生活保護の切り下げは生活保護受給者にダメージを与えるだけでなく、その影響は他の様々な分野に波及します。「生活保護切り下げ、ざまあ」なんてバッシングして気持ちよくなってると、自分の首を絞めることになるという記事を色々お持ち帰り、メモしておきます。
生活保護減:一般低所得者に影響 就学援助打ち切りも
毎日新聞 2013年01月27日 21時54分(最終更新 01月28日 01時36分)
http://mainichi.jp/select/news/20130128k0000m010058000c.html
(前略・引用開始)
日常生活費分の生活保護費「生活扶助」が、3年で7.3%減らされることが決まった。影響は受給者だけでなく、一般低所得層にも及ぶ。各種給付金や負担軽減を受けられる所得基準は、多くが生活保護の水準を参考に決められているからだ。田村憲久厚生労働相は27日、他制度への影響を和らげる意向を示したものの、内容はまだ見えてこない。【遠藤拓、鈴木直】
◇最低賃金上げ、難しく 「整合性」の大義失われ
「生活保護の切り下げが影響するなんて」。東京都内に住む40歳代の女性は、中学3年生の次男分として受けている年十数万円の就学援助がなくなるかもしれないと知り、ため息をついた。家計は次男の週1500円程度の交通費にも圧迫されるのに「もっと切り詰めることになるのか」との不安が頭をよぎる。
就学援助は家計の苦しい世帯に小中学校の学用品代などを支給する制度だ。11年度の受給者は95年度(約77万人)の2倍、156万人超。対象者について多くの自治体は「所得が生活保護の基準より10%多い世帯まで」など生活保護を基準に決めている。つまり、生活保護が下がると打ち切られる世帯が出てくる。民主党政権で内閣府参与を務めた湯浅誠氏によると、生活扶助の1割減で3万〜7万人が就学援助を受けられなくなるという。
困窮者の子どもが再び貧困に陥る「貧困の連鎖」も指摘される。「全国学校事務職員制度研究会」代表の竹山トシエさん(66)は「就学援助を受けずに親が借金を重ね、子供が不登校になることもある」と懸念する。
生活保護基準の引き下げは最低賃金にも影響する。最低賃金法は「生活保護との整合性に配慮する」と定めているからだ。本来は最低賃金が生活保護費より低い地域の賃上げを促すための規定だが、生活保護費が下がれば賃上げの「大義名分」が失われかねない。
時給換算で849円の最低賃金に対し、保護費は854円−−。最低賃金より保護費が高い「逆転」が生じている6都道府県の一つ、神奈川県。横浜市でアルバイトをかけもちする女性(25)は「今は若さで乗り切っているが、10年後も続ける自信はない」。収入は月15万円前後で蓄えもない。最低賃金を1000円以上にするよう国に求める訴訟を起こした原告の一人だ
生活保護の更なる切り下げが子どもに貧困を連鎖させることについて、ブログ「すくらむ」さんのこちらのエントリ-をどうぞ。
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はじめから子どもの芽を摘み貧困連鎖加速させる生活保護改悪-子どもの貧困ひろげる世界最悪の日本政府生活保護切り下げはこんな所にも影響を及ぼしています。弱いところから順番に。
中国残留孤児:支援切り下げ 生活保護費減にあわせ
毎日新聞 2013年02月01日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/news/20130201ddm008020048000c.html
8月以降に予定される生活保護費の切り下げに伴い中国残留孤児やハンセン病患者らの給付金も切り下げられることを厚生労働省が31日明らかにした。政府は他制度への影響を最小限にとどめたい考えだが、これらの給付は生活保護と同額を想定しており、カットは避けられないという。
切り下げとなるのは永住帰国した中国残留孤児の支援給付▽ハンセン病国家賠償訴訟で和解に応じ、国立ハンセン病療養所に入ったことのない患者の給与金▽療養所入所者とは別居している家族への生活援護費。収入が生活保護基準に満たない困窮世帯が対象で、支援給付は4687世帯7230人(12年10月)、給与金は4世帯(12年12月)、生活援護費は33世帯35人(11年度)。政府は生活保護費の生活費相当分を3年で平均7・3%削減する方針。【遠藤拓】
こちらのtogetterも必読です。
●130122 生活保護削減10万人反対署名提出後の記者会見での稲葉剛氏(もやい代表理事)の発言まとめ
【本日の記者会見での発言要旨1】私たちは生活保護基準が引き下げられると3つの被害が生じると主張してきた。まず生活保護を利用している人々の生活水準が悪化(第一次被害)。そして、収入がボーダー層の人々が生活保護制度から排除されてしまう(第二次被害)。
inabatsuyoshi2013-01-22 23:02:15.
2:最後に、生活保護基準は就学援助や地方税非課税水準などの他制度と連動しているので、低所得者全体の負担が増える(第三次被害)。 生活保護世帯には様々な世帯類型がある。それぞれの世帯類型で、この3つの被害がどういう結果をもたらすのか、取材をして検証してほしい。
inabatsuyoshi2013-01-22 23:02:56.
