして、よくここまで沖縄を陵辱する言葉を吐けるものだと怒りを感じます。しかし議員のこんな発言もいっこうに問題視されない昨今の空気に背筋が寒くなります。
今回は天皇本人の「お言葉」もなく、天皇自身がこの式典をどう思っていたのか知る由もありませんが、国旗国歌は強制でないのが望ましいと述べたこともある天皇は比較的リベラルな人物だと言われているようです。万歳三唱を聞いた時の天皇夫妻、特に美智子さんの表情が硬いように見えるのは気のせいでしょうか。
その天皇夫妻の意向をなんとなく伺わせるこんな話をメモ。
憲法草案関与のゴードンさん追悼、美智子さまメッセージ
http://www.asahi.com/national/update/0429/TKY201304290279.html
【ニューヨーク=中井大助】連合国軍総司令部(GHQ)の一員として日本国憲法の草案づくりに携わり、昨年末に89歳で亡くなったベアテ・シロタ・ゴードンさんの追悼式が28日、米ニューヨークであった。アジアの文化を米国に紹介することにも長年尽力したゴードンさんをしのんだ。
ニューヨーク・フィルハーモニックのバイオリン奏者で、息子が同楽団の音楽監督を務める建部洋子さんはゴードンさんの力で奨学金を受け取り、ニューヨークで音楽を学ぶことができたと述懐。戦前、日本でゴードンさんの母親からピアノレッスンを受けたというオノ・ヨーコさんもビデオメッセージを寄せ、日本のアーティストを励ましてくれたことに感謝をした。
ジャパン・ソサエティーの桜井本篤理事長は、宮内庁の川島裕侍従長からもメッセージが寄せられたことを披露。ゴードンさんと交流があった皇后美智子さまが「戦後社会における日本女性の権利のためにゴードンさんが果たした役割を重視しており、その功績が日本で長年にわたって記憶されると信じている」との内容だったという。
安倍氏肝いりの自主憲法制定決意の日に無言だった天皇
そして安倍氏が忌み嫌う現憲法の制定に携わり、改憲に警笛ならしたベアテ・シロタ・ゴードンさんの追悼式に賛辞のメッセージを送った皇后。
何とも皮肉です。
<追記>
こちらもご覧下さい
◆Transnational History
英BBC「主権回復式典は安倍氏の国家主義キャンペーンの一環と見られ、近隣諸国を怒らせた一連の出来事の最新作だった」