3:今回、最も影響を受けるのは子どものいる世帯。子育て世帯の第一次被害は、子どものいる生活保護世帯において、収入が減り、子どもの教育にかけられる費用が減ってしまうこと。これは厚労省の進める「貧困の連鎖防止策」(生活保護世帯の子どもたちへの学習支援など)に逆行している。.
inabatsuyoshi2013-01-22 23:03:38.
4:子育て世帯の第二次被害は一部の世帯が生活保護から外されてしまい、生活保護世帯を対象とした学習支援などのサポートが受けられなくなってしまう。第三次被害は就学援助を受けられなくなる世帯が増えたり、地方税の非課税世帯の縮小により家計負担が増え、給食費や修学旅行の費用を出せなくなる。
inabatsuyoshi2013-01-22 23:04:13.
5:高齢者の世帯ではどうか?生活保護基準部会の報告書に沿えば、高齢者世帯の基準は逆に上げないといけないが、一律引き下げを主張する政治家もいると聞く。高齢者世帯の基準が引き下がれば、夏や冬に冷暖房費をまかなえなくなるために熱中症や低体温症で倒れる人が増える。これは生命の危機に直結。
inabatsuyoshi2013-01-22 23:04:58.
6:さらに、認知症などで行き場のない高齢者を受け入れている施設では、経済力の落ちた生活保護世帯を受け入れなくなる可能性があり、「老人漂流」が加速する。これらが第一次被害。また、生活保護制度はお金だけでなく、ケースワーカーによる見守り機能もある。
inabatsuyoshi2013-01-22 23:05:30.
7:低所得の高齢者の一部が生活保護から外されると、見守りがなくなるため孤立死の危険が増す。これが第二次被害。最後に、生活保護を受けていない低所得の高齢者の負担も増加し、医療費などがまかなえなくなる。これが第三次被害。 障がい者世帯、傷病者世帯などについても同様の被害が起こる。.
inabatsuyoshi2013-01-22 23:06:13.
8:このように生活保護基準引き下げによる被害は、生活保護利用者だけなく、低所得者全体に及び、その影響は計り知れない。メディアはそれぞれの世帯にどのような被害が起こるのかをきちんと取材し、人々に知らせてほしい。(了).
inabatsuyoshi2013-01-22 23:07:27
さいごにDIAMOND onlineから。この記事はリンク先で是非全文お読みください。
最初から「引き下げありき」だった?
生活保護見直しを巡る厚労省と当事者・支援者の攻防
http://diamond.jp/articles/-/30694
(前略・引用開始)
会見で最初に発言したのは、弁護士の宇都宮健児氏である。宇都宮氏は最初に、日本の捕捉率(貧困状態にある人のうち公的扶助を利用している人の比率)が欧米諸国と比較して極めて低い水準にあることと、昨年来、孤立死・餓死が多発していることを指摘した。さらに、「むしろ生活保護の利用を促進するべきなのに、生活保護基準の切り下げや利用の抑制が行われれば、今後、孤立死等が多発するのではないか」という懸念を示した。
生活保護という制度は、生活保護を利用している現在の当事者にだけ関係がある制度ではない。生活保護基準は、国民生活のさまざまな制度と連動している。生活保護基準を引き下げるということは、国民生活の全体を引き下げるということに他ならない。
生活保護基準が引き下げられれば、おそらく、連動する形で最低賃金も引き下げられる。あるいは、最低賃金が実質的に無意味になるかもしれない。並行して、「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」では、「中間的就労」が議論されているからだ。就労困難な困窮者のために、低賃金ながら就労の道を開こうという趣旨である。特別部会での議論に関しては、本記事の後半で紹介する。
生活保護基準に関連する他の制度は、他にも数多く存在する。地方税の減免、障害者向け公共サービスや介護保険の利用料の減免基準、社会福祉協議会による貸付制度の利用、公共住宅への優先入居や利用料の減免。子育て世代に対しては、保育園利用料の減免、就学援助、公立高校の学費減免。日本国民の何%が影響を受けるのだろう? 10%台後半にある日本の貧困率から見て、少なく見積もっても25%程度だろうか?
宇都宮氏はさらに、生活保護基準の引き下げがデフレを推進する可能性についても「基本的に誤った政策」と鋭く指摘した。生活保護基準引き下げは、間違いなく、国民の多くにとっては所得を引き下げる方向で影響する。国民の所得を引き上げないと、内需は拡大されず、従って、デフレを脱することは困難になる。これは、現在の安倍政権が推進しようとしているデフレ脱却政策と矛盾する。また、生活保護基準に関する「厚生労働大臣が基準部会の議論を受けて結論を出す」という現在の制度についても、「国会で決めるべきです」と異議を表明した。そして最後に「なんにしても、生活保護基準が引き下げられると、当事者は大きな影響を受けます。経済的にも全く誤った政策です。反対します」と締めくくった。
(引用ここまで)
マスコミが何かと持ち上げるアベノミクスですが、物価を上昇させる一方で賃金を上げる政策をとらず、かつ低所得者周辺の生活を更に困窮させる政策をとるのですから、更に国民の暮らしも経済も悪化するのが火を見るよりも明らかです。
